January 01, 2011
February 14, 2010
bean-throwing ceremony
A bit late post, but, I have drawn cute devil this year for the bean-throwing ceremony.

February 05, 2010
AugPenデモビデオ
10年くらいまえの研究のビデオがでてきたのでとりあえずアップしておきます。
テーブルプロジェクション型のシステムで、ペンタブレットにより 入力します。交差インタフェースや補完インタフェースなど、テス トの添削などのように、繰り返しフォーマットを用いるアプリケー ションを例にとっています。
January 01, 2010
A Happy New Year

color of tiger: taking one small existence, it also stands on the entire ecological chains. color of the body; the element of the existence is no exception. no matter color of the body, we all stand on the same system: planet earth.
May the New Year bring many good things to you.
October 11, 2009
Trick or treat
Happy Halloween!
Jack-o'-Lantern; projected onto our house wall with a illumination lamp of our garden.


September 06, 2009
「新訂版More Effective C++」2刷
新訂版 More Effective C++
スコット・メイヤーズ (著), 安村 通晃, 伊賀 聡一郎, 飯田 朱美, 永田 周一 (訳)
の初版2刷がでました。若干ですが改定しています。
iChoose: 音楽や映像メディアと連動するタスク管理システム
■はじめに
仕事をしながら音楽を聴いていると、逆に音楽を聴くために仕事をしているようなムードになる瞬間がある。バックグラウンドミュージック(BGM)としてのタスクが、フォアグラウンドのタスクに変わるのである。また、仕事を始めようとする際に特定の気に入った楽曲を聴くことで仕事へのモーティベーションを高め、音楽から仕事へと注意資源が移り変わることもある。我々は日々このように、様々な事象への注意資源を切り替えながら生活をしている。
石井らは、実空間における人間の注意資源をフォアグランドとバックグラウンドに分類し、それぞれに対応するインタラクティブな接面としてのGraspable mediaと周辺情報を提示するAmbient mediaなどを提供することを提唱している[Ishii1997]。しかしながら、図1に模式的に示すように、人間のタスクへの注意資源はフォアグラウンドとバックグラウンドに分類されるのみならず、注意資源を連続的に変化させ、切り替えながら行われているものと考える。例えば、前述のように仕事とBGMとの間では、どの瞬間にどちらに注意が向けられているのかを問うことは難しい。さらに、前述した音楽を聴くことで仕事を始めようとする例のように、何かタスクを始める際には、何気ないニュートラルな注意状態から、タスク実行のための周辺状況にバックグラウンド的に注意資源を割き、そして本来のタスクへと注意資源を集中する。人間は、これら注意資源をフォアグラウンド、バックグラウンド、ニュートラルという3つに分類される状態の間で連続的に振り向けていると考えられる。

図1:人間の注意資源の連続的な移り変わり
あるタスクから別のタスクを開始するときも、注意資源がフォアグラウンド間で離散的に切り替わるのではなく、フォアグラウンドからバックグラウンドへと注意資源を一旦振り向け、別のタスクがフォアグラウンドになるように注意を振り向けているのではないかと考える(図2)。

図2:タスク間の時間的な連続変化
本研究では、このようにフォアグランドとバックグラウンドタスクをシームレスに関連付け、切り替えながら作業するという人間の行為をインタラクション技術として取り込み、システムとして実現することを目的とする。
本稿では、まず本研究に関連するアプローチを紹介し、その課題について触れる。次に、我々の初期のアプローチとして、音楽や映像などのコンテンツ情報とPC上のタスクを関連付けて記録し、想起・再現できるシステムiChooseを提案する。ユーザがPC上で再生するメディアの情報と、そのとき同時に操作するPC上のアプリケーションやファイルの情報をシステムが自動取得し、相互に情報を関連付けておくことによりタスクの管理やタスクのナビゲーションを行える。本システムでは、同じメディアを再生しているというコンテキストを共有することで複数機器間の情報交換インタフェースとしても活用できる。
■関連するアプローチ
ユーザのタスク間の連携やつながりを支援する先行研究として、情報交換インタフェース、情報共有インタフェース、アウェアネス共有、コンテキストアウェアネスに関するアプローチを紹介する。
情報交換インタフェース
ドラッグアンドドロップの概念を複数機器間に拡充するシステム[Rekimoto1997]、ユーザの呼気・吸気による情報交換を支援するインタフェースシステム[Iga2002]や、RFIDタグを複数機器間でかざすことによる情報交換支援するシステム[Iga2006]、あるいは情報の送り手側と受け手側で同じ動作をすることにより情報の受け渡しを行う手法[Kashiwagi2007]など、ユーザの身体動作によって情報交換を支援するシステムが提案されている。
情報共有インタフェース
情報共有に関しては、例えば撮影した写真画像とその上での書き込みを同期的に共有するコミュニケーション支援システム[Sumi2008]や、コメントの頻度の変化などを共有する非同期的な側面でのコミュニケーションを支援するインタフェース[Kawai2007]などが提案されている。
アウェアネス共有
遠隔地間でのタンジブルな人工物を介したコラボレーション支援システム[Brave1998]では、一方の物理的な動作が他方にも力学的フィードバックを及ぼすようなインタラクションを提案している。
同様に、距離の離れた両者間でのアウェアネスを提供するために、家具、電気製品、雑貨類の操作を同期させるコンセプト[Tsujita2009a]や、遠隔地間での偶然の行為の一致に着目したコミュニケーションシステム[Tsujita2009b]なども提案されている。
コンテキストアウェアネス
ユーザの物理的な位置情報、時刻など、ユーザの置かれた環境の周辺情報や行為を認識して、情報活用につなげるアプローチがある[Siio2003]。例えば、ユーザが位置情報を識別するタグや携帯デバイスを装着することにより、ユーザの物理的な位置に応じた情報提示を行うようなインタフェースが多く提案されている。
現状の課題
これら先行するアプローチの多くは、ユーザがフォアグラウンドタスクとして扱っている情報の交換や共有、あるいはアウェアネスの共有を支援している。
明示的にこれらのタスクのみを実行するためのインタフェースは数々提供されている。しかし、我々人間の活動は実際には様々なタスクが組み合わさっており、それぞれが主要なフォアグラウンドタスクとして処理されたり、ときにバックグラウンドに隠れたりしている。このようなタスクの連続的な移り変わりをサポートするようなインタフェース方法は我々ユーザに充分には提供されていないのが現状であろう。
また、ユーザが明にも暗にも意識していない状況を認識してシステムがユーザに情報提示するようなインタラクションでは、ユーザにとって提示された情報に対する妥当性を評価することは難しいだろう。仕事とBGMの関係のように、疎ながらも互いに関連のある情報をインタラクションのループ内に活用することがフォアグラウンドとバックグラウンドのタスクの移り変わりをシームレスに支援するキーとなると考える。
■iChooseプロトタイプシステム
フォアグランドとバックグラウンドタスクをシームレスに関連付け、切り替えながら作業するインタラクション技術をシステム的に実現するためにプロトタイプシステムを作成した。
システムの特徴
iChooseプロトタイプシステムでは、ユーザが操作する音楽や映像などのマルチメディアコンテンツと、ユーザのPC上のアプリケーションやファイル操作などのタスクを関連付けて記録しておき、相互に想起・再現することができる。
