量子力学における「コト」的世界観と、オートポイエーシス

2008.07.08 Tuesday 23:55
井庭 崇



実は、この点は、まさに僕がこの秋に担当する「量子的世界観」 (Quantum Perspective) という授業と同じ方向性である(この授業では、僕が社会論とのつながりを考え、同僚の内藤さんが生命論とのつながりを論じる予定)。日常感覚では理解できないような量子力学的な現象が実際に観察されている以上、それをどう理解すればよいのかということを、思考の上でつくっていくことが求められている。まだ仮説段階のものも多くあるが、それも含めて思考実験をすることは意味があるだろう。

量子力学の話で僕が特に興味深いと思うのは、古典力学では扱うことのできなかった要素の「生成」と「消滅」の話が登場する点だ。

「量子力学を勉強していくと興味深い概念に出会います。量子の生成と消滅です。」(p.152)

「量子力学においては、量子は生成・消滅します。量子論においては、「真空」という言葉さえ、古典物理学とは別の意味をもつようになります。古典物理学においては、真空というのは、「物質が何もない」状態のことです。・・・ですが、このような真空状態でも、量子論的には、ここかしこに量子がウジャウジャと存在しています。なぜかというと、何もないところからでも、瞬間的に陽電子と電子が対になって生成されて、観測される前に対消滅を起こして消え去る確率がゼロではないからです。イメージとしては、真空は、沸騰するお湯のようにぶつぶつと泡ができては消えているような感じでしょう。このような量子は、ある意味、存在以前の存在であり、仮想粒子(バーチャル・パーティクル)と呼ばれています。」(p.154)

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