井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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井庭研B2シラバス(2023秋)「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」

井庭研B2シラバス(2023年度秋学期)
「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」(一部プロジェクトで引き続き新規メンバー募集中)



■ 重要な情報

井庭研B2は、井庭研B1に追加で履修する仕組みになっています。そのため、必ず、井庭研B1シラバス(2023年度秋学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」もよく読んで、エントリーするようにしてください。

エントリーの方法は、B1シラバスに記載があるので、それに従ってください。

一部のプロジェクトで、引き続き、新規メンバーの募集をしています。第二期の募集は、9月下旬までとします。エントリーがあった人から面接をしていき、プロジェクトの定員に達したら募集終了となるので、早めにエントリーすることをおすすめします

● 食をつくることを通してより豊かになる循環にする「サーキュラー・ファーミング」のパターン・ランゲージ作成研究(募集中!)
● ともに本質を探究していく「哲学対話」実践のパターン・ランゲージ作成(募集中!)
● 少年マンガに学ぶ、「自らの弱さや葛藤を乗り越えて前に進み続ける」ためのパターン・ランゲージ作成研究(募集中!)
● パターン・ランゲージがもたらす「よさ」を記述する「バリュー・ランゲージ」の開発(若干名)
● 「ジェネレーター」のパターン・ランゲージ作成研究(若干名)


■ Natural & Creative Living Lab(井庭研)とそのなかでのB2プロジェクトの位置付け

井庭研では、新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを開発し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献することに取り組んでいます。目指しているのは、ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある「創造社会」であり、そのために、素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援の研究を行なっています。

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井庭研では、土台となるB1(Foundation)に加えて、B2プロジェクトとして水曜日の午後(3〜6限)に集まって、研究プロジェクト実践を行います(時間割上は水曜6限となっていますが、B2プロジェクトに参加する人は、3限から夜まで授業や他の予定を入れないようにしてください)。みんなで、まとまった時間を取って、どっぷりとプロジェクト活動に浸ります。

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■ そもそも「研究」とは

「研究」とは、「知のフロンティア」を開拓する営みのことです。人類全体で見たとき、これまでの歴史のなかで、誰かが調べたり試したりした結果、「既知の領域」が広く広がっています。しかし、それでもまだ人類にとって、その周辺に「未知の領域」が広がっています。

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この状況で、学術的な「研究」は、その「知のフロンティア」を少しでも掘り進み、押し広げていく知識創造活動を行います。それは、多くの場合、苦労の多い作業となります。道なき道を、自ら道をつくりながら進んでいくことになるからです。しかし、そうすることで、ようやく人類で初めてその領域を開拓し、他の人たちに広く共有することができるようになります。このように、研究はとても創造的な活動です。まだ誰も知らない・実践したことのない、意義と付加価値のある成果を生み出すという創造実践なのです。

僕らが考える「よい研究」のひとつの基準は、その研究を行う人が、そのテーマに関心を持ち、思いと情熱を込めて取り組むことに加え、それが学術的意義と社会的価値につながるものであるということです。学術的意義があるというのは、これまでの学術研究・学問に新たな知見を積み上げるということであり、社会的価値とは、現在や未来の社会・他者に何らかの付加価値をもたらすものであるということです。これらの、「個人的関心」と「学術的意義」と「社会的価値」が重なるということが、よい研究のひとつの条件だと思います。このことを逆に言うと、「自分が興味がある」という個人的関心だけでは、「よい研究」にはならないということです(このことが個人研究の難しさにつながっています)。

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■ 学年ミックスの複数人で組む研究プロジェクトの素晴らしさ

今見てきたような苦労の多い難しい「研究」を、一人で行うのは困難です。そこで井庭研では、複数人でチームを組み、プロジェクトとして行う、ということを中心にしています。そうすれば、それぞれの得意を持ち寄り、一人では越えることができない高さを、仲間とともに超えることができるようになるからです。これは、プロジェクト制の最大のメリットです。孤独に悩むことなく、仲間とともに話し合いながら、前へ前へと進んでいくことができます。ともに取り組んでいる仲間がいることは、とても心強いものです。

また、井庭研のプロジェクトは、学部1年生から大学院生までの「学年ミックス」で構成されることも特徴的です。経験が多い上級生はプロジェクトを引っ張り、経験が浅いメンバーは、そこで教わり学びながら成長していきます。プロジェクトは、単に「研究のユニット」であるばかりでなく、「学びの場」でもあるのです。

もちろん、低学年だからといって活躍の機会がないわけではありません。プロジェクトにはいろいろな貢献の領域があり、得意の持ち寄りによって高まるものなので、絵を描くのが好きであるとか、外国語が得意であるとか、文章を書くのがうまいなど、研究経験とは異なるスキルや得意が活きることがたくさんあります。

もしかしたら、授業のグループワークなどの経験から、誰かと組むことにネガティブな印象をもっている人もいるかもしれません。負担が偏ったり、途中でいなくなったり、いなくなったと思ったら最後の発表だけ現れてずっといたようなふりをする人がいたり、と、「それなら、自分一人でやったほうがよかった」と思った経験は、誰でも多かれ少なかれあるでしょう。しかし、井庭研ではそのようなことは起きません。みんな、研究プロジェクトに本気で取り組んでいるし、とても楽しんでいるからです。井庭研ほど、最高のグループワークが経験できる場はなかなかない、と言っても過言ではありません。

そのようなわけで、研究をプロジェクトで行うのはとてもよいので、新規メンバーには、「個人研究」ではなく、「プロジェクト」に入ることを強く勧めています。個人研究は、自分一人でやるので、たしかに自由度が高く、他の人との時間調整ややりとりなどの手間も省けてやりやすそうに見えるかもしれません。しかし、研究とはどういうもので、どう研究するのかなどに慣れるまでは、なかなか研究にならず、相当苦しむ人がほとんどというのが実際のところです。その点、プロジェクトであれば、1、2年間プロジェクトで研究経験を積むなかで、研究の基本を学ぶことができます。それから、自分の個人的な関心にもとづく個人研究を始めたり、大学院生になって自分のテーマのプロジェクトを立ち上げてリーダーになったりするだけの知識とスキルを身につけることができるのです。

井庭研には、多様なテーマのプロジェクトがあります。まずは、そのなかから最も自分の興味に近いプロジェクトを選んで、その場で活動しながら、成長していくとよいでしょう。プロジェクトは、居心地のよいサイズの、とても活発な創造の場なのです。

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■ パターン・ランゲージの作成プロセス

井庭研では、ワークショップや新しい方法・道具などをつくる研究、創造的なコミュニティの研究など、いろいろなアプローチの研究を行っていますが、多くのプロジェクトでは、パターン・ランゲージの作成に取り組んでいます。国内外にパターン・ランゲージの研究者・実務家はたくさんいるのですが、世界で最もパターン・ランゲージをつくり、集中して研究しているのはSFCの井庭研であり、その先端性と経験を活かして研究することができるためです。

井庭研ではこれまで15年間パターン・ランゲージの作成プロセスを開発・洗練させてきました。その作成プロセスは、以下の通りです。

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まず最初に行うのは、パターンの要素となる情報を得て、それをとりまとめる「パターン・マイニング」です。「マイニング」(mining)というのは「掘り起こす」ということで、ここで掘り起こすのはパターンを作成するための「パターンの素材」です。パターンの素材は、実践者との対話を通じて掘り下げ、語りから掘り起こしていきます。この掘り起こしのための対話を「マイニング・ダイアローグ」と言います。実践者に、その実践においてよい結果を生むために「何をすることが大切か」(what)や、それは「具体的にはどうやるとよいのか」(how)、「それはなぜ大切なのか」(why)について聞いていきます。

パターン・マイニングでは、たいてい15〜20人くらいの実践者に話を聞き、数百のパターンの素材を得ることになります。これらの素材は、種類もサイズもばらばらな寄せ集めになっています。そこで、一つひとつの素材の中にある本質的な意味をつかみながら、似ているものを寄り分けて、似たもの同士のグループ分けをしていきます。これを、「クラスタリング」と言います。クラスタリングの結果、だいたい数十から百程度の「パターンの成分」にまとまります。

次に、ランゲージ全体の体系を編み上げます。クラスタリングで得られた「パターンの成分」を眺めて、どのようなものがあるのかを概観したのちに、視点を変え、全体から分化させるように全体像を捉えていきます。これを「体系化」と言います。体系化が終わるときに、だいたい30から40程度の数にまとまるようにします。この段階のものを「パターンの種(たね)」と呼んでいます。

そこから、「パターン・ライティング」の段階に入り、「パターンの種」を育てていくことになります。最初にやることとしては、それぞれの「パターンの種」について、「どういう状況(Context)で、どういう問題(Problem)が生じやすく、そうならないためにどうするとよいのか(解決: Solution)」という形式でその本質を捉えて記述することです。この文章を、Context、Problem、Solutionの頭文字を取って、「CPS」文と呼んでいます。CPS文は、そのパターンの幹にあたります。CPS文は、プロジェクトのメンバーで何度も確かめ合いの対話を行い、みんなで確認し、納得がいく記述になるまで、必要な修正を行っていきます。

その後、CPS文の幹に枝葉をつけていきます。「その問題が生じるのは、背後にどのような諸力(フォース:Forces)が働いているからか」や、「その解決は、具体的には例えばどうやるとよいのか(アクション:Actions)」、また、「それをするとどういう結果(Consequences)になるのか」を明らかにし、記述していくのです。

これらの記述も、何度も何度もプロジェクトメンバーで確かめ合いの対話を行い、本質が記述できているか、わかりやすい誤解のない表現になっているかなどを検討して、洗練させていきます。そして、書き上がりつつある段階で、実践者にそれを見せて「内容が合っているか」や、「表現が実際の感覚に近いかどうか」などを確かめ、記述を確かなものにしていきます。

このパターン・ライティングの後半から並行して走らせるのが、「パターン・シンボライジング」です。パターンの内容のイメージをつかみやすく、かつ魅力的に伝わる象徴的に表現をしていくのです。具体的には、パターンの名前(パターン名)をつけるのと、そのパターンの内容のイメージを伝えるイラストを描いたり、パターンの記述を読みたくなるキャッチコピーのような導入文を書いたりします。

パターン・シンボライジングでは、魅力的に象徴的に表現するということで、木々に花を咲かせるということにあたると言えます。一つひとつの異なる木に異なる花を咲かせていくのです。それらには統一感はありますが、個々には個性があるような花を咲かせていきます。人々は、その花の魅力に惹かれて、一つひとつの木に近づいてくれることになるわけです。

それから最終段階として、パターンの文章と名前とイラストなどをより調和がとれたものにするとともに、ランゲージ全体の整合性や調和の微調整、物語性の質感を宿らせるなどの仕上げをしていきます。こうして、1〜2年で数百時間の時間と労力をかけて、一つのパターン・ランゲージが完成します。

パターンの種だったものが、幹と枝葉がついた一本の樹木となり、それらがたくさん集まり、森になるのです。パターン・ランゲージの読者は、その森とともに生き、それぞれの実践の成果(fruit = 果実、収穫)を得ることになるわけです。

以上のようなプロセスの進行やそれぞれのステップでの具体的なやり方をマスターする必要があるので、いきなり個人研究ではなく、プロジェクトに入ることをおすすめしているという理由がよくわかるのではないかと思います。

しかも、井庭研では、パターン・ランゲージの作成は、一人でつくることを避けた方がよいと考えています。一人よがりなものになってしまうリスクがあるからです。プロジェクトで、本質はこれでよいだろうかとみんなで確かめ合い、どうしたらよりよい表現になるだろうかと話し合う ------- そういうことを繰り返していくなかで、パターン・ランゲージは、多くの人に受け入れられる普遍性を持つものに近づいていきます。

そして、こうして仲間とともに作品をつくり上げることの喜びは、とてつもなく大きく、素晴らしい体験になります。井庭研のプロジェクトのこの創造の深い喜び・面白さを、ぜひみんなにも味わってほしいと思っています。


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■ プロジェクトの紹介

以下の通り、井庭研のプロジェクトには、多様なテーマがあります(各プロジェクトは、井庭や大学院生がリーダーをします)。自分の興味・関心に近いプロジェクトを探してみてください。

(1) 食をつくることを通してより豊かになる循環にする「サーキュラー・ファーミング」のパターン・ランゲージ作成研究(新規メンバー募集中)
本プロジェクトでは、食をつくることを通してリジェネラティブな生態系の循環をデザインするためには、人間は環境にどのような働きかけをすることが必要かを明らかにし、パターン・ランゲージでまとめていきます。本プロジェクトで目指すリジェネラティブな循環とは、循環の一部として環境によい働きかけをしていけばいくほど、よりその環境も育まれ、豊かになっていく状態です。春学期は、食をつくる中での生態系を因果関係で捉えていく「因果ネットワーク図」を作成し、良い方向にループが生じるための実践として大切なことを、実践者へのインタビューや文献調査から得られたコツを元にしていくつかパターンを作成しました。秋学期では、引き続き多くの文献を読み知識を深めながら、因果ネットワーク図の解像度を高めていきます。そして、同時に、実践者から抽出したコツをクラスタリングし、パターン・ランゲージを作成していきます。秋学期の終わりまでには、これらの成果をまとめて冊子にする予定しており、それに向かってガツガツ進めていくので、水曜日以外にも活動できることが望ましいです。自然と人間が調和し、ともに豊かになる未来をつくっていきたい人、是非一緒に研究していきましょう!新規メンバーを3〜4人程度募集します。[リーダー:林 聖夏]

(2)ともに本質を探究していく「哲学対話」実践のパターン・ランゲージ作成(新規メンバー募集中)
このプロジェクトでは、物事の本質について皆で一緒に考えを深め、問い直す「哲学対話」の場のつくりかたを研究していきます。
哲学と聞くと、むずかしく専門的で、立ち入りづらいと感じることがあるのではないでしょうか。しかし哲学は、「私たちがよりよく生きていくために、物事の本質を探究する」という、とても大切な営みだと言えます。それは、人が自然体に、自分らしく生きることを支える営みでもあるでしょう。根底は、私たちがどう生きていくか、人の本質の探求に繋がります。
「哲学対話」では、「〇〇とは何か」というテーマを設定し、本質を見つけ出そうとする営みを対話によって行います。それによって、それぞれの考え・信念の違いで対立するのではなく、ともに共通了解をつくり出していけるようになることを目指していきます。
特にこのプロジェクトでは、「よさ」を問うことで、「どちらが正しいか」を決めるのではなく、ともに普遍的な価値を探っていけるようになる話し合いの場をつくれるように研究していきます。「よい教育とは何か」「よい社会とは何か」…辿り着いた価値、答えが本質的であるほど、実生活にも役立つものになるでしょう。
その場づくりにおいて大切なことを実践者から学び、実験し、パターン・ランゲージを作成します。
メンバーは、最初の1ヶ月半(11月中旬)まで「本質観取」のパターン・ランゲージ作成プロジェクトに参加します。その後に「哲学対話」のパターン・ランゲージを作成し、来年以降は、実際に成果物を用いて哲学対話の場を開き、社会や人生に関わる様々なテーマを扱いながら、その実施を研究していきます。
皆で一緒に考え、本質を探究していくことに関心のある方、ぜひ一緒に研究していきましょう!お待ちしています。[リーダー:木村 遥]

(3) 少年マンガに学ぶ、「自らの弱さや葛藤を乗り越えて前に進み続ける」ためのパターン・ランゲージ作成研究(新規メンバー募集中)
自分が価値あると思うものを達成したり実現したりする過程には、様々な葛藤や壁にぶち当たり、挫けそうになったり足を止めたくなってしまうときがあるかもしれません。そんなとき、どんな時も諦めずに逆境に立ち向かい続ける少年マンガのキャラクターたちに勇気をもらい、また一歩踏み出す力をもらうことはありませんか。
本プロジェクトでは、少年マンガの登場人物たちの実践に着目しながら、内面的葛藤や恐怖、壁を乗り越える際に重要な思考や行為をパターン・ランゲージの手法を用いて明らかにしていきます。最終的には作成したパターンに現実世界における経験や実感をインタビューを元に当てていき、実際に内発的な支援を行うことを目的とします。フィクションの世界を生きる登場人物たちが、いかに現実世界の私たちに学びと勇気を与えてくれるのか、一緒に研究する仲間を募ります。[リーダー:太田 深月]

(4) 「フィリピンの若者がやりたい仕事をして自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージを用いたワークショップの実践研究(募集終了)
フィリピンには、今もなお十分に教育を受けられていない子どもたちや、その影響で安定した収入を得られる仕事に就けていない若者が多くいます。そのような社会状況のなかでも、家庭環境や経済的な困難を背景に持ちながらも、経済的な自立と仕事の継続を実現している人もいます。そのような人たちがどのような行動や思考を経て自立的に生きていけるようになったのか、その実践のコツを明らかにし、パターン・ランゲージを作成しました。今学期は、そのパターン・ランゲージを活用したワークショップを実施し、フィリピンの若者のエンパワメントを試みます。研究のフェーズによっては、現地に赴きインタビューやワークショップを実施したり、フィリピンの方とオンラインでミーティングを行ったりすることがあり、その際は英語でやりとりします。現地の人たちの暮らしや生き方を支え、道しるべになるような研究・実践をおこなっていくことに興味がある人を歓迎します。新規メンバーを2~3人程度募集します。[リーダー:金井 貴佳子]

(5) パターン・ランゲージがもたらす「よさ」を記述する「バリュー・ランゲージ」の開発(新規メンバー若干名募集中)
本プロジェクトでは、ある対象がもたらす「よさ」を「バリュー・ランゲージ」というかたちで言語化することを目指します。あるものを使ったときや、ある経験をしたとき、「すごくいい!」という感覚を覚えたことはありませんか。バリュー・ランゲージは、そのような「よさ」を抽象化し、単語(バリュー名)と説明文でまとめたものです。これをつくることによって、経験のある人しか感じられない「よさ」を、他の人にも共有可能になり、「その対象を使ってみたい!」「その経験をしてみたい!」と思ってもらうことができると考えています。今期は、パターン・ランゲージの「よさ」を感じている人にインタビューをし、それをもとに「パターン・ランゲージのバリュー・ランゲージ(仮称)」を作成します。「よさ」を言語化するというまったく新しい試みを、楽しみながら真剣に取り組んでくれるメンバーを募集しています。[リーダー:井上 絵里加]

(6) 創造社会におけるマーケティングの担い手育成手法の研究:パターン・ランゲージを用いた気仙沼市の地域イメージ更新の実践を通して(募集終了)
本プロジェクトでは、パターン・ランゲージを活用して、宮城県気仙沼市の市役所・子育て支援団体のコンソーシアムと協働して、まち全体のイメージを3.11の被災地から一新することを目指します。これまで私たちは、マーケティングのパターン・ランゲージを作成し、月1回現地入りして市民とパターンを活用したマーケティング戦略を構想してきました。2023年度秋学期前半は、「気仙沼=被災地」から「気仙沼=誰もがここで生きていることを幸せだと言えるまち」へとイメージを更新する戦略を立案・政策実装すると共に、市民自らが自立してマーケティング戦略を考え続ける仕組みづくりを支援していきます。秋学期後半には過去2年間の活動一体を分析して、他地域にも応用可能な理論化(ジャーナル投稿)を目指します。
秋学期から新規メンバーを2〜3人募集します。フィールドで実践することは思った通りいかないこととも向き合うことになりますが、そんな時こそ、現場のたゆまぬ努力を真摯に受け止め、子どもたちの可愛い姿をたくさん感じ取り、まち全体で良い成果を生み出せることにワクワクしながらともに取り組んでいきましょう。[リーダー:田中 惇敏]

(7) 「コミュニティを愛でる」実践方法の研究(募集終了)
本プロジェクトでは、所属するコミュニティのよさを味わい、仲間と分かち合うために、そのコミュニティを「愛でる」ということの実践方法を探究しています。過去にいたコミュニティについて語り合いながら、その思い出に浸るようなことはあっても、今も所属しているコミュニティを愛でるというような機会は少ないのではないでしょうか。しかし、実際にやってみると、それは本当に味わい深い体験で、気づきも多く、喜び溢れるものです。秋学期の活動は、「語り愛ワークショップ」(コミュニティでの経験を語り合いながらコミュニティのよさを愛でるワークショップ)の開発と実践を通して、コミュニティを愛でるための実践方法を明らかにし、それらをパターン・ランゲージの形式でまとめます。今回の新規メンバーの募集は、若干名(要相談)とするため、本プロジェクトへのジョインを希望する方は、できるだけ、その旨をilab-entry@sfc.keio.ac.jp まで事前に連絡するか、研究会見学の際にプロジェクトリーダーの柴田に声をかけるなどして、エントリー前にお話しする機会を設けられるようにしてください。[リーダー:柴田 爽水]


(8) 「ジェネレーター」のパターン・ランゲージ作成研究(新規メンバー若干名募集中)
ある「世界」に心から熱狂し、その魅力や未来の可能性について周りに熱く語っている人に出会うと、その心から楽しんでいる姿を通して、その人の語る「世界」に惹き込まれるといった経験をしたことはないでしょうか。同時に、そのように振る舞っている人に触発されて、自分だけでは見えてこなかったようなワクワクする新たな発見が生まれてくるといった経験をしたことはないでしょうか。このような、ある場が生成(=ジェネレート)され、その生成の渦に新たな生成を加えていく側へと周りを巻き込み、ワクワクする未来を生み出していく現象の中心にいる存在を、私たちはジェネレーターと名づけて、その実践がどのように行われているのか、研究を進めてきました。2022年春よりスタートし、これまでに、さまざまな分野でジェネレーターとしての生き方を体現している人たちにインタビューを実施して、パターン・ランゲージの制作に取り組んできました。今期は、制作したパターン・ランゲージを基に、改めて、さまざまな領域でジェネレーターの人たちにインタビューを実施して、魅力的なエピソードを集め、パターンをさらにブラッシュアップしていきます。完成したパターンは論文に収録し、国際学会で発表する予定です。今がこのプロジェクトに関われる最後のチャンスなので興味がある方は是非応募してください。なお、今期は、新規メンバーを主に1年生、2年生限定で若干名募集しております。[リーダー:塩田 開都]

(9) 競技力の向上と人間的な成長を目指したダブルゴール・コーチングのパターン・ランゲージの作成研究(募集終了)
学生期のスポーツ選手の育成に携わる際、コーチは選手の競技力を高めるとともに、スポーツを通して人間的な成長を支援することが求められています。本プロジェクトでは、学生期の選手の育成に長年携わっているテニスコーチが、何を考え、どのような実践を行い、選手の競技力の向上と人間的な成長を支援しているのかを、パターン・ランゲージの作成を通して明らかにしていきます。本プロジェクトは、2023年度春学期からの継続プロジェクトであり、春学期にはインタビュー調査とパターンの抽出・体系化を行いました。秋学期からは、パターンの記述と象徴表現(パターンの名づけ・イラスト描写)を行う予定です。秋学期から参加を希望するメンバーは、秋学期の活動が開始するまでに春学期に行った内容(約10時間のインタビュー内容の確認・それらとパターンの対応関係)をキャッチアップする必要があること、また水曜日の活動時間外にパターン執筆の時間を取る必要があることの2点を把握しておいてください。スポーツや教育に関して興味がある人を歓迎しています。[リーダー:日置 和暉]

(10) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成(募集終了)
本プロジェクトでは、物事の「本質をつかむ」ということについて、現象学における「本質観取」(seeing of essence)の実践のコツをパターン・ランゲージの形式でまとめます。パターン・ランゲージの作成では、これまでに哲学者の竹田青嗣さん、西研さん、苫野一徳さん、稲垣みどりさん、そして井庭崇へのマイニング・インタビューを行い、本質観取の実践における大切なことを抽出してきました。その後、クラスタリングと体系化を経て、パターン・ランゲージの全体像ができ、その個々のパターンの内容を把握するところまでを、2023年度春学期に行いました。秋学期はこの続きで、パターンの文章の仕上げやイラストの作成などを行い、11月の完成を目指します。このプロジェクトは、井庭が直接リーダーとなりプロジェクトを率いるので、最も厳しくじっくりと地道な創造の道を進みます。しっかりついてきて学び、力をつけながら活躍してください。「本質をつかむ」ことや、本格的な「パターン・ランゲージの作成」に興味がある人を歓迎します。新規メンバーを若干名募集します。[リーダー:井庭 崇]


■ 現役メンバーから見た井庭研のプロジェクトについて

井庭研のプロジェクトがどういうものか、現役メンバーたちに書いてもらいました。17人の計3,600字をテキスト解析し、ワードクラウドで表現してみたところ、以下のようになりました(”井庭研”と”プロジェクト”のワードは抜いて可視化)。井庭研のプロジェクトの感じがよく表れていると思います。

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ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析


各人が書いてくれたものも、いくつかピックアップして載せておきます。

  • 「プロジェクト活動では、自分たちで実際に手を動かして、井庭研が大切にしている「本質を捉える」ということをたくさん経験することができます。プロジェクトに入ったばかりの時は経験のある先輩方と同じように取り組むことはとても大変で、つらいと感じることもありますが、それ以上に自分を成長させてくれる貴重な時間です。井庭研でたくさんの時間を共有しながら一緒につくりあげていくプロジェクトは、他では経験することのできないものだと思います。」(1年)

  • 「私は今年度の春学期に井庭研に入り、一からパターン・ランゲージをつくっています。プロジェクトメンバーの妥協しない姿勢や本質を掴む考え方、伝えたいことを発見的に・魅力的に書く力を見て、本当に学ぶことばかりの日々です。長い時間をかけて徹底的にこだわって「つくる」経験をしていることで、春と比べると自分がひと回りもふた回りも成長したのを感じています。自分たちのつくった言葉や道具が、誰かの支えになり、誰かの創造実践を応援しているなんて、幸せで尊いなと思います。」(2年)

  • 「井庭研のプロジェクト活動では、目指す成果に向かって、最後の一人の違和感が無くなるまで、どこまでもじっくり考えて全員の納得のいくものを作ります。その一方で、期日までに成果物をつくり上げたり論文を書き上げるために、研究会の授業時間の他にも集まれる時間を作ってどんどん進めていきます。時にはタフに感じることもありますが、自分の力だけでは絶対に到達できなかった成果が出せると「あぁ、やって良かった」と思うことができます。」(3年)

  • 「井庭研のプロジェクト活動では、プロジェクトメンバー1人1人が、多くの時間とエネルギーを注ぎ、決して誰かが欠けるとつくり得ないような本気の創造を経験できます。お互い求め合い、手を取り合い、混沌とした状態を乗り越えて成果が見えた時は言葉には表せない嬉しい気持ちになります。このような本気で学びをともにする仲間はかけがえのないものです。ぜひ、このような経験をしたい人は私たちと一緒に研究をしましょう!」(4年)

  • 「プロジェクト活動と聞くと、自分の興味にぴったり合っていないと...と思うこともあるかもしれませんが、興味がなんとなく近そうなところでどっぷりやってみると、自分の興味分野が深まったり、自分が知らなかった世界に触れて自分の視点を広げることができます。私も今4年生ですが、研究自体についても、それ以外に誰かと協働したりコミュニケーションを取ったりすることも、誰かと一緒に研究するからこそ学べることがたくさんあると実感しています!」(4年)

  • 「井庭研のプロジェクト活動で必要となってくるのが、本気のコラボレーションです。授業のちょっとしたグループワークとは次元が違います。もちろん人と一緒に何かをするということは大変なこともありますが、一緒にたくさんの時間をともに過ごし、苦楽を共にするなかで、一人ではたどりつけない世界を知り、素晴らしいものをつくりあげていく経験は、すごく貴重で、ワクワクするものです。ぜひ、どっぷりつかって、最高のコラボレーションを存分に味わってみてください。」(修士1年)


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    ■ 履修上の注意・留意事項

  • 1年生・2年生のうちからの参加を強く推奨します。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を強く推奨しています。

  • 3年生後半や4年生からの受け入れは、原則として行っていません(卒業プロジェクトの段階になって焦って研究会に入ろうとすることのないように、しっかりと計画的に考えて、早い段階から入るようにしてください)。

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。

  • 井庭研メンバーは、原則として全員B1を履修する方針ですが、他の研究会(A型)に所属しながら井庭研B2のプロジェクトに参加・履修したい場合など、特殊な事情がある場合には、事前に相談するようにしてください(説明会の際、もしくは、ilab-entry@sfc.keio.ac.jpまでメールにて)。


    ■ 評価の方法
    研究会の成績評価は、日頃の研究・実践活動への貢献度や成長の観点から総合的に評価します。


    ■ エントリー方法

    新規エントリーも継続エントリーも、井庭研B1シラバス(2023年度秋学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」の「エントリー方法」をよく読み、それに従い、エントリーしてください。

    ・7月20日(木)6限に井庭研説明会を行います(ι12 - イオタ12 教室)。ぜひ参加してください。

    ・新規エントリー〆切:第一期募集のエントリーは 7月23日(日)までとします(B1とB2のシラバスをよく読んでエントリーしてください)。7月25日(火)もしくは27日(木)に面接を行います。この段階で、定員になり次第、募集は終了となります。もし第一期募集で定員になっていないプロジェクトがある場合は、第二期として夏休み中もエントリーを受け付ける予定です(最新情報はこのB2シラバス(ブログ版)を見てください)。

    第二期の募集は、9月下旬までとします。エントリーがあった人から面接を設定していき、プロジェクトの定員に達したら募集終了となるので、早めにエントリーすることをおすすめします。


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    IbaLabLogo.jpg井庭研B1シラバス(2023年度秋学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」に戻る
  • 井庭研だより | - | -

    井庭研B1シラバス(2023秋)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」

    IbaLabLogo.jpg井庭研B1シラバス(2023年度秋学期)
    「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」