ユーザがPC上で再生するメディアのコンテンツ情報と、そのとき同時に操作するPC上のアプリケーションやファイルの情報をシステムが自動取得し、相互に情報を関連付けておくことによりタスクの管理やタスクのナビゲーションを行える。
iChooseにおけるコンテンツとタスクとの関連付け手段には「オートマティック」と「マニュアル」の2つのモードがある。
- オートマティックモード: ユーザが操作しているコンテンツとタスクをシステムが監視して、相互に自動的に関連付けを行える。
- マニュアルモード: ユーザが手動でコンテンツとタスクを関連付けできる。
本システムは、同じメディアを再生しているというコンテキストを共有することで複数機器間の情報交換インタフェースとしても活用できる。
システムの構成
プロトタイプシステムの構成を図3に示す。ハードウェアの構成は、ユーザのPCとバックエンドのサーバから成り、これらがネットワーク接続されている。
ユーザPC上ではiChooseクライアントソフトウェアとApple社のiTunes[Apple]が動作する。バックエンドのサーバ上ではiChooseのデータを集約するサーバソフトウェア(iChoose ContextServer)が動作する。
iChooseクライアントソフトウェアは、Microsoft WindowsのイベントをキャプチャするEventMonitor、ユーザが操作するローカルファイルを外部からアクセスできるようにするウェブサーバFileManager、ユーザのiTunesを監視・制御するiTunes Controller、キャプチャしたデータを管理してiChoose ContextServerとやりとりするContextManagerの各モジュールから構成する。
iChooseクライアントソフトウェアとiChoose ContextServerはActivePerl(ver.5.10)で記述しており、OSはMicrosoft Windows XP以上で動作する。

図3:iChooseシステム構成
以下にiChooseクライアントソフトウェアの各モジュールの詳細について説明する。
・EventMonitor
ユーザのウィンドウシステム上でのアプリケーション操作をキャプチャする。
現在キャプチャに対応しているソフトウェアは以下の通りである。
- Microsoft Office (Word, PowerPoint, Excel)
- Microsoft Internet Explorer
- Mozilla Firefox
- Lotus Notes
それぞれのアプリケーションが操作しているファイルパスやURLといった情報を取得できるようになっている。
・FileManager
EventMonitorでローカルファイル(Microsoft Officeのファイルなど)操作のイベントをキャプチャした場合、そのファイルのパスを基にして、一時的に外部からアクセス可能な状態にする。本モジュールにより、PC間でのファイル交換を行えるようになる。
・iTunes Controller
ユーザがiTunesで視聴しているコンテンツのアーティスト名、曲名(映像名)、視聴時間などをキャプチャする。また、外部からiTunesを制御して、所定のコンテンツを再生できるようにする。
・ContextManager
ユーザが操作しているアプリケーションやファイルとiTunesで視聴しているコンテンツとの関連を管理する。例えば、ユーザが現在聴いている楽曲が再生されている間に操作されたアプリケーションやファイル名称などを関連付けておく。これら情報をユーザのファイル操作やiTunesの操作のタイミングでContextServerに送出する。また、本モジュールはContextServer上の他のクライアントから送られている情報と同期して、例えば他のクライアントで同一の楽曲に対して関連付けられている新たなURLを取得する。
■システムの活用例
楽曲によるデスクトップ管理
ユーザは現在聞いている楽曲に対して、操作しているファイルやウェブブラウズしているURLなどを関連付けることができる。例えば、楽曲ごとに作業するためのデスクトップを記憶させておくことができる。気に入った楽曲を再生するだけで、関連するアプリケーションが起動して、作業に必要な一連のファイルやURLを開くことができる。
PC間での楽曲を介した情報交換
本システムの活用例として、PC間での楽曲を介した情報交換がある(図4)。例えば、ユーザがデスクトップPC(PC1)でBGMを聞きながら作業をしているときに、ラップトップPC(PC2)にその作業を移そうとしている場合、現状ではUSBメモリーやネットワーク上のストレージサービスに作業中のファイルを個別にコピーする必要がある。本システムを活用することにより、PC1上で聞いているBGMと同じBGMをPC2でも再生することにより、PC1上の作業がPC2上にコピーできる。これまでの情報交換インタフェースでは、単一のURLやファイルの交換を逐次的に行うものが多いが、本システムでは複数のURLやファイルをひとまとめにして複数のPC間で交換できる。

図4:PC間での楽曲を介した情報交換
自動プレゼンテーション
本システムのマニュアルモードを用いることにより、音楽や映像コンテンツの再生時間に合わせて、所定のタイミングにタスクを関連付けることもできる。
例えば、ある映像コンテンツを流し、あるタイミングで所定URLをブラウザに表示し、また逆に、あるURLが表示されると、別の音楽を再生するといったような自動プレゼンテーションが可能である。SMILのようなマークアップ言語[W3C]を用いなくても、PC上で自動プレゼンテーションを構成できる。
■今後の展望
iCandyシステムでは、iTunesとQRコードを介した紙によるタンジブルな情報交換を実現している[Graham2008]。本研究で作成したプロトタイプシステムでは、主に物理的に近接した環境での情報交換を支援しているが、QRコードのようなソリューションを組み合わせることにより、非同期かつ物理的に遠隔のコラボレーションにも応用できるようになるだろう。
人間の知覚処理において、視覚イメージの減衰が約200msecであるのに対して、聴覚イメージの減衰は約1~2秒であると言われている[Furukawa1987]。このような人間の知覚処理特性を取り込むことにより、メディアコンテンツを介した情報交換をより直感的にしたいと考えている。
ユーザの心拍などの生体情報を基にしてユーザに正負のフィードバックを与え、ユーザの行為を制御する試みがある[Ohno2000]。将来的にはこのような生体情報認識の仕組みも取り込み、フォアグラウンドタスクとバックグラウンドタスクとの境界をシステムが識別し、よりシームレスにタスク間を連携させるようなインタフェースシステムも実現できるかもしれない。
■おわりに
フォアグランドとバックグラウンドタスクをシームレスに関連付け、切り替えながら作業するインタラクション技術を提案した。また、コンセプトを実現する初期のアプローチとしてiChooseプロトタイプシステムを実装した。本システムにより、PC上でのファイル操作などのフォアグラウンドタスクをBGM視聴といったバックグラウンドタスクと関連付け、その視聴している楽曲を通じて情報交換や情報共有を行えるようになる。
■参考文献
[Apple] Apple Inc.: iTunes, http://www.apple.com/jp/itunes/download/
[Brave1998] Brave,S., Ishii,H., Dahley,A.: Tangible Interfaces for Remote Collaboration and Communication, CSCW'98, pp.169-178 (1998).
[Furukawa1987] 古川, 溝口 共編: インタフェースの科学, 共立出版, (1987).
[Graham2008] Graham,J., Hull,J.: ICandy: a tangible user interface for itunes, Extended abstracts of CHI2008, pp2343-2348 (2008).
[Iga2002] 伊賀, 樋口: Kirifuki: 呼気・吸気によるエンターテイメントシステム, 日本VR学会論文誌 TVRSJ Vol.7 No.4, pp.445-452 (2002).
