Self-Organizing Dictionaryについて

『Self-Organizing Dictionary』と呼ぶこの辞書は、みなで参加して作っていく辞書である。そして、特徴的なのは、言語の種類は問わないという点である。こういうものがあれば、新しい国際交流の流れをつくることができるかもしれない。


僕は昨年(1995年)の夏の1カ月間、イギリスに英語研修に行った。そこで僕は、イタリア語、スペイン語、ポーランド語、スロベニア語、ドイツ語、オランダ語、ロシア語など、新しい友達から様々な言語を教わった。そして逆に僕は日本語を彼らに教えた。

日本に帰ってきてから、この時の外国語の楽しさをなんとか日常レベルで体験できないかと僕は考えはじめた。
そこで僕はWWWのホームページに『Self-Organizing Dictionary』という特殊な辞書を作った。これはみなで参加して作っていく辞書であり、言語の種類は問わない。
便宜上意味を説明するのは英語で行なっているが、集まってくる言葉は、すでに上で触れたヨーロッパの言語の他にタイ語、タガログ語、アラビア語、トルコ語、中国語、ポルトガル語、フィンランド語、ルーマニア語など多種多様だ。現在約120語登録されている。関係性のないものが関係をもってしまうネットワークという素晴らしいツールを使えば、こうした言語の寄せ集めから新たな混合言語コミュニケーションが生まれるかもしれない。

この辞書は、ボランタリーな訪問者が、世界の様々な言語をCGI FROMによって入力できる。辞書は、「English to English」と「World languages (to English)」の2種類にいる。

これを、perlで作った簡単なサーチ機能により検索できる。 例えば、「hello」で検索すると、

[Polish]  siema      :Hello (among young) (By IBAchan)
[French]  bonjour    :Hello (By NeFa)
[Italian] Ciao       :Hello (By simonett@vega.unive.it)
[Thai]    Sa-wad-dee :Hello (By Nuj(u3560656@pioneer.netserv
						.chula.ac.th))
[Arabic]  Marhaba    :Hello (By bataineh@egr.msu.edu)
[Turkish] Merhaba    :Hello (By Selim gt8581d@prism.gatech.edu)
[Hindi]   Namaste    :Hello or Welcome (By Tej@AdvTechGrp.Com)
[Slovenijan]  ZIVJO  :Hello (By IBAchan)
[Spanish] HOLA       :Hello (By IBAchan)
[chinese] ni hao     :hello (By s93500mw@sfc.keio.ac.jp)

というように、各国語での「Hello」がわかる。
次に、それぞれの言語の一覧を見たければ、言語名でサーチすれば、

[Italian]  Ciao     :Hello (By simonett@vega.unive.it)
[italian]  scuola   :school (By Nick)
[italian]  pesce    :fish (By am529299@ghost.dsi.unimi.it)
[italian]  libro    :book (By ba533353@ghost.dsi.unimi.it)
[italian]  uomo     :man (By dn531297@ghost.dsi.unimi.it)
[Italian]  ganzo    :a very cool thing! (By marcus)
[Italian]  Ho Fame  :I'm hungry. (By IBAchan)
[Italian]  ti amo   :I love you (By NiceBoy)

のように検索できる。

僕はこれから、ネットワーク上に多言語教室を開きたいと思っている。まずは、母国 語である日本語教室から始めるつもりである。 そしてネットワーク上で出会った多言語を母国語とする人々と、多くの種類の教室を 開いていきたい。 その言語特有の文字はもちろんのこと、音声や映像を使って言語を発信する。 文化そのものの発信はインターネットの成長でますます盛んに行なわれるだろう。 僕はその根底に流れる言語の交流を進めていきたいと思っている。

1996年 井庭崇


(C) 1996, Takashi Iba