    ■ 重要な情報

    ・井庭研は、B型研究会×2の体制で連動して運営しています。そのため、このB1シラバスだけでなく、B2シラバス「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」にも必ず目を通し、全体像を理解するようにしてください。

    一部プロジェクトで、引き続き新規メンバーの募集を受け付けています。第二期の募集は、9月下旬までとします。エントリーがあった人から面接を設定していき、プロジェクトの定員に達したら募集終了となるので、早めにエントリーすることをおすすめします。どのプロジェクトが募集しているかの最新情報はB2シラバス(ブログ版)を見てください。

    ・井庭研とプロジェクトのことについて説明している井庭研説明会の映像を見たい人は、ilab-entry@sfc.keio.ac.jpまでメールで連絡をもらえれば、映像のアドレスを共有します。sfc.keio.ac.jpかkeio.jpのメールアドレスから送ってください。

    ・夏休み期間中に、特別研究プロジェクト「パターン・ランゲージの作成方法論研究」を実施します
    (8/24、8/31、9/07、9/12、9/13、9/22)。井庭研の研究の方法についてとても勉強になる貴重な機会なので、可能ならぜひ参加してください。詳しくは、特別研究プロジェクトのシラバスを見てください。


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    ■ Purpose - 新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを生み出し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献する

    井庭研では、「新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを開発し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献する」ことを自らのPurpose(存在意義)としています。僕らは、既存の学問分野の枠や常識にとらわれない、新しい発想で学術研究を行い、現状の問題を解決し、これからの未来をよりよくする新たな視点、概念、方法、メディアを開発します。そして、多様なアクターと組みながら、それらの成果を広く世の中に普及させ、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献していきます。


    ■ Vision - ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある「創造社会」

    井庭研のVision(目指している未来)は、「ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある『創造社会』」です。

    僕(井庭)は、ここ100年の変化を、「消費社会」から「情報社会」、そして「創造社会」(Creative Society)という流れで見ることを提唱してきました。消費社会においては、人々は家電や車など、物やサービスを購入し享受することが生活・人生の豊かさだとされていました。情報社会に入って、コミュニケーションに関心の重心がシフトし、よいコミュニケーションや関係性を持つことが生活・人生の豊かさを象徴するようになりました。そして、現在すでに一部で始まりつつある創造社会では、人々が自分たちで自分たちの使う物や考え、方法、仕組み、社会、あり方・生き方をつくり、どのくらい自分たちで「つくる」ことに関わっているのかが生活・人生の豊かさになっていくと考えられます。

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    そのような「つくる」時代に思いを馳せるとき、テクノロジーでがんじがらめになった人工的な未来ではなく、より自然と共生し、それぞれの人が人間らしく自然に生きている未来に僕は魅力を感じます。井庭研では、そのような「ナチュラルにクリエイティブに生きる」未来を目指し、「Natural」(自然な)と「Creative」(創造的)、そして、「Joyful」(喜びのある)が重なり合うような暮らし・人生を実現することの支援の実践研究に取り組んでいます。

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    ■ Mission - 素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援

    井庭研のMission(使命)は、「素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援」です。

    「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことは、どうしたら実現できるでしょうか? その問いに答えるには、暮らしや社会的な活動のそれぞれの実践領域ごとに考える必要があります。そこで、井庭研では、学び、仕事、子育て、介護、人生設計などのそれぞれの実践において、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことの内実を明らかにし、それを主に「パターン・ランゲージ」というかたちで表現し、実践したい人たちに届け支援するという研究に取り組んでいます。

    パターン・ランゲージは、実践における「コツ」を言語化します。コツというのは、語源的には「骨」と書きます。つまり、実践を内側から支える軸のようなものが、コツなのです。パターン・ランゲージが言語化するものは、次のようなコツです。

      ①その実践における「基本の型」
      ②例外的に成功している人(「ポジティブ・デビアンス」)たちのやり方
      ③工夫や試行錯誤によって得た「グッド・プラクティス」

    これらのコツを共有できれば、今うまくできずに困っている人たちや、もっとよりよく実践したいと思う人たちの手助けをすることができます。「手助けをする」といっても、一人ひとりに現場で直接的に助けるというのではありません。コツを言語化したパターン・ランゲージを届けることで、その人が自分でできるようになるのを支援するのです。

    その人の内側から作用するメディアを共有することで、「支援する人/される人」という関係を超えた、「ともに生きる」ということが可能になります。実際にそのように機能するパターン・ランゲージをつくるのは至難の業ですが、だからこそ井庭研では徹底的に時間と手間をかけて、つくり込んでいくのです。

    様々な実践領域でパターン・ランゲージをつくり、またパターン・ランゲージをつくる人を支援することで、ありとあらゆる領域でパターン・ランゲージが実践を支援する状態をつくっていきます。そのように整備されたパターン・ランゲージは、創造社会における「ソフトな社会インフラ」となるでしょう。人々は、そのような「ソフトな社会インフラ」の支えの上で、創造的な実践を始めることの自由度が高まります。これが、井庭研の研究で行うことです。

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    これまでに井庭研でつくったパターン・ランゲージのうち、書籍として出版されているものに、次のものがあります。実際に手にとって、読んでみてください。


    井庭研では、創造実践の支援の方法として主にパターン・ランゲージの作成に取り組んでいますが、他にもワークショップや新しい方法・道具などをつくる研究、創造的なコミュニティの研究なども行っています。


    ■ Values - Goodを超えてGreatを目指し実現する / つくる力をしっかり身につける / 自分たちのコミュニティを自分たちで育てる

    【Goodを超えてGreatを目指し実現する】

    井庭研では、成果のクオリティにおいても、取り組みの度合いにおいても、「いいね」というGoodにとどまらず、「素晴らしい!」というGreatなレベルになるように本気の活動をしています。そこでは、日々、①人の気持ちを心から感じ、手を差し伸べる②本質を追究し、徹底的につくり込む③新しい方法で取り組み、可能性を広げるということを大切にしています。

    まず、僕たちが取り組む研究で最も基盤となるのは、①人の気持ちを心から感じ、手を差し伸べる感受性と優しさです。困っている人、助けを求めている人、呼びかけ応答を求めている人に対して眼差しを向け、寄り添い、自分を差し出して尽くす ------ そういう気持ちと行動が不可欠です。井庭研で行われているパターン・ランゲージの作成は、困っている人たちやもっとよりよく生きたいと願う人たちを支援するために行われています。そのため、自己実現や自分の満足・快適を優先・中心に考える人は、井庭研には合わないということを強調しておきたいと思います。

    次に、②本質を追究し、徹底的につくり込むための明晰さと粘り強さが大切になります。物事の本質は、簡単には見えません。いくつもの事例を見ながら、そこに共通する特徴をつかみ、その本質を突き詰めて考えていくことが求められます(現象学の哲学では、これを「本質観取」と言い、井庭研ではそのことについても研究しています)。そして、その本質を表す表現を磨いていき、本質を見事に表す魅力的な表現になるようにつくり込んでいきます。そのとき、一人よがりな視点に陥らないために、複数人で何度も何度も話し合い、確かめ合います。本格的な創造ではいつもそうですが、井庭研で取り組む創造も、地道でつらく面倒な作業の連続です(しかし、楽しさや喜びも混じっているので、単なる苦行ではありません)。そうやってつくり込んだものだけが、人々の心に響き、実際に機能する素晴らしい(Greatな)作品になるのです。

    そして、③新しい方法で取り組み、可能性を広げるということも、井庭研で大切にしていることのひとつです。これまでに広く採用されてきた方法は、すでに多くの人々によって実行されてきたはずです。その結果、現在の課題や困難が残っているのですから、同じようなアプローチで取り組んでも、問題は解決・解消しないでしょう。そのような状況では、これまでにない新しいアプローチで取り組むことが重要になります。井庭研では、パターン・ランゲージをはじめ、従来とは異なる新しい方法で取り組むことで、問題を解決する道を切り拓くとともに、これまでにない選択肢の可能性を広げ、その面でも世の中に貢献しています。

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    【つくる力をしっかり身につける】

    井庭研では、新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを生み出していくための力を、各自がしっかり身につけることを大切にしています。そのために、④感じたことを捉え、そう感じた根拠を明らかにする⑤本をたくさん読み、思考と創造の土壌を豊かにする⑥日々パターン・ランゲージを活かし、実践を高め続けるようにしています。

    まず、何かを考えるときやつくるときには、自分の心で ④感じたことを捉え、そう感じた根拠を明らかにするようにしています。これは、まず、頭で意識的に考える前に内で感じること・直観としてつかんでいることが大切であることを意味しています。しかし、それをただ主張するのでは、単なる印象論や主観的な誤りに陥る可能性があります。そこで、感じたことを踏まえて、「そう感じたのはなぜか」「何がそれを確からしいと自分に感じさせたのか」の根拠を解明し、それを言葉で説明できるようになることが大切です。例えば、パターンのイラストを考えているときに、A案の方がB案より良いと感じたのであれば、それはどの部分がどうよいからなのかの理由を突きとめ、他の人も「確かにそうだ」と納得し得るロジックとして明示する必要があります。このような(受動的に)感じたことの本質(構造)を観取する(把握する)ということは、現象学の哲学的方法であり、また、パターン・ランゲージの考案者である建築家クリストファー・アレグザンダーの考えと方法にも通じるものです。まず感じて、それから考える --- Feel First, Then Think(FFTT)。これは、井庭研のあらゆる活動において重視されています。

    そして、井庭研では、⑤本をたくさん読み、思考と創造の土壌を豊かにすることを心がけ、日々実践しています。人は何かを考えるとき、素手でゼロから考えているのではなく、自分がすでに持っている概念装置(考え方のフレームワークや理論体系など)を駆使して考えています。そのため、よい概念装置をいろいろ持ち、それを使いこなせるようになることが重要となります。また、創造(creation)を可能にする想像力(imagination)は、さまざまな経験や知識が自分の無意識の「土壌」のなかに沈み、分解・熟成することで豊かになります。思想・哲学的な本や実践領域に関する本、創造的な人たちの暮らしや生き方にまつわる本などを読むことは、そのような自分の「土壌」を豊かにすることに直結します。このように、思考の面でも創造の面でも、読書のもたらす効用は絶大であり、それを活かさない手はありません。井庭研では、各自が自分でどんどん本を読んでいくことを強く推奨しています。

    さらに、井庭研では、⑥日々パターン・ランゲージを活かし、実践を高め続けることも推奨されています。僕らはこれまで20年間で、いろいろな実践領域の3,000以上のパターンを書いてきました。それらは、もともとは誰かのためにつくられたものなのですが、その本質的な普遍性から、僕ら一人ひとりにももちろん有効なものたちです。学び、プレゼン、コラボレーション、対話、読書、マネジメント、ケア、教え方、スタートアップ、暮らし、生き方などなど、井庭研のメンバーも、それらのパターン・ランゲージを自分の実践に活かすとともに、それを共通言語として語り合い、高め合うことにフル活用しています。

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    【自分たちのコミュニティを自分たちで育てる】

    井庭研では、自分たちのコミュニティを自分たちで育てるということを大切にしています。担当教員の名前がついた「井庭研」ですので、担当教員(井庭)はもちろん一つの中心的な役割を担うわけですが、だからといって、他のメンバーが従属的にぶら下がるような構造では、創造的な場としては素晴らしい場になるはずはありません。一人ひとりが、自分のいるコミュニティを育てていく努力をし、命を吹き込むからこそ、そこはいきいきとした創造的な場になるのです。そのため、まずはそのコミュニティにある⑦機会・環境に感謝し、最大限に活かすこと、また、⑧先生・先輩からどんどん学び、小まめに助け返すこと、そして、⑨仲間とともに挑戦し、喜びを分かち合うことをし続けることが大切になります。

    井庭研では、⑦機会・環境に感謝し、最大限に活かすことを、忘れずにいることを重視しています。今ある機会や環境は、誰も何もせずに当たり前に「ただある」ものではありません。それは、担当教員や過去の先輩たち、そして今いるメンバーの努力や貢献によって生み出され、「あるようになった」ものたちです。「当たり前」だと思ってしまうと、有り難さ(そこにあることの難しさ・希少さ)は感じられず、自分には関係ないもの・適度に流してよいものになってしまうでしょう。そうではなく、そのような機会や環境をもたらしてくれた人たちに感謝することを忘れず、それを最大限活かして自分たちの力に変えることが大切です。

    井庭研では、⑧先生・先輩からどんどん学び、小まめに助け返すことも大切にしています。人は経験を積むこと・知識を得ることで、できることが増えていき、その水準も高度になっていきます。そんな熟達した”すごい”人たちも、最初からそうだったわけではありません。ここで日々活動を続けるうちに、また個人的な努力の末に、できるようになったのです。先生や先輩がこれまで何を(どのような努力・経験を)してきて、今何をしているのか(実践・習慣)を聞き、自分の成長に活かすということは、自分を大きく高める契機となります。そして、先生や先輩が高いレベルで挑戦していることを手伝い、応援することで、いまの自分のレベルでは体験できないような、より高度なレベルでの実践経験を垣間見て体験できるようになります。そこで、経験や力の差のある先生や先輩たちから一方的に学びを得るだけでなく、その人たちを「助け返す」ことも、双方にとって重要な意味を持ちます。一気に大きく貢献というのは難しいので、日頃から、「小まめに助け返す」ことがポイントです。

    井庭研では、日頃から、⑨仲間とともに挑戦し、喜びを分かち合うことを大切にし、味わっています。一人で行う挑戦では、自分の限界が活動の限界になってしまい、なかなか大きく飛ぶことはできません。そこで、研究会のメンバーや学内外の関係者の仲間とともに、得意を持ち寄り、励まし合い、高め合いながら、普通では実現不可能なレベルまで飛躍します。そして、地道で苦しく忍耐のいる作業の末、Greatな高みに到達したときの大きな喜びを、仲間とともに分かち合います。ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある人生とはそのようなものであると考え、まさにそれを井庭研のなかでも実践・実現しているのです。

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    ■ 「創造実践学」という新しい学問領域での実践研究

    井庭研で取り組んでいる研究は、既存の学問分野には収まらないものです。僕は、自分たちが取り組んでいる新しい学問にはまだ名前がないので、それを「創造実践学」(Studies on Creative Practice)と名づけました。創造(creation)の実践について、そして創造的(creative)な実践について研究する学問分野、それが「創造実践学」です。

    創造実践学の主力となる方法が、パターン・ランゲージです。それぞれの領域での創造的なよい実践を研究し、それを言語化します。そして、それを用いて、人々の支援をしていきます。このように、創造実践学は、現在の問題や課題を解決する実学的な学問なのです。しかし、それだけにとどまりません。パターン・ランゲージをつくるということは、これからの社会の「ソフトな社会インフラ」を築くことだと言えるので、未来をつくる未来志向の営みでもあるのです。

    井庭研では、なるべく長い期間どっぷりと浸かって、しっかり学び・研究することを大切にしてします。そのため、なるべく低学年のうちから参加し、経験を重ねていくことを強く推奨しています。そして、自分の研究のなかで創造実践学の思想と方法の感覚を「マスター」する修士課程(master course)や、それぞれの関心領域の専門家として「社会を治癒するドクター」になる博士課程(doctor course)に進学し、高度な技術とマインドを育んでいくことを推奨しており、実際に多くの人がその道に進み、日々がんばっています。

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    ■ 開かれた物語としてのパターン・ランゲージ

    国内外でいろいろな分野の人たちによってつくられているパターン・ランゲージのなかでも、井庭研のパターン・ランゲージに特に特徴的な点があります。それは、僕たちが、パターン・ランゲージを、一つの「物語」のようにつくり込んでいるということです。もう少し限定して言うと、主人公を特定しない「開かれた物語」としてつくっているのです。

    僕らがパターン・ランゲージをつくるときには、個別具体的な人物としては設定しませんが、「その実践をする人」という匿名の主人公を想像し、その人がある状況において問題に直面したり解決の行動をしたりするという「物語」を立ち上げます。そうすることで、読み手は、ひとつの物語のようにそれを読むことができるとともに、自分の物語として読むことができるようになります。

    つまり、パターン・ランゲージを、単に現象を説明する説明的記述ではなく、読み手が「自分の状況に当てはまる」と思うこと、そして、そこで推奨されていることを魅力的だと思い、実際にやってみようと思うものになるような表現としてつくり込んでいるのです。

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    僕は、これは、J-POPのようなポピュラー音楽の歌詞をつくることに似ていると思っています。聴き手が「自分の状況に当てはまる」と思い、そこで歌われていることを魅力的だと思い、自分の歌として口ずさんだり、カラオケで歌ったり ------- そういう歌の歌詞のようなものだと思うのです。

    実際、作詞を手掛けている人たちが、歌づくりで語っていることは、パターン・ランゲージの作成と共通すると感じることが多々あります。AメロやBメロでその状況における悩みや迷いが歌われ、そして、サビでは。その状況を受け止め、乗り越えていくためのポジティブなメッセージが提示されます。聴き手は、その歌を聴き、歌詞を受け取るなかで、元気をもらったり、勇気づけられたり、世界をポジティブに捉えることができるようになります。

    パターン・ランゲージも、ある状況における問題から始まり、それを乗り越えていく方法が示されます。それは、読み手が実感をともなって内側から「自分のことだ」「自分の近未来だ」と思えるように書かれるのです。パターン・ランゲージは、歌の場合とは異なり、音楽が持つ力を借りることはできません。しかしながら、うまくつくれば、読み手のペースで読み、自分のものとして内側からその人を温めるようなものになります。

    実際、僕らがつくったパターン・ランゲージの読み手から、しばしば、「背中を押してくれました」「元気をもらっています」「心の支えになっています」「お守りのような存在です」「これがあったから、なんとかやってこれました」という声をもらいます。そういう声を聴くたびに、まるで心から共感する大好きな「歌」のような存在だな、と思うのです。僕らのつくった、開かれた物語としてのパターン・ランゲージが、誰かの人生をあたためる。そんな素敵な営みだなぁと、僕はいつも感じています。


    ■井庭研の全体像と仕組み

    井庭研は、B型研究会×2というかたちで実施されています。

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    B1研究会は、井庭研のすべての土台(Foundation)になるもので、全員が参加するものです。木曜5限に開講されます(必要に応じて延長して行います)。これは、全体ミーティングであり、文献輪読や運営上の話し合いなどを行います。また、各自が取り組んでいる研究の発表やそれに対する議論なども行います。

    井庭研に所属するメンバーは、その学期に実施される「プロジェクト」のどれか一つに参加して研究を行うか、「個人研究」を行います。「プロジェクト」と「個人研究」の両方を行うことも可能です。

    「プロジェクト」では、井庭研での研究経験を積んだメンバー(大学院生等)がリーダーとなり、研究方法や知識の伝授をしながら、プロジェクトで掲げているテーマの研究に複数人で取り組みます。プロジェクトに参加する場合は、全員、水曜日の午後(3〜6限)に集まり、まとまった時間を確保して、しっかり活動します(水曜日のプロジェクト活動は井庭研B2として行うので、そちらも履修するようにしてください。時間割上は水曜6限扱いとなっています)。

    これに対し、「個人研究」では、各自の問題意識に基づき、自分で研究テーマも方法も考えて、取り組んでいきます。すべてが本人に委ねられているので自由度は高いですが、その分、自分で主体的に調べ、考え、研究として成り立たせる必要があります。その意味で、井庭研でのプロジェクト経験や、他の研究会での研究経験がなければ、実際問題として難しいでしょう。

    新規メンバーは、まずはプロジェクトに入ることを強く推奨します。いきなり一人で個人研究をするよりも、プロジェクトに入る方が、研究の進め方や具体的なやり方を教えてもらえるとともに、活動のなかで学び合ったり、刺激し合ったり、喜びを分かち合ったりできるからです。まずは、B2シラバスにあるプロジェクトのラインナップを見て、自分の興味に合うプロジェクトを探してみてください。

    4年生の卒業プロジェクト(卒プロ)は、4年生のときに参加しているプロジェクトを卒プロとして扱います。プロジェクトをしっかり行うことを徹底した上で、さらに個人的にやりたいことがある場合には、プロジェクトに上乗せして、個人研究を卒プロとして扱うこともあります。

    井庭研では、全員が論文を執筆を行います。内容は、プロジェクトもしくは個人研究の成果です。学期半ばから研究と並行して執筆を行い、学期末には全員分をまとめて、論文集をつくります。井庭研B1の時間には、論文の書き方について学ぶ機会も設けます。


    ■ 履修上の注意・留意事項

  • 1年生か2年生の早めの参加を強く推奨します。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を強く推奨しています。

  • 3年生後半や4年生からの受け入れは、原則として行っていません卒業プロジェクトの段階になって焦って研究会に入ろうとすることのないように、しっかりと計画的に考えて、早い段階から入るようにしてください)。

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。

  • 井庭研メンバーは、原則として全員B1を履修する方針ですが、他の研究会(A型)に所属しながら井庭研B2のプロジェクトに参加・履修したい場合など、特殊な事情がある場合には、事前に相談するようにしてください(説明会の際、もしくは、ilab-entry@sfc.keio.ac.jpまでメールにて)。


    ■ 研究会の時間の計画

    #1 イントロダクション(10/5)
    研究会の進め方やスケジュールを確認し、研究会のPurpose、Vision、Mission、Valuesについて語り合います。

    #2 研究計画発表1(10/12)
    それぞれのプロジェクトや個人研究の研究計画を発表し、よりよくなるための議論をします。

    #3 研究計画発表2(10/19)
    それぞれのプロジェクトや個人研究の研究計画を発表し、よりよくなるための議論をします。

    #4 重要文献読解(10/26)
    井庭研の研究における重要文献を読んできて、その内容について話し合います(国際カンファレンスPLoP期間中)。

    #5 対外研究発表に向けての話し合い・準備1(11/2)
    11月下旬にある対外的な研究発表の機会(SFC万学博覧会)に向けての話し合い・準備をします。

    #6 対外研究発表に向けての話し合い・準備2(11/9)
    11月下旬にある対外的な研究発表の機会(SFC万学博覧会)に向けての話し合い・準備をします。

    #7 対外研究発表に向けての話し合い・準備3(11/16)
    11月下旬にある対外的な研究発表の機会(SFC万学博覧会)に向けての話し合い・準備をします。

    #8 対外研究発表のふりかえり(11/30)
    対外的な研究発表の機会(SFC万学博覧会)についてのふりかえりをします。

    #9 研究中間共有会(12/7)
    小さなグループに分かれ、それぞれのプロジェクトや個人研究の中間段階での進捗状況・成果について語り、お互いにアドバイスをし合います。

    #10 ライターズ・セミナー1(論文執筆における大切なこと)(12/14)
    論文誌筆のコツをまとめたアカデミック・ライティング・パターンに紐づけて、論文執筆に関する本の重要箇所を確認します。

    #11 ライターズ・セミナー2(各自の論文についての相談)(12/21)
    各自書いてきた論文をチームで読み合い、アカデミック・ライティング・パターンも活用して改善に向けた話し合いをします。

    #12 ライターズ・セミナー3(ライターズ・ワークショップ)(1/11)
    ライターズ・ワークショップのスタイルで、論文がよりよくなるための話し合いをします。

    #13 論文集の編集(1/18)
    論文の最終調整を行い、論文集を仕上げます。

    #14 研究成果発表会の準備(1/25)
    研究成果発表会の準備を行います。

    #15 研究成果発表
    それぞれのプロジェクトや個人研究の最終成果を発表します。


    ■ 評価の方法

    研究会の成績評価は、日頃の研究・実践活動、発表、論文、議論・話し合いでの貢献、成長の観点等から総合的に評価します。


    ■ エントリー方法

    【新規エントリー】

    井庭研に新規でエントリーする人は、このシラバスをよく読んだ上で、期日までに、[1] 新規エントリーシート[2] 文献課題を、それぞれ別々のPDFファイルで用意し提出してください(ファイル名に自分の名前を入れるようにしてください)。新規メンバーはプロジェクトに入ることを強く推奨しますが、すでに別の研究会に入っている/これまでに研究経験があるなど、個人研究の遂行能力がありそれを希望する場合には、[3] 研究計画も提出してください。

    第二期募集:一部プロジェクトで、引き続き新規メンバーの募集を受け付けています。第二期の募集は、9月下旬までとします。エントリーがあった人から面接を設定していき、プロジェクトの定員に達したら募集終了となるので、早めにエントリーすることをおすすめします。どのプロジェクトが募集しているかの最新情報はB2シラバス(ブログ版)を見てください。


    提出先: https://forms.gle/w7bQmoTcAze7q9W38 (井庭研 2023年秋学期 新規エントリーフォーム)

    このフォームに登録後、メールで ilab-entry@sfc.keio.ac.jp に、フォーム提出したということを連絡してください。

    [1] 新規エントリーシート

    井庭研(2023秋)新規エントリー

    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
    2. 自己紹介と日頃の興味・関心(イメージしやすいように、適宜、写真などを入れてください)
    3. 井庭研への志望理由、および、この研究会シラバスを読んで、強く惹かれたところや共感・共鳴したところと、その理由・考えたこと
    4. 履修:「B1とB2」か「B1のみ」か
    5. 参加したいプロジェクト(複数ある場合で、第一希望など順番がある場合は明示してください)
    個人研究を希望する場合には、研究タイトルを書いてください。
    6. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
    7. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    8. これまでに履修した授業のなかでお気に入りのもの、所属した研究会など(複数可)
    9. 並行して所属する予定の研究会(あれば)
    10. 補足(その他、何か連絡・相談があれば)


    [2] 文献課題

    まず、『総合政策学の方法論的展開』 (清水唯一朗, 桑原武夫 編, 慶應義塾大学出版会, 2023)の第2章 「新しい方法、新しい学問、そして、未来をつくる:創造実践学の創造」(井庭崇)を読んでください。これが井庭研で行っていることの概要になります。

    これに加えて、以下のいずれかを(1つ以上)読んでください(授業の文献宿題で読んだ人も、改めてざっと読み直してみてください)。



    読んだ本・論文のなかで、自分にとって面白いと感じた内容について、それがどこの何の話なのかということと、それを自分がどのように面白いと感じたのかを書いてください(A4で1〜3ページ程度)。


    [3] 研究計画(最初の学期から個人研究を行いたい場合のみ)
    個人研究として、どのようなテーマの研究をどのように行うのかの研究計画を書いてください(A4で2〜5ページ程度)。以下の要素を含めてください。

  • 研究タイトル(その研究を端的に象徴的に表す主題・副題)
  • 研究概要(その研究のエッセンスを数行でまとめるアブストラクト)
  • 研究背景(その研究が重要である背景や研究等の歴史、自分が取り組む個人的な経緯など)
  • 研究方法(どのような方法で研究に取り組むのか)
  • 遂行スケジュール(研究の進行、また、具体的に何月に何をする予定か)
  • 期待される成果(成果のイメージと、その学術的意義と社会的価値)
  • 参考文献(研究に関係する書籍・論文等のリスト)


  • なお、井庭研の新規面接は、担当教員だけでなく現役メンバーも一緒に参加して実施するため、エントリー時の提出物はメンバーも閲覧します。その点、あらかじめお知らせしておきます。


    ■ 重要文献

    井庭研の研究の背景や基本知識を知るために重要な本には、以下のものがあります。



    • 『時を超えた建設の道』 (クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993)/ Christopher Alexander, The Timeless Way of Building, Oxford University Press, 1979
    • 『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1984) / Christopher Alexander, Sara Ishikawa, and Murray Silverstein, A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press, 1977
    • 『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)/ Christopher Alexander, The Nature of Order, BOOK ONE: The Phenomenon of Life, The Center for Environmental Structure, 2002
    • 『パタン・ランゲージによる住宅の生産』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 2013)/ Christopher Alexander with Howard Davis, Julio Martinez, Don Corner, The Production of Houses, Oxford University Press, 1985
    • 『オレゴン大学の実験』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1977)/ Christopher Alexander, Murray Silverstein, Shlomo Angel, Sara Ishikawa, Denny Abrams, The Oregon Experiment, Oxford University Press, 1975
    • 『Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, 丸善出版, 2014)/ Mary Lynn Manns, Linda Rising, Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas, Addison-Wesley, 2004


    • 『創造的論文の書き方』 (伊丹敬之, 有斐閣, 2001)
    • 『基礎からわかる 論文の書き方』(小熊英二, 講談社, 2022)
    • 『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)/ Barbara Minto, The Pyramid Principle: Logic in Writing and Thinking, third edition, Pearson Education Limited, 2021


    B2シラバス「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」につづく
  • 井庭研だより | - | -

    Iba Lab B2 Syllabus (2023 Spring - English version) Natural & Creative Living Lab: Practicing Research Project

    Iba Lab B2 Syllabus (2023 Spring - English version)
    Natural & Creative Living Lab: Practicing Research Project


    Important Information

    From the Spring semester of 2023, Iba Lab will be offered as two Type-B research group, “Kenkyukai,” that will be linked together. Therefore, please read both this B2 syllabus and the B1 syllabus “Natural & Creative Living Lab: Studies on Creative Practice for Supporting Natural and Creative Living” to understand the entire picture.

  • For information on how to enter, please carefully read the Iba Lab B1 Syllabus
    • Newcomer Entry Deadline: January 29 (Sun), 23:59



    B2 Projects in the Natural & Creative Living Lab

    We, Iba Lab, conduct practical academic research on new approaches in order to contribute toward a future where people can live more lively, by creating new ideas, concepts, methods, and media. Our vision is the creative society where people can live their life more naturally, creatively, and delightfully. Our mission is to Inquire about principles hidden in practices with great quality and support practices of people based on the discoveries.

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    In addition to the B1 (Foundation), the foundation of the Iba Lab, many students gather on Wednesday afternoons (3rd–6th periods) for the Iba Lab B2 Project to practice their research projects (the official timetable shows Wednesday 6th period, but those who participate in the B2 project should not have classes or other schedules from 3rd period to the evening). We will all hold a “loaf of time” together to fully immerse ourselves in the project activities.