[Iga2006] 伊賀: Coin: 身体動作による情報交換インタフェース, ヒューマンインタフェースシンポジウム2006, pp.1169-1174 (2006).
[Ishii1997] Ishii,H., Ullmer,B.: Tangible Bits: Towards Seamless Interfaces between People, Bits and Atoms, CHI'97, pp.234-241 (1997).
[Kashiwagi2007] 柏木, 本間, 福地, 小池: ジェスチャを真似することによる情報の受け渡し, WISS2007, (2007).
[Kawai2007] 川井, 志築, 高橋, 田中: 動画共有に基づいた非同期コミュニケーションの連帯感を向上させるインタフェース, WISS2007, (2007).
[Ohno2000] 大野, 樋口, 安村: 電子ペットを用いた対話型心拍トレーニング支援システムの提案, ヒューマンインタフェースシンポジウム2000, pp.61-64 (2000).
[Rekimoto1997] Rekimoto,J: Pick-and-Drop: A Direct Manipulation Technique for Multiple Computer Environments, UIST'97, pp.31-39 (1997).
[Siio2003] 椎尾, 安村, 福本, 伊賀, 増井: モバイル&ユビキタスインタフェース, ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.5 No.3, pp.313-322 (2003).
[Sumi2008] 角, 伊藤, 西田: PhotoChat: 写真と書き込みの共有によるコミュニケーション支援システム, 情報処理学会論文誌, Vol.49 No.6,pp.1993-2003 (2008).
[Tsujita2009a] 辻田, 塚田, 椎尾: 遠距離恋愛者間のコミュニケーションを支援する日用品``SyncDecor''の提案, コンピュータソフトウェア, 26(1), 日本ソフトウェア科学会, pp.25-37 (2009).
[Tsujita2009b] Tsujita,H., Tsukada,K., Siio,I.: InPhase: a communication system focused on ``happy coincidences'' of daily behaviors, Extended Abstracts of CHI2009, pp.3401-3406 (2009).
[W3C] W3C: Synchronized Multimedia Integration Language (SMIL 3.0), http://www.w3.org/TR/SMIL3/
August 15, 2009
iChooseデモ
We propose a novel interaction technique of managing computer tasks by linking them to music/video streams. We developed a prototype system called ”iChoose”. The system automatically recognizes tasks which the user is manipulating on his/her computer. The system then links the recognized tasks with music/video files which the user is playing on a multimedia player software, e.g. iTunes. By this system, for instance, the user can recall tasks just by the playback of particular music, or the user can share electronic document file among multiple PCs just by playing same music clip, and so on.
July 25, 2009
July 04, 2009
June 26, 2009
ビジネス・エスノグラフィ実践コース
本年も昨年に引き続き、日本能率協会によるビジネス・エスノグラフィ実践コースを開催します。(2009年10月8日~11月9日の期間中に5日間)
こうしたアプローチを体系的に学び、経験できるコースは他にあまり見られないものと思います。規模の大きな企業のみならず、新しいイノベーションを興したい規模の小さな企業にも向く方法論かもしれません。
奮ってご参加ください。
April 21, 2009
February 05, 2009
bean-throwing ceremony
I have drawn blue devil this year for the bean-throwing ceremony.
My wife first saw it and she said, "... weedy".

January 01, 2009
A Happy New Year
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2008 was a hurried and not enough fruitful year for me.
In 2009, I would rush headlong into the next, but also do my own things.
November 24, 2008
未来のモノのデザイン~CHI研究へのインプリケーション
■ はじめに
D.A.ノーマンの著書『未来のモノのデザイン』[Norman2008]では、自動車業界を中心とする「知的」テクノロジー・自動化された「賢い」機械を引き合いに、未来のテクノロジーのあり方を幅広い見識を元に探っている。カーナビゲーションに代表されるように、我々を取り巻く機械はますます知的になり、それらがこれまでよりも多くのタスク遂行に際して主導権を持つようになってきた。我々はこれら賢い機械とどうインタラクションするのか悩まなければならない。テクノロジーの限界を知り、正しいプロセスでデザインすることにより、人の役に立つ、よりシンプルで強力なテクノロジーを創造できる可能性が残されていることをポジティブにユーモラスに提言している。
本書は7つの章と、ユーモアを交えて描かれている追記を加えて8つの章から構成されている。以下が本書の主な構成である。
- 第1章 用心深い車、口うるさいキッチン
- 第2章 人間と機械の心理学
- 第3章 自然なインタラクション
- 第4章 機械のしもべ
- 第5章 自動化の役割
- 第6章 機械とコミュニケーションする
- 第7章 日常のモノの未来
- 追記 機械の言い分
ここでは、『未来のモノのデザイン』の概要を紹介すると共に、特にCHI(Computer-Human Interaction)分野にとって考慮すべきポイントについて議論する。
■ 『未来のモノのデザイン』の概要
ノーマンが日本語版の序文で語っているように、彼が本書を書き始めたのは2005年にちょうど日本を訪れていたときである。ノーマン自身が自動車メーカーや愛知万博を訪れ、未来の自動車技術や自動的・知的なロボット技術を見学するにつれ、技術的な話題の一方で、人間とのインタラクションが未だに無視されていることが本書の執筆動機になっている。本書は、テクノロジーには限界があるということ、そしてその上でいかに自然なインタラクションを実現するのか、というおおまかに2つの流れから成る。
人間と機械のインタラクションにおける基本的限界
本書は、ノーマン自身が車を運転する急カーブの続く山道でのドライブの光景からスタートする。快適なドライブを楽しんでいる一方で、この先に2つのシナリオを想定している。
- 助手席の奥さんが怖がっている中、「どうしたんだい?」と言いながらもスピードを落とさないドライバー
- シートベルトをきつくしダッシュボードから警告音を発して''車が怖がっている''中、スピードを落とそうとするドライバー
車の技術は日々進化しており、レーンから外れないように調節したり、自動運転できるものもある。車は知的な機械になりつつある。ドライバーが人間である同乗者と比べて、車のほうにより気を配っているように見えるのはなぜか。これはコミュニケーションの問題に帰着する。同乗者が不安を訴えるとき、ドライバーは理由を聞いたり、大丈夫だからと安心させることもできる。同乗者が心配しないように運転を変えることもできる。だが、車が文句を言ってきたら、車とは会話するすべが無い。こうした知的機械とのコミュニケーションは現状一方通行である。
