井庭崇のConcept Walk

新しい視点・新しい方法をつくる思索の旅

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モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(1)

昨年度(2009 年度)、私は1年間大学業務をお休みし、海外で研究する貴重な機会をいただいた。私が所属したのは、MIT Center for Collective Intelligence という、マサチューセッツ工科大学 スローン経営学大学院の研究所である。研究所のディレクターは、『The Future of Work』[1]の著者であり、情報技術が経営・組織をどう変えるのかを長年論じてきた Thomas W. Malone 教授である。オープンソース開発やオープンコラボレーション、予測市場などの「集合知による新しい組織化」が社会・組織の在り方をいかに変えるのかを考え、実践する研究所である。

私は、この研究所の Research Scientist である Peter Gloor 氏と、彼のもとに集まる学生・研究員との共同研究プロジェクトに参加した。Gloor 氏は、ダイナミックなネットワーク分析によってトレンドの予測をするという、この分野では珍しいタイプの研究をしている研究者である(その成果は、彼の『Swarm Creativity』[2]や『Coolhunting』[3]、『Coolfarming』[4]という本で紹介されている)。私は、この研究所を軸足として、MIT Media Lab、Harvard University Graduate School of Design、Harvard Kennedy School、Northeastern University などにも、ことあるごとに足を運んだ。ボストンならではの多様な知的コミュニティとそこでの交流を垣間みることができた。

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このエッセイでは、私自身が1年間の滞在を通じて最も強く感じ考えたことについて書こうと思う。それは、簡単にいうならば、「英語力は、いったいどうやったら伸ばすことができるのか」ということである。私は滞在中、これまで日本で長い期間英語教育を受けてきたにもかかわらず、どうして自分はこれほどまでに英語ができないのか、と何度も情けなるとともに、自分や日本の英語教育に対してある種の怒りさえ覚えた。日米の研究スタイルの違いなどよりも、何よりもこの英語の問題が最も痛感した問題なので、このエッセイのテーマを「英語」にすべきだと判断した。変に格好をつけたりせず、まずは、私の経験を赤裸々に語ることにしよう。その上で、どうしたら英語力を高めることができるのか、特に日本にいながらそれを行うにはどうしたらよいのかについて、私の考えを書くことにしたい。

(つづく)

[1] Thomas W. Malone, The Future of Work, Harvard Business Press, 2004
[2] Peter Gloor, Swarm Creativity, Oxford University Press, 2006
[3] Peter Gloor, Scott Cooper, Coolhunting, AMACOM, 2007
[4] Peter Gloor, Coolfarming, AMACOM, 2010

※「モバイル時代の英語力強化法 ―日本にいながらの環境構築―」(井庭 崇, 『人工知能学会誌』, Vol. 25, No. 5, 2010年9月)をベースに加筆・修正
英語漬け生活 | - | -

米国ボストン出張(2010年秋)

昨日まで1週間ほど、米国ボストンに出張してきた。今回は学会参加ではなく、現地の研究者とのミーティングと交流が目的。

最も大きなイベントは、ノースイースタン大学のバラバシ・ラボ(Center for Complex Network Research)での講演。講演タイトルは、"Hidden Order in Chaos: The Network-Analysis Approach to Dynamical Systems" (Takashi Iba) 。昨年取り組んでいた離散カオスのネットワーク分析の研究について、初めて人前で話したことになる。後半には、”Chaotic Walk"(「カオスの足あと」とも呼んでいる)研究の紹介もした。英語での講演(1時間)はまだたどたどしいが、手応えはあった。

発表の前後に、センターの若手の研究者たちとの交流もできた。つい先日 Nature に論文が掲載されたポスドクの Yong-Yeol Ahn や、人文・芸術系の分野でネットワーク分析の展開を推進している訪問研究者 Maximilian Schich、そのほか大学院生たちだ。ひとつ共同研究も始まりそうだ。

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また、MIT Media Labの Cesar Hidalgo のラボも訪問した。彼はネットワーク科学の国際学会つながりの友人。昨年度までHarvard Kennedy Schoolにいたが、今年からMIT Media Labに移り、「Macro Connections」というラボを立ち上げた。今年はMedia Labに、若手がリーダーのラボが3つ立ち上がったらしいが、これはそのうちの一つ。社会・経済のネットワーク分析の若手が、Media Labでどのように研究を展開するのか非常に楽しみだ。

あと、僕が昨年1年間過ごした MIT Center for Collective Intelligence も訪れ、最近の動向や研究上の話などをした。それ以外にも、現地にいる研究者/学生(日本人も含む)とたくさん交流ができ、非常に充実した1週間であった。

さらに、言語習得に関しても現状の確認と今後の目標が定まった。リスニングについては、それなりに聞けるようになっているのを確認した。次は、英語の発音とイントネーションをきちんと改善したいと強く思った。(今後、少しそちらのトレーニングをきちんとやることにしようと思う。)

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今回は、ホテルではなく、ウィークリーアパートメント(といっても戸建ての一部屋)に滞在した。その方がホテルに泊まるよりも安いし、町を満喫できる。行き慣れているスーパーで買い物をし、自分で朝食をつくり、Zipcar(時間貸しのレンタカーのようなもの)や地下鉄で町を移動し、いつもの店でランチを食べ、お気に入りの本屋で知的な休憩をする。やっぱり、僕はボストンの町並みと生活が好きだなぁ〜、と再認識。そして、空が広い。この自然のスケール感も好き。

研究の面でも、言語習得の面でも、精神的な面でも、たくさん刺激を受け、これからの秋冬の知的生活の原動力を得た。さあ、またがんばるぞ!


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※昨年住んでいたマンションの裏庭には、まだワイルドターキーちゃんがいた。思わず、"Wow! You are still here! How are you?"と声をかけた。いつもどおりマイペースで歩いていたので、元気なのだろう。
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