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    List of B2 Projects in 2023

    The projects with openings for new members in 2023 are listed below. Two projects, (2) and (5) will be conducted in English, if non-Japanese-speaking GIGA students join, while other projects will be conducted in Japanese. Please check the project introduction of (2) and (5) following the list.

    (1) Creating a pattern language of practices for living in harmony with nature while nurturing ecosystems.
    (2) Creating a pattern language for the way of involvement which draws out the initiative of residents in the field of international cooperation.
    (3) Creating a pattern language for double-goal-coaching that balances the pursuit of victory with personal growth.
    (4) Creating a pattern language for the practice of “Seeing of Essence” to grasp the essence of things.
    (5) Creating a pattern language for cultivating Filipino youth to live with ownership by learning from role models in the Philippines and conducting workshops with the pattern language.
    (6) Conducting renewal of town image in Kesennuma using pattern language.
    (7) Developing and practicing a workshop for dialogs about the greatness and uniqueness of a community.

    Non-Japanese-speaking GIGA students are welcome to projects (2) and (5). The introduction of these projects are as follows:

    (2) Creating a pattern language for the way of involvement which draws out the initiative of residents in the field of international cooperation.
    In recent years, “Participatory Development,” in which residents are involved as stakeholders, has become the mainstream concept in the field of international cooperation. This concept was originally developed to avoid forcing developed countries to impose their assistance to developing countries; however, the structure of local people taking the initiative has itself become a mere formality, as the local people’s opinions are only formally gathered. In this study, we will research effective ways to engage with local residents in order to increase their autonomy while working together to solve problems. Specifically, we will conduct interviews with local NGOs working on Mindanao Island in the Philippines and Japanese NGOs that have created shared villages, and clarify how they realize collaboration that does not deprive residents of their autonomy. We hope to learn together and consider how international cooperation can be created beyond the dichotomy of supporting and being supported, while returning to the question, “What is international cooperation?” Two or three new members are welcome to join. [Project Leader: Mizuki Ota]


    (5) Creating a pattern language for cultivating Filipino youth to live with ownership by learning from role models in the Philippines and conducting workshops with the pattern language.
    In the Philippines, there are many children without access to adequate education and young people who are consequently unable to find work. However, there are those who have achieved financial independence and continued work despite their family backgrounds and economic difficulties. We will reveal the practices of role models in the Philippines, and describe how to practice as a pattern language. In addition, we will develop, and implement workshops that utilize the pattern language and attempt to empower Filipino youth. We welcome those who are interested in conducting research and practice that will support and guide the lives and livelihoods of the local people. Although our target is the Filipino people, we can apply to our own daily lives and way of living as part of our research. Why don’t you join us and undertake research to encourage the youth of the Philippines? [Project Leader: Takako Kanai]



    What is Academic Research

    Academic Research is an activity to explore the frontier of knowledge. There is a variety of “known areas” as a result of research and experimentation throughout our collective human history. However, there are still vast “unknown areas” in the periphery.

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    Academic research is a knowledge creation activity that pushes the frontier of knowledge. It is often a painstakingly difficult task. However, by pushing into the unknown, we are finally able to pioneer new fields and share knowledge widely with others. Thus, academic research is a creative practice involving the production of meaningful and value-added results that remain unknown or unpracticed.

    One of our criteria for “good research” is that the person conducting the research must be interested in the topic, and must be passionate, and enthusiastic about it. Furthermore, the research must lead to academic significance and social value. Academic significance means that the research adds new knowledge to existing academic research and studies, and social value means that it brings added value to society and others in the present and future. Conversely, personal interest in something that “interests me” alone does not constitute “good research” (this is what leads to the difficulty of Individual Research).


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    The advantage of a grade-mix, multi-person research project

    It is difficult for a single person to conduct difficult and arduous academic research alone. Therefore, at the Iba Lab, combining our respective strengths together, we form a team of several people and conduct the research as a project. In addition, instead of worrying in solitude, we can progress while discussing things with project members. It is very reassuring to have teammates who are working together.

    The Iba Lab projects are uniquely composed of a grade mix of students, ranging from first-year undergraduates to graduate (master or doctoral) students. The more experienced students lead the projects, while the less experienced members learn and grow through being taught. The project is both a research unit and a place for learning.

    Just because you are in a lower grade does not mean that there are no opportunities for you to play an active role. Since there are many areas of contribution to a project that are enhanced by the combination of strengths, there are many ways to use skills and strengths that differ from research experience, such as a love of drawing, a command of a foreign language such as English, or good writing skills.

    Therefore, we strongly encourage new members to join a Project rather than undertake Individual Research. Individual Research may seem easier because one has more freedom and does not have to coordinate time with other members and communicate with them. However, until you get used to what research is and how to undertake it, it is not easy to conduct research, and the majority of people suffer considerably. However, in a project, you can learn the basics of research while gaining research experience in a project for one or two years. Subsequently, you can start your own personal research based on your personal interests or become a graduate student and acquire the knowledge and skills to start and lead a project on your own theme.

    The Iba Lab has a variety of projects with diverse themes. You should first choose the project that most closely matches your interests and grow as you work there. The projects are comfortably sized and very active creative spaces.

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    Creation Process of a Pattern Language

    The Iba Lab conducts research on various approaches, such as research on creating new methods and tools, developing workshops, and investigating creative communities. However, many of our projects involve the creation of a pattern language. Although there are many researchers and practitioners of pattern language globally, the Iba Lab at SFC is the global leader in pattern language creation. Consequently, you can take advantage of the Iba Lab’s cutting-edge nature and experience in this field.

    Iba Lab has been developing and refining the creation process of a pattern language for the previous 15 years. The process is as follows.

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    The first step is Pattern Mining, which involves obtaining information on the elements of a pattern and compiling it. “Mining” means “digging up,” and the “pattern material” is mined for creating a pattern language. Pattern materials are mined through dialogs with practitioners, and are unearthed from their narratives. This dialog is called “mining dialog.” We ask practitioners “what is important to do” (what), “how to do it specifically” (how), and “why is it important” (why) in order to produce good results in their practice.

    Pattern mining typically involves talking to approximately 15–20 practitioners and obtaining hundreds of patterns of material. These materials are a collection of disparate types and sizes. Therefore, while grasping the essential meaning in each of the materials, we lean on those that are similar to each other and group those that are similar. This is called “clustering.” Consequently, we can group the similarities into dozens to hundreds of “ingredients of patterns.”

    Next, we weave together the entire language system. After roughly overviewing the ingredients of the pattern and getting the big picture of what kind of potential patterns there are, we change the perspective and differentiate the essential parts from the whole. This is called “systematization.” At the conclusion of the systematization, the number of patterns should be reduced to approximately 30–40. We call this stage “pattern seeds.”

    From there, we move on to the Pattern Writing stage, where we nurture the “pattern seeds.” The first thing to do is to describe the essence of each “pattern seed” in the form of “In what Context,” “what Problem is likely to occur,” and “what should be done as the Solution to prevent them.” The CPS statement is the core of the pattern. Project members continuously discuss and improve the statements as “confirmation dialogs.”

    Subsequently, branches, and leaves are added to the trunk of the CPS statement. The CPS statement then describes the problem by clarifying “what Forces are at work behind the problem,” “Example of Actions for solving the problem,” and “what are the Consequences of doing so.”

    These descriptions are also refined through repeated dialogs among project members to ensure that they describe the essence of the project, and they are expressed clearly. When the descriptions are being written, they are shown to the practitioners to confirm that the content is correct and that the expressions are close to what they actually feel, thereby confirming the descriptions.

    The final stage of this pattern writing process is run in parallel with the Pattern Symbolizing process. This is the process of creating symbolic expressions that convey the image of the pattern’s content in a way that is both easy to grasp and attractive. Specifically, we give the pattern a name (pattern name), draw an illustration that conveys the image of the pattern’s content, and write a catchphrase-like introduction that makes people want to read the pattern description.

    Pattern Symbolizing is about making trees bloom in an attractive, symbolic way. Each tree will have a different flower. They will have a sense of unity, but each individual flower will uniquely bloom. People will be attracted by the charm of the flowers and will approach each tree sequentially.

    The final phase is to make the pattern text, names, illustrations more harmonious, as well as to fine-tune the overall consistency and harmony of the language and to lodge a narrative texture. Therefore, a single pattern language is completed after several hundred hours of time and effort over 1–2 years.

    What was once a seed of a pattern becomes a tree with a trunk, branches, and leaves, and many of them gather to form a forest. Readers of pattern language will live with the forest and reap the “fruits” of their own practice.

    I am sure now you can understand why we recommend that you enter into a Project rather than suddenly perform Individual Research, since you must master how to proceed the process described above and the specifics of each step.

    Furthermore, we believe that it is best to avoid creating a pattern language by a single person due to the risk of subjective bias. In a project, multiple members check together whether the essence is correct, and discuss how it can be better expressed. Through such repetition, the pattern language approaches a universality that can be accepted by many people.

    The joy of creating a work together with teammates is tremendous, and it is a wonderful experience. I hope that you will experience this deep joy of creation in the Iba Lab project.

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    Advice

  • We welcome entries from current first-year students. By accumulating experience through research and activities together over a long period of time, deeper understanding and strength can be gained, which will enable for more active roles in the lab later on. For this reason, Iba Lab encourages students to start taking courses and participating in activities early in their careers.

  • In principle, the Iba Lab does not accept 4th year students, unless there is a special reason to do so. Please plan carefully to enter the research group at an early stage so that you will not be in a hurry to join a research group at the stage of your graduation project.

  • We very much welcome GIGA students, people with overseas experience, and international students. In addition to creating results in Japanese, Iba Lab writes papers in English and presents them at international conferences, and conducts workshops at overseas universities and conferences. Being able to speak a language other than Japanese will greatly increase chances of participation and contribution. Please lend us your help.

  • In principle, all Iba Lab members are expected to participate in Iba lab B1; however, if you have special circumstances, such as wanting to join a project of Iba Lab B2 while belonging to another research group (Type A), please consult with us in advance by sending an e-mail to ilab-entry@sfc.keio.ac.jp.


    Assignments, Examination & Grade Evaluation
    Grading will be based on student’s effort in the projects and his/her growth through learning.


    How to enter to Iba Lab B1 and B2

    For information on how to enter, please carefully read the “How to enter to Iba Lab B1 and B2” section of the Iba Lab B1 Syllabus (Spring Semester 2023) “Natural & Creative Living Lab: Creative Practice Studies to Support Natural and Creative Living” and submit files accordingly.

    Newcomer Entry Deadline: January 29 (Sun), 23:59

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    Iba Lab B1 Syllabus (2023 Spring - English version) Natural & Creative Living Lab: Studies on Creative Practice for Supporting Natural and Creative Living

    IbaLabLogo.jpgIba Lab B1 Syllabus (2023 Spring - English version)
    Natural & Creative Living Lab: Studies on Creative Practice for Supporting Natural and Creative Living


    Important Information

    Iba Lab B2 Syllabus
    From the Spring semester of 2023, Iba Lab will be offered as two Type-B research group, “Kenkyukai,” that will be linked together. Therefore, please read both this B1 syllabus and the B2 syllabus “Natural & Creative Living Lab: Practicing Research Project” to understand the entire picture.

    Newcomer Entry Deadline: January 29 (Sun), 23:59
    Following the entry, an interview will be held on February 3 (Fri.) in person at the campus.

    Iba Lab Information Session: January 19 (Thurs), 6th Period (e11 classroom)
    Those who are considering entering the Iba Lab are encouraged to attend as much as possible. In addition to an overview of Iba Lab, there will be time to talk with current lab members.

    2022 Fall-Semester Presentation Day: January 28 (Sat), in person on campus t11 classroom)
    The 2022 Fall-Semester Presentation Day will provide a better understanding of what we are doing and the projects we are working on at the Iba Lab, so please attend. This conference will be held in Japanese.

    Spring special research projects: February and March
    During the spring break period in February and March, we will conduct a special research project (Type-B, 2 credits) entitled “Philosophy and Methodology of Pattern Language: A Comprehensive Study.” We recommend that you take this special project, as it is an opportunity to learn about pattern language in a holistic and concrete manner. This special project will be held in Japanese. For more information, please read the syllabus of the Special Research Project (http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/sb/log/eid610.html).

    5-minute video that provides an idea of the atmosphere of the Iba Lab
    “This is what days of the Iba Lab, which studies ‘Natural & Creative Living,’ look like!”
    https://www.youtube.com/watch?v=jQKgVGrUvS8

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    Purpose - To contribute toward a future where people can live more lively, by creating new ideas, concepts, methods, and media through academic research on new approaches

    The purpose of Iba Lab is “To contribute toward a future where people can live more lively, by creating new ideas, concepts, methods, and media through academic research on new approaches.” We conduct academic research using new ideas that are unrestricted by the boundaries of existing academic disciplines or common sense. In addition, we develop new ideas, concepts, methods, and media that will solve current problems and improve the future. We will work with diverse actors to disseminate the results of our research and contribute to the realization of a future in which people can live more lively.


    Vision - The creative society where people can live their life more naturally, creatively, and delightfully

    The vision of Iba Lab is “The creative society where people can live their life more naturally, creatively, and delightfully.”

    Prof. Iba has been advocating that the changes over the past 100 years should be viewed in terms of a “Consumer Society,” an “Information Society,” and a “creative society.” In the consumer society, people considered the purchase and enjoyment of goods and services, such as home appliances, and cars, to be essential to the richness of their lives. With the advent of the information society, the center of gravity of interest has shifted to communication, and good communication and relationships now symbolize the “richness” of life and living. Furthermore, in a creative society (partially underway today), people are creating their own things, ideas, methods, systems, societies, and ways of being and living, and the degree to which they are involved in “creating” for themselves is considered to be the “richness” of their lives and livelihoods.

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    Prof. Iba proposes the era of “creation” to be a future where people live more in harmony with nature and each person lives naturally like a human being, rather than within an artificial future encumbered by technology. At the Iba Lab, we aim for such a future of “Natural and Creative Living,” and are engaged in practical academic research to support the realization of a life that is a combination of “Natural,” “Creative,” and “Delightful.”

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    Mission - To Inquire about principles hidden in practices with great quality and support practices of people based on the discoveries

    The Mission of Iba Lab is “To Inquire about principles hidden in practices with great quality and support practices of people based on the discoveries.”

    How can we achieve “living naturally and creatively”? We must consider each area of practice in our daily lives and social activities. Therefore, the Iba Lab is engaged in academic research to clarify the reality of “Natural and Creative Living” in each practice, such as learning, work, child-rearing, caregiving, and life planning, and expressing it in the form of “pattern language” for supporting people who want to practice it.

    Pattern Language verbalizes the “Kotsu,” which stands for “knack” and “rules of thumb” in Japanese, in practice. The word “Kotsu” is etymologically written as “bone” in Chinese characters. Therefore, “Kotsu” as bone is like an axis that supports the practice from the inside. Pattern Language verbalizes the following types of “Kotsu.”

    1. Fundamental “Kata” (pattern) of the practice

    2. The ways of those who have been exceptionally successful (“Positive Deviance”)

    3. “Good Practices” which someone obtained by invention or through trial and error

    If we share these “Kotsu” (patterns), we can help those who are currently having trouble in practice and those who would like to improve their practice. However, we do not mean directly helping each person in the field. We deliver a pattern language that verbalizes the “Kotsu” (patterns) and helps people learn to do them on their own.

    By sharing a medium that works from within the person, it becomes possible to transcend the “supporting person/supported person” relationship. It is extremely difficult to create a pattern language that actually functions in this way; however, that is why we at the Iba Lab strive to create it thoroughly.

    By creating pattern languages in various fields of practice by ourselves and also supporting those who create their pattern language, we attempt to realize the future in which pattern language supports people’s practice in every possible field. Pattern language developed in this way will become a “soft social infrastructure” in the creative society. People will have more freedom to start creative practices based on the support of such “soft social infrastructure.” This is what we will do in our practical academic research at the Iba Lab.

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    The following are some of the papers presenting the pattern languages created by us, Iba Lab. Please read them.


    At Iba Lab, we are predominantly engaged in creating pattern language as a way to support creative practice; however, we also conduct research on creating workshops, new methods and tools, and creative communities.


    Values - Realizing Great rather than Good / Acquiring the Ability to Create / Nurturing Our Community by Ourselves

    The values of Iba Lab is as follows:

    • Realizing Great rather than Good
      1. Recognizing the feelings of others and giving a helping hand to them
      2. Pursuing the essence of things and expressing them in detail perfectly
      3. Exploring new ways and expanding the possibilities of the world

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    • Acquiring the Ability to Create
      4. Reflecting on feelings and determining their source
      5. Reading many books and nurturing the inner foundation for thinking and creation
      6. Maintaining improvement by using pattern languages in everyday life


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    • Nurturing Our Community by Ourselves
      7. Appreciating opportunities and the environment, and making the most of them
      8. Gaining knowledge from the professor and senior members while also giving them diligent support
      9. Challenging with other members and sharing the joy.


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    Practical research in the new academic field of “Studies on Creative Practice”

    The research we are working on at the Iba Lab does not fit into any existing academic discipline. Therefore, I have named it “Studies on Creative Practice.” It is a new discipline that studies the practice of creation and creative practice.
    The mainstay method of Studies on Creative Practice is pattern language. We study great practices in each of these areas and verbalize it. Subsequently, we use it to help people. Therefore, Studies on Creative Practice are practical studies that solve current problems and issues. However, creating pattern language is also a future-oriented activity, as it builds the “soft social infrastructure” of the future society.

    At Iba Lab, we encourage students to enter a master course to “master” the philosophy and methods of Studies on Creative Practice, or a doctoral (Ph. D.) course to become “doctors who heal society” in their respective fields of interest and develop their advanced skills and minds.


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    Overall structure of Iba Lab in 2023

    From the Spring semester of 2023, Iba Lab will be offered as two Type-B “Kenkyukai” (research group) that will be linked together.

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    Iba Lab B1 is the Foundation for all Iba Lab members. It will be held on Thursdays 5th period (extended if necessary). This is a meeting where seminars on methods and thoughts and discussions for organizing the lab are held. In addition, each student will present, and discuss their ongoing research.

    Members will either participate in one of the Projects or conduct Individual Research during the semester. It is possible to undertake both Project and Individual Research.

    In the Project, experienced members serve as leaders, teaching research methods, and knowledge, while several people work on research on the theme set forth in the project. All students who participate in the project will meet on Wednesday afternoons (3rd–6th period) to ensure that they have enough time to work on the project (Wednesday project activities will be conducted as Iba Lab B2, so please be sure to enter Iba Lab B2 as well; On the official timetable, Iba Lab B2 is displayed as Wednesday 6th period).

    In contrast, in Individual Research, each student is responsible for their own research theme and methods based on their own interest. Although this provides a high degree of freedom, it also means that they must be able to independently study, think, and establish the research as their own. Therefore, if you do not have experience with projects at Iba Lab or research experience at other research groups, it will be difficult for you to make it due to the difficult nature of academic research.

    New members are strongly encouraged to join a project first. This is because, rather than suddenly undertaking Individual Research alone, joining a project will teach you how to conduct research and how to undertake it specifically, and you can learn from each other, stimulate each other, and share your joys in the activities. Please read the lineup of projects in the Iba Lab B2 syllabus and try to find a project that matches your interests.

    Similar to Individual Research, the fourth-year students’ graduation project is also presented and discussed during the Iba Lab B1 meeting.


    Advice

  • We welcome entries from current first-year students. By accumulating experience through research and activities together over a long period of time, deeper understanding and strength can be gained, which will enable for more active roles in the lab later on. For this reason, Iba Lab encourages students to start taking courses and participating in activities early in their careers.

  • In principle, the Iba Lab does not accept 4th year students, unless there is a special reason to do so. Please plan carefully to enter the research group at an early stage so that you will not be in a hurry to join a research group at the stage of your graduation project.

  • We very much welcome GIGA students, people with overseas experience, and international students. In addition to creating results in Japanese, Iba Lab writes papers in English and presents them at international conferences, and conducts workshops at overseas universities and conferences. Being able to speak a language other than Japanese will greatly increase chances of participation and contribution. Please lend us your help.

  • In principle, all Iba Lab members are expected to participate in Iba lab B1; however, if you have special circumstances, such as wanting to join a project of Iba Lab B2 while belonging to another research group (Type A), please consult with us in advance by sending an e-mail to ilab-entry@sfc.keio.ac.jp.


    Class Schedule

    #1 Introduction
    Members will introduce themselves and dialog with members on our Purpose、Vision、Mission、Values.

    #2 Method Seminar -1 (on Academic Research)
    Members will discuss the way of academic research based on the assigned books.

    #3 Presentations of Research Proposal - 1
    Members will present their research proposals and discuss for improvement.

    #4 Presentations of Research Proposal - 2
    Members will present their research proposals and discuss for improvement.

    #5 Perspective Seminar on Natural & Creative Living - 1
    Members will discuss based on the assigned book about natural and creative living.

    #6 Mid-Term Presentations of Research - 1
    Members will present their research progresses and discuss for improvement.

    #7 Mid-Term Presentations of Research - 2
    Members will present their research progresses and discuss for improvement.

    #8 Method Seminar - 2 (on Introduction to Academic Writing)
    Members will discuss the way of academic writing based on the assigned books.

    #9 Method Seminar - 3 (with Academic Writing Patterns)
    Members will share experience with using Academic Writing Patterns for further improvement of their papers.

    #10 Perspective Seminar on Natural & Creative Living - 2
    Members will discuss based on the assigned book about natural and creative living.

    #11 Method Seminar - 4 (on completion in Academic Writing)
    Members will discuss the way of completion in academic writing based on the assigned books.

    #12 Consultation Meeting on Research and Paper
    Consultation meeting on research and paper will be conducted.

    #13 Writers' Workshop - 1
    Members will discuss their papers for further improvement in the style of writers' workshop.

    #14 Writers' Workshop - 2
    Members will discuss their papers for further improvement in the style of writers' workshop.

    #15 Final Presentations
    Members will present their research results and answer questions on them.


    Assignments, Examination & Grade Evaluation

    Grading will be based on student’s effort in the research and activities, presentations, final paper, contribution to discussions, and his/her growth through learning.


    How to enter to Iba Lab B1 and B2

    [Newcomer Entry]

    New entrants to Iba Lab should read this syllabus carefully and submit [1] Entry Sheet, and [2] Reading Assignment in separate PDF files by the due date (be sure to include your name in the file name). New members are strongly encouraged to join a Project; however, if you are already in another research group/have previous research experience, etc., and are capable of and wish to conduct Individual Research, please also submit a [3] Research Proposal.

    New Entry Deadline: January 29th, 23:59
    Submit new entry proposals to: https://forms.gle/USWcXaC824tH2jPy5
    Interviews are scheduled to be conducted in person on campus on February 3rd (Fri).


    [1] Entry Sheet

    Iba Lab Entry (2023 Spring)

    1. Name, Faculty, Grade, Student ID, e-mail address, and Profile photo
    2. Self-introduction (interests, club activities, any other selling points)
    3. Reason for your entry into Iba Lab, and what strongly attracted, sympathized, or resonated with you when reading this syllabus, and why or what you thought of it.
    4. Register: “Only B1” or “B1 and B2”
    5. Project(s) in which you would like to participate (if numerous, please specify priority). If you want to conduct Individual Research from your first semester, please write the title of the research.
    6. Skills (graphic design, film editing, programming, music, etc. Also, your level of listening, speaking, reading, and writing in Japanese)
    7. Courses by Prof. Iba which you have previously taken (if any)
    8. Favorite classes you have taken so far (Multiple answers are welcome) and Labs (Kenkyukai) you have been a part of (if any)
    9. Other Labs (Kenkyukai) you are planning on joining next semester (if any)
    10. Supplemental (if you have any other consultation)


    [2] Reading Assignment
    If you can easily read Japanese books, check the Japanese version of this syllabus in which there is information about the books in Japanese for this reading assignment. If not, please read the following papers that are related to research at the Iba Lab, and write about what you found interesting and why (about 1–3 pages in A4 size).



    [3] Research proposal (only if you want to conduct Individual Research from your first semester)
    Please write a research proposal (approximately 2–5 pages in A4) on how you will conduct research on any topic as an Individual Research. Please include the following items:

  • Title of the research
    A subject, often with subtitle, that simply, and symbolically describes the research
  • Abstract
    Summarizes the essence of the research in a few lines
  • Research Background
    Including the importance of the research, history of the research, and personal context to the research
  • Research Method
    How you will conduct the research
  • Schedule for Execution
    Steps of research and what you plan to do and in what month
  • Expected Results
    What you expect as the results and their academic significance and social value
  • References
    A list of books and articles that you think are related to the research


  • Since interviews for entering to Iba. Lab will be conducted by both the professor and the current members together, the members will also read your submissions at thetime of entry. We would like to inform you of this in advance.


    References

    The followings are important books for Iba Lab researches. Note that there are more Japanese books in the Japanese-version syllabus.

    • Christopher Alexander, The Timeless Way of Building, Oxford University Press, 1979
    • Christopher Alexander, Sara Ishikawa, and Murray Silverstein, A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press, 1977
    • Christopher Alexander, The Nature of Order, BOOK ONE: The Phenomenon of Life, The Center for Environmental Structure, 2002
    • Christopher Alexander with Howard Davis, Julio Martinez, Don Corner, The Production of Houses, Oxford University Press, 1985
    • Christopher Alexander, Murray Silverstein, Shlomo Angel, Sara Ishikawa, Denny Abrams, The Oregon Experiment, Oxford University Press, 1975
    • Mary Lynn Manns, Linda Rising, Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas, Addison-Wesley, 2004


    • Vygotsky, L.S. (2004) “Imagination and Creativity in Childhood,” Journal of Russian and East European Psychology, vol.42, no.1, January–February 2004, pp.7–97
    • Haruki Murakami, Novelist as a Vocation, Knopf,2022
    • Stephen King, On Writing: A Memoir of the Craft, Scribner, 2000
    • Hayao Miyazaki, Starting Point: 1979-1996, VIZ Media, 2006


    • Walter J. Ong, Orality and Literacy, 2nd Edition, Routledge, 2002
    • Mason Currey, Daily Rituals: How Great Minds Make Time, Find Inspiration, and Get to Work, Picador, 2020
    • Simon Baron-Cohen, The Pattern Seekers: How Autism Drives Human Invention, Basic Books, 2023
    • Fumio Sasaki, Hello, Habits: A Minimalist's Guide to a Better Life, W W Norton & Co Inc, 2021
    • Keith Sawyer, Group Genius: The Creative Power of Collaboration, 2nd edition, Basic Books, 2017
    • Carolyn and Jack Fleming, Thinking Places: Where Great Ideas Were Born, Trafford, 2008


    • John Dewey, Experience And Education, Free Press, Reprint, 1997
    • Edward S. Reed, The Necessity of Experience, Yale University Press, 1996
    • Daniel H. Pink, A Whole New Mind: Why Right-Brainers Will Rule the Future, Riverhead Books, Reprint, Updated, 2006
    • Roberto Verganti, Overcrowded: Designing Meaningful Products in a World Awash with Ideas, The MIT Press, 2017


    • Niklas Luhmann, Social Systems, Stanford University Press, 1996
    • Niklas Luhmann, Ecological Communication, University Of Chicago Press, 1989
    • H. R. Maturana, F. J. Varela, Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living, Springer, 1980
    • John Dewey, Democracy and Education, SMK Books, 2018


    • Edmund Husserl, Experience and Judgement: Investigations in a Genealogy of Logic, revised and edited by Ludwig Landgrebe, Northwestern University Press, 1973
    • Richard Shusterman, Practicing Philosophy: Pragmatism and the Philosophical Life, Routledge, 1997
    • John Dewey, The Middle Works of John Dewey 1899 - 1924: Human Nature and Conduct 1922 (14) (Collected Works of John Dewey), Southern Illinois University Press, 2008
    • Thomas S. Kuhn, The Structure of Scientific Revolutions, 50th Anniversary Edition, University of Chicago Press, 4th edition, 2012
    • Immanuel Wallerstein ed, Open the Social Sciences: Report of the Gulbenkian Commission on the Restructuring of the Social Sciences, Stanford University Press, 1996
    • Toshihiko Izutsu, The Structure of Oriental Philosophy: Collected Papers of the Eranos Conference, vol. I & II, Keio University Press, 2008


    • Barbara Minto, The Pyramid Principle: Logic in Writing and Thinking, third edition, Pearson Education Limited, 2021


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    Link to :B2 Syllabus "Natural & Creative Living Lab: Practicing Research Project"
  • 井庭研だより | - | -

    井庭研B2シラバス(2023春)「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」

    井庭研B2シラバス(2023年度春学期)
    「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」



    ■ 重要な情報

  • 井庭研B2は、井庭研B1に追加で履修する仕組みになっています。そのため、必ず、井庭研B1シラバス(2023年度春学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」もよく読んで、エントリーするようにしてください。

  • エントリーの方法は、B1シラバスに記載があるので、それに従ってください。
    • 新規エントリー〆切:4月初旬まで延長していましたが、終了しました。


    (1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
    (2)「困難な状況のなかでもなんとか動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
    (3)「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージ作成
    (4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
    (5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
    (6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究

    (7) 組織のよさ・らしさの語り合いワークショップの開発と実践


    ■ Natural & Creative Living Lab(井庭研)とそのなかでのB2プロジェクトの位置付け

    井庭研では、新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを開発し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献することに取り組んでいます。目指しているのは、ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある「創造社会」であり、そのために、素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援の研究を行なっています。

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    井庭研では、土台となるB1(Foundation)に加えて、B2プロジェクトとして水曜日の午後(3〜6限)に集まって、研究プロジェクト実践を行います(時間割上は水曜6限となっていますが、B2プロジェクトに参加する人は、3限から夜まで授業や他の予定を入れないようにしてください)。みんなで、まとまった時間を取って、どっぷりとプロジェクト活動に浸ります。