コミュニケーションや交渉には、インタラクションの基盤として働く、共有されている理解の土台としての共通基盤が必要とされる。機械と機械、人間と人間では、共通基盤をすり合わせることは可能である。例えば、以下の人間同士の会話は、共通基盤が共有されているために会話として成立する。
アラン「そうじゃないよ」 バーバラ「分かったわよ」
本書では、人間と機械の場合は共通基盤を持つことが難しい、いわば「異なる種」としての存在という点からテクノロジーの限界の所在を明確化している。
知的機械との自然なインタラクション
ノーマンは、人間と機械との共通基盤がないことによるテクノロジーの限界を知り、一方では人間にとっても機械にとっても容易に解釈できる、暗黙に了解可能な振る舞いや自然なインタラクションをデザインすることにより、理にかなった役に立つテクノロジーを生み出せるというポジティブな提言をしている。
本書では、知的機械と人間における自然なインタラクションのあり方を実現する上での互いに求め合うアフォーダンスについて述べている。そして、知的機械をデザインする上での「機械+人間」という複合的なシステムをメタファとして、知的機械とのインタラクションのあり方を考察している。さらに自律的/能力拡大という2つのアプローチを比較し、どのような「知的」さを機械に持たせればよいのか、その望ましいインタラクション形態について説明している。
コミュニケーションとしてのアフォーダンス
最近の機械は光やビープ音を出して注意を向けさせる。それぞれ単独なら問題はないが、多くのシグナルが不協和に鳴り響けば気が散るし、イライラさせられるし、ときに危険なものとさえなりかねない。
一方、物理的な現象に基づく自然の環境音は周りで起こっていることを豊かに伝えてくれる。コーヒーカップやトースターであろうとも、ウェブサイトであろうとも、効果的で知覚的な暗黙のシグナルとしてのアフォーダンスを与えることが重要である。
少し変わったアプローチとしてはリスクホメオスタシスの考え方も「自然な安全さ」を引き出すものとして挙げられる。人間は環境を安全にすると危険性の高い行動を取る。実際よりも危険に見えるようにすることでより安全にするというアイデアである。共有空間と呼ばれる信号機や標識のない空間を街の一部に持たせるような試みも見られる。
機械が自律して知的になれば、我々がそれらとどのようにインタラクションしたらよいかを示し、また同様にそれらが環境とどうインタラクションするかを示すために、知覚できるアフォーダンスが必要となる。つまり、コミュニケーションするアフォーダンスが必要となるとしている。
新しい生命体:機械+人間
未来のモノはアフォーダンスを目に見えるものにするだけでは簡単に解決できない問題をもたらす。コミュニケーションを人から機械へ、そして機械から人へと双方向のものにしなくてはならない。
人間と自律した知的で賢い機械とのコミュニケーションを考えるにあたっては、人と道具の関係、馬と騎手の関係、自動車とドライバーの関係など、共生関係にある二者間の自然なインタラクションが参考になる。例えば乗馬では、きつい手綱遣いにより騎手は馬に意思を伝えて馬を直接的にコントロールし、ゆるい手綱遣いにより馬に自律性を持たせる。「馬+騎手」という概念は「機械+人間」インタフェース、ひいては知的機械開発の強力なメタファを与える。このようなメタファを機械とのインタラクションに応用する研究も見られる[Flemisch2003]。しかし、このメタファだけでは不十分である。
ノーマンは、自転車の多いオランダのデルフトという街での自転車の振る舞いによって、「機械+人間」を想定するだけでは自律した知的機械とのコミュニケーションはうまくいかないことを例証している。「自転車+人間」、つまり人間が動力と知性を供給する「知的機械」を想定する。たくさんの自転車がスピードを飛ばしている中で歩行者が歩くのは困難であり、その自転車を操作しているのがたとえ知性を有する人間であってもそうなのである。歩行者と「自転車+人間」がうまく協調できないのは、そこにコミュニケーションが取れないからである。問題を解決するには、このとき歩行者側は完全に予測可能的なように行動する必要がある。つまり、自転車を避けたり、立ち止まったりしないで、いつも相手が予測できるようにするのである。デルフトではこれがうまくやられている。
人間と、人間が動かしている機械「自転車+人間」とが行動をうまく協調できないのであり、人間が共通基盤を持たない知的機械と協調して状況がもっと楽になるなどということはない。
将来の賢い機械はインタラクションする相手の人間の心を読むことも、動機や次の行動を予測することもすべきではないとしている。第一に、大体において正しく予測できない。第二にこうすると人間が機械の動きを予測できなくなる。
自律式か能力拡大か
14時間ロータリーから抜けられなかったドライバー: 「一番内側の車線にいて,何回も外に出ようとしたんだけど,ハンドルが動かない…。『注意。右車線には他の車がいます』って何回も何回もしゃべるんです。その車線保持機能がやっと外に出してくれたのは夜11時でした」。
これは、ハイテク世界の事故やエラーの研究を専門に扱っている電子ニュースレターであるリスクスダイジェスト誌の記事の一節である。自動化された機械の問題点として起こり得るトラブルであるが、ただ一点付け加えると、これは4月1日つまりエイプリルフールに書かれたものである。
賢いモノを実現するにあたっては2つのアプローチが考えられる。ひとつは知的で自律性を持ち、人々の意思を推測しようとするアプローチである。もうひとつは、知的な能力拡大、すなわち有益なツールを提供するが、いつどこでそれらが使われるのかを決めるのは人々に任せるアプローチである。前者のアプローチの例としては、スマートホーム系の研究の多くが挙げられている[Mozer2005]。後者のアプローチの例としては、簡易/応用エスノグラフィーにより対象を観察し、自然にテクノロジーをそれら対象の中に溶け込ませるような研究例が挙げられている[Taylor2005]。
本書では能力拡大のアプローチが賢いモノのデザインに求められているというスタンスで述べられている。
反応的なインタラクション
コボットという人間と機械の共生システムでは、人間の力を自然に増幅し、システムが必要な力だけを補充する。人は自分が完全に制御していると感じ、機械装置に助けられていることに気づかない[Colgate1996]。セグウェイ・パーソナル・トランスポーターは、「機械+人間」の共生の乗り物である。
これら自然で反応的なインタラクションによって、機械の知能と協調能力を自然に応用することで、真の「機械+人間」の共生を生み出せるとしている。
日常のモノの未来
未来のテクノロジーとして一番思い描きやすいのはロボットだろう。また、知的エージェント、スマートホーム、アンビエント環境など、日常の身の回りのモノが益々賢くなり、互いに協調しあうような世界も想像しやすい。
しかし、これまで述べてきたように、人とインタラクションする自律的なロボットや知的機械を設計するのは難しい。さらに共通基盤を含むインタラクションの社会的側面は、技術的な側面に比べてはるかに複雑である。
ノーマンは、これまでの著書で「テクノロジーが人に合わせるべき」と論じてきた[Norman1990, Norman1996]。しかし、最高のデザイナーが最善の仕事をしても、機械の知能はデザイナーの頭の中に存在するだけであり、機械には限界がある。人間中心設計のルールは大前提として、柔軟で適応性に富み、変化力に富む我々人間がテクノロジーに合わせるというオプションを提言している。
人間視点/機械視点でのデザインルール
追記の「機械の言い分」では、仮想的に機械の側から人間を見たときに、人間の特性がどのようなものであるのかが語られている。知的で賢い機械と人間が協調しあう世界をデザインするにあたり、従来の人間中心設計の視点に加えて、「機械からの視点」でデザインするルールをユーモラスに挙げている。このあたりのメッセージの伝え方はノーマンならではのものであろう。結果としては、以下のように従来のインタフェースの原則に近いものになっている。
「賢い」機械をデザインする人間のデザイナーのためのデザインルール
- 豊かで複合的で自然なシグナルを与えること。
- 予測可能であること。
- 良い概念モデルを与えること。
- 結果が理解可能であること。
- 煩わしくなく、連続的な気づきをもたらすこと。
- 自然なマッピングを活用すること。
機械によって作られた、人間とのインタラクションを改善するデザインルール
- ものごとを簡潔にする。
- 人間には概念モデルを与える。
- 理由を示す。
- 人間が制御していると思わせる。
- 絶えず安心させる。
- 人間の振舞いを決して「エラー」と呼ばない。
本書のまとめ
知能と自律性を持ち、様々な状況において我々に取って代わりかねない、人間と社会的なインタラクションを試みる機械を我々は手にしている。科学とテクノロジーの利用を通して、生活がより豊かに、より実りあるものになるが、我々が現在歩んでいる道はそこにむかっていない。それらはフラストレーションを与え、邪魔をし、危険を増しさえする。
本書の結論では、我々はテクノロジーの限界を知り、デザイナーがジャンルを超えた様々な人間とインタラクションしながら包括的なデザインアプローチを取ることにより、人の役に立つ、よりシンプルで強力なテクノロジーを創造できる可能性が残されていると提言している。
■ 議論
以降では、本書の内容について議論したい点をいくつか述べる。
ユーザ中心デザインの7つの原則との相違点
本書での「賢い」機械をデザインする人間のデザイナーのためのデザインルール、あるいは、機械によって作られた、人間とのインタラクションを改善するデザインルールと、ノーマンのユーザ中心デザインの7つの原則[Norman1990]を比較してみる。ユーザ中心デザインの7つの原則を以下に示す。
- 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する。
- 作業の構造を単純化する。
- 対象を目に見えるようにして、実行の淵と評価の淵に橋をかける。
- 対応づけを正しくする。
- 自然の制約や人工的な制約などの制約の力を活用する。
- エラーに備えたデザインをする。
- 以上のすべてがうまくいかないときには標準化をする。
このように一覧すると、本書でのデザインルールとこれまでのデザイン原則の間では、直接的に一対一の関係にある訳ではないが、概念モデルや自然なマッピングについては共通するものがある。一方で、人間から見たときに予測可能であること、連続的な気づきをもたらすこと、といったルールについてはコミュニケーションが発生する「賢い」機械に特有のものといえる。人が自然に感じる、自然に動くということに重点を置いた表現になっている。
知能と行為の役割
自動運転、群れ、プラトーンなど、本書では人間が運転し、一方では主導権が機械にも与えられつつある自動車に関するテクノロジーを数多く引き合いに出している。また、「馬+人間」「自転車+人間」のような複合的なシステムについて述べている。知能を誰が受け持ち、実行の主体を誰が受け持つのかというデザインの議論は、将来的な知的機械のあり方を考える上でも重要である。このアプローチには、より詳細な研究フレームワークが求められよう。
イノベーションのあり方
本書では、簡易/応用エスノグラフィー手法が紹介されている[Taylor2005]。フィールドから得られるリアリティのある仮説と、そこにいかにして説得力のある技術的なイノベーションを適用できるかが、このようなアプローチのチャレンジとなる。著者の研究グループでも簡易エスノグラフィーをベースにした研究開発を実践している[Iga2007, Nakatomi2005]。現状の簡易エスノグラフィーのアプローチでは、「現在」のユーザについて観察し、「現在」存在するテクノロジーで解決を試みるものが多い。しかし、このようなアプローチでは、ユーザの課題を根本的に変革するのは難しい。テクノロジーが果たすべき役割は一方では、中長期的な時間軸を踏まえた研究への取り組みが必要であり、フィールドからの仮説発見と、それに対する技術戦略のフレームワークが今後望まれるところであろう。
デザイナーのあり方
前著『エモーショナル・デザイン』においては、ノーマンは「誰もが皆デザイナー」というスタンスで締めくくっていた[Norman2004]。すなわち、デザイナーに頼るだけでなく、大量生産されたものを、いかにカスタマイズし、パーソナル化できるか、というユーザ自らがデザイナーとなるべきというものである。この発想はシンプルなアプライアンスの発想を継承している[Norman2000]。
しかしながら、本書の結論で述べられているデザイナーのあり方を見ると、インタラクションデザインやグラフィックデザインなどの領域を超え、周囲の人材とインタラクションしながらデザインを作り上げるversatilist(万能な人)のニュアンスを持たせている。デザインファームIDEOにおける「10の人材」[Kelly2005]に登場する人材の役割の多くを兼ねており、デザイナーの能力への期待が高い。
前述のイノベーションのあり方の議論と共通するが、実際のソリューションの全体像を誰が何を起点に描くべきなのかについても、ものづくりの将来を占う上でも重要な話題であると考える。
■ おわりに
ここでは、D.A.ノーマンの著書『未来のモノのデザイン』の概要を紹介し、彼の主張に即しながらCHI分野の担うべき課題について考察した。一見すると本書は、知的で賢いテクノロジーに対して否定的な立場を取っている。しかし逆に、シンプルで強力なテクノロジーを生み出し、我々人間の生活を豊かにするためにはどういうデザインへのスタンスを取るべきかをポジティブに伝えてくれていると考える。ノーマンの言う人と機械の「共通基盤」は工学的に実現不可能なものか、それとも適切な方法で実現する可能性はあるのか、もし共通基盤が持てたとしたら、どのような技術が残課題として必要になるのか、あるいは、未来の自動車やロボット、あるいは家電装置のデザインへ本書のデザインルールを生かすとすれば具体的にはどのようなものになるかなど、CHIコミュニティの研究者が今後挑戦すべき課題も多い。
本書はアカデミックな形式はとっていないが、ノーマンの幅広い興味と見識により、テクノロジーを生み出す技術コミュニティと、そのアウトプットを享受すべき一般の人々とをつなぐメッセージとして、話の分かりやすさの部分だけではなく、本質的な課題として受け止めるべき話題を多く含んでいるように感じる。
■ 参考文献
- [Colgate1996] Colgate, J. E.,Wannasuphoprasit,W., Peshkin, M. A., Cobots: Robots for collaboration with human operators. Proceedings of the International Mechanical Engineering Congress and Exhibition, DSC-Vol. 58, 433-39, 1996.
- [Flemisch2003] Flemisch, F. O., Adams, C. A., Conway, C. S. R., Goodrich, K. H., Palmer, M. T., Schutte, P. C., The H-metaphor as a guideline for vehicle automation and interaction. (NASA/TM.2003-212672). Hampton,VA: NASA Langley Research Center, 2003.
- [Iga2007] 伊賀聡一郎, 新西誠人, 中臣政司, 嶋田敦夫, 「すごい」ペルソナ法:UCD設計手法とファシリテーション技法の融合, ヒューマンインタフェースシンポジウム2007, pp.865-868, 2007.
- [Kelly2005] Kelly, T., Littman, J., The Ten Faces of Innovation, Currency, 2005.
- [Mozer2005] Mozer, M. C., Lessons from an adaptive house. In D. Cook & R. Das. (Eds.), Smart environments: Technologies, protocols, and applications, 273-94. Hoboken, NJ: J.Wiley & Sons, 2005.
- [Nakatomi2005] 中臣政司, 伊賀聡一郎, 嶋田敦夫, ニーズ探索のためのフィールド調査法: 人間中心の研究開発プロセスの提案, 社会情報学フェア2005 ワークショップ「CMC及びHCIの分析メソドロジー」, pp.4-8, 2005.
- [Norman1990] Norman, D.A., 野島久雄訳, 誰のためのデザイン?, 新曜社, 1990.