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    ■ 2023年度のB2プロジェクト一覧

    2023年度に新規メンバー(および継続メンバー)の募集があるプロジェクトは、以下の通りです。各プロジェクトの概要については、本シラバスの中盤に紹介があるので、そちらも参照してください。

    (1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
    (2)「困難な状況のなかでもなんとか動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
    (3)「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージ作成
    (4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
    (5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
    (6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
    (7) 組織のよさ・らしさの語り合いワークショップの開発と実践


    なお、昨年度からの継続プロジェクトで、新規メンバーを募集しないプロジェクトには、以下のものもあります(すでに内容的に大きく進んでいて、いまからのキャッチアップが難しいであろうと判断し、現在のメンバーのみで継続します)。

    (8) 創造を巻き起こす「ジェネレーター」のパターン・ランゲージ作成(ライティング・シンボライジング・仕上げフェーズ)
    (9)「楽天主義実践パターン」の社内導入と効果検証


    ■ そもそも「研究」とは

    「研究」とは、「知のフロンティア」を開拓する営みのことです。人類全体で見たとき、これまでの歴史のなかで、誰かが調べたり試したりした結果、「既知の領域」が広く広がっています。しかし、それでもまだ人類にとって、その周辺に「未知の領域」が広がっています。

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    この状況で、学術的な「研究」は、その「知のフロンティア」を少しでも掘り進み、押し広げていく知識創造活動を行います。それは、多くの場合、苦労の多い作業となります。道なき道を、自ら道をつくりながら進んでいくことになるからです。しかし、そうすることで、ようやく人類で初めてその領域を開拓し、他の人たちに広く共有することができるようになります。このように、研究はとても創造的な活動です。まだ誰も知らない・実践したことのない、意義と付加価値のある成果を生み出すという創造実践なのです。

    僕らが考える「よい研究」のひとつの基準は、その研究を行う人が、そのテーマに関心を持ち、思いと情熱を込めて取り組むことに加え、それが学術的意義と社会的価値につながるものであるということです。学術的意義があるというのは、これまでの学術研究・学問に新たな知見を積み上げるということであり、社会的価値とは、現在や未来の社会・他者に何らかの付加価値をもたらすものであるということです。これらの、「個人的関心」と「学術的意義」と「社会的価値」が重なるということが、よい研究のひとつの条件だと思います。このことを逆に言うと、「自分が興味がある」という個人的関心だけでは、「よい研究」にはならないということです(このことが個人研究の難しさにつながっています)。

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    ■ 学年ミックスの複数人で組む研究プロジェクトの素晴らしさ

    今見てきたような苦労の多い難しい「研究」を、一人で行うのは困難です。そこで井庭研では、複数人でチームを組み、プロジェクトとして行う、ということを中心にしています。そうすれば、それぞれの得意を持ち寄り、一人では越えることができない高さを、仲間とともに超えることができるようになるからです。これは、プロジェクト制の最大のメリットです。孤独に悩むことなく、仲間とともに話し合いながら、前へ前へと進んでいくことができます。ともに取り組んでいる仲間がいることは、とても心強いものです。

    また、井庭研のプロジェクトは、学部1年生から大学院生までの「学年ミックス」で構成されることも特徴的です。経験が多い上級生はプロジェクトを引っ張り、経験が浅いメンバーは、そこで教わり学びながら成長していきます。プロジェクトは、単に「研究のユニット」であるばかりでなく、「学びの場」でもあるのです。

    もちろん、低学年だからといって活躍の機会がないわけではありません。プロジェクトにはいろいろな貢献の領域があり、得意の持ち寄りによって高まるものなので、絵を描くのが好きであるとか、外国語が得意であるとか、文章を書くのがうまいなど、研究経験とは異なるスキルや得意が活きることがたくさんあります。

    もしかしたら、授業のグループワークなどの経験から、誰かと組むことにネガティブな印象をもっている人もいるかもしれません。負担が偏ったり、途中でいなくなったり、いなくなったと思ったら最後の発表だけ現れてずっといたようなふりをする人がいたり、と、「それなら、自分一人でやったほうがよかった」と思った経験は、誰でも多かれ少なかれあるでしょう。しかし、井庭研ではそのようなことは起きません。みんな、研究プロジェクトに本気で取り組んでいるし、とても楽しんでいるからです。井庭研ほど、最高のグループワークが経験できる場はなかなかない、と言っても過言ではありません。

    そのようなわけで、研究をプロジェクトで行うのはとてもよいので、新規メンバーには、「個人研究」ではなく、「プロジェクト」に入ることを強く勧めています。個人研究は、自分一人でやるので、たしかに自由度が高く、他の人との時間調整ややりとりなどの手間も省けてやりやすそうに見えるかもしれません。しかし、研究とはどういうもので、どう研究するのかなどに慣れるまでは、なかなか研究にならず、相当苦しむ人がほとんどというのが実際のところです。その点、プロジェクトであれば、1、2年間プロジェクトで研究経験を積むなかで、研究の基本を学ぶことができます。それから、自分の個人的な関心にもとづく個人研究を始めたり、大学院生になって自分のテーマのプロジェクトを立ち上げてリーダーになったりするだけの知識とスキルを身につけることができるのです。

    井庭研には、多様なテーマのプロジェクトがあります。まずは、そのなかから最も自分の興味に近いプロジェクトを選んで、その場で活動しながら、成長していくとよいでしょう。プロジェクトは、居心地のよいサイズの、とても活発な創造の場なのです。

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    ■ パターン・ランゲージの作成プロセス

    井庭研では、ワークショップや新しい方法・道具などをつくる研究、創造的なコミュニティの研究など、いろいろなアプローチの研究を行っていますが、多くのプロジェクトでは、パターン・ランゲージの作成に取り組んでいます。国内外にパターン・ランゲージの研究者・実務家はたくさんいるのですが、世界で最もパターン・ランゲージをつくり、集中して研究しているのはSFCの井庭研であり、その先端性と経験を活かして研究することができるためです。

    井庭研ではこれまで15年間パターン・ランゲージの作成プロセスを開発・洗練させてきました。その作成プロセスは、以下の通りです。

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    まず最初に行うのは、パターンの要素となる情報を得て、それをとりまとめる「パターン・マイニング」です。「マイニング」(mining)というのは「掘り起こす」ということで、ここで掘り起こすのはパターンを作成するための「パターンの素材」です。パターンの素材は、実践者との対話を通じて掘り下げ、語りから掘り起こしていきます。この掘り起こしのための対話を「マイニング・ダイアローグ」と言います。実践者に、その実践においてよい結果を生むために「何をすることが大切か」(what)や、それは「具体的にはどうやるとよいのか」(how)、「それはなぜ大切なのか」(why)について聞いていきます。

    パターン・マイニングでは、たいてい15〜20人くらいの実践者に話を聞き、数百のパターンの素材を得ることになります。これらの素材は、種類もサイズもばらばらな寄せ集めになっています。そこで、一つひとつの素材の中にある本質的な意味をつかみながら、似ているものを寄り分けて、似たもの同士のグループ分けをしていきます。これを、「クラスタリング」と言います。クラスタリングの結果、だいたい数十から百程度の「パターンの成分」にまとまります。

    次に、ランゲージ全体の体系を編み上げます。クラスタリングで得られた「パターンの成分」を眺めて、どのようなものがあるのかを概観したのちに、視点を変え、全体から分化させるように全体像を捉えていきます。これを「体系化」と言います。体系化が終わるときに、だいたい30から40程度の数にまとまるようにします。この段階のものを「パターンの種(たね)」と呼んでいます。

    そこから、「パターン・ライティング」の段階に入り、「パターンの種」を育てていくことになります。最初にやることとしては、それぞれの「パターンの種」について、「どういう状況(Context)で、どういう問題(Problem)が生じやすく、そうならないためにどうするとよいのか(解決: Solution)」という形式でその本質を捉えて記述することです。この文章を、Context、Problem、Solutionの頭文字を取って、「CPS」文と呼んでいます。CPS文は、そのパターンの幹にあたります。CPS文は、プロジェクトのメンバーで何度も確かめ合いの対話を行い、みんなで確認し、納得がいく記述になるまで、必要な修正を行っていきます。

    その後、CPS文の幹に枝葉をつけていきます。「その問題が生じるのは、背後にどのような諸力(フォース:Forces)が働いているからか」や、「その解決は、具体的には例えばどうやるとよいのか(アクション:Actions)」、また、「それをするとどういう結果(Consequences)になるのか」を明らかにし、記述していくのです。

    これらの記述も、何度も何度もプロジェクトメンバーで確かめ合いの対話を行い、本質が記述できているか、わかりやすい誤解のない表現になっているかなどを検討して、洗練させていきます。そして、書き上がりつつある段階で、実践者にそれを見せて「内容が合っているか」や、「表現が実際の感覚に近いかどうか」などを確かめ、記述を確かなものにしていきます。

    このパターン・ライティングの後半から並行して走らせるのが、「パターン・シンボライジング」です。パターンの内容のイメージをつかみやすく、かつ魅力的に伝わる象徴的に表現をしていくのです。具体的には、パターンの名前(パターン名)をつけるのと、そのパターンの内容のイメージを伝えるイラストを描いたり、パターンの記述を読みたくなるキャッチコピーのような導入文を書いたりします。

    パターン・シンボライジングでは、魅力的に象徴的に表現するということで、木々に花を咲かせるということにあたると言えます。一つひとつの異なる木に異なる花を咲かせていくのです。それらには統一感はありますが、個々には個性があるような花を咲かせていきます。人々は、その花の魅力に惹かれて、一つひとつの木に近づいてくれることになるわけです。

    それから最終段階として、パターンの文章と名前とイラストなどをより調和がとれたものにするとともに、ランゲージ全体の整合性や調和の微調整、物語性の質感を宿らせるなどの仕上げをしていきます。こうして、1〜2年で数百時間の時間と労力をかけて、一つのパターン・ランゲージが完成します。

    パターンの種だったものが、幹と枝葉がついた一本の樹木となり、それらがたくさん集まり、森になるのです。パターン・ランゲージの読者は、その森とともに生き、それぞれの実践の成果(fruit = 果実、収穫)を得ることになるわけです。

    以上のようなプロセスの進行やそれぞれのステップでの具体的なやり方をマスターする必要があるので、いきなり個人研究ではなく、プロジェクトに入ることをおすすめしているという理由がよくわかるのではないかと思います。

    しかも、井庭研では、パターン・ランゲージの作成は、一人でつくることを避けた方がよいと考えています。一人よがりなものになってしまうリスクがあるからです。プロジェクトで、本質はこれでよいだろうかとみんなで確かめ合い、どうしたらよりよい表現になるだろうかと話し合う ------- そういうことを繰り返していくなかで、パターン・ランゲージは、多くの人に受け入れられる普遍性を持つものに近づいていきます。

    そして、こうして仲間とともに作品をつくり上げることの喜びは、とてつもなく大きく、素晴らしい体験になります。井庭研のプロジェクトのこの創造の深い喜び・面白さを、ぜひみんなにも味わってほしいと思っています。


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    ■ 新規メンバー募集があるプロジェクトの紹介

    以下の通り、井庭研のプロジェクトには、多様なテーマがあります(各プロジェクトは、井庭や大学院生がリーダーをします)。自分の興味・関心に近いプロジェクトを探してみてください。

    (1) 「生態系を育みながら自然と共生していく」ための実践方法のパターン・ランゲージ作成
    近年、産業や日々の暮らしなどの人間活動によって、自然環境は汚染し、数々の種は絶命し、地球の生態系はどんどん崩れてきています。そんななか、「自然農法」や「パーマカルチャー」「協生農法」など、生態系を育んだり拡張したりする方法が研究され、実践されています。そこで、本プロジェクトでは、そのような研究や実践から学び、生態系を育みながら自然と共生していくための実践方法のパターン・ランゲージの作成に取り組みます。同時に、生態学に関する文献も読み、自然の構成要素それぞれの機能や、それらの関係性によってつくり出される自然システムへの理解も深めていきます。自然と人間が調和し、ともに豊かになる未来をつくっていきたい人、是非一緒に研究していきましょう!新規メンバーを2〜3人程度募集します。[リーダー:林 聖夏]

    (2) 「困難な状況から少しずつ動き出して変化を起こしていくこと」のパターン・ランゲージ作成
    現代社会では、いろいろなところで、社会的に困難な状況で生きていたり、対人関係のなかで息苦しさを感じていたりする人たちがいます。その状況は個人の力では到底変えられない「動かし難い」状況のように感じられ、ほとんどの人が「嫌だけれども、仕方がない」「困っているが、変えられない」と思うのも無理はありません。しかし、そのような状況でも、ごく一部に、なんとか状況を変えていこう、打破しようと動き出す人もいます。そのことが起点となり、変化が始まることがあるです。そういう人たちは、いったい、何をどのように考え、どうやってその困難ななかで動き始めることができたのでしょうか。本研究では、自分の置かれた状況を変えたり、社会的な問題を解決したりした人たちの「最初の段階」にフォーカスします。そこでは、おそらく、単に物事の進め方・働きかけ方をうまく工夫するというだけでなく、自分の認識やあり方を変えるということが含まれていると思われます。「世界を変える」というのではなく、「自分が変わり、世界も変わる」ということが重要になりそうです。似たような問題意識を感じたことがある方、ぜひ一緒に研究できたら嬉しいです!新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:太田 深月]

    (3) 「勝利の追求と人間的成長の両立をするダブル・ゴール・コーチング」のパターン・ランゲージの作成研究
    スポーツの教育現場では、2013年に部活動における体罰の事案が明るみになったことを境に、新たなスポーツ教育のあり方への変革が求められるようになりました。勝利のみを絶対的な目的とする「勝利至上主義」に基づいて行われるコーチングは、行き過ぎた指導になりやすく、選手の主体性を低下させるとも言われています。一方、完全な放任主義では、選手の競技力の向上は見込めません。そこで、本プロジェクトでは、勝利を追求しながらも、自立し、自走できる選手を育てていくというダブル・ゴールを目指したスポーツ教育のあり方を、パターン・ランゲージの作成を通して明らかにすることを目指します。過去に競技スポーツを経験したことのある方だけでなく、教育の分野に関心のある方も楽しめる内容になっているかと思います。新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:日置 和暉]

    (4) 物事の本質をつかむ「本質観取」実践のパターン・ランゲージ作成
    物事の「本質をつかむ」ということについて、哲学の現象学の方法である「本質観取」(seeing of essence)を研究することで、その実践のコツを明らかにしていきます。パターン・ランゲージの作成では、竹田青嗣さん、西研さん、苫野一徳さんに哲学実践や哲学対話ワークショップの経験を踏まえて語ってもらったものと、井庭研でのパターン・ランゲージ作成における本質観取の実践経験を素材とします。なお、このプロジェクトは、井庭が直接リーダーとなり、プロジェクトを率います(来年度、最も難解で最も厳しいプロジェクトになると思います)。地道な創造の道をグングン進んでいくので、しっかりついてきて学び、力をつけながら活躍してください。「本質をつかむ」ことや、本格的な「パターン・ランゲージの作成」に興味がある人を歓迎します。継続メンバー数人とともに、新規メンバーを2〜4人募集します。[リーダー:井庭 崇]

    (5) 現地のロールモデルから学ぶ「フィリピンの若者が自立的に暮らしていく」ためのパターン・ランゲージ作成とそれを用いたワークショップの実践研究
    フィリピンには、今もなお十分に教育を受けられていない子どもたちや、その影響で安定した収入を得られる仕事に就けていない若者が多くいます。そのような社会状況のなかでも、家庭環境や経済的な困難を背景に持ちながらも、経済的な自立と仕事の継続を実現している人もいます。そのような人たちがどのようにそういうことを成し遂げたのか、その実践のコツを明らかにし、パターン・ランゲージを作成します。また、そのパターン・ランゲージを活用したワークショップを実施し、フィリピンの若者のエンパワメントも試みます。研究のフェーズによっては、現地に赴きインタビューやワークショップを実施したり、フィリピンの方とオンラインでミーティングを行ったりすることがあり、その際は英語でやりとりします。現地の人たちの暮らしや生き方を支え、道しるべになるような研究・実践をおこなっていくことに興味がある人を歓迎します。新規メンバーを2~3人程度募集します。[リーダー:金井 貴佳子]

    (6) パターン・ランゲージを活用した「気仙沼市におけるまちのイメージ更新」の実践研究
    本プロジェクトでは、パターン・ランゲージを活用して、宮城県気仙沼市の市役所・子育て支援団体のコンソーシアムと協働して、まち全体のイメージを3.11の被災地から一新することを目指します。2022年度、広告業界での経験が豊かな共同研究者とともに、新しいサービス・概念で市場を生み出すことのパターン・ランゲージを作成してきました。2023年度は、気仙沼に実際に足を運び、このパターン・ランゲージを活用して、子育てをする母親を中心とした地域住民とともにワークショップ等を行い、「被災地、気仙沼。から日本一子育てを楽しめるまち、気仙沼。」へとブランディングしていきます。フィールドを持つことは思った通りいかないこととも向き合うことになりますが、そんな時こそ、現場のたゆまぬ努力を真摯に受け止め、子どもたちの可愛い姿をたくさん感じ取り、まち全体で良い成果を生み出せることにワクワクしながらともに取り組んでいきましょう。新規メンバーを2〜3人募集します。[リーダー:田中 惇敏]

    (7) 「組織のよさ・らしさの語り合いワークショップ」の開発と実践
    研究会やサークル、企業などの「組織」に所属するメンバーたちは、そこでどのような歴史を歩み、彼らにとってどのような場所となっているのでしょうか?本プロジェクトでは、自分にとってのその組織のよさ・らしさを、他のメンバーとの対話を通して深め、愛でるという「語り愛ワークショップ」の設計・実践を行っています。また、そのワークショップの設計意図やファシリテーションのコツをパターン・ランゲージの形式でまとめていきます。2022年度秋学期から始まったプロジェクトですが、新規メンバーを1〜2人程度募集します。大好きな組織がある人、コミュニティの魅力を考えることが好きな人、ワークショップ設計や場づくりに興味がある人を歓迎します。[リーダー:柴田 爽水]


    ■ 現役メンバーから見た井庭研のプロジェクトについて

    井庭研のプロジェクトがどういうものか、現役メンバーたちに書いてもらいました。17人の計3,600字をテキスト解析し、ワードクラウドで表現してみたところ、以下のようになりました(”井庭研”と”プロジェクト”のワードは抜いて可視化)。井庭研のプロジェクトの感じがよく表れていると思います。

    B2_8_ProjectWordCloud.jpg
    ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析


    各人が書いてくれたものも、いくつかピックアップして載せておきます。

  • 「プロジェクト活動では、自分たちで実際に手を動かして、井庭研が大切にしている「本質を捉える」ということをたくさん経験することができます。プロジェクトに入ったばかりの時は経験のある先輩方と同じように取り組むことはとても大変で、つらいと感じることもありますが、それ以上に自分を成長させてくれる貴重な時間です。井庭研でたくさんの時間を共有しながら一緒につくりあげていくプロジェクトは、他では経験することのできないものだと思います。」(1年)

  • 「私は今年度の春学期に井庭研に入り、一からパターン・ランゲージをつくっています。プロジェクトメンバーの妥協しない姿勢や本質を掴む考え方、伝えたいことを発見的に・魅力的に書く力を見て、本当に学ぶことばかりの日々です。長い時間をかけて徹底的にこだわって「つくる」経験をしていることで、春と比べると自分がひと回りもふた回りも成長したのを感じています。自分たちのつくった言葉や道具が、誰かの支えになり、誰かの創造実践を応援しているなんて、幸せで尊いなと思います。」(2年)

  • 「井庭研のプロジェクト活動では、目指す成果に向かって、最後の一人の違和感が無くなるまで、どこまでもじっくり考えて全員の納得のいくものを作ります。その一方で、期日までに成果物をつくり上げたり論文を書き上げるために、研究会の授業時間の他にも集まれる時間を作ってどんどん進めていきます。時にはタフに感じることもありますが、自分の力だけでは絶対に到達できなかった成果が出せると「あぁ、やって良かった」と思うことができます。」(3年)

  • 「井庭研のプロジェクト活動では、プロジェクトメンバー1人1人が、多くの時間とエネルギーを注ぎ、決して誰かが欠けるとつくり得ないような本気の創造を経験できます。お互い求め合い、手を取り合い、混沌とした状態を乗り越えて成果が見えた時は言葉には表せない嬉しい気持ちになります。このような本気で学びをともにする仲間はかけがえのないものです。ぜひ、このような経験をしたい人は私たちと一緒に研究をしましょう!」(4年)

  • 「プロジェクト活動と聞くと、自分の興味にぴったり合っていないと...と思うこともあるかもしれませんが、興味がなんとなく近そうなところでどっぷりやってみると、自分の興味分野が深まったり、自分が知らなかった世界に触れて自分の視点を広げることができます。私も今4年生ですが、研究自体についても、それ以外に誰かと協働したりコミュニケーションを取ったりすることも、誰かと一緒に研究するからこそ学べることがたくさんあると実感しています!」(4年)

  • 「井庭研のプロジェクト活動で必要となってくるのが、本気のコラボレーションです。授業のちょっとしたグループワークとは次元が違います。もちろん人と一緒に何かをするということは大変なこともありますが、一緒にたくさんの時間をともに過ごし、苦楽を共にするなかで、一人ではたどりつけない世界を知り、素晴らしいものをつくりあげていく経験は、すごく貴重で、ワクワクするものです。ぜひ、どっぷりつかって、最高のコラボレーションを存分に味わってみてください。」(修士1年)


  • B2_9_1_Conference.jpg B2_9_2_Conference.jpg


    ■ 履修上の注意・留意事項

  • 1年生・2年生のうちからの参加を強く推奨します。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を強く推奨しています。

  • 3年生後半や4年生からの受け入れは、特別な理由がある場合を除いて原則として行っていません。卒業プロジェクトの段階になって焦って研究会に入ろうとすることのないように、しっかりと計画的に考えて、早い段階から入るようにしてください。

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。

  • 井庭研メンバーは、原則として全員B1を履修する方針ですが、他の研究会(A型)に所属しながら井庭研B2のプロジェクトに参加・履修したい場合など、特殊な事情がある場合には、事前に相談するようにしてください(説明会の際、もしくは、ilab-entry@sfc.keio.ac.jpまでメールにて)。


    ■ 評価の方法
    研究会の成績評価は、日頃の研究・実践活動への貢献度や成長の観点から総合的に評価します。


    ■ エントリー方法

    新規エントリーも継続エントリーも、井庭研B1シラバス(2023年度春学期)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」の「エントリー方法」をよく読み、それに従い、エントリーしてください。

    ・新規エントリー〆切:1月29日(日)23:59
    ・継続エントリー〆切:1月20日(金)23:59


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    井庭研B1シラバス(2023春)「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」

    IbaLabLogo.jpg井庭研B1シラバス(2023年度春学期)
    「Natural & Creative Living Lab:ナチュラルにクリエイティブに生きることを支援する創造実践学研究」


    ■ 重要な情報

    ・連動している井庭研B2シラバス
    2023年度より井庭研は、B型研究会×2の体制で連動して運営します。そのため、このB1シラバスだけでなく、B2シラバス「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」にも必ず目を通し、全体像を理解するようにしてください。

    ・新規エントリー〆切:4月初旬まで延長しました。定員になり次第、プロジェクトごとに募集を止めるので、早めにエントリーしてください。

    追加募集状況の最新情報は、B2シラバスを見てください。

    新規面接は、エントリーを受理したら、適宜オンライン(もしくは対面)で実施します。

    ・井庭研の雰囲気がわかる5分動画
    “「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことを研究している井庭研の日々はこんな感じ!”

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    ■ Purpose - 新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを生み出し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献する

    井庭研では、「新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを開発し、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献する」ことを自らのPurpose(存在意義)としています。僕らは、既存の学問分野の枠や常識にとらわれない、新しい発想で学術研究を行い、現状の問題を解決し、これからの未来をよりよくする新たな視点、概念、方法、メディアを開発します。そして、多様なアクターと組みながら、それらの成果を広く世の中に普及させ、人々がいきいきと生きる未来の実現に貢献していきます。


    ■ Vision - ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある「創造社会」

    井庭研のVision(目指している未来)は、「ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある『創造社会』」です。

    僕(井庭)は、ここ100年の変化を、「消費社会」から「情報社会」、そして「創造社会」(Creative Society)という流れで見ることを提唱してきました。消費社会においては、人々は家電や車など、物やサービスを購入し享受することが生活・人生の豊かさだとされていました。情報社会に入って、コミュニケーションに関心の重心がシフトし、よいコミュニケーションや関係性を持つことが生活・人生の豊かさを象徴するようになりました。そして、現在すでに一部で始まりつつある創造社会では、人々が自分たちで自分たちの使う物や考え、方法、仕組み、社会、あり方・生き方をつくり、どのくらい自分たちで「つくる」ことに関わっているのかが生活・人生の豊かさになっていくと考えられます。

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    そのような「つくる」時代に思いを馳せるとき、テクノロジーでがんじがらめになった人工的な未来ではなく、より自然と共生し、それぞれの人が人間らしく自然に生きている未来に僕は魅力を感じます。井庭研では、そのような「ナチュラルにクリエイティブに生きる」未来を目指し、「Natural」(自然な)と「Creative」(創造的)、そして、「Delightful」(喜びのある)が重なり合うような暮らし・人生を実現することの支援の実践研究に取り組んでいます。

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    ■ Mission - 素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援

    井庭研のMission(使命)は、「素晴らしい質の実践に潜む原理の解明と、その発見にもとづく実践支援」です。

    「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことは、どうしたら実現できるでしょうか? その問いに答えるには、暮らしや社会的な活動のそれぞれの実践領域ごとに考える必要があります。そこで、井庭研では、学び、仕事、子育て、介護、人生設計などのそれぞれの実践において、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことの内実を明らかにし、それを主に「パターン・ランゲージ」というかたちで表現し、実践したい人たちに届け支援するという研究に取り組んでいます。

    パターン・ランゲージは、実践における「コツ」を言語化します。コツというのは、語源的には「骨」と書きます。つまり、実践を内側から支える軸のようなものが、コツなのです。パターン・ランゲージが言語化するものは、次のようなコツです。

      ①その実践における「基本の型」

      ②例外的に成功している人(「ポジティブ・デビアンス」)たちのやり方

      ③工夫や試行錯誤によって得た「グッド・プラクティス」

    これらのコツを共有できれば、今うまくできずに困っている人たちや、もっとよりよく実践したいと思う人たちの手助けをすることができます。「手助けをする」といっても、一人ひとりに現場で直接的に助けるというのではありません。コツを言語化したパターン・ランゲージを届けることで、その人が自分でできるようになるのを支援するのです。

    その人の内側から作用するメディアを共有することで、「支援する人/される人」という関係を超えた、「ともに生きる」ということが可能になります。実際にそのように機能するパターン・ランゲージをつくるのは至難の業ですが、だからこそ井庭研では徹底的に時間と手間をかけて、つくり込んでいくのです。

    様々な実践領域でパターン・ランゲージをつくり、またパターン・ランゲージをつくる人を支援することで、ありとあらゆる領域でパターン・ランゲージが実践を支援する状態をつくっていきます。そのように整備されたパターン・ランゲージは、創造社会における「ソフトな社会インフラ」となるでしょう。人々は、そのような「ソフトな社会インフラ」の支えの上で、創造的な実践を始めることの自由度が高まります。これが、井庭研の研究で行うことです。

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    これまでに井庭研でつくったパターン・ランゲージのうち、書籍として出版されているものに、次のものがあります。実際に手にとって、読んでみてください。


    井庭研では、創造実践の支援の方法として主にパターン・ランゲージの作成に取り組んでいますが、他にもワークショップや新しい方法・道具などをつくる研究、創造的なコミュニティの研究なども行っています。


    ■ Values - Goodを超えてGreatを目指し実現する / つくる力をしっかり身につける / 自分たちのコミュニティを自分たちで育てる

    【Goodを超えてGreatを目指し実現する】

    井庭研では、成果のクオリティにおいても、取り組みの度合いにおいても、「いいね」というGoodにとどまらず、「素晴らしい!」というGreatなレベルになるように本気の活動をしています。そこでは、日々、①人の気持ちを心から感じ、手を差し伸べる②本質を追究し、徹底的につくり込む③新しい方法で取り組み、可能性を広げるということを大切にしています。

    まず、僕たちが取り組む研究で最も基盤となるのは、①人の気持ちを心から感じ、手を差し伸べる感受性と優しさです。困っている人、助けを求めている人、呼びかけ応答を求めている人に対して眼差しを向け、寄り添い、自分を差し出して尽くす ------ そういう気持ちと行動が不可欠です。井庭研で行われているパターン・ランゲージの作成は、困っている人たちやもっとよりよく生きたいと願う人たちを支援するために行われています。そのため、自己実現や自分の満足・快適を優先・中心に考える人は、井庭研には合わないということを強調しておきたいと思います。

    次に、②本質を追究し、徹底的につくり込むための明晰さと粘り強さが大切になります。物事の本質は、簡単には見えません。いくつもの事例を見ながら、そこに共通する特徴をつかみ、その本質を突き詰めて考えていくことが求められます(現象学の哲学では、これを「本質観取」と言い、井庭研ではそのことについても研究しています)。そして、その本質を表す表現を磨いていき、本質を見事に表す魅力的な表現になるようにつくり込んでいきます。そのとき、一人よがりな視点に陥らないために、複数人で何度も何度も話し合い、確かめ合います。本格的な創造ではいつもそうですが、井庭研で取り組む創造も、地道でつらく面倒な作業の連続です(しかし、楽しさや喜びも混じっているので、単なる苦行ではありません)。そうやってつくり込んだものだけが、人々の心に響き、実際に機能する素晴らしい(Greatな)作品になるのです。