- [Norman1996] Norman, D.A., 佐伯胖 監訳, 岡本明, 八木大彦, 藤田克彦, 嶋田敦夫訳, 人を賢くする道具, 新曜社, 1996.
- [Norman2000] Norman, D.A., 岡本明, 安村通晃, 伊賀聡一郎訳, パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう, 新曜社, 2000.
- [Norman2004] Norman, D.A., 岡本明, 安村通晃, 伊賀聡一郎, 上野晶子訳, エモーショナル・デザイン, 新曜社, 2004.
- [Norman2008] Norman, D.A., 安村通晃, 岡本明, 伊賀聡一郎, 上野晶子訳, 未来のモノのデザイン, 新曜社, 2008.
- [Taylor2005] Taylor, A. S., Harper, R., Swan, L., Izadi, S., Sellen, A., Perry, M., Homes that make us smart. Personal and Ubiquitous Computing, 11(5), 383-394, 2005.
October 31, 2008
D.A.ノーマン『未来のモノのデザイン』
D.A.ノーマンの著書『未来のモノのデザイン』では、自動車業界を中心とする「知的」テクノロジー・自動化された「賢い」機械を引き合いに、未来のテクノロジーのあり方を幅広い見識を元に探っています。
カーナビゲーションに代表されるように、我々を取り巻く機械はますます知的になり、それらがこれまでよりも多くのタスク遂行に際して主導権を持つようになってきています。
我々はこれら賢い機械とどうインタラクションするのか悩まなければならなくなってきています。
テクノロジーの限界を知り、正しいプロセスでデザインすることにより、人の役に立つ、よりシンプルで強力なテクノロジーを創造できる可能性が残されていることをポジティブにユーモラスに提言している本といえます。
本書はアカデミックな形式はとっていませんが、ノーマンの幅広い興味と見識により、テクノロジーを生み出す技術コミュニティと、そのアウトプットを享受すべき一般の人々とをつなぐメッセージとして、話の分かりやすさの部分だけではなく、本質的な課題として受け止めるべき話題を多く含んでいると思います。
October 21, 2008
もうすぐノーマン『The Design of Future Things』邦訳出版
『The Design of Future Things』(邦題予定:未来のモノのデザイン)の翻訳が10月31日出版予定です。
今回の本はアカデミックなテイストではなく読みやすい一方で、知識の豊富さに裏づけられた示唆に富むものと思います。
ぜひご一読ください。
August 03, 2008
ビジネスエスノグラフィ実践コース
社団法人日本能率協会主催で2008年9月3日~11月7日の期間にて全5日間のビジネスエスノグラフィに関する講座が開かれる。
ビジネスエスノグラフィ実践コース
ビジネスドメインをターゲットにした簡易エスノグラフィを体感できるコースとしては、知る限りでは日本で初めてだと思うので貴重な講座だと思う。若干高額なため個人での参加は難しいと思うが、新たな視点・新たな切り口を求めたい方にはお勧めしたい。たぶん、「お得」だと思う。
私も本講座開催に際してプログラム中で駄文を寄せさせて貰っている。
イノベーションは「課題」からスタートすると思います。これからのイノベーションには、これまでのようにテクノロジー自身の持つ課題に加えて、エスノグラフィなど実フィールドから発見する課題という、2つの課題の統合が求められていると思います。しかし現状、それを実施する確立されたメソッドがあるとは言えません。エスノグラフィという手法をきっかけに、皆さんと何かしらのヒントが見つけられる場になればと考えています。
最近の個人的な問題意識というか悩みはまさに上記に集約されていると思う。
従来の仮説検証型のアプローチとは一線を画し、フィールドに「仮説」を求める。ユーザに最も近い「現場(フィールド)」から問題提起を起こすのであるから、ユーザへのインパクトも極大化できる可能性がある。クリステンセンの言う持続的イノベーション、あるいはジーマンの言うコアエッセンスにのっとった企業成長にとっては少なくとも意義のある正当なアプローチと言える。
しかし、フィールドからの課題をストーリー立てるのはイノベーションを物事を起こすスタートに過ぎない。Do the right thingだけでは新しい事は興せない。Something very specialなものを提供するには、テクノロジーなりサービスなりの破壊的なアイデアが必要だと思うし、フィールドからの仮説と内部から出た破壊的なエネルギーとを統合できなければ新しい事が世に出ることはないと思う。
話しはそれたが、とにかく本講座は日本で体験できる実践的な講座としては斬新なものであるし、イノベーションを求める方々にとって新たなスタートラインを提供してくれることは間違いないと思う。
July 24, 2008
地震に見るテクノロジーとマーケットとの関係
昨日東北地方で地震があった。地震における震源の深さと揺れの影響範囲との関係は、テクノロジーとマーケットの関係に似ていると思う。
A.震源の深さが浅いとゆれる範囲は狭くなるが被害は大きい。
B.震源の深さが深いとゆれる範囲は広くなるが被害は少ない。
テクノロジーがマーケットに近ければ近い、つまりターゲットユーザのペインやニーズに近いほど、ターゲットへの影響は大きくなるだろう。しかし、テクノロジーがマーケットにあまりに近いと、ニッチマーケット狙いになりがちであり、強みもあるが広がりを持たせることが難しい。
一方、今までにないイノベーションを起こすような基礎研究など、インパクトの大きいテクノロジーは、明確なニーズはすぐには見えないが幅広い領域に応用される可能性を秘めている。しかし、応用された商品などの上では、ユーザにとってそのテクノロジーから直接的な恩恵は見えなかったりする。
昨今では、ユーザが商品を利用するプロセスに注目し、ユーザの商品との経験そのものに価値を与えていこうというUX(ユーザエクスペリエンス)指向のアプローチを取る企業が増えている。これはまさにAのインパクト、つまり、マーケットに近いところからスタートすることにより、商品によるユーザへのインパクトを極大化しようというものといえる。ユーザへ与えるインパクトの確実性は高められるだろうが、他のマーケットへの水平展開という意味では、時間も費用もコストのかかるアプローチともいえる。
Bは従来のテクノロジードリブンなメーカー的アプローチといえる。テクノロジー中心に考え、テクノロジーの完成が近づいたときにマーケットを探る。テクノロジーの「読み」が正しければ広く応用が期待できるが、マーケットがあまり見つけられない可能性も当然はらんでいる。
いずれにしても、テクノロジーのインパクトが大きいほど、利用するターゲットユーザへの影響も大きいことは間違いない。文字通り「破壊的なテクノロジー」が根本的に求められている。
p.s.
無論、地震を肯定している訳ではないし、物理的な破壊がもたらす被害を肯定するものでもない。
November 24, 2007
SFC Open Research Forum 2007見学
2007年11月22日(木)~2007年11月23日の日程で六本木ヒルズにて開催されたSFC ORF2007を見学してきた。初日のみ、かつ1時間ほどしか時間がなかったので、個々の詳細を聞くことはできなかったが、「お祭り」はいつ見ても華やかで楽しいものである。デモシステムの展示も多く、お祭り感に花を添えている。
こういう大学のイベントに参加して年々その思いが深まるのは、技術やモノヅクリの「チープ化」が加速度的に進んでいるということである。ウェブサービスなどソフトウェアに留まらず、ハードウェアにおいてもツールキット類が数多くそろってきており、「誰でも」ちょっとしたプロトタイプシステムを数分から数日で構成できる。まったく工学的なバックグラウンドを持たなくても、数千から数万のキットを購入して、インターネットで関連資料を検索するだけで何かしら動くものができる。
そうすると「アイデア」が重要?