    そして、③新しい方法で取り組み、可能性を広げるということも、井庭研で大切にしていることのひとつです。これまでに広く採用されてきた方法は、すでに多くの人々によって実行されてきたはずです。その結果、現在の課題や困難が残っているのですから、同じようなアプローチで取り組んでも、問題は解決・解消しないでしょう。そのような状況では、これまでにない新しいアプローチで取り組むことが重要になります。井庭研では、パターン・ランゲージをはじめ、従来とは異なる新しい方法で取り組むことで、問題を解決する道を切り拓くとともに、これまでにない選択肢の可能性を広げ、その面でも世の中に貢献しています。

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    【つくる力をしっかり身につける】

    井庭研では、新しい発想の学術研究を通じて、新たな視点、概念、方法、メディアを生み出していくための力を、各自がしっかり身につけることを大切にしています。そのために、④感じたことを捉え、そう感じた根拠を明らかにする⑤本をたくさん読み、思考と創造の土壌を豊かにする⑥日々パターン・ランゲージを活かし、実践を高め続けるようにしています。

    まず、何かを考えるときやつくるときには、自分の心で ④感じたことを捉え、そう感じた根拠を明らかにするようにしています。これは、まず、頭で意識的に考える前に内で感じること・直観としてつかんでいることが大切であることを意味しています。しかし、それをただ主張するのでは、単なる印象論や主観的な誤りに陥る可能性があります。そこで、感じたことを踏まえて、「そう感じたのはなぜか」「何がそれを確からしいと自分に感じさせたのか」の根拠を解明し、それを言葉で説明できるようになることが大切です。例えば、パターンのイラストを考えているときに、A案の方がB案より良いと感じたのであれば、それはどの部分がどうよいからなのかの理由を突きとめ、他の人も「確かにそうだ」と納得し得るロジックとして明示する必要があります。このような(受動的に)感じたことの本質(構造)を観取する(把握する)ということは、現象学の哲学的方法であり、また、パターン・ランゲージの考案者である建築家クリストファー・アレグザンダーの考えと方法にも通じるものです。まず感じて、それから考える --- Feel First, Then Think(FFTT)。これは、井庭研のあらゆる活動において重視されています。

    そして、井庭研では、⑤本をたくさん読み、思考と創造の土壌を豊かにすることを心がけ、日々実践しています。人は何かを考えるとき、素手でゼロから考えているのではなく、自分がすでに持っている概念装置(考え方のフレームワークや理論体系など)を駆使して考えています。そのため、よい概念装置をいろいろ持ち、それを使いこなせるようになることが重要となります。また、創造(creation)を可能にする想像力(imagination)は、さまざまな経験や知識が自分の無意識の「土壌」のなかに沈み、分解・熟成することで豊かになります。思想・哲学的な本や実践領域に関する本、創造的な人たちの暮らしや生き方にまつわる本などを読むことは、そのような自分の「土壌」を豊かにすることに直結します。このように、思考の面でも創造の面でも、読書のもたらす効用は絶大であり、それを活かさない手はありません。井庭研では、各自が自分でどんどん本を読んでいくことを強く推奨しています。

    さらに、井庭研では、⑥日々パターン・ランゲージを活かし、実践を高め続けることも推奨されています。僕らはこれまで20年間で、いろいろな実践領域の2,400以上のパターンを書いてきました。それらは、もともとは誰かのためにつくられたものなのですが、その本質的な普遍性から、僕ら一人ひとりにももちろん有効なものたちです。学び、プレゼン、コラボレーション、対話、読書、マネジメント、ケア、教え方、スタートアップ、暮らし、生き方などなど、井庭研のメンバーも、それらのパターン・ランゲージを自分の実践に活かすとともに、それを共通言語として語り合い、高め合うことにフル活用しています。

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    【自分たちのコミュニティを自分たちで育てる】

    井庭研では、自分たちのコミュニティを自分たちで育てるということを大切にしています。担当教員の名前がついた「井庭研」ですので、担当教員(井庭)はもちろん一つの中心的な役割を担うわけですが、だからといって、他のメンバーが従属的にぶら下がるような構造では、創造的な場としては素晴らしい場になるはずはありません。一人ひとりが、自分のいるコミュニティを育てていく努力をし、命を吹き込むからこそ、そこはいきいきとした創造的な場になるのです。そのため、まずはそのコミュニティにある⑦機会・環境に感謝し、最大限に活かすこと、また、⑧先生・先輩からどんどん学び、小まめに助け返すこと、そして、⑨仲間とともに挑戦し、喜びを分かち合うことをし続けることが大切になります。

    井庭研では、⑦機会・環境に感謝し、最大限に活かすことを、忘れずにいることを重視しています。今ある機会や環境は、誰も何もせずに当たり前に「ただある」ものではありません。それは、担当教員や過去の先輩たち、そして今いるメンバーの努力や貢献によって生み出され、「あるようになった」ものたちです。「当たり前」だと思ってしまうと、有り難さ(そこにあることの難しさ・希少さ)は感じられず、自分には関係ないもの・適度に流してよいものになってしまうでしょう。そうではなく、そのような機会や環境をもたらしてくれた人たちに感謝することを忘れず、それを最大限活かして自分たちの力に変えることが大切です。

    井庭研では、⑧先生・先輩からどんどん学び、小まめに助け返すことも大切にしています。人は経験を積むこと・知識を得ることで、できることが増えていき、その水準も高度になっていきます。そんな熟達した”すごい”人たちも、最初からそうだったわけではありません。ここで日々活動を続けるうちに、また個人的な努力の末に、できるようになったのです。先生や先輩がこれまで何を(どのような努力・経験を)してきて、今何をしているのか(実践・習慣)を聞き、自分の成長に活かすということは、自分を大きく高める契機となります。そして、先生や先輩が高いレベルで挑戦していることを手伝い、応援することで、いまの自分のレベルでは体験できないような、より高度なレベルでの実践経験を垣間見て体験できるようになります。そこで、経験や力の差のある先生や先輩たちから一方的に学びを得るだけでなく、その人たちを「助け返す」ことも、双方にとって重要な意味を持ちます。一気に大きく貢献というのは難しいので、日頃から、「小まめに助け返す」ことがポイントです。

    井庭研では、日頃から、⑨仲間とともに挑戦し、喜びを分かち合うことを大切にし、味わっています。一人で行う挑戦では、自分の限界が活動の限界になってしまい、なかなか大きく飛ぶことはできません。そこで、研究会のメンバーや学内外の関係者の仲間とともに、得意を持ち寄り、励まし合い、高め合いながら、普通では実現不可能なレベルまで飛躍します。そして、地道で苦しく忍耐のいる作業の末、Greatな高みに到達したときの大きな喜びを、仲間とともに分かち合います。ナチュラルにクリエイティブに生きる喜びのある人生とはそのようなものであると考え、まさにそれを井庭研のなかでも実践・実現しているのです。

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    ■ 「創造実践学」という新しい学問領域での実践研究

    井庭研で取り組んでいる研究は、既存の学問分野には収まらないものです。僕は、自分たちが取り組んでいる新しい学問にはまだ名前がないので、それを「創造実践学」(Studies on Creative Practice)と名づけました。創造(creation)の実践について、そして創造的(creative)な実践について研究する学問分野、それが「創造実践学」です。

    創造実践学の主力となる方法が、パターン・ランゲージです。それぞれの領域での創造的なよい実践を研究し、それを言語化します。そして、それを用いて、人々の支援をしていきます。このように、創造実践学は、現在の問題や課題を解決する実学的な学問なのです。しかし、それだけにとどまりません。パターン・ランゲージをつくるということは、これからの社会の「ソフトな社会インフラ」を築くことだと言えるので、未来をつくる未来志向の営みでもあるのです。

    井庭研では、創造実践学の思想と方法をひとまず「ひと通りマスター」する修士課程(master course)や、それぞれの関心領域で「社会を治癒するドクター」になる博士課程(doctor course)に進学し、高度な技術とマインドを育んでいくことを推奨しており、実際に多くの人がその道に進み、日々がんばっています。

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    ■ 開かれた物語としてのパターン・ランゲージ

    国内外でいろいろな分野の人たちによってつくられているパターン・ランゲージのなかでも、井庭研のパターン・ランゲージに特に特徴的な点があります。それは、僕たちが、パターン・ランゲージを、一つの「物語」のようにつくり込んでいるということです。もう少し限定して言うと、主人公を特定しない「開かれた物語」としてつくっているのです。

    僕らがパターン・ランゲージをつくるときには、個別具体的な人物としては設定しませんが、「その実践をする人」という匿名の主人公を想像し、その人がある状況において問題に直面したり解決の行動をしたりするという「物語」を立ち上げます。そうすることで、読み手は、ひとつの物語のようにそれを読むことができるとともに、自分の物語として読むことができるようになります。

    つまり、パターン・ランゲージを、単に現象を説明する説明的記述ではなく、読み手が「自分の状況に当てはまる」と思うこと、そして、そこで推奨されていることを魅力的だと思い、実際にやってみようと思うものになるような表現としてつくり込んでいるのです。

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    僕は、これは、J-POPのようなポピュラー音楽の歌詞をつくることに似ていると思っています。聴き手が「自分の状況に当てはまる」と思い、そこで歌われていることを魅力的だと思い、自分の歌として口ずさんだり、カラオケで歌ったり ------- そういう歌の歌詞のようなものだと思うのです。

    実際、作詞を手掛けている人たちが、歌づくりで語っていることは、パターン・ランゲージの作成と共通すると感じることが多々あります。AメロやBメロでその状況における悩みや迷いが歌われ、そして、サビでは。その状況を受け止め、乗り越えていくためのポジティブなメッセージが提示されます。聴き手は、その歌を聴き、歌詞を受け取るなかで、元気をもらったり、勇気づけられたり、世界をポジティブに捉えることができるようになります。

    パターン・ランゲージも、ある状況における問題から始まり、それを乗り越えていく方法が示されます。それは、読み手が実感をともなって内側から「自分のことだ」「自分の近未来だ」と思えるように書かれるのです。パターン・ランゲージは、歌の場合とは異なり、音楽が持つ力を借りることはできません。しかしながら、うまくつくれば、読み手のペースで読み、自分のものとして内側からその人を温めるようなものになります。

    実際、僕らがつくったパターン・ランゲージの読み手から、しばしば、「背中を押してくれました」「元気をもらっています」「心の支えになっています」「お守りのような存在です」「これがあったから、なんとかやってこれました」という声をもらいます。そういう声を聴くたびに、まるで心から共感する大好きな「歌」のような存在だな、と思うのです。僕らのつくった、開かれた物語としてのパターン・ランゲージが、誰かの人生をあたためる。そんな素敵な営みだなぁと、僕はいつも感じています。


    ■ 現役メンバーから見た井庭研についてと、興味をもってくれている人へのメッセージ

    今回のシラバスをつくるあたり、現役メンバーたちから、井庭研について、また、井庭研に興味をもってくれている人へのメッセージを書いてもらいました。18人で計4,000字のメッセージが集まったのですが、すべてを載せると長くなり、またそれらには重なりも多いので、いくつかピックアップして紹介することにします(全員が書いてくれたことのまとめは、この後にあります)。

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  • 「私にとって井庭研は生活を豊かにする学びと、自分をもっと成長させたいと思える目標が得られる場所です。井庭研に所属していることが自信にもなり、つらいこともメンバーに助けてもらいながら乗り越えようと頑張ることができます。他の授業とのつながりを常に感じることができるような幅広い学びがあり、私は学ぶということへの取り組み方から教えてもらいました。1年生の私にも、一緒に研究する仲間として接してくれる先生と先輩方に出会えたことにとても感謝しています。学びに妥協しない研究会だけど、研究するだけではない、なんでも全力で取り組むことのできる場所です。」(1年生)

  • 「常に「楽しい!」と感じながら研究できる場です。この楽しさは、議論・研究する内容が面白いことはもちろん、一緒にそれを面白がる仲間がいるからではないかと思います。何を深めたいのか?何を面白いと感じるのか?井庭研に入る前はぼんやりとしていたのですが、日々文献をあさったり仲間と話したりすることで、じわじわとその解像度が上がっていく感覚が今の充実感につながっている気がします。」(3年生)

  • 「何かを仲間とつくり込む楽しさ、面白さを実感できるのも魅力のひとつではないかと思います。例えば今年のORF(Open Research Forum)では、展示の空間やポスター内容、衣装などを全員でつくりました。こんなふうに、みんなが作り手として活躍する研究会でもあります。井庭研、気づけば私の大好きな学びの場です!」(3年生)

  • 「井庭研は、私が今まで出会ってきた中で一番熱心で、ストイックで、高尚な集団だと日々感じています。尊敬できる先生、先輩、同期、後輩とたくさんの時間を共にしながら、お互いを刺激しあい、頼りあい、学びを深めていくことが出来る井庭研に、心から感謝しています。井庭研に入って早一年、井庭研の活動や仲間たちが私の日常に溶け込んで、気づけば本当にかけがえのないものになっていました。SFCでしか出来ないことをしたい方に、仲間たちと学びに全力でうちこみたい方におすすめです!」(3年生)

  • 「井庭研は、とても楽しく気軽に先輩や先生に相談できたり、それぞれが持つ強みをお互いに出し合って、支え合いながら活動しています。自分自身の成長を感じられるとともに、新しい観点や価値観、考え方などが自分の視野を広くし、視座を高めてくれる「SFCらしい」研究会だと思います。何か自分の中で実践したいものがある人や、新しい気づきや学びを得たい人におすすめです。」(3年生)

  • 「研究も全力、学ぶことも全力、行事も全力。そんな中でも遊び心は忘れない、そんな研究会です。プロジェクト活動も含めてどっぷりと浸かることが多いため、毎回たくさんの知識や情報を浴びて、学びの多い場です。違う興味分野を持っている人たちが集まるからこそそれぞれに刺激し合って、新たな価値観や世界とつながっていくこともあります。既存の学問領域に縛られず、少し違う視点から社会に一石を投じることができる研究ができるのも、井庭研だからこそです!」(4年生)

  • 「井庭研は本当に多様で面白いメンバーがばかりで、日々たくさんの刺激を受けることができます。研究として取り組む分野や内容はさまざまですが、井庭研のヴィジョンである「ナチュラルにクリエイティブに生きる未来」を一緒につくっていく仲間です。所属するプロジェクトが違ったり、春学期からは個人研究で取り組む人もいると思いますが、学びの共同体として一緒に高めあえるメンバーにぜひ来てほしいなと思っています!」(修士1年生)

  • 他の人も含めて、今回みんながどんなことを書いてくれたのかがわかるように、テキスト解析し、ワードクラウドで表現してみました。ここに登場している言葉たちは、井庭研の雰囲気を実によく表していると思います。

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    ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析


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    ■ 2023年度からの井庭研の全体像と仕組み

    2023年度から、井庭研は新しい体制に移ります。2022年度までのA型研究会のときとは異なり、B型研究会×2というかたちで開講されます。

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    B1研究会は、井庭研のすべての土台(Foundation)になるもので、全員が参加するものです。木曜5限に開講されます(必要に応じて延長して行います)。これは、全体ミーティングであり、文献輪読や運営上の話し合いなどを行います。また、各自が取り組んでいる研究の発表やそれに対する議論なども行います。

    井庭研に所属するメンバーは、その学期に実施される「プロジェクト」のどれか一つに参加して研究を行うか、「個人研究」を行います。「プロジェクト」と「個人研究」の両方を行うことも可能です。

    「プロジェクト」では、経験を積んだメンバーがリーダーとなり、研究方法や知識の伝授をしながら、プロジェクトで掲げているテーマの研究に複数人で取り組みます。プロジェクトに参加する場合は、全員、水曜日の午後(3〜6限)に集まり、まとまった時間を確保して、しっかり活動します(水曜日のプロジェクト活動は井庭研B2として行うので、そちらも履修するようにしてください。時間割上は水曜6限扱いとなっています)。

    これに対し、「個人研究」では、各自の問題意識に基づき、自分で研究テーマも方法も考えて、取り組んでいきます。すべてが本人に委ねられているので自由度は高いですが、その分、自分で主体的に調べ、考え、研究として成り立たせる必要があります。その意味で、井庭研でのプロジェクト経験や、他の研究会での研究経験がなければ、実際問題として難しいでしょう。

    新規メンバーは、まずはプロジェクトに入ることを強く推奨します。いきなり一人で個人研究をするよりも、プロジェクトに入る方が、研究の進め方や具体的なやり方を教えてもらえるとともに、活動のなかで学び合ったり、刺激し合ったり、喜びを分かち合ったりできるからです。まずは、B2シラバスにあるプロジェクトのラインナップを見て、自分の興味に合うプロジェクトを探してみてください。

    4年生の卒業プロジェクト(卒プロ)も、個人研究と同様に、研究会の時間に発表や議論を行います。


    ■ 履修上の注意・留意事項

  • 1年生・2年生のうちからの参加を強く推奨します。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を強く推奨しています。

  • 3年生後半や4年生からの受け入れは、特別な理由がある場合を除いて原則として行っていません。卒業プロジェクトの段階になって焦って研究会に入ろうとすることのないように、しっかりと計画的に考えて、早い段階から入るようにしてください。

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。

  • 井庭研メンバーは、原則として全員B1を履修する方針ですが、他の研究会(A型)に所属しながら井庭研B2のプロジェクトに参加・履修したい場合など、特殊な事情がある場合には、事前に相談するようにしてください(説明会の際、もしくは、ilab-entry@sfc.keio.ac.jpまでメールにて)。


    ■ 研究会の時間の計画

    #1 イントロダクション
    メンバーの自己紹介と、研究会のPurpose、Vision、Mission、Valuesについて確認し、語り合います。

    #2 方法ゼミ-1(研究について)
    研究の考え方についての本を読んできて、その内容を踏まえて話し合います。
    • 『創造的論文の書き方』 (伊丹敬之, 有斐閣, 2001)の指定箇所
    • 『基礎からわかる 論文の書き方』(小熊英二, 講談社, 2022)の指定箇所

    #3 研究計画発表-1
    それぞれのプロジェクトや個人研究の研究計画を発表し、よりよくなるための議論をします。

    #4 研究計画発表-2
    それぞれのプロジェクトや個人研究の研究計画を発表し、よりよくなるための議論をします。

    #5 展望ゼミ-1
    ナチュラルにクリエイティブに生きることに関連する本を読んできて、その内容を踏まえて話し合います。

    #6 研究中間発表-1
    それぞれのプロジェクトや個人研究の中間段階での進捗状況・成果を発表し、よりよくなるための議論をします。

    #7 研究中間発表-2
    それぞれのプロジェクトや個人研究の中間段階での進捗状況・成果を発表し、よりよくなるための議論をします。

    #8 方法ゼミ-2(論文執筆について)
    論文執筆についての本を読んできて、その内容を踏まえて話し合います。
    • 『創造的論文の書き方』 (伊丹敬之, 有斐閣, 2001)の指定箇所
    • 『基礎からわかる 論文の書き方』(小熊英二, 講談社, 2022)の指定箇所

    #9 方法ゼミ-3(論文執筆パターン)
    各自、論文初稿を書いてきた上で、論文誌筆のコツをまとめたアカデミック・ライティング・パターンを用いて改善を検討します。

    #10 展望ゼミ-2
    ナチュラルにクリエイティブに生きることに関連する本を読んできて、その内容を踏まえて話し合います。

    #11 方法ゼミ-4(論文の仕上げについて)
    論文執筆についての本を読んできて、その内容を踏まえて、論文の仕上げについて話し合います。。
    • 『創造的論文の書き方』 (伊丹敬之, 有斐閣, 2001)の指定箇所
    • 『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)の指定箇所

    #12 研究・論文相談会
    研究や論文の相談会を開きます。

    #13 ライターズ・ワークショップ-1
    ライターズ・ワークショップのスタイルで、論文がよりよくなるための話し合いをします。

    #14 ライターズ・ワークショップ-2
    ライターズ・ワークショップのスタイルで、論文がよりよくなるための話し合いをします。

    #15 研究成果発表
    それぞれのプロジェクトや個人研究の最終成果を発表し、質疑応答します。


    ■ 評価の方法

    研究会の成績評価は、日頃の研究・実践活動、発表、論文、議論・話し合いでの貢献、成長の観点等から総合的に評価します。


    ■ エントリー方法

    【新規エントリー】

    井庭研に新規でエントリーする人は、このシラバスをよく読んだ上で、期日までに、[1] 新規エントリーシート[2] 文献課題を、それぞれ別々のPDFファイルで用意し提出してください(ファイル名に自分の名前を入れるようにしてください)。新規メンバーはプロジェクトに入ることを強く推奨しますが、すでに別の研究会に入っている/これまでに研究経験があるなど、個人研究の遂行能力がありそれを希望する場合には、[3] 研究計画も提出してください。

    新規エントリー〆切:3月31日まで延長しました。定員になり次第、プロジェクトごとに募集を止めるので、早めにエントリーしてください。

    追加募集状況の最新情報は、http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/sb/log/eid613.html を見てください。

    新規面接は、エントリーを受理したら、適宜オンライン(もしくは対面)で実施します。


    [1] 新規エントリーシート

    井庭研(2023春)新規エントリー

    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
    2. 自己紹介と日頃の興味・関心(イメージしやすいように、適宜、写真などを入れてください)
    3. 井庭研への志望理由、および、この研究会シラバスを読んで、強く惹かれたところや共感・共鳴したところと、その理由・考えたこと
    4. 履修:「B1のみ」か「B1とB2」か
    5. 参加したいプロジェクト(複数ある場合は、第一希望など、明示してください)
    個人研究を希望する場合には、研究タイトルを書いてください。
    6. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
    7. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    8. これまでに履修した授業のなかでお気に入りのもの、所属した研究会など(複数可)
    9. 並行して所属する予定の研究会(あれば)
    10. 補足(その他、何か連絡・相談があれば)


    [2] 文献課題
    井庭研での創造・研究に直球で関係がある以下の本のうち、1冊以上読んでみて、自分にとって面白いと感じたところについて、それがどこかということと、どのように面白いと感じたのかを書いてください(A4で1〜3ページ程度)。僕の授業の文献宿題で読んだ人も、改めてざっと読み直してみてください。



    [3] 研究計画(最初の学期から個人研究を行いたい場合のみ)
    個人研究として、どのようなテーマの研究をどのように行うのかの研究計画を書いてください(A4で2〜5ページ程度)。以下の要素を含めてください。

  • 研究タイトル(その研究を端的に象徴的に表す主題・副題)
  • 研究概要(その研究のエッセンスを数行でまとめるアブストラクト)
  • 研究背景(その研究が重要である背景や研究等の歴史、自分が取り組む個人的な経緯など)
  • 研究方法(どのような方法で研究に取り組むのか)
  • 遂行スケジュール(研究の進行、また、具体的に何月に何をする予定か)
  • 期待される成果(成果のイメージと、その学術的意義と社会的価値)
  • 参考文献(研究に関係する書籍・論文等のリスト)


  • なお、井庭研の新規面接は、担当教員だけでなく現役メンバーも一緒に参加して実施するため、エントリー時の提出物はメンバーも閲覧します。その点、あらかじめお知らせしておきます。


    【継続エントリー】

    これまでに井庭研に所属していたメンバーは、このシラバスをよく読んだ上で、期日までに、[I] 継続エントリーシートをPDFファイルで準備し提出してください(ファイル名に自分の名前(本名)を入れるようにしてください)。個人研究を希望する場合、もしくは、B2プロジェクトのリーダーをする場合は、[II] 研究計画も提出してください。

    継続エントリー〆切:1月20日(金)23:59
    継続エントリー課題の提出先:https://forms.gle/v7S36TLiEs36bppA7
    継続面談を1〜3月に、対面もしくはオンラインで実施予定です。

    [I] 継続エントリーシート

    井庭研(2023春)継続エントリー
    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名
    2. 井庭研のPurpose、Vision、Missionに照らした自分のこれまでのふりかえりと、これからについて
    3. 井庭研のValues ①〜⑨のそれぞれの観点での自分のこれまでのふりかえりと、これからについて
    4. 履修:「B1のみ」か「B1とB2」か
    5. 参加したいプロジェクト(もしくは、リーダーとなるプロジェクト)
    個人研究を希望する場合には、研究タイトルを書いてください。
    6. 補足(その他、何か連絡・相談があれば)

    [II] 研究計画(来学期、個人研究を行いたい場合、もしくは、B2プロジェクトのリーダーをする場合)
    個人研究やプロジェクトとして、どのようなテーマの研究をどのように行うのかの研究計画を書いてください(A4で2〜5ページ程度)。以下の要素を含めてください。

  • 研究タイトル(その研究を端的に象徴的に表す主題・副題)
  • 研究概要(その研究のエッセンスを数行でまとめるアブストラクト)
  • 研究背景(その研究が重要である背景や研究等の歴史、自分が取り組む個人的な経緯など)
  • 研究方法(どのような方法で研究に取り組むのか)
  • 遂行スケジュール(研究の進行、また、具体的に何月に何をする予定か)
  • 期待される成果(成果のイメージと、その学術的意義と社会的価値)
  • 参考文献(研究に関係する書籍・論文等のリスト)


  • ■ 重要文献

    井庭研の研究の背景や基本知識を知るために重要な本には、以下のものがあります。特に最初の3つはとても重要なので、早めに読んでもらえればと思います。



    • 「新しい方法、新しい学問、そして、未来をつくる:創造実践学の創造」(井庭崇, 『総合政策学をひらく:総合政策学の方法論的展開』 , 清水唯一朗, 桑原武夫 編, 慶應義塾大学出版会, 2023)
    • 「創造社会における創造の美:クリストファー・アレグザンダーと柳宗悦を手がかりとして」(井庭崇, 『モノノメ 創刊号』, 宇野常寛責任編集, PLANETS/第二次惑星開発委員会, 2021)
    • 『コロナの時代の暮らしのヒント』(井庭崇, 晶文社, 2020)


    • 『時を超えた建設の道』 (クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993)/ Christopher Alexander, The Timeless Way of Building, Oxford University Press, 1979
    • 『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1984) / Christopher Alexander, Sara Ishikawa, and Murray Silverstein, A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction, Oxford University Press, 1977
    • 『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 2013)/ Christopher Alexander, The Nature of Order, BOOK ONE: The Phenomenon of Life, The Center for Environmental Structure, 2002
    • 『パタン・ランゲージによる住宅の生産』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 2013)/ Christopher Alexander with Howard Davis, Julio Martinez, Don Corner, The Production of Houses, Oxford University Press, 1985
    • 『オレゴン大学の実験』(クリストファー・アレグザンダー他, 鹿島出版会, 1977)/ Christopher Alexander, Murray Silverstein, Shlomo Angel, Sara Ishikawa, Denny Abrams, The Oregon Experiment, Oxford University Press, 1975
    • 『Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, 丸善出版, 2014)/ Mary Lynn Manns, Linda Rising, Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas, Addison-Wesley, 2004


    • 『虫眼とアニ眼』(養老孟司, 宮崎駿, 新潮社, 2008)
    • 『「都市主義」の限界』(養老孟司, 中央公論新社, 2002)
    • 『惑星の風景:中沢新一対談集』(中沢新一ほか, 青土社, 2014)
    • 『腸と森の「土」を育てる:微生物が健康にする人と環境』(桐村 里紗, 光文社, 2021)
    • 『農で輝く!:ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す奇跡の農園』(小島希世子, 河出書房新社, 2019)
    • 『FAMILY GYPSY:家族で世界一周しながら綴った旅ノート』(高橋歩, A-Works, 2013)
    • 『民藝とは何か』(柳宗悦, 講談社, 2006)
    • 『民藝のインティマシー:「いとおしさ」をデザインする』(鞍田崇, 明治大学出版会, 2015)


    • 『創造性とは何か』 (川喜田二郎, 詳伝社, 2010)
    • 『アブダクション:仮説と発見の論理』(米盛裕二, 勁草書房, 2007)
    • 『子どもの想像力と創造』(ヴィゴツキー, 新訳版, 新読書社, 2002)/ Vygotsky, L.S. (2004) “Imagination and Creativity in Childhood,” Journal of Russian and East European Psychology, vol.42, no.1, January–February 2004, pp.7–97
    • 『感動をつくれますか?』 (久石譲, 角川書店, 2006)
    • 『職業としての小説家』(村上春樹, 新潮社, 2015)/ Haruki Murakami, Novelist as a Vocation, Knopf,2022
    • 『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです:村上春樹インタビュー集 1997-2011』 (村上春樹, 文藝春秋, 2011)
    • 『書くことについて』 (スティーヴン・キング, 小学館, 2013)/ Stephen King, On Writing: A Memoir of the Craft, Scribner, 2000
    • 『出発点1979〜1996』(宮崎駿, 徳間書店, 1996) / Hayao Miyazaki, Starting Point: 1979-1996, VIZ Media, 2006
    • 『言葉で世界を変えよう:万葉集から現代俳句へ』(茂木健一郎, 黛まどか, 東京書籍, 2010)・
    • 『ものがたりの余白:エンデが最後に話したこと』(ミヒャエル・エンデ, 岩波書店, 2009)
    • 『物語の役割』(小川洋子, 筑摩書房, 2007)
    • 『生きるとは、自分の物語をつくること』(小川洋子, 河合隼雄, 新潮社, 2011)


    • 『イメージの心理学』(河合隼雄, 青土社, 1991)
    • 『声の文化と文字の文化』(ウォルター・J.オング,藤原書店,1991)/ Walter J. Ong, Orality and Literacy, 2nd Edition, Routledge, 2002
    • 『天才たちの日課:クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』(メイソン・カリー, フィルムアート社, 2014)/ Mason Currey, Daily Rituals: How Great Minds Make Time, Find Inspiration, and Get to Work, Picador, 2020
    • 『ザ・パターン・シーカー:自閉症がいかに人類の発明を促したか』(サイモン・バロン=コーエン, 化学同人, 2022)/ Simon Baron-Cohen, The Pattern Seekers: How Autism Drives Human Invention, Basic Books, 2023
    • 『ぼくたちは習慣で、できている。』(佐々木典士, 増補版, 筑摩書房, 2022)/ Fumio Sasaki, Hello, Habits: A Minimalist's Guide to a Better Life, W W Norton & Co Inc, 2021
    • 『凡才の集団は孤高の天才に勝る:「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア』(キース・ソーヤー, ダイヤモンド社, 2009)/ Keith Sawyer, Group Genius: The Creative Power of Collaboration, 2nd edition, Basic Books, 2017
    • 『偉大なアイディアの生まれた場所:シンキング・プレイス』(ジャック・フレミング, キャロライン・フレミング, 清流出版, 2011)/ Carolyn and Jack Fleming, Thinking Places: Where Great Ideas Were Born, Trafford, 2008


    • 『経験と教育』(ジョン・デューイ, 講談社, 2004)/ John Dewey, Experience And Education, Free Press, Reprint, 1997
    • 『未来を創るこころ』(石川忠雄, 慶應義塾大学出版会, 1998)
    • 『経験のための戦い:情報の生態学から社会哲学へ』(エドワード・S. リード, 新曜社, 2010) / Edward S. Reed, The Necessity of Experience, Yale University Press, 1996
    • 『芸術の中動態:受容/制作の基層』(森田亜紀, 萌書房, 2013)
    • 『中動態の世界:意志と責任の考古学』(國分功一郎, 医学書院, 2017)


    • 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?:経営における「アート」と「サイエンス」』(山口周, 光文社, 2017)
    • 『世界観をつくる:「感性×知性」の仕事術』(水野学, 山口周, 朝日新聞出版, 2020)
    • 『「仕事ができる」とはどういうことか?』(楠木建, 山口周, 宝島社, 2021)
    • 『ハイ・コンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』(ダニエル・ピンク, 三笠書房, 2006)/ Daniel H. Pink, A Whole New Mind: Why Right-Brainers Will Rule the Future, Riverhead Books, Reprint, Updated, 2006
    • 『突破するデザイン:あふれるビジョンから最高のヒットをつくる』(ロベルト・ベルガンティ, 日経BP, 2017)/ Roberto Verganti, Overcrowded: Designing Meaningful Products in a World Awash with Ideas, The MIT Press, 2017


    • 『社会システム理論:不透明な社会を捉える知の技法』(井庭崇 編著, 宮台真司, 熊坂賢次, 公文俊平, 慶應義塾大学出版会, 2011)
    • 『社会システム(上) (下):或る普遍的理論の要綱』(ニクラス・ルーマン, 勁草書房, 2020)/ Niklas Luhmann, Social Systems, Stanford University Press, 1996
    • 『エコロジーのコミュニケーション:現代社会はエコロジーの危機に対応できるか?』(ニクラス・ルーマン, 新泉社, 2007)/ Niklas Luhmann, Ecological Communication, University Of Chicago Press, 1989
    • 『オートポイエーシス:生命システムとはなにか』(H.R. マトゥラーナ, F.J. ヴァレラ, 国文社, 1991)/ H. R. Maturana, F. J. Varela, Autopoiesis and Cognition: The Realization of the Living, Springer, 1980
    • 『民主主義と教育〈上〉 〈下〉』(J. デューイ, 岩波書店, 1975)/ John Dewey, Democracy and Education, SMK Books, 2018
    • 『民主主義のつくり方』(宇野重規, 筑摩書房, 2013)


    • 『はじめての哲学的思考』(苫野一徳, 筑摩書房, 2017)
    • 『哲学は対話する: プラトン、フッサールの〈共通了解をつくる方法〉』(西研, 筑摩書房, 2019)
    • 『人間科学におけるエヴィデンスとは何か:現象学と実践をつなぐ』(小林隆児, 西研 編著, 竹田青嗣, 山竹伸二, 鯨岡峻, 新曜社, 2015)
    • 『哲学とは何か』(竹田青嗣, NHK出版, 2020)
    • 『経験と判断』(エトムント・フッサール 著, L.ランドグレーベ 編, 新装版, 河出書房新社, 1999)/ Edmund Husserl, Experience and Judgement: Investigations in a Genealogy of Logic, revised and edited by Ludwig Landgrebe, Northwestern University Press, 1973
    • 『プラグマティズムと哲学の実践』(リチャード・シュスターマン, 世織書房, 2012)/ Richard Shusterman, Practicing Philosophy: Pragmatism and the Philosophical Life, Routledge, 1997
    • 『人間性と行為』(J.デューイ, 人間の科学社, 1995)/ John Dewey, The Middle Works of John Dewey 1899 - 1924: Human Nature and Conduct 1922 (14) (Collected Works of John Dewey), Southern Illinois University Press, 2008
    • 『プラグマティズム古典集成』(チャールズ・サンダース・パース, ウィリアム・ジェイムズ, ジョン・デューイ, 作品社, 2014)
    • 『科学革命の構造』(トーマス・クーン, みすず書房, 1971)/ Thomas S. Kuhn, The Structure of Scientific Revolutions, 50th Anniversary Edition, University of Chicago Press, 4th edition, 2012
    • 『社会科学をひらく』(イマニュエル・ウォーラーステイン+グルベンキアン委員会, 藤原書店, 1996)/ Immanuel Wallerstein ed, Open the Social Sciences: Report of the Gulbenkian Commission on the Restructuring of the Social Sciences, Stanford University Press, 1996
    • 『東洋哲学の構造:エラノス会議講演集』(井筒俊彦, 慶應義塾大学出版会, 2019)/ Toshihiko Izutsu, The Structure of Oriental Philosophy: Collected Papers of the Eranos Conference, vol. I & II, Keio University Press, 2008


    • 『読書と社会科学』(内田義彦, 岩波書店, 1985)
    • 『創造的論文の書き方』 (伊丹敬之, 有斐閣, 2001)
    • 『基礎からわかる 論文の書き方』(小熊英二, 講談社, 2022)
    • 『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, ダイヤモンド社, 1999)/ Barbara Minto, The Pyramid Principle: Logic in Writing and Thinking, third edition, Pearson Education Limited, 2021


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    B2シラバス「Natural & Creative Living Lab:研究プロジェクト実践」につづく
  • 井庭研だより | - | -

    井庭研2023春の特別研究プロジェクト「パターン・ランゲージの思想と方法:総まとめ研究」

    「パターン・ランゲージの思想と方法:総まとめ研究」
    担当:井庭 崇(総合政策学部教授)
    タイプ:特別研究プロジェクトB(2単位:2023年春学期に履修申告)
    実施形態: オンライン


    【実施日程一覧】
    2023年の2〜3月に行います。以下の日程は(オンラインで)集まる日で、これらの集まりの前に、各自、指定原稿を読んでくる時間をしっかり取る必要があります。

    2月 7日(火) 13:00-15:00
    2月21日(火) 13:00〜18:00
    2月24日(金) 13:00〜18:00
    3月 3日(金) 13:00〜18:00
    3月10日(金) 13:00〜18:00
    3月17日(金) 13:00〜18:00
    3月31日(金) 13:00〜15:15


    【概要】
    パターンランゲージは、創造実践の経験則・型を「パターン」という小さな単位にまとめ、体系化・言語化したものです。かつて、建築家のクリストファー・アレグザンダーは、いきいきとした町や建物に繰り返し現れる関係性をパターンとして定義し、253個のパターンを抽出・記述しました。その後この考え方は、ソフトウェア開発の分野に応用され、現在でも広く活用されています。SFCでは、創造的な学びのための「ラーニング・パターン」や、創造的プレゼンテーションのための「プレゼンテーション・パターン」、創造的コラボレーションのための「コラボレーション・パターン」をはじめとして、教育、福祉、仕事、暮らし・人生などさまざまな領域でパターンランゲージが制作されてきました。

    本特別研究プロジェクトでは、これまで15年ほどの間、井庭研究室で開発・洗練させてきたパターン・ランゲージの思想と方法をふりかえり、その内容を深く理解し、話し合い、今後の実践につなげることを目指します。パターン・ランゲージの考え方や作成方法、活用方法など、それぞれのトピックについて説明した重厚な資料を担当教員が用意するので、それを事前に読み込み、自らの経験と照らし合わせて点検したり、自分が実践するときのイメージをつかみます。参加メンバーで集まったときには、自らの経験や考えたことについて語り合ったり、疑問点やもっと知りたいことについて質問したり、思想や方法としてさらに明確にすべき点がないかについて議論したりします。

    本特別研究プロジェクトは、井庭研究室に所属する学生以外の参加も歓迎しますが、パターン・ランゲージの思想と方法に強く関心を持つ人でなければ、モチベーションの維持も、内容・議論に着いていくのも困難になるので、注意してください。これまで断片的に扱ってきたパターン・ランゲージの思想と方法についての総まとめ研究を通じて、各自今後の実践に活かしてほしいと思います。

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    【参加条件】
    これまで井庭研究会Aを履修した人と2023年度履修予定の人を中心に、パターン・ランゲージの作成に強く関心を持つ人も歓迎します。

    担当教員と相談の上、履修志望理由を1月31日までに担当教員に提出(ilab-entry@sfc.keio.ac.jp)。


    【評価方法】
    出席、プロジェクトの活動と成果、話し合いへの貢献、最終レポートから総合的に評価する。


    【授業スケジュール】
    各回の予定は暫定的なものであり、全体として以下の内容はカバーしますが、順番等は変わる予定です。

    2月7日(火) 13:00-15:00. イントロダクション
    本特別研究プロジェクトの趣旨と進め方について説明し、これから最初に具体的に取り組むことについて理解します。

    2月21日(火) 13:00〜18:00 パターン・ランゲージ概論
    パターン・ランゲージについての概説を読み、内容についてディスカッションをし、理解を深めます。パターン・ランゲージ作成プロセスは、大きく分けて、「パターン・マイニング」、「パターン・ライティング」、「パターン・シンボライジング」という3つのフェーズで構成されています。

    2月24日(金) 13:00〜18:00 パターン・マイニング方法
    パターン・マイニングについての解説を読み、内容についてディスカッションをし、理解を深めます。パターン・マイニングでは、パターンの内容になる経験談・経験則の情報を集め、その共通パターンをあぶり出し、全体の構造をつくった上で、「パターンの種」を特定します。パターン・マイニング・フェーズでは、経験者から対話のなかで経験談を掘り起こし引き出していく「マイニング・ダイアローグ」と、そこで得られた大量の情報から本質的なパターンを見出していく「クラスタリング」や「キーエレメントの抽出」、そして、その結果を用いて全体の体系をつくり、各パターンの役割を明確化する「体系化」という3つのステップがあります。この回では、それらの内容について具体的に検討します。

    3月3日(金) 13:00〜18:00 パターン・ライティング方法
    パターン・ライティングについての解説を読み、内容についてディスカッションをし、理解を深めます。パターン・ライティングでは、それぞれのパターンの種について、その本質を突き詰めていきながら、「状況」「問題」「フォース」「解決」「アクション」「結果」というパターン形式で書き、メンバーのなかで何度も確認・修正をして仕上げていきます。 パターン・ランゲージ作成の第二フェーズであるパターン・ラインティングでは、それぞれの「パターンの種」を、パターン形式で書き下していきます。パターン・ライティングでは、マイニングでつくった「パターンの種」を、文章で表現していきます。この段階で、このパターンの本当の「問題」は何かや「解決」の本質は何かということについて、さらに突き詰めて深めていきます。この回では、それらの内容について具体的に検討します。

    3月10日(金) 13:00〜18:00 パターン・シンボライジング方法
    パターン・シンボライジングについての解説を読み、内容についてディスカッションをし、理解を深めます。パターン・シンボライジングでは、パターンを象徴的に表すためのパターン名をつくったり、パターン・イラストを描いたりします。パターン・シンボライジングとは、パターンの内容的な記述に、それを象徴的に言い表す名前をつける「パターン・ネーミング」と、それを象徴的に見せるイラストを描く「パターン・イラストレーティング」を行います。これらの名前やイラストを考えるときにも、改めて、このパターンが伝えようとしている内容の本質はなんだろうか、ということを捉え直し、それをギュッと凝縮した表現に煎じ詰めていきます。これらのステップでつくられた成果も、メンバーで確かめ合いの対話を行い、洗練させていきます。この回では、それらの内容について具体的に検討します。

    3月17日(金) 13:00〜18:00 パターン・ランゲージの仕上げ
    パターン・ランゲージの仕上げについての解説を読み、内容についてディスカッションをし、理解を深めます。

    3月31日(金) 13:00〜15:15 最終レポート
    パターン・ランゲージの思想と方法についての自分なりのまとめのレポートを書きます。必要に応じて、話し合いや相談の機会を設けます。
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    井庭研 新規メンバー募集「創造実践学研究:ナチュラルにクリエイティブに生きる未来へ」

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    井庭研シラバス(2022年度秋学期)
    「創造実践学研究:ナチュラルにクリエイティブに生きる未来へ」


    井庭研究室では、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」創造社会へのシフトを目指して、いろいろな領域でのよい実践の本質を捉えて言語化し、これから実践をしようとしている人々の支援をする研究に取り組んでいます。その研究活動に一緒に取り組む仲間を募集します。

    現在、井庭研では、学部生15人、修士4人、博士7人で研究活動に取り組んでいます。日頃の井庭研の様子は、現役メンバーがつくってくれたこの映像(5分)"「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことを研究している井庭研の日々はこんな感じ!" (https://youtu.be/jQKgVGrUvS8)を見てみてください。

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    2022年度秋学期には、以下のプロジェクトが動く予定です。本シラバスに書いてある井庭研で目指していることや大切にしていることをよく理解した上で、エントリーしてください。

    (1) 中学校でのクリエイティブ・ラーニングとパターン・ランゲージ実践研究
    (2) 魅力的な組織の「よさ」「らしさ」の言語化と継承の実践研究
    (3) パターン・ランゲージによる新しい開発援助の実践研究(フィリピン)
    (4) 創造を巻き起こす「ジェネレーター」のパターン・ランゲージの作成研究
    (5) 成果を上げる組織におけるWell-beingのパターン・ランゲージの作成研究
    (6) 市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成研究
    (7) 『ともに生きることば』を用いた高齢者ケア研修の実践研究


    ■ 重要な日程
    • 井庭研説明会:7月20日(水)3・4限 @ τ12
      エントリーを考えている人は、できる限り参加してください。井庭研の概要説明のほか、現役メンバーと話す時間を設けます。
    • エントリー〆切:7月23日(土)23:59
    • 面接:7月25日(月)(キャンパスで対面で実施)
    • 春学期末発表会:7月28日(木) (キャンパスで対面で実施)
      秋にも続くプロジェクトの発表があるのと、井庭研でやっていることについて学ぶことができるので、都合をつけて、ぜひ参加してください。

    8〜9月には、夏の特別研究プロジェクトを実施します。面接後、合格した新規メンバーも、夏の特別研究プロジェクトに履修参加することができます。特別研究プロジェクトのシラバス「実践の本質学:パターン・ランゲージのための現象学探究」http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/sb/log/eid604.html )を見てみてください。


    ■ 未来ヴィジョン - ナチュラルにクリエイティブに生きる「創造社会」

    井庭研では、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことについて、実践的に探究しています。暮らしや人生、仕事、教育、社会などの様々な領域における「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことの本質を捉え、パターン・ランゲージのかたちで表現し、それを用いて人々の実践支援をする研究に取り組んでいます。見据えている未来は、一人ひとりがもつ自然な創造性(ナチュラル・クリエイティビティ)を活かして暮らし生きていく「創造社会」(Creative Society)です。

    僕(井庭)は、ここ100年の変化を、「消費社会」から「情報社会」、そして「創造社会」という流れで見ています。消費社会においては、人々は家電や車など、物やサービスを購入し享受することが生活・人生の豊かさだとされていました。情報社会に入って、コミュニケーションに関心の重心がシフトし、よいコミュニケーションや関係性を持つことが生活・人生の豊かさを象徴するようになりました。そして、現在すでに一部で始まりつつある創造社会では、人々が自分たちで自分たちの使う物や考え、方法、仕組み、社会、あり方・生き方をつくり、どのくらい自分たちで「つくる」ことに関わっているのかが生活・人生の豊かさになっていくと考えられます。

    自分たちで自分たちの物事をつくっていくということは、可能性に満ちた素敵なことですが、単にそれは素敵なことだから重要になるのではなく、社会の切実な面もあります。多様性と自由がますます認められるようになった社会においては、人々のニーズや課題を画一的なアプローチでは満たせなくなってきます。あちこちで生じている多様な問題は、どこかからヒーローがやってきてすべて解決してくれる、というようなことは起こり得なくなってしまいました。それゆえ、それぞれの人がそれぞれの立ち位置において、問題を解決し、よりよい未来をつくっていくことが不可欠になっているのです。しかも、地球温暖化のような人類・地球規模の難題もあり、世界中の人たちがそれぞれに工夫し、知恵を出し合い、創造的に取り組んでいく必要があります。「創造社会」というとき、そのような時代背景とスコープで捉えています。

    「創造社会」を生きるというとき、テクノロジーにますますがんじがらめになり人工的な生を生きるという方向ではなく、よりナチュラルに人間的に生きていくという方向を、僕らは目指しています。そして、そのための道具立てとして実践の言語パターン・ランゲージ」をつくり、活かすことで、人々が「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことを下支えする「ソフトな社会インフラ」をつくりたいと思っています。

    情報社会において、コミュニケーションによる Social(人間関係的)な面が色濃く強化されてきました。そこでは、さまざまなメディア(SNSなど)を介して、いろいろな人とつながり、やりとりがされています。人は一人で生きているわけではなく、社会のなかで他者と協力・連携しながらともに生きていくことが不可欠なので、Socialな側面は必要ではあります。しかし現状では、社会的な役割や関係のなかで息苦しさを感じたり、コミュニケーションが過剰で疲弊したり傷つきやすくなったりしているように思います。これからの未来では、Socialな面ばかりでなく、NaturalやCreativeな面の重要性も上がり、Natural、Social、Creativeがバランスよく重なるような暮らし方・生き方が大切だと、僕らは考えています。

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    ■ 自然な深い創造(natural deep creation)

    井庭研では、何かを「つくる」という「創造」(creation)について、その本質を探究するとともに、各実践領域における実現方法について研究しています。

    昨今、国内外で創造性(クリエイティビティ)の重要性が叫ばれ、「こうすればより創造的に考えることができる」というプロセスやテクニックが話題になっています。このような状況のなか、井庭研は、もっと深いレベルでの創造 --- 「自然な深い創造」(natural deep creation) --- にフォーカスしています。それは、人間が根源的に持っている力を活かした創造です。それは、ああする・こうするという「行為」というよりも、「創造」という「出来事」が自ずから生じるようなあり方で生起することに人間が関わる、というような創造です(このことを専門的に言うと、「中動態」で表されるべき創造だということになります。市川・井庭著の『ジェネレーター 』という本の第5章で論じているので、興味がある人は読んでみてください)。

    それはまるで植物を育てるときのように、創造という出来事の成長に関わる・参加するというようなものです。そのとき、創造に関わる人(の潜在意識)は、植物が育つための「」のような役割をします。土があることで安定して成長することができるとともに、その土から得た栄養が成長を可能にします。このように、植物が育つように、つくっているものが「育つ」というのが、「自然な深い創造」(natural deep creation)の感覚です。そして、そういう創造が起きるとき、そこに関わる人たちの力んだ力は抜け、とても「自然(ナチュラル)」な状態になります。つくり手は、自分がつくっているものをコントロールしなければならないという意図や作為から解放され、いきいきとして、実感(フィーリング)を持ちながら参加することになります。これは、とても人間的な状態とも言えます。この意味での「自然な深い創造」に注目しています。

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    他方、自然環境の意味での「自然(ネイチャー)」の観点も大切にしています。上記のような「自然(ナチュラル)」な生成の状態は、人工的な環境よりも、自然環境に触れているようなときの方が発動されやすくなるためです。都市や人工物はすべて人の手による産物であり、その背後には、それをつくった人がいます。これに対し、自然環境は、まさに、人の手の範囲を超えて、「自然(ナチュラル)な」生成によって生まれ育ってきたものなのです。身近な「小さな自然」に触れたり、「大いなる自然」のなかに浸ったりすることで、人間はより「自然(ナチュラル)な」状態になりやすくなるのです。

    以上見てきたように、井庭研でいう「自然(ナチュラル、ネイチャー)」には、「内なる自然」(inner nature)と言える生成的な面と、「外なる自然」(outer nature)と言える自然環境という(本来は表裏一体の)両方の意味が含まれている。そのような意味での「自然な深い創造」(natural deep creation)であり、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」(natural & creative living)なのです。


    ■ 「自然な深い創造」の力を高めるための3つの領域

    「自然な深い創造」の力を高めるためには、(1) 思考の概念装置(2) 想像の微生物(3) 生成の型という3つの領域のことが大切になります。

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    まず、(1) 思考の概念装置は、思考レベルでの認識や推論に関わるもので、いくつもの概念で構成される学説や理論というような「思考の道具」を揃え、使いこなせるようになることです。そのための典型的な方法は本を読むことで、そこで紹介されている概念装置を自分に取り込み、自分のなかで組み立て、うまく作動するように調整して体得することです。

    かつて社会科学者の内田義彦は、思考の概念装置について、「組み立てながら、たえず自分の眼をはたらかせてその効果のほどを験してみながら、組み立て方・使い方を体得する」ことの重要性を強調しました。そうすることで、単に受け売りで振りかざすようなことではなく、さまざまな物事について深く認識し、自分でしっかりと考えることができるようになるのです。これは、意識(consciousness)上での出来事で、土のメタファーでは地表の上での装置の作用だと言えます。

    次に、自分という土の中では、(2) 想像の微生物が、想像力(imagination)を豊かにするものとして働きます。私たちは日々暮らすなかで、いろいろな経験をし、感じます。それらのごく一部は記憶として取り出せるように保存されますが、ほとんどのものは、記憶の奥底に、つまり、「潜在意識」や「無意識」と言われる領域(subconsciousness)に溜まっていきます。そして、それらは小さな断片に解体され、熟成されます。土の中で微生物があらゆるものを分解・発酵させ土に変えていくように、あらゆる経験は分解・発酵され潜在意識の土に取り込まれていきます。そして、そうやって分解・発酵されたものは、将来何かを想像するときの素材・養分になります。

    ファンタジー作家のミヒャエル・エンデは、「たいていのものは無意識の深みで、すっかり変形し、変容」すると言い、「そのように変容されたものは、とつぜんファンタジーや、アイディアや、イメージになって、私の前に現れます。言いかえれば、忘れて変容した記憶が多ければ多いだけ人格が豊かになる、ということです」と語っています。心理学者レフ・ヴィゴツキーも、「想像はいつも現実から与えられた素材によって成り立っています」と言い、「人間の過去経験が豊かであればあるほど、その人の想像に資する素材も多くなります」と述べています。そして、芸術的な創造でも、科学的な創造でも、技術的な創造でも、「想像力による創造活動は、人間の過去経験がどれだけ豊富で多様であるかに直接依存している」のだと述べました。このように、いろいろな経験が分解・発酵され、潜在意識の領域を豊かにするほど、想像力が豊かになり、創造への力となるのです。これが土の中で起きる微生物の働きによる作用です。

    こうして、地上と地下のそれぞれの作用について見てきました。それぞれ異なる働きをしていて、どちらも創造的な実践(思考・行為)をするためには不可欠です。しかし、これらがバラバラにあるだけでは、その力はフルには発揮されません。地下で生み出される内なる力が、地上での動作にうまく連結されなければなりません。その要(かなめ)になるのが、(3) 生成の型です。

    生成の型は、その種の実践における「押さえどころ」のことです。生成の型を身につけることで、地下の内発的な力を地上のパフォーマンスにうまく接続することができるようになります。ここで言う「型」というのは、武道や芸道で身につける「型」の意味での「型」です。それは、多様な生み出し方に共通する(いつも踏まえるべき)不変の押さえどころの意味です。実践者は自由に振る舞っているにもかかわらず、その生成の「型」を押さえているので、質の高いパフォーマンスが可能になります。これが、武道や芸道の「型」の意味です。

    “型”という言葉には、もう一つ、別の意味があり、日常的にはそちらの方が想起されやすいでしょう。型のもう一つの意味とは、複製のための「鋳型」(いがた)のことです。たい焼きのプレートのようなものです。それは、同じ形のものをいくつも複製するために用いられます。「型抜きをする」「型にはめる」「型にはまる」という言い方で言われるときの“型”は、こちらの意味です。それは、テンプレートであり、鋳型のことです。これは、武道や芸道で言われる「型」とは、別物です。武道や芸道で言われる「型」には、同じものを複製するという意味やニュアンスはありません。生み出し方も結果も多様になるようになるからです。そこで、ここでは、「複製の鋳型」に対して、「生成の型」という言葉で表現しました。自然な深い創造を可能とする3つ目のポイントは、「生成の型」を踏まえるということです。

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    ■ 生成の型を言語化して共有を促す「パターン・ランゲージ」

    いま、「自然な深い創造」の力を高める3つの領域について見てきましたが、最初の(1)思考の概念装置は、深い読書によって手に入れ、自分で実際に試してみることで、身につけていくことができます。そして、(2)想像の微生物については、日々いろいろな経験を大切にし、感受性を研ぎ澄まし、感じることで豊かにしていくことができます。

    これら2つに対し、(3) 生成の型は、少し工夫が必要です。その工夫として井庭研が取り組んでいるのは、生成の「型」を言語化して共有するというアプローチです。生成の「型」(パターン)を言語(ランゲージ)化するので、「パターン・ランゲージ」(pattern language)と呼ばれます。

    パターン・ランゲージは、各領域における実践の「型」を言語化し、共有することで、他の人たちが身につけやすくします。すでに述べたとおり、生成の「型」は、多様な生み出し方に共通する(いつも踏まえるべき)不変の押さえどころです。それを文章で記述・説明するとともに、それを表す新しい言葉をつくります

    この実践の「」を別の言い方で表すならば、実践の「コツ」と言えます。「コツ」の語源は「骨」(こつ)です。つまり、それは実践の軸のようなものであり、その実践がぐにゃぐにゃにならずに、実践がしっかりと「成り立つ」ための「骨」なのです。パターン・ランゲージでは、「コツ」(その実践を成り立たせる骨)を明文化し、それに名前をつけることで、「コツ」の共有・継承を支援するのです。

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    「型」や「コツ」の場合と同様に、パターン・ランゲージの記述では、ほどよい抽象化がなされている(「中空の言葉」になっている)ので、それぞれの実践者の状況に合わせて具体的なところをアレンジしたり、その人らしいやり方で行ったりすることができるようになっています(そのようにつくります)。

    このように、井庭研では、生成の型を言語化して共有するパターン・ランゲージをいろいろな分野で作成し、その領域での実践者の支援をするということに取り組んでいます。ある分野のパターン・ランゲージがあることで、その分野での自然な深い創造を実現する実践を支えるのです。

    参考までに、一昨年から昨年にかけて作成した、オンライン授業づくりについてのパターン・ランゲージ「最高のオンライン授業のつくり方:新しい学びの場づくりのパターン・ランゲージ」を紹介しておきます。

    note「最高のオンライン授業のつくり方:新しい学びの場づくりのパターン・ランゲージの紹介」
    https://note.com/iba/n/nf20418530d60

    このパターン・ランゲージは、EdTechZineというWebマガジンで記事になっているので、そちらもよければ、見てみてください。

    「最高のオンライン授業のつくり方」とは? 離れた世界をつなぐコツ【慶應義塾大学 井庭崇教授によるパターン・ランゲージ】前編
    https://edtechzine.jp/article/detail/5392

    新しい学びのかたちと学生の居場所をつくり、最高のオンライン授業を!【慶應義塾大学 井庭崇教授によるパターン・ランゲージ】後編
    https://edtechzine.jp/article/detail/5423

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    パターン・ランゲージをつくるときには、すでによい質を生み出している人から、その実践において大切なことを聞き出し、その経験則(型)から、抽象化、体系化、言語化してつくっていきます。このようにつくられたパターン・ランゲージを用いると、うまく実践できていない人を助けたり、これから始める人の参考になったり、実践について語るための語彙・共通言語としてコミュニケーションの支援になったりします。このように、パターン・ランゲージは、社会の多くの人々を支えるメディアになるのです。

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    ■ パターン・ランゲージをつくるプロセスと方法論

    井庭研では、これまで十数年間、パターン・ランゲージのつくり方をつくり、そのプロセスと方法論を洗練させてきました。実践に潜む「型」を捉えて、パターン・ランゲージとしてまとめるときには、その実践の本質を捉えて「抽象化」し、パターン間の関係性をつかんで「体系化」し、その本質と体系を踏まえて「言語化」します。具体事例をベースにパターンを捉え、その本質をつかむというときには、現象学における「本質観取」と同様のことを行っているということが、最近わかってきました。つまり、哲学と同様の深い思考・探究が必要だということです(そのため、2022年の夏に、現象学の本質観取についてしっかり学ぼうということになりました)。

    また、パターン・ランゲージは、数十のパターンが相互に関係する体系(システム)をなしているのですが、その関係性を見定め、ひとつの体系として編み上げるときには、背後にある関係・構造を捉える構造主義的思考や、抽象的に捉えるシステム思考モデリングのセンスが求められます。そして、パターンを記述するときには、現象学の「本質記述」をするとともに、パターンの名前をつくるときには、本質を捉え、かつ魅力的な言葉になるようにつくり込んでいく必要があります。このように、パターン・ランゲージをつくるということは、高度な知性と豊かな感性を総動員してつくるということなのです。