いわゆる「高速道路」の先の「渋滞」?
たしかに、それぞれの研究者・技術者が自身のプロトタイプシステムのアイデアをさらにつきつめて、こだわり、そうした先には渋滞を突き抜けた本当に世の中を動かす「究極のアイデア」への道が見えるのだろう。しかし、大学という場所と時間の制約のある組織の中では、それほど簡単な話しではないと思う。大学にそのまま残らなければ、本質的なことを考えられる時間は数年に過ぎない。
一番気になるのは、大学側が、若い世代に今何を提供すべきか、あるいはどういう人間を社会に提供しようとしているのか、というビジョン群が見えていないのではないかということである。
過去の技術遺産にしがみついているような旧来の大学は論外であるが、逆に「さっき思いついたアイデア」を場当たり的にプロトタイピングし続けたところで、向かう先すら見えない学生が大半だろう。
アイデアあるいはプロトタイピングの前に「課題」について議論するべきだと思う。課題への造詣が深いほど、そしてその課題に対して本気であるほど、その研究ビジョンを実現するためにプロトタイプシステム群でその実現への道を模索する意義が見えてくるだろう。学生にとっても自分と社会の関わりを本気で考える機会にもつながるだろう。
教員・教官の立場の方々も今の技術の移り変わりの早さに翻弄されていることだろう。しかし、実現方法のちょっとした違いやトレンドに影響される産業界と違って、本質に迫る「ぶれない」課題の捕らえ方をしてくれることがアカデミックな世界に最も求められる活動であると思う。
November 18, 2007
時間的パラドクスとUCDの位置づけ
情報化が進み、なおかつスピーディな事業サイクルの求められる昨今、事業部と研究開発、つまり実践者(practitioner)と研究者 (researcher)の境界はなくなりつつある。それでも、やはりそれぞれに求められるコントリビューションというものは存在する。実践者で言えば、そこにいるお客様、そこにある課題、これらをいかにして解いて事業に結びつけるか、研究者で言えば、潜在的なお客様、来るべき事業に備えて研究開発を進めておくか、といったものがその一部であろう。
現状の大量生産に適した組織体系の下では、実践者と研究者とに、ある種の時間的なパラドクスが起こる。つまり、実践者は本来立っている時間的な位置(現在)があったときに、もっと先にいたいと思う。他方、研究者は本来立っている時間的な位置(少し先)があったときに、もっと現在に近いところを知りたいと思う。現状の縦割りの組織のミッションと、実際に自分たちが置かれている問題意識とのギャップにジレンマを覚えることだろう。

ここで、UCD(User Centered Design)がコントリビューションできる課題について考えてみる。このままの縦割りな動きでは新しいことができないと思う実践者。このままの現場課題不在の動きでは正しい決断ができないと思う研究者。それぞれが時間の中でマインドを前後させる、つまり、この実践者と研究者の時間的なパラドクスのもとでは、お客様の次のニーズ、次のお客様がいるであろう時間的な空間に「隙間」ができる。ここに共有できる次なるお客様のイメージを作り上げるのがUCDの位置づけであろうし、またそのためのメソッド・技術の開発が必要であろうし、それを効果的に実践するための組織作り・人作りが求められてくると考える。
September 08, 2007
ヒューマンインタフェースシンポジウム2007終了
2007年9月3日(月)~9月6日(木)の日程で工学院大学で開催されたヒューマンインタフェースシンポジウム2007が終わりました。
今回は自分としても毛色の違う分野の発表でしたが、有意義な議論の時間を得られたので、今後の実践も役立てられそうです。学会発表は多くの研究者にとってはそれ自体が目的になりがちですが、本来は他の研究者との研究を通じての対話・コミュニケーションが重要であり、それを持ち帰って日々の実践にいかにフィードバックできるかに価値があると思います。
その意味では今回はこれまでの中でも自分の仕事に活かせる意義のある発表だったと個人的に実感しています。
August 25, 2007
ヒューマンインタフェースシンポジウム2007参加募集のご案内
(学会ページは締め切りになっていますが、講習会など来週頭くらいまでは申し込み可能なようです。特に講習会1などはお得です!)
テーマ: 「みんなのインタフェース、みんなでデザイン」
大会長: 長嶋 祐二(工学院大学)
日時:2007年9月3日(月)~9月6日(木)
会場:工学院大学(東京都新宿区)
主催:特定非営利活動法人ヒューマンインタフェース学会
併崔:特定領域研究「情報福祉の基礎」
○講習会 9月3日(月)10:00~17:00
http://www.his.gr.jp/his2007/kousyuu.html
1.教育用レゴ マインドストームNXT で学ぶものづくり
オーガナイザ:福本雅朗(NTTドコモ 総合研究所)
講師:株式会社アフレル
2.体験してみよう! 近赤外光トポグラフィによる脳機能計測の実際と応用
オーガナイザ: 井野秀一(東京大学) 岩田洋夫(筑波大)
講師:牧 敦(日立製作所)
戸田明彦・藤原倫行(日立メディコ)
片寄晴弘(関西学院大学)
3.心理学実験と分散分析:はじめの一歩
オーガナイザ:竹内勇剛(静岡大学)
講師:青山征彦(駿河台大学)
4.多様な人々が利用できるWebサイトとは
~Webアクセシビリティの現状と実践方法~
オーガナイザ: 今井朝子(ユーディット) 竹内勇剛(静岡大学)
講師:濱田英雄(ユーディット)
5. 成熟度の水準に対応した人間中心設計の進め方
オーガナイザ:黒須正明(メディア教育開発センター)
講師:黒須正明 (メディア教育開発センター)
堀部保弘(三菱総合研究所)
鱗原晴彦(U'eyesDesign)
小川 俊二(カイデザイン)
○ワークショップ 9月4日(火)・9月5日(水)
http://www.his.gr.jp/his2007/#workshop
WS1 「HI研究を論文にまとめる~著者・査読者・学会の立場から」
WS2 「健常者で疑似体験?」
WS3 「ケア提供者とメイカーの合意に基づく次世代の看護用具・用品の開発」
WS4 「 みんなのスマートハウスみんなでデザイン」
WS5 「女性研究者をまるはだか~研究・恋愛・結婚・家庭」
○特別講演 9月5日(水)夕刻
http://www.his.gr.jp/his2007/#tokubetsu
「NTTドコモのユニバーサルデザイン」
株式会社NTTドコモ P&S事業本部プロダクト部
第三商品企画担当部長
中村 吉伸
「Realizing Potential by HI」
マイクロソフト株式会社 CTO 加治佐 俊一
■■■シンポジウム講演参加費■■■
学会員・協賛学会員 13,000円/一般 19,000円
※上記金額には、当日の参加費、DVD-ROM論文集が含まれます。
■■■情報保障のご要望■■■
手話通訳や要約筆記、点訳資料等の情報保障のご要望は8月3日(金)
までに下記問い合わせまでご連絡ください。
■■■シンポジウム問合先■■■
ヒューマンインタフェース学会事務局
E-mail:symp@his.gr.jp
July 26, 2007
「すごい」ペルソナ法
■はじめに