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    ■ パターン・ランゲージは、歌の歌詞に似ている

    パターン・ランゲージは、単に現象を説明する理論的記述なのではなく、読み手が「自分の状況に当てはまる」と思うこと、そして、そこで推奨されていることを魅力的だと思い、実際にやってみようと思うものになっている必要があります。物事の本質を捉えるとともに、心が動き、身体が動くような表現になっていることが求められるのです。僕は、これは、J-POPのようなポピュラー音楽の歌詞をつくることに似ていると思っています。

    聴き手が「自分の状況に当てはまる」と思い、そこで歌われていることを魅力的だと思い、自分の歌として口ずさんだり、カラオケで歌う、そういう歌の歌詞のようなものだと思うのです。実際、作詞を手掛けている人たちが、歌づくりで語っていることは、パターン・ランゲージの作成と共通すると感じることが多々あります。AメロやBメロでその状況における悩みや迷いが歌われ、それをどう捉えるかや乗り越えていくようなポジティブなメッセージがサビで提示されます。聴き手は、その歌を聴き、歌詞を受け取るなかで、元気をもらったり、勇気づけられたり、世界をポジティブに捉えることができるようになります。

    パターン・ランゲージも、ある状況における問題から始まり、それを乗り越えていく方法が示されます。それは読み手の内側から「自分のことだ」「自分の近未来だ」と思うように書いていきます。読み手が実感をともなって、ありありとその内容をイメージできるようにつくるのです。歌とは異なり、音楽が持つ力を借りることはできません。しかしながら、うまくつくれば、読み手のペースで、自分のものとして内側からその人を温めるようなものになります。

    実際、僕らがつくったパターン・ランゲージの読み手から、「背中を押してくれました」「元気をもらっています」「心の支えになっています」「お守りのような存在です」「これがあったから、なんとかやってこれました」という声をもらいます。そういう声を聴くたびに、まるで心から共感する大好きな「歌」のような存在だな、と思うのです。僕は、歌のつくり手たちの言うことにとても共感するのですが、僕らは実践者の話からパターン・ランゲージをつくるので、特に、小説などの原作を歌にするYOASOBIのAyaseさんの言うことはとても近く、通じるものがあると感じています。

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    パターン・ランゲージは、単に現象を説明する理論なのではなく、それを受け取る人のなかで流れ、内側から温める「歌」のような存在なのです。


    ■ 井庭研で「自然な深い創造」の力を身につける

    井庭研では、(1)思考の概念装置(2)想像の微生物(3)生成の型について研究・発信するだけでなく、自分たちでも、それらを大切にし、実践しています。

    (1) 思考の概念装置を獲得して使いこなせるようにする読書
    井庭研では、たくさんの本を徹底的に読み込みます。創造やパターン・ランゲージに関する本はもちろん、哲学、文章術、研究方法論、教育や学習に関する本なども読みます。他には、プロジェクトごとに研究テーマにまつわる文献も読んでいきます。読んできてみんなで話し合う機会もつくりますが、多くは各自が自分で読み進めていきます。2022年度の夏休み期間も、特別研究プロジェクトで、エトムント・フッサールの現象学の本をみんなで読んでいきます(特別研究プロジェクトのシラバス「実践の本質学:パターン・ランゲージのための現象学探究」:http://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/sb/log/eid604.html )。

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    (2) ナチュラルにクリエイティブな経験を積み、想像の微生物を豊かにする
    井庭研では、研究室でのプロジェクト活動や話し合いのほかに、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことの実践を積むことを大切にしています。例えば、研究テーマに関連する場に出かけて行き体験したり、美術館や展示会に足を運び、感性を豊かにしたりしています。また、井庭研の畑スペースを借りていて、「小さな農」として、畑で野菜を育てるという体験もしています。

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    また、Creativeの面では、プロジェクトで本格的な創造実践の経験を積み、自己成長し、創造の道を極めていきます。1年に1つのプロジェクトに参加し、それぞれの得意を持ち寄るコラボレーションによって個人の限界を超えることができるほか、学び合いや高め合いが起きます。このようにして、今の自分からアップグレードし続け、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」力を高めていくのです。

    井庭研では、大学時代の数年間だけでなく、大学院へと進み、さらに井庭研での創造実践の経験を積んでいくことを推奨しています。実際、修士課程と博士課程まで続けて、自分を豊かにして力を養いながら、魅力的な研究・活動をしている人たちがいます。本当に力をつけ、その力を活かして生きていくためには、2、3年という修行時間では短すぎるのです。自分の人生をワクワクするものに育てていくためにも、井庭研で腰を据えて取り組み、力を蓄え、発揮できるようになっていくことをおすすめします。入る前からそこまで決める必要はありませんが(実際にやってみないとその面白さもわからないですし)、そのようなワクワクする未来もあり得るのだ、ということは知っておいてください。

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    井庭研では、大学院生だけでなく学部生も、世界で初めての付加価値を生む、学術的な知のフロンティアを開拓する「研究」を行っているため、プロジェクトの研究成果は、英語で論文を書き、国際カンファレンスで発表します。北米やヨーロッパ、アジアで開催されるカンファレンスに参加し、海外の研究者や実務家たちと交流したり、井庭研の方法論や成果を用いたワークショップを実施したりします。このような点も、井庭研の特徴と言えるでしょう。

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    (3) これまでつくってきたパターン・ランゲージを活かして生成の型を身につける
    井庭研では、自分たちの実践をよりよいものにするように、これまでにつくったパターン・ランゲージを自分たちも徹底的に活用しています。創造的な学びのラーニング・パターン、探究・研究のための探究パターン、創造的読書の「Life with Reading」、チームワークのコラボレーション・パターン、創造的プレゼンテーションのプレゼンテーション・パターンなど、自分たちの活動や学びに直結するものをすでにつくっているので、それらを用いた対話によって、成長への道をひらきます。

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    ■ 井庭研で取り組んでいる「新しい学問」

    学問的に見たときに、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」や「自然な深い創造」、「創造社会」ということを考えるときに直球で答えてくれる学問分野は、現在ありません。そのため、既存の学問的枠組みや方法論を超えた「新しい学問」を構築しながら取り組むことが必要となります。井庭研では、新しい学問の土台をつくりながら、その上で具体的な研究を進め、そのことによってさらに土台が固まっていくというような、大胆で実験的なやり方で研究に取り組んでいます。その「新しい学問」を、僕は「創造実践学」「創造の哲学」「未来社会学」と名付けています。
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    創造実践学」(Studies on Creative Practice)は、私たちの暮らしや仕事・活動におけるさまざまな創造的な実践の本質を明らかにし、共有可能なかたちにしていく学問として構想されています。各領域の創造実践の本質を明らかにし、パターン・ランゲージとして表現して活用することが、その主力の研究方法となります。

    創造の哲学」(Philosophy of Creation)は、創造とは何か、についての哲学的探究を行うものです。現象学の方法によって創造の本質を観取するとともに、プラグマティズムの哲学や東洋哲学などとの関係についても深めていきます。

    未来社会学」(Future Sociology)は、ナチュラルでクリエイティブに生きる未来の社会のヴィジョンを描き、その内実を研究する未来志向の学問です。創造社会では社会の一つの機能システムとして「共創システム」というものが作動し、そこではパターン・ランゲージのメディアや、「ジェネレーター」という役割が重要になるというような、未来ヴィジョンの社会像を明らかにしていきます。

    これらの三つの学問を構築するにあたり、僕たちはゼロからスタートするのではありません。これまでの人類のさまざまな知見・学問成果を踏まえながら、大胆に組み替え、読み替えながら、取り組んでいきます。哲学、社会学、人類学、認知科学、心理学、教育学、建築学、デザイン論、芸術論、美学、数学、文学、経営学、思想史などを必要に応じて縦横無尽に学び、取り入れていきます。その意味で、いろいろな学問領域を横断し、それらを超越して研究するという「超領域的」(トランス・ディシプリナリー:trans-disciplinary)な営みとなります。しかも、西洋の学問だけでなく、東洋哲学・思想とも積極的に関わり、西洋と東洋の知を融合させたこれからの学問をつくっていこうとしています。とてもSFCらしい、ユニークな学問のアプローチだと思います。

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    ■ 現役メンバーからのひとことメッセージ

    いま井庭研にいる学部生と大学院生(の一部)から、その人から見た井庭研や関わりについて、また、興味をもってくれているみなさんにひとことメッセージをもらいました。

    「井庭研はかなり忙しい研究会ですが、その代わりに社会の役に立つことを本気で研究できます何かを「つくる」ことは本当に苦しく、ずーっと悩んでしまうような時間もありますが、必ず発見は起こるし、自分自身の成長もあります!一緒に井庭研で研究しませんか?」(4年生)

    「私は、創造性を研究したいと考え、先生の考え方に共感して井庭研に入りました。先輩後輩で活発に意見交換が交わされるような場は、なかなか出会えない経験です。自分のしたいことがここにある人は、必ず実りある楽しい時間を過ごせることと思います!」(2年生)

    SFCに入ってよかった! 井庭研に入ってそう思いました。」(4年生)

    「私は1年秋学期にとった井庭先生の授業がきっかけで、2年春学期に井庭研に入りました。井庭研は、何に対しても目を輝かせながら楽しそうに取り組む人が多いとても暖かい場所です。「つくる」ことにとことん向き合える井庭研で、一緒に充実した時間を過ごしませんか?」(2年生)

    「私は、授業を通して井庭研を知り、入りました学びの領域に広がりがあるところが大好きです。」(3年生)

    「別の研究会、SFC外での活動を経て、3年生の夏の特別研究プロジェクトから井庭研究室に入りました。入った当初は、議論されている内容のレベルの高さと量に圧倒されましたが、先生や先輩たち、同期、後輩に支えられながら、学んでいくことの楽しさにどんどんとはまっていきました井庭研が楽しすぎて、現在は修士に進学し、研究活動に没頭しております。入って2年が経ちますが、たくさんの本に触れ、みんなで議論をして、研究活動に取り組み、知的に楽しい時間を過ごすなかで身につけた様々な概念は、かけがえのないものとなっております。」(修士1年)

    「私は他の研究会の雰囲気などもある程度知った上で、井庭研を選びました。そんな自分から見ても、研究やどんなことであっても面白がる人が多い、そんな気がします。研究熱心であり、学びも共有する。驚くくらいに自分自身もこの数ヶ月ですが、変わってきました。目の前に自分にできる事があったら積極的に取りに行くと、沢山ものにできると思います!!」(3年生)

    「私は体育会のテニス部に所属しながら井庭研での活動に取り組んでいます。高校時代までは勉強よりもスポーツを好んでいましたが、井庭研に入り、学ぶことの楽しさを知ることができました。これは一生の財産であると感じています。課外活動との両立は大変なこともありますが、モチベーションの高い仲間に支えられ、楽しく続けられています。」(4年生)

    「2年生のころ、サークルとの両立が不安だな...と思いながら入った井庭研でした。正直大変だと感じることもありましたが、先生や他の井庭研メンバーに支えられながら、今も研究活動を続けて来られています。プロジェクトでは膝を突き合わせて、どんな未来をこの研究からつくっていけるのかをみんなで話したり、一つひとつのイベントを全力で設計したり、時には研究会後にみんなでご飯に行ってお互いにお疲れ様って言い合ったり、卒業単位が取れればいいや、ではなく、本気でここで創造していきたいと思わせてくれるような研究会だと感じています。まだやりたいことが明確じゃないとか両立が不安...という人も、「いいな」と心動く瞬間があったなら、ぜひ一緒に研究してみませんか?」(4年生)

    「井庭研に入って、約3年。井庭研に出会えたおかげで、私は大きく変わりました。例えば、本に対する姿勢。読書感想文の時に読む本以外で、自分から本に手を伸ばしたことがなかった私が、今では、時間があれば本を読むレベルに読みたい本がありすぎて追いついていないくらいのレベルになっています。また、高校の時に行った「課題研究」によって「研究」に対して毛嫌いがありましたが、井庭研のメンバーがつら楽しそうに「研究」に向き合っている姿を近くで感じていたら、気付いたら自分も「研究」に面白さを感じ、修士という道を決めたほどに魅了されていました。さらに、大学に入りたての頃は、「自然」からかけ離れた暮らしをしており、「自然が好き!」とあまり思ったこともなかったが、井庭先生や井庭研にジェネレートされてしまったおかげで、今では、周りの友達から、「私=自然が好きな人」ということになっています。ここに書いたのはほんの一部ですが、私にとって井庭研は、新しい世界を見せてくれる場所であり、今まで逃げてきたものから向き合い直してくれる場所であり、そういえば昔から好きだったなあと潜在的な部分に気づくきっかけを与えてくれる場所です!」(4年生)

    「私は、3年生の春学期に井庭研に入り、もともとそんなつもりはなかったけれど、気づいたら修士に進学して、井庭研で研究しています。それでも全然飽きないどころか知的好奇心は高まるばかりです。それくらい、いろんなテーマの研究をしています。プロジェクト活動(研究)も学期末発表会もそのほかのイベントも、全力で一からつくります一人ではできないような、たどり着けないようなところまでいける面白さがあります!」(修士1年)

    「私は3年生の春に井庭研に入り1年半。なんでこの場にもっと早く出会えなかったのかと後悔する日々です。井庭研は、日々知的好奇心にワクワクしながら本気で研究に向き合える場であり、私という一人の人間を一切否定することなく真正面から向き合ってくれるメンバーと研究することでまだ見ぬ私に出会えたり、成長できるきっかけを与えてくれる場です。このシラバスを読んで少しでも私たちの考えへの関心・この場所が素敵だと思っていただけると嬉しいです、そしてそんな方は私のように「この場にもっと早く出会いたかった」と後悔ないようぜひ一緒に研究をしましょう!」(4年生)

    「僕は、この研究会に入らなくても、それはそれで毎日を楽しく過ごせていたと思います。ですが、井庭研に入ったことで「こんな楽しさもあるんだ!」といろんなことに気づき、世界がこれまでの何百倍も面白くなりました。井庭研には、井庭研にしかない面白い取り組み本気で「つくる」機会自分が成長できるチャンスがいくらでもあります。あなたも、今より世界を楽しむために井庭研に入りませんか?」(3年生)

    「井庭研は比較的忙しい研究会と言われています。でも、あたたかくて面白くて、高めあえる仲間がいます。先輩、後輩、同期、そして先生。一緒にたくさんの時間をともに過ごし、笑ったり泣いたりしながら、一人ではたどりつくこともできなかったであろう世界を知り、広げていく経験は、すごく貴重で、ワクワクするものです。井庭研で扱うこと(内容)の知識はゼロから始まる人がほとんどですが、最高のコラボレーションをしてみたい人、そのために貢献しようと動いてくれる人、ウェルカムです!ぜひ一度遊びに来てみてください!」(修士1年)


    ■ 2022年秋学期のプロジェクト

    井庭研では、日々どっぷりと浸かって一緒に活動に取り組むことを大切にしています。

    全員で集まる時間は、 水曜の3限から夜までのプロジェクト活動の時間と、木曜の4限から夜までの全体ミーティング(ゼミ)の時間です。その時間は、全員での《まとまった時間》としているので、この時間は、授業や他の予定を入れないようにしてください。

    2022年度秋学期には、以下のプロジェクトが動く予定です。井庭研のメンバーは、どれかひとつのプロジェクトに参加し、研究に取り組みます。 各プロジェクトは、複数人で構成され、成果を生み出すためのチームとして、ともに助け合い、高め合い、学び合いながら、研究に取り組みます。どのプロジェクトも若干名の募集となりますが、新規メンバーを募集します。

    (1) 中学校でのクリエイティブ・ラーニングとパターン・ランゲージ実践研究
    (2) 魅力的な組織の「よさ」「らしさ」の言語化と継承の実践研究
    (3) パターン・ランゲージによる新しい開発援助の実践研究(フィリピン)
    (4) 創造を巻き起こす「ジェネレーター」のパターン・ランゲージの作成研究
    (5) 成果を上げる組織におけるWell-beingのパターン・ランゲージの作成研究
    (6) 市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成研究
    (7) 『ともに生きることば』を用いた高齢者ケア研修の実践研究

    以下、各プロジェクトの概要です。

    (1) 中学校でのクリエイティブ・ラーニングとパターン・ランゲージ実践研究【新規プロジェクト】
    本プロジェクトでは、実際に中学生と関わるような活動もしながら、中学校での学びにおけるクリエイティブ・ラーニングとはどのようなものなのかについて考えていきます。具体的には、中学生のクラスをフィールドとし、「彼らの将来の可能性を拡げる」ことや、「楽しみながらいきいきと探究する学習」を、パターン・ランゲージを使ってどのように本質的に、実現できるかを、文献などもあたりながら探究し、模索していくプロジェクトです。例えば、「自分が知りたいことを探究する支援」のひとつとして、中学生とのパターン・ランゲージ作成なども視野に入れています。

    (2)魅力的な組織の「よさ」「らしさ」の言語化と継承の実践研究【新規プロジェクト】
    研究会やサークルなど数十人規模の組織において、メンバーが卒業したり新しく入ってきたりしていっても、その組織らしさが続いていくためには、どうしたらよいでしょうか? 本プロジェクトでは、井庭研とアカペラシンガーズK.O.E.(SFCにあるアカペラサークル)を対象に、よい仕組みや実践について、パターン・ランゲージの形式で言語化していきます。具体的には、OB・OGや現役メンバーと対話しながら、その組織で大切にされていることとその意義を、事例を踏まえながら言語化していきます。また、そうした「らしさ」がこれまでどのように継承されてきたのかを、メンバーの語りから分析していきます。

    (3) パターン・ランゲージによる新しい開発援助の実践研究【春学期からの継続】
    本プロジェクトでは、これまで井庭研でつくってきた、仕事、教育、暮らし、生き方などのさまざまな分野のパターン・ランゲージを、国内外の諸地域の人々のエンパワーに活かしていくことを試みます。例えば、フィリピンの若者の支援として、現地の関係者や支援者と協力し合いながら、これまで井庭研でつくってきたパターンのなかから重要なパターンのセットをつくり、現地語で提供し、活用するための伴走を行います(パターン・ランゲージ・リミックスと伴走型支援)。また、現地でのロールモデルとなるような人たちの実践からパターン・ランゲージを作成し、現地の人たちの暮らしや生き方の参考になるものを作成します。このような研究・実践のなかで、人々のケイパビリティ(潜在能力)を高める、新しい開発援助(発達・発展の支援)のかたちを構築していきます。

    (4) 創造を巻き起こす「ジェネレーター」のパターン・ランゲージの作成研究【春学期からの継続】
    ジェネレーターは、ともにつくり、発見とコミュニケーションの生成・連鎖を誘発する存在です。これからの創造社会では、知識・スキルを教えたり、話し合いを促すという役割だけでなく、一緒につくることに参加して創造を巻きおこすジェネレーターが重要になります。しかし、ジェネレーターは、単なるスキルではなく、あり方であり生き方でもあります。そのため、他のジェネレーターがやっている振る舞いを単に真似るだけでは、ジェネレーターにはなれません。それでは、ジェネレーターにおいては何が大切なのでしょうか。本プロジェクトは、そのようなジェネレーターの秘密に迫る研究に取り組んでいます。本プロジェクトは、一般社団法人みつかる+わかる の「We are Generators!」との共同研究です。

    (5) 成果を上げる組織におけるWell-beingのパターン・ランゲージの作成研究【春学期からの継続】
    本プロジェクトでは、しっかりと成果を追求する企業組織において、Well-doing(よい成果を上げる)とともに、Well-being(幸福、健康)な状態をどうしたら維持できるのかについて研究しています。企業の社員へのインタビューからパターン・ランゲージを作成し、組織におけるWell-beingの向上を目指します。本プロジェクトは、楽天グループ株式会社との共同研究です。

    (6) 市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成研究【春学期からの継続】
    すでにある競争のなかで、いかにパイを取るかということではなく、新しい商品・サービスで新しい市場を生み出すときのマーケティングはいかに行えばよいのか。本研究では、広告業界での経験が豊かな共同研究者とともに、市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成に取り組んでいます。

    このほか、井庭研では、(7) 『ともに生きることば』を用いた高齢者ケア研修の実践研究にも取り組んでいます。今年出版した『ともに生きることば:高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』等を活用し、実際に介護施設等で、対話や実践支援による新しいアプローチの研修を実施していきます。この領域に特に強い関心をもっている人向けのプロジェクトです。


    【履修条件】

  • 井庭研をファースト・プライオリティにおいて活動できること。
  • じっくり取り組む時間の調整・確保を自らでき、研究・活動・勉強に徹底的に取り組むことができること。
  • 「知的・創造的なコミュニティ」としての研究会を、与えられたものとしてではなく、一緒につくっていく意志があること。


    【その他・留意事項】

  • 現1年生のエントリーを歓迎します。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を推奨しています(逆に、3年生後半や4年生からは、大学院進学を前提としている場合などを除き、原則として受け入れていません)。

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。


    【評価方法】

    研究会の成績評価は、日頃の研究・実践活動への貢献度や成長の観点から総合的に評価します。


    【エントリー課題】

    このシラバスをよく読んだ上で、期日までに、[1] エントリーシート[2] 文献課題[3] パターン課題 の3つを、それぞれ別々のPDFファイルで提出してください(ファイル名に自分の名前を入れるようにしてください)。

  • エントリー〆切:7月23日(土)23:59

    エントリー課題の提出先:https://forms.gle/BxERHgZDfaXXrzLW7

    なお、7月20日(水)3・4限 τ12(大学院棟タウ12)教室で、井庭研説明会を行うので、できる限り参加してください。井庭研の概要説明のほか、現役メンバーと話す時間を設けます。

    [1] エントリーシート
    タイトル:井庭研(2022秋)履修エントリー

    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
    2. 自己紹介と日頃の興味・関心(イメージしやすいように、適宜、写真などを入れてください)
    3. 井庭研への志望理由
    4. この研究会シラバスを読んで、強く惹かれたところや共感・共鳴したところと、その理由・考えたこと
    5. 参加したいプロジェクト(複数ある場合は、第一希望など、明示してください)
    6. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
    7. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    8. これまでに履修した授業のなかでお気に入りのもの、所属した研究会など(複数可)
    9. 日々の生活のなかで取り組んでいるサークル、学内外での活動・仕事・アルバイトなど

    [2] 文献課題
    井庭研での創造・研究に直球で関係がある以下の本のうち、1冊以上読んでみて、自分にとって面白いと感じたところについて、それがどこかということと、どのように面白いと感じたのかを書いてください(A4で1〜3ページ程度)。僕の授業で読んだ人も、改めてざっと読み直してみてください。


    [3] パターン課題
    井庭研に入ったら自分もつくることになる「パターン・ランゲージ」が実際どのようなもので、どのような質感を持つものなのかを実感してもらうために、パターンの記述に触れてもらいたいと思います。次の2冊のうちのどちらかのパターン・ランゲージ本を読み、感じたことを書いてください。その上で、どれか一つ、気に入ったパターンの文章とイラストをノート等に手書きで書き写しながら、その内容・表現の質感を、つくり手の内側の立ち位置で感じてください。その手書きを写真に撮ったものを掲載し、さらに、パターンを書き写したときの気づきや感想も書いてください(この[3]の全部でA4で2〜3ページ程度:パターンの書き写し部分のみ写真に撮り、それ以外の部分はパソコンでテキスト入力で作成してください)。


    handcopy1.jpg handcopy2.jpg

    エントリーや井庭研でのことについて、何か質問があれば、ilab-entry[at]sfc.keio.ac.jp([at]を@に変えてください)まで、メールをください。

    7月25日(月)に面接(キャンパスで対面で実施)を行う予定です。詳細の日時については、エントリー〆切後にメールで連絡します。面接には、現役メンバーも同席します(そのため、エントリー課題は担当教員以外も閲覧します)。


    【教材・参考文献】

    井庭研でやっていること・目指していることを知るための本として、わかりやすいのは次の7冊です。最初の3冊は考え方について語っていて、次の3冊はパターン・ランゲージの実例です。そして、最後の1冊は、創造社会とはどういうことかが、自分たちの暮らし方を自分たちでつくるという事例で感じられるものです。



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    慶應義塾の広報誌「塾」第311号(2021年夏号)「半学半教」
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    2022夏プロ「実践の本質学:パターン・ランゲージのための現象学探究」

    井庭研2022夏の特別研究プロジェクト
    「実践の本質学:パターン・ランゲージのための現象学探究」

    担当:井庭 崇(総合政策学部教授)
    タイプ:特別研究プロジェクトA(4単位:2022年秋学期に履修申告)
    実施形態:対面(オンラインも活用)

    【概要】
    かつて哲学者エトムント・フッサールは、自然科学のような「事実学」に対して、「本質学」としての現象学を提唱しました。その言葉を借りるのであれば、よい実践とは何かの本質を追究するパターン・ランゲージの研究は、「実践の本質学」と呼び得るでしょう。本特別研究プロジェクトでは、現象学の重要概念の理解を深めることで、よりよいパターン・ランゲージ作成の実践感覚についてつかんでいきます。また、そのあり方や方法論について自分の言葉でしっかりと説明できることを目指します。

    全体の進め方としては、三部構成になっています。まず最初に、私たちの目的に適した入門的な文献を読むことで、現象学の基本的な考え方を理解します。そこから、フッサールの著作を、現象学的還元間主観的還元本質観取(形相的還元)の三点の理解を軸として、該当箇所を読み込んでいきます。最後に、それらで得られた理解をもとに、パターン・ランゲージ作成における実践のポイントを明らかにするとともに、その方法論について考察し、レポートにまとめます。

    各回では、初回に決める担当者(複数の履修者)に、重要な箇所を引用してまとめた資料を作成し発表してもらいます。他の参加者は、その日の文献に目を通してくることは求められますが、文献メモ(自分にとって重要な箇所について書き出したもの)の提出は任意とします。当日は、発表担当者とプロジェクト担当教員を中心に、その文献の重要箇所を一つひとつ確認し、理解を深めていきます。

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    【本プロジェクトで取り上げる文献】

    ■現象学の入門的な文献


    ■今回読むフッサールの著作


    ■今回全員での読解対象ではないが、とても参考になる文献

    ■パターン・ランゲージについて理解するための文献


    【参加条件】
    2022年度春学期に井庭研究会を履修していた人もしくは、2022年度秋学期に井庭研究会を履修予定の人

    担当教員と相談の上、履修志望理由を7月31日までに担当教員に提出。

    【必要経費】
    各自、文献購入に約4万円ほどの費用がかかる予定です。


    【評価方法】
    文献読解、出席、発表、話し合いでの貢献、最終レポートから総合的に判断します。


    【授業スケジュール】

    8/3(水)10:00〜18:00 イントロダクション(オンラインのみ)
    特別研究プロジェクトの目的と進め方を確認し、今後の各回の文献について発表する担当者を決めます。『人間科学におけるエヴィデンスとは何か』と『現象学とは何か』の内容について重要箇所の理解を深めるための話し合いをします。


    8/16(火)10:00〜18:00 『現象学の理念』(対面)
    『現象学の理念』の内容について、担当者のレジュメ発表のあと、重要箇所の理解を深めるための話し合いをします。終了後、夜、懇親会を行います。

    8/17(水)10:00〜18:00 『ブリタニカ草稿』(対面+オンライン)
    『ブリタニカ草稿』の内容について、担当者のレジュメ発表のあと、重要箇所の理解を深めるための話し合いをします。


    8/31(水)10:00〜18:00 『デカルト的省察』(対面+オンライン)
    『デカルト的省察』の内容について、担当者のレジュメ発表のあと、重要箇所の理解を深めるための話し合いをします。

    9/1(木)10:00〜18:00 『経験と判断』(対面+オンライン)
    『経験と判断』の内容について、担当者のレジュメ発表のあと、重要箇所の理解を深めるための話し合いをします。


    9/26(月)10:00〜18:00 『イデーン I-I』+『イデーン I-II』(対面+オンライン)
    『イデーン I-I』と『イデーン I-II』の内容について、担当者のレジュメ発表のあと、重要箇所の理解を深めるための話し合いをします。

    9/27(火)10:00〜18:00 イデーン II-I』+『イデーン II-II』(対面+オンライン)
    『イデーン II-I』と『イデーン II-II』の内容について、担当者のレジュメ発表のあと、重要箇所の理解を深めるための話し合いをします。

    9/29(木)13:00〜17:00 ふりかえり(対面)
    これまで読んできた文献をふりかえって、まとめの話し合いをします。終了後、夜、懇親会を行います。

    最終レポート(現象学からみたパターン・ランゲージについて)
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    2022年春学期 井庭研シラバス:「自然な深い創造」の探究・実践・支援

    井庭研シラバス(2022年度春学期)

    「自然な深い創造」の探究・実践・支援
    - ナチュラルにクリエイティブに生きる未来へ


    [ 創造の場づくり / 企業におけるWell-being / 市場創造マーケティング / 価値観・世界観が変わる大人の学び / 新しい開発援助 / 自然のなかの子育て / 高齢者ケア / クリエイティブ・ラーニング・コミュニティ実践 ]

    井庭研究室では、日々「自然な深い創造」が生じる「ナチュラルにクリエイティブに生きる」社会へのシフトを目指して一緒に研究・実践に取り組む仲間を募集します。2022年度は、以下のプロジェクトが動く予定です(現時点のプランであり変更になる可能性があります)。本シラバスに書いてある井庭研で目指していることや大切にしていることをよく理解した上で、エントリーしてください。

    (1) 創造を巻き起こすジェネレーターのパターン・ランゲージの作成研究
    (2) 成果を生み出す企業におけるWell-beingのパターン・ランゲージの作成研究
    (3) 市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成研究
    (4) パターン・ランゲージによる新しい開発援助の実践研究
    (5) 価値観から変わる「創造的な学びの共同体」のナラティブ研究
    (6) 自然のなかの子育てのパターン・ランゲージの作成研究(深化・仕上げフェーズ)
    (7) 『ともに生きることば』を用いた高齢者ケアの研修・ワークショップの実践研究
    (8) クリエイティブ・ラーニング・コミュニティを実現する実践研究

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    ■これからの創造社会

    井庭研では、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことについて、実践的に探究しています。暮らしや人生、仕事、教育、社会などの様々な領域における「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことの本質を捉え、パターン・ランゲージのかたちで表現し、それを用いて人々の実践支援をする研究に取り組んでいます。見据えている未来は、一人ひとりがもつ創造性を活かして暮らし生きていく「創造社会」(Creative Society)です。

    僕は、ここ100年、消費社会から情報社会へと歩んできて、すでに始まっている次の時代は、創造社会だと考えています。消費社会においては、人々は家電や車など、物やサービスを購入し享受することが生活・人生の豊かさだとされていました。情報社会に入って、コミュニケーションに関心の重心がシフトし、よいコミュニケーションや関係性を持つことが生活・人生の豊かさを象徴するようになりました。創造社会では、人々が自分たちで自分たちの使う物や考え、方法、仕組み、社会、あり方・生き方をつくり、どのくらい自分たちで「つくる」ことに関わっているのかが生活・人生の豊かさになっていくと考えられます。

    自分たちで自分たちの物事をつくっていくということは、可能性に満ちた素敵なことですが、単にそれは素敵なことだから重要になるのではなく、社会の切実な面もあります。多様性と自由がますます認められるようになった社会においては、人々のニーズや課題を画一的なアプローチでは満たせなくなってきます。あちこちで生じている多様な問題は、どこかからヒーローがやってきてすべて解決してくれる、というようなことは起こり得なくなってしまいました。それゆえ、それぞれの人がそれぞれの立ち位置において、問題を解決し、よりよい未来をつくっていくことが不可欠になっているのです。しかも、地球温暖化のような人類・地球規模の難題もあり、世界中の人たちがそれぞれに工夫し、知恵を出し合い、創造的に取り組んでいく必要があります。「創造社会」というとき、そのような時代背景とスコープで捉えています。

    「創造社会」を生きるというとき、僕らは、テクノロジーにますますがんじがらめになり人工的な生を生きるのではなく、よりナチュラルで人間的に生きていくという方向性を目指しています。そして、そのための道具立てとして実践の言語パターン・ランゲージ」をつくり・活かし、人々が「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことを可能とし、社会を共通基盤として下支えする「ソフトな社会的インフラ」をつくっています。

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    ■自然な深い創造

    井庭研では、何かを「つくる」という「創造」(creation)について、深いレベルでその本質と、各実践領域における実現方法について研究しています。

    現在国内外で創造性(クリエイティビティ)の重要性が言われ、こうすればより創造的に考えることができるというプロセスやテクニックが話題になっています。このような状況のなか、井庭研では、そのようなアプローチの重要性・必要性を認めながらも、もっと深いレベルでの創造 --- 「深い創造」(deep creation) --- にフォーカスしています。それは、人間が根源的に持っている力を活かした創造です。それは、ああする・こうするという「行為」というよりも、「創造」という「出来事」が自ずから生じるようなあり方で生起するということに、人間が関わるというような創造です(このことを専門的に言うと、「中動態」で表されるべき創造だということになります)。

    それはまるで、植物を育てるときのように、人間は環境の重要な一部となり、それに関わる・参加するというようなものです。そのとき、創造に関わる人は、植物が育つための「土」のような役割をします。土があることで安定して成長することができるとともに、その土から得た栄養が成長を可能にします。このように、植物が育つように、つくっているものが「育つ」というのが、「自然な創造」(natural creation)です。そして、そういう創造が起きるとき、そこに関わる人たちの力んだ力は抜け、とても「自然(ナチュラル)」な状態になります。つくり手は、自分がつくっているものをコントロールしなければならないという意図や作為から解放され、いきいきとして、実感(フィーリング)を感じながら参加することになります。これは、とても人間的で生命的な状態とも言えます。この意味での「自然な創造」に注目しています。

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    他方、自然環境の意味での「自然(ネイチャー)」の観点も大切にしています。上記のような「自然(ナチュラル)」な生成の状態は、人工的な環境よりも、自然環境に触れているようなときの方が発動されやすくなるためです。都市や人工物はすべて人の手による産物であり、その背後には、それをつくった人がいます。これに対し、自然環境は、まさに、人の手の範囲を超えて、「自然(ナチュラル)な」生成によって生まれ育ってきたものなのです。身近な「小さな自然」に触れたり、「大いなる自然」のなかに浸ったりすることで、人間はより「自然(ナチュラル)な」状態になりやすくなるのです。

    このように、井庭研でいう「自然(ナチュラル、ネイチャー)」には、「内なる自然」(inner nature)と言える生成的な面と、「外なる自然」(outer nature)と言える自然環境という(本来は表裏一体の)両方の意味が含まれている。そのような意味での「自然な深い創造」(natural deep creation)であり、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」(natural & creative living)なのです。

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    ■「自然な深い創造」を実現する実践言語「パターン・ランゲージ」

    意識的な意図や作為によるコントロールから解放され、「創造」という「出来事」が自ずから生じるようなあり方で実現される「自然な深い創造」は、そう簡単には起きません。なぜなら、人はすぐ「自分が考えないと、何も起きない」と思ってしまうからです。実践の言語である「パターン・ランゲージ」はその問題を解決します。

    パターン・ランゲージは、その実践において押さえるべきポイントごとに「何をすることが大切か」とそれは「どうやるのか」が特定されているので、それに「身を委ねる」ことで、無心で自然とその実践をしていくことができるようになります。パターン・ランゲージを構成する「パターン」には、その実践で大切な「」が定められているとともに、それらの「型」の関係が体系として編まれているので、意識的に「こうしよう」「ああしよう」とコントロールしなくても、自然と勘所・ポイントを押さえた実践が可能になるのです。

    しかも、パターンは、適度に抽象化されていて、具体的な行動指示とは異なるので、状況に合わせて実践の具体的なところをアレンジしたり、その人らしいやり方で行ったりすることができるという特徴があります。このように、実践領域ごとにパターン・ランゲージがあることで、それぞれの人の実践を支援することになります。

    このような理由から、井庭研では、「自然な深い創造」に身を委ねて「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことを可能にするための有力な方法として、「パターン・ランゲージ」の作成・研究に徹底的に取り組んでいます。

    パターン・ランゲージをつくるときには、すでによい質を生み出している人から、その実践において大切なことを聞き、その経験則(型)から、抽象化、体系化、言語化して、パターン・ランゲージをつくります。このパターン・ランゲージがあることで、うまく実践できていない人を助けたり、これから始める人の参考になったり、実践について語るための語彙・共通言語としてコミュニケーションの支援が可能となります。このように、パターン・ランゲージは、社会の多くの人々を支えるメディアになるのです。

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    ■パターン・ランゲージをつくるときの深い創造

    実践に潜む「型」を捉えて、パターン・ランゲージとしてまとめるときには、その実践の本質を捉えて「抽象化」し、パターン間の関係性をつかんで「体系化」し、その本質と体系を踏まえて「言語化」します。具体事例をベースにパターンを捉え、その本質をつかむというときには、現象学における「本質観取」と同様のことを行っているということが、最近わかってきました。つまり、哲学と同様の深い思考・探究が必要だということです。また、パターン・ランゲージは、数十のパターンが相互に関係する体系(システム)をなしているのですが、その関係性を見定め、ひとつの体系として編み上げるときには、背後にある関係・構造を捉える構造主義的思考や、抽象的に捉えるシステム思考モデリングのセンスが求められます。そして、パターンを記述するときには、現象学の「本質記述」をするとともに、パターンの名前をつくるときには、本質を捉え、かつ魅力的な言葉になるようにつくり込んでいく必要があります。このように、パターン・ランゲージをつくるということは、高度な知性と豊かな感性を総動員してつくるということなのです。

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    ■パターン・ランゲージは歌の詞に似ている

    パターン・ランゲージは、単に現象を説明する理論なのではなく、読み手が「自分の状況に当てはまる」と思い、そこで推奨されていることを魅力的だと思い、実際にやってみようと思ってもらえるようなものになっている必要があります。物事の本質を捉えるとともに、心が動き、身体が動くような表現になっていることが求められるのです。僕は、これは、J-POPのようなポピュラー音楽の歌詞をつくることに似ていると思っています。

    聴き手が「自分の状況に当てはまる」と思い、そこで歌われていることを魅力的だと思い、自分の歌として口ずさんだり、カラオケで歌う、そういう歌の歌詞のようなものだと思うのです。実際、作詞を手掛けている人たちが、歌づくりで語っていることは、パターン・ランゲージの作成と共通すると感じることが多々あります。AメロやBメロでその状況における悩みや迷いが歌われ、それをどう捉えるかや乗り越えていくようなポジティブなメッセージがサビで提示されます。聴き手は、その歌を聴き、歌詞を受け取るなかで、元気をもらったり、勇気づけられたり、世界をポジティブに捉えることができるようになります。

    パターン・ランゲージも、ある状況における問題から始まり、それを乗り越えていく方法が示されます。それは読み手の内側から「自分のことだ」「自分の近未来だ」と思うように書いていきます。読み手が実感をともなって、ありありとその内容をイメージできるようにつくるのです。歌とは異なり、音楽が持つ力を借りることはできません。しかしながら、うまくつくれば、読み手のペースで、自分のものとして内側からその人を温めるようなものになります。

    実際、僕らがつくったパターン・ランゲージの読み手から、「元気をもらっています」「心の支えになっています」「お守りのような存在です」「これがあったから、なんとかやってこれました」という声をもらいます。そういう声を聴くたびに、それはまるで、心から共感する大好きな「歌」のようだな、と思うのです。僕は、歌のつくり手たちの言うことにとても共感するのですが、僕らは実践者の話からパターン・ランゲージをつくるので、特に、小説などの原作を歌にするYOASOBIのAyaseさんの言うことはとても近く、通じるものがあると感じています。

    パターン・ランゲージは、単に現象を説明する理論なのではなく、それを受け取る人のなかで流れ、内側から温める「歌」のような存在なのです。

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    ■「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことの道を極める

    井庭研では、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」ことについての研究をするなかで、自らがナチュラルにクリエイティブに生きる「」を極めていきます。単に研究テーマや対象とするのではなく、自分自身が実践しそれを生きるということを通じて深め、探究していくのです。そのような事情のため、おそらく多くの人がイメージしている「研究会(ゼミ)」とは大きく異なるスタイルで、井庭研に入るということを捉えてもらう必要があります。

    まず、生活における「地」と「図」が逆転します。週の何時間かで井庭研の活動を行う、というようなものではないのです。365日24時間 ナチュラルにクリエイティブに生きる、ということになります。つまりは、「自分の様々な生活」(地)のなかに「ナチュラルにクリエイティブに生きる」(図)があるのではなく、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」(地)なかに「自分の様々な生活」(図)が重なる、というようなかたちになるのです。

    したがって、井庭研に入るとは、「授業」を取るというようなものではなく、茶道や合気道などのような「〇〇道の師匠につく・道場に入る」というようなイメージに近いものになります。創造の道です。その世界(「ナチュラルにクリエイティブに生きる」)を常に実践し、深めながら、それを極めていくというようなことなのです。そのようなこともあり、井庭研では、大学院までを含む長期的なスパンでの成長を理想としています。

    どの分野でもそうですが、「道を極める」ということは、2年や3年の短期間では為し得ず、何年もの徹底した修練の結果によって到るものなのです。そのため、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」についての見よう見まねの学部時代から、修士課程で実践の感覚をつかみ博士課程でそれを自在に行えるようになっていく、という成長の機会を設けています。その意味で、「〇〇道の師匠につく・道場に入る」というニュアンスがよく合うのです。

    最終的には、独り立ちして、自らが「ナチュラルにクリエイティブに生きる」人生を送りながら、それぞれの分野で「ナチュラルにクリエイティブに生きる」人が増えるように先導していく存在になることを目指しています。

    そのための場と機会は用意されていますが、ここは自己成長の場であることは忘れないでください。この場と機会を活かし、自分から挑戦し、工夫し、努力して、自分の経験を高めていくことが各自に求められます。そのような意味でも、道を極めるにあたり、精神的な成熟し、よりよい未来に向けて貢献していくことができる人になっていくことも、井庭研で学ぶことの意義になります。

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    ■自分の「自然な深い創造」の力を磨くためには

    「自然な深い創造」が自分を場にして起きるためには、自分という創造の「土壌」を豊かにしていく必要があります。その場の発想法のようなテクニックによってアイデアを出すのではなく、自分の深いところにある養分をどんどん吸って、つくるものは「育って」(つくられて)いくのです。そのため、土の状態が自然(ナチュラル)で、豊かであることが不可欠なのです。井庭研では、自分という創造の土壌を豊かにするために、次の3つのことを重視しています。

    (1) 創造のための読書

    井庭研では、創造に活かせるようにたくさんの本を徹底的に読み込みます。良質の本からは、その著者が考えた結果としての内容だけでなく、「独特の視点」や、「発想の型」、そして体系的な「概念装置」を学ぶことができます。そこで得られたものは、別の分野の別の文脈のことを考えるときにも、役立てることができます。これが自分を創造的にさせるのです。

    第一の「独特の視点」は、その著者なりの(つまり、これまでの自分とは異なる)視点で物事を見ることです。いくつかの視点を持っていると、物事を常識的な角度からだけでなく、異なる角度から見ることができるようになります。第二の「発想の型」は、新しい考え方を生み出すときのやり方のことです。発想のしかたの型をいくつも持っていると、アイデアや新しい考えを生み出すときに用いることができます。第三の体系的な「概念装置」は、いくつかの概念が体系的に紐づいた理論を用いて、物事の複雑さを生け捕って捉えることができるようになるということです。これは、高度な把握や推論が可能となり、創造を高いレベルに引き上げます。

    このように、たくさんの本を徹底的に読み込んでいくことで、自分という創造の土壌を豊かにし、創造力が飛躍的に上がっていきます。井庭研での経験を通じて、「本の読み方が変わった」「本を読むことが、とても面白いということであることに気づけた」という声があり、研究のためだけでなく、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」人生を豊かにしてくれるということがわかります。

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    (2) 井庭研内の創造実践から学ぶ機会

    井庭研では、日々、たくさんのプロジェクトが研究・活動を展開しています。そのため、創造実践の取り組みを現在進行形で目の当たりにし、また、ものすごい勢いで創造実践の事例や知恵が貯まっていきます。また、担当教員の井庭や先輩たちが、口頭でもテキストベースでも映像でも、最先端の思考やアイデアを次々と披露し、じゃぶじゃぶに共有しています。これらのリソースを「生きた教材」として活かし、創造実践について学び取りにいくことができます。創造に関する面白い情報が圧倒的な量、毎日飛び交っている場はまずないでしょう(2021年の1年間に、僕は約3万投稿、メンバーも数千から1万超えの投稿をしています)。

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    (3) プロジェクトでの自分たちの実践経験

    井庭研では、1年間に1つのプロジェクトにどっぷり浸かり、複数人で研究に取り組みます。そこでは、それぞれの得意を持ち寄り、個人の限界を超えることができます。しかも、その小さなチームのなかで、学び合いや高め合いが起きます。各自が成長するための挑戦(チャレンジ)もこのプロジェクトでします。こうして、今の自分からアップグレードし続け、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」力を高めていくのです。

    井庭研は、以上のような機会を活かして創造実践の経験を積み、自己成長し、創造の道を極めていくための場なのです。

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    ■「新しい学問」をつくりながら実践する

    学問的に見たときに、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」や「自然な深い創造」、「創造社会」ということを考えるときに直球で答えてくれる学問分野は、現在ありません。そのため、既存の学問的枠組みや方法論を超えた「新しい学問」を構築しながら取り組むことが必要となります。井庭研では、新しい学問の土台をつくりながら、その上で具体的な研究を進め、そのことによってさらに土台が固まっていくというような、大胆で実験的なやり方で研究に取り組んでいます。その「新しい学問」を、僕は「創造実践学」「創造の哲学」「未来社会学」と名付けています。

    創造実践学」(Studies on Creative Practice)は、私たちの暮らしや仕事、社会におけるさまざまな領域の実践を、より創造的なものにするためにはどうしたらよいかを研究する学問として構想されています。各領域の創造実践の本質を明らかにし、パターン・ランゲージとして表現して活用することが、その主力の研究方法となります。「創造の哲学」(Philosophy of Creation)は、創造とは何か、についての哲学的探究を行うものです。現象学の方法によって創造の本質を観取するとともに、プラグマティズムの哲学や東洋哲学などとの関係についても深めていきます。「未来社会学」(Future Sociology)は、ナチュラルでクリエイティブに生きる未来の社会のヴィジョンを描き、その内実を研究する未来志向の学問です。創造社会では社会の一つの機能システムとして「共創システム」というものが作動し、そこではパターン・ランゲージのメディアや、ジェネレーターという役割が重要になるというような、未来ヴィジョンの社会像を明らかにしていきます。

    これらの三つの学問を構築するにあたり、僕たちはゼロからスタートするのではありません。これまでの人類のさまざまな知見・学問成果を踏まえながら、大胆に組み替え、読み替えながら、取り組んでいきます。哲学、社会学、人類学、認知科学、心理学、教育学、建築学、デザイン論、芸術論、美学、数学、文学、経営学、思想史などを必要に応じて縦横無尽に学び、取り入れていきます。その意味で、いろいろな学問領域を横断し、それらを超越して研究するという「超領域的」(トランス・ディシプリナリー:trans-disciplinary)な営みとなります。しかも、西洋の学問だけでなく、東洋哲学・思想とも積極的に関わり、西洋と東洋の知を融合させたこれからの学問をつくっていこうとしています。とてもSFCらしい、ユニークな学問のアプローチだと思います。

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    ■Project - 2022年度春学期のプロジェクト

    2022年度春学期は、以下の8のプロジェクトを予定しています。井庭研のメンバーは、どれかひとつのプロジェクトに参加し、研究に取り組みます。 各プロジェクトは、複数人で構成され、成果を生み出すためのチームとして、ともに助け合い、高め合い、学び合いながら、研究に取り組みます。

    (1) 創造を巻き起こすジェネレーターのパターン・ランゲージの作成研究
    (2) 成果を生み出す企業におけるWell-beingのパターン・ランゲージの作成研究
    (3) 市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成研究
    (4) パターン・ランゲージによる新しい開発援助の実践研究
    (5) 価値観から変わる「創造的な学びの共同体」のナラティブ研究
    (6) 自然のなかの子育てのパターン・ランゲージの作成研究(深化・仕上げフェーズ)
    (7) 『ともに生きることば』を用いた高齢者ケアの研修・ワークショップの実践研究
    (8) クリエイティブ・ラーニング・コミュニティを実現する実践研究



    各プロジェクトの概要は、以下のとおりです。

    (1) 創造を巻き起こすジェネレーターのパターン・ランゲージの作成研究
    ジェネレーターは、ともにつくり、発見とコミュニケーションの生成・連鎖を誘発する存在です。これからの創造的な教育の場では、ティーチャーやファシリテーターという役割だけでなく、ジェネレーターが重要になります。しかし、ジェネレーターは、単なるスキルではなく、あり方であり生き方でもあります。そのため、他のジェネレーターがやっている振る舞いを単に真似るだけでは、ジェネレーターにはなれません。それでは、ジェネレーターにおいては何が大切なのでしょうか。本プロジェクトは、そのようなジェネレーターの秘密に迫ります。本プロジェクトは、一般社団法人みつかる+わかる の「We are Generators!」との共同研究です。

    (2) 成果を生み出す企業におけるWell-beingのパターン・ランゲージの作成研究
    本プロジェクトでは、しっかりと成果を追求する企業組織において、Well-doingとともに、「幸福」な状態を指す「ウェルビーイング」(Well-being)をどうしたら高めることができるのかについて研究します。本プロジェクトは、企業との共同研究として行い、その企業を中心に、複数の企業の事例とインタビューから、パターン・ランゲージを作成し、広く、企業におけるWell-beingの向上を目指します。

    (3) 市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成研究
    すでにある競争のなかで、いかにパイを取るかということではなく、新しい商品・サービスで新しい市場を生み出すときのマーケティングはいかに行えばよいのか。本研究では、広告業界での経験が豊かな共同研究者とともに、市場創造マーケティングのパターン・ランゲージの作成を行います。

    (4) パターン・ランゲージによる新しい開発援助の実践研究
    本プロジェクトでは、これまで井庭研でつくってきた、仕事、教育、暮らし、生き方などのさまざまな分野のパターン・ランゲージを、国内外の諸地域の人々のエンパワーに活かしていくことを試みます。例えば、フィリピンの若者の支援として、現地の関係者や支援者と協力し合いながら、これまで井庭研でつくってきたパターンのなかから重要なパターンのセットをつくり、現地語で提供し、活用するための伴走を行います(パターン・ランゲージ・リミックスと伴走型支援)。その実践のなかで、人々のケイパビリティ(潜在能力)を高める、新しい開発援助(発達・発展の支援)のかたちを構築していきます(本プロジェクトでは、海外だけでなく、日本の地方の高校生のエンパワーメントにも取り組んでいます)。

    (5) 価値観から変わる「創造的な学びの共同体」のナラティブ研究
    このプロジェクトでは、「価値観・世界観から変化してしまう学び」のプロセスと、それを可能にする「創造的な学びの共同体」の仕組みを研究します。具体的には、小阪裕司さんが主宰する商人たちの実践共同体ーーワクワク系マーケティング実践会ーーの会員たちへのインタビューを行い、そこで生まれる語り(ナラティブ)の分析に取り組みます。その際に注目するのは、個別のスキルを身に着けたり成果が出せるようになったりすること以上に、生活や仕事の思想・哲学までが変化してしまうような、新たな価値観を学ぶプロセスとそのための実践共同体のメカニズムです。プロジェクトの活動は、約50人の会員たち(その誰もが魅力的な実践をされている商人たち)との対話に取り組むことと、その語りの書き起こしと分析を載せたメディア(冊子を予定)を制作することを、同時平行で進めていきます。具体的な語りと抽象的な分析を縦横無尽に行き来することで、単に現存する共同体の研究にとどまらず、新たに立ち上がる「創造的な学びの共同体」にとって意義のある知見を得ることを目指します。本研究は、小阪裕司さんのオラクルひと・しくみ研究所との共同研究です。

    (6) 自然のなかの子育てのパターン・ランゲージの作成研究(深化・仕上げフェーズ)
    現代社会では、人間は自然との関わりの多くを失い、人工的な環境・制度のなかで育ち・暮らしています。その「人間関係」「人工的な環境・制度」のなかで息苦しさや窮屈さ、閉塞感を感じている人は多く、心身への悪影響も少なからずあるようです。そこで、本プロジェクトでは、自然に子どもが育つとともに親も育ちながら、身の回りの自然環境を支え、地球・宇宙を感じる暮らし方・生き方の実現のためのパターン・ランゲージの作成に取り組みます。2022年度は、2021年度に取り組んだ作成・研究で明らかになってきたことをさらに深め、いろいろな事例と結びつけながら、自然のなかの子育てのパターン・ランゲージを仕上げます。

    (7) 『ともに生きることば』を用いた高齢者ケアの研修・ワークショップの実践研究
    高齢者ケアの分野では、現場での実践のなかで多くのことが学ばれていますが、そのような現場での学びにおいて、どのようによりよいケア・介護について意識・経験を豊かにしていくことができるでしょうか? 本研究プロジェクトでは、パターン・ランゲージを用いた対話や実践支援による新しいアプローチを開発し、実践導入していきます。具体的には、井庭研で作成し、2022年1月末に出版された『ともに生きることば:高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』等を活用し、実際に介護施設等で研修を実施していきます。支援する側/支援される側という区分を超えて、自分たちの「ともに生きる」スタイルを育てていくことを促すことを目指します。本研究は、社会福祉法人いきいき福祉会との共同研究です。

    (8) クリエイティブ・ラーニング・コミュニティを実現する実践研究
    このプロジェクトでは、クリエイティブ・ラーニング・コミュニティ(創造的な学びのコミュニティ)を、いろいろな仕組み・方法、パターン・ランゲージを用いて(必要に応じてつくって)実現する研究・活動に取り組みます。具体的には、井庭研をフィールドとし、「メンバーが自分たちで自分たちの創造的な場をつくる」ことや、「先端的な研究で創造的な活動を行い、そのなかで学んでいく」ということが実際に効果的に実現することを目指します。井庭研では、学部生でも、自分たちの生み出した研究成果を国際学術会議に論文を書いているのですが、その学術論文執筆に焦点を当て、アカデミック・ライティング・パターンを作成し、井庭研内での支援に活かしています。また、井庭研がクリエイティブ・ラーニング・コミュニティとしてまわっていくための組織バリューの編み上げ構築にも取り組んでいきます。


    【履修条件】

  • 知的な好奇心と、創造への情熱を持っていること。
  • じっくり取り組む時間の調整・確保を自らでき、研究・活動・勉強に徹底的に取り組むことができること。
  • 「知的・創造的なコミュニティ」としての井庭研を、与えられたものとしてではなく、一緒につくっていく意志があること。


    【その他・留意事項】

  • 現1年生のエントリーを歓迎します。長く一緒に研究・活動して経験を積み重ねることで、理解が深まり力がつくので、その後、より活躍できるようになります。そのため、井庭研では早い時期からの履修・参加を推奨しています。(そのことから、3年生後半や4年生からは、大学院進学を前提としている場合を除き、原則として受け入れていません。)

  • GIGA生や海外経験のある人、留学生を歓迎しています。井庭研では、日本語での成果をつくるとともに、英語で論文を書いて国際学会で発表したり、海外の大学やカンファレンスでワークショップを実施したりしています。日本語以外の言語を扱えることは、活躍・貢献のチャンスが大きく高まります。ぜひ、力を貸してください。

  • エントリーを考えている人は、「井庭研に興味があるSFC生の連絡先登録(2021年12月〜2022年2月用)」に登録してください。最新情報があれば送ります。


    【授業スケジュール】

    井庭研では、どっぷりと浸かって日々一緒に活動に取り組むことが大切だと考えています。

    全員で集まる時間は、 水曜の3限から夜までのプロジェクト活動の時間と、木曜の4限から夜までの全体ミーティング(ゼミ)の時間です。その時間は、全員での《まとまった時間》としているので、この時間は、授業や他の予定を入れないようにしてください。

    それ以外の日も、365日いつでも、各自で本を読んで知識をつけたり、考えたり、プロジェクトの研究の個人作業を進めたり、必要に応じて集まって話し合ったりします。また、担当教員(井庭)や井庭研が登壇する講演・ワークショップや学会等には、原則としてすべて参加して学びます。さらに、コミュニケーション・プラットフォームとして用いているslack上で、毎日情報共有ややりとりが行われています。「井庭研の活動が増える」という感覚ではなく、「ナチュラルにクリエイティブに生きる」生活にシフトするのだと捉えてください。


    【評価方法】

    研究・実践活動への貢献度、および研究室に関する諸活動から総合的に評価します。


    【エントリー課題】

    このシラバスをよく読んだ上で、2月28日(月)までに、[1] エントリーシート[2] 文献課題[3] パターン課題 の3つを提出してください。

    エントリー課題の提出先:https://forms.gle/XU4vcAwXn7tBC4dXA


    [1] エントリーシート

    タイトル:井庭研(2022春)履修エントリー

    1. 名前(ふりがな), 学部, 学年, 学籍番号, ログイン名, 顔写真 (写真はスナップ写真等で構いません)
    2. 自己紹介と日頃の興味・関心(イメージしやすいように、適宜、写真などを入れてください)
    3. 井庭研への志望理由
    4. この研究会シラバスを読んで、強く惹かれたところや共感・共鳴したところと、その理由・考えたこと
    5. 参加したいプロジェクト(複数ある場合は、第一希望など、明示してください)
    6. 持っているスキル/得意なこと(グラフィックス・デザイン, 映像編集, 外国語, プログラミング, 音楽, その他)
    7. これまでに履修した井庭担当の授業(あれば)
    8. これまでに履修した授業のなかでお気に入りのもの、所属した研究会など(複数可)
    9. 日々の生活のなかで取り組んでいるサークル、学内外での活動・仕事・アルバイトなど


    [2] 文献課題

    井庭研での創造・研究に関係がある以下の本のうち1冊(できるなら2冊)を読み、自分にとって面白いと感じたところについて、それがどこかということと、どのように面白いと感じたのかを書いてください(A4で1〜3ページ程度)。



    [3] パターン課題

    以下のパターン・ランゲージ本を読み、感じたことを書いてください。その上で、どれか一つのパターンの文章とラストをノートなどに手書きで書き写し、その内容・表現の質感を、つくり手の内側の立ち位置で感じてください。その写真を掲載し、さらに、パターンを書き写したときの気づきや感想も書いてください(この[3]の全部でA4で2〜3ページ程度:パターンの書き写し部分のみ手書きのものを写真に撮り、それ以外の部分はパソコンでテキスト入力で作成してください)。



    handcopy1.jpg handcopy2.jpg


    エントリーや井庭研でのことについて、何か質問があれば、ilab-entry[at]sfc.keio.ac.jp([at]を@に変えてください)まで、メールをください。

    3⽉7日(月)に面接@オンラインを行う予定です。詳細の日時については、エントリー〆切後に個別に連絡します。


    【教材・参考文献】

    井庭研でやっていること・目指していることを知るための本として、わかりやすいのは次の6冊です。最初の2冊は考え方について語っていて、次の3冊はパターン・ランゲージの実例です。そして、最後の1冊は、創造社会とはどういうことかが、自分たちの暮らし方を自分たちでつくるという事例で感じられるものです。



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    慶應義塾の広報誌「塾」第311号(2021年夏号)「半学半教」
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