モノ単体が価値を生む時代から、情報やサービスなどのエモーショナルな側面が価値を生む時代へと移り変わって来ている[Norman2004,Tien2003]。企業の製品開発においても、従来のような技術指向の製品開発によるシーズベースのアプローチから実際のユーザを想定したニーズベースの開発アプローチが重視されつつある[Iga2007]。このような流れの中において、ISO13407などの標準化も進み、ユーザ起点で製品開発を行うUCD(User-Centered Design)の考え方も浸透してきている[Kurosu2001]。
企業における製品の研究開発においては、様々なスキルを持った人材が数多く関わることになる。例えば、筆者の研究プロジェクトにおいても、ユーザインタフェース研究者のみならず、材料、物性、メカトロニクス、ソフトウェア工学、心理学、マーケティング、デザイナーなど多種多様に渡るバックグラウンドを持つ人間が一つの製品開発に携わっている。これら多様なバックグラウンド、スキル、マインドを持った人間が、ユーザのニーズに密着した製品開発というゴールに対して協働することが求められる。
ユーザのニーズを直接的に吸収した開発手法としては、参加型デザインという手法がある[Schuler1993]。開発者とユーザがともに製品開発の課題解決にあたるというものである。しかしながら、これまで市場にない製品を開拓するような場合には具体的なユーザがいない、長期的にユーザをプロジェクトに参加させることが難しい、ターゲットユーザのセグメンテーションが難しいなどの課題がある[Pruitt2007]。特に新しい製品の研究開発プロジェクトにおいては、技術やノウハウなどの知的財産のマネジメントの観点からも参加型デザインを適用することは困難であるといえる。
このような製品開発プロジェクトをユーザ起点にするUCD手法の一つとして、ペルソナ法がある[Cooper1999]。仮想的なユーザを詳細にデザインし、そのユーザが使うことを想定して製品開発を進める手法であり、今後さらに企業においても活用が期待される手法の一つである。
ペルソナ法などのUCD手法の実践にあたっては、手法自体に不慣れな開発プロジェクトメンバーに対しても情報共有が求められる。ここではUCD手法とファシリテーション技法を融合するUCDの新しい実践『「すごい」ペルソナ法』を提案する。本手法により、UCD手法に接したことのないプロジェクトメンバーに対してもUCD設計プロセスになじませることができる。また、本手法はプロジェクトの組織マネジメント手法としても活用できる。ここでは、まず従来のUCD手法とその課題について考察する。次に、ファシリテーション技法について触れ、本研究で提案するUCD手法とその実践事例を紹介する。最後に本手法のメリットや現状の課題について考察する。
■従来研究
これからの企業の研究開発においては、プロジェクトベースでスピーディに問題解決にあたりながらユーザ起点の製品開発を進める必要がある。ここでは、まずユーザ起点での開発プロセスとして、これまでのUCD手法について概括する。UCD手法の中でもデザインチームをユーザ中心の創造的なプロセスに導く方法としてのペルソナ法に特に注目し、ペルソナ法の現状の課題について触れる。また一方で、企業における組織力を最大限活用してプロジェクトを運営するツールとしてのファシリテーション技法について概括する。
■■UCD(User Centered Design)
UCDとはユーザをデザイン・プロセスの中心に据えることで、適切で使いやすい顧客起点の製品やサービスの提供をめざす手法である [Yamazaki2004]。基本的なステップとしては、市場を定義し、ステイクホルダーへのインタビューやフィールドの観察・調査により [Yamazaki2004b]、ユーザ像の詳細やニーズを収集/分析する。そこからの気付きを基に、ユーザのニーズやそこでの課題を解決する仮説を立案する。仮説を形にするために、ユーザの利用コンテキストを取り込んだシナリオを作成し[Beyer1998,Carroll2000]、仮説を形として実現するラピッドプロトタイプを作成し[Snyder2003]、実際に想定されるユーザを交えてテストを繰り返す。このような開発サイクルを実践することにより、製品をユーザのニーズにより近くことが期待できる。
UCDの実践としては、例えば、平野らは紙や電子ペーパーなどのドキュメントワーク環境をデザインするにあたって、人のワーク行動を観察し、観察からの特徴的なシーンを抜きだし、そのシーンを支援する仮説をたて、ラピッドプロトタイピングの手法によりインタラクションデザインを実施している [Hirano2007]。
筆者の研究プロジェクトにおいても実際のフィールドでの深いインタビューを通じたニーズ探索とシーズ的な技術開発のプロセスとを融合するような取り組みを実践している[Nakatomi2005]。本取り組みでは、ISO13407で提唱されているUCDプロセスを実践的に拡張したものとなっている。実際の顧客のフィールド観察とインタビューを通じて、ユーザニーズを吸収する。ニーズを改良ニーズと革新ニーズの2つに分類し、現行機能の組み合わせで対応できるものを改良ニーズとして位置付け、スピーディに顧客に対して改良案を提案する。残項目については、短期/中期的開発で対応可能なものはラピッドプロトタイピング的に実装してフィールドで評価し、新たな技術開発が必要な場合は長期的な研究開発課題として挙げている。
■■ペルソナ法
ペルソナ法とは、実際のユーザの生活パターンや要望・要求を反映した仮想のユーザ(ペルソナ)を設定し、製品開発に活かす開発手法である[Cooper1999,Cooper2003]。
深いインタビューを通じてユーザを詳細にモデル化し、そのユーザが何を達成しようとしているのか、なぜそれを達成しようとしているのかを記述して、開発プロセスを通じてそのユーザにとっての製品開発を進める。企画、設計、開発、テストといった製品開発の各ステップの中で、常にペルソナと対話(分析)し、作業に反映することで、製品をユーザニーズに近づけていく。
ペルソナ法以前よりユーザプロファイリングなどのユーザのターゲティング分析は行われている。しかし、ユーザプロファイリングがターゲットユーザ層をグループとしてとらえているのに対して、ペルソナ法では「一人の確固たる仮想的なユーザ」のためにデザインしていくという点で従来の分析手法と異なる。
ペルソナ法の実践例については、Pruittらの著書[Pruitt2007]に詳しい。例えば、大和ハウス工業株式会社におけるウェブサイトをはじめとするクロスマーケティング展開や、日立アプライアンス株式会社における販売店戦略への適応などが挙げられており、プロジェクトの推進に効果を上げている。
■■従来UCD手法の課題
UCDを根本原理から実践するには、プロジェクトの構想から終了までの様々なスキルを持つ人材をプロジェクト的に集める必要がある [Yamazaki2004]。従来の開発部門ごとの垂直的な組織マネジメントから、より横断的/水平的なプロジェクトマネジメントを行うには、様々な開発部門を越えて人材を集める必要があり、本質的にはトップマネジメントが関与する必要がある。しかしながら、このような人材異動コストの高いプロジェクト形成は難しく、従来の垂直的な組織マネジメントにおいてUCDのマインドを推進させるに留まっているのが現状であろう。
ペルソナ法の課題としては、ペルソナの選定からシナリオ作成を行うことが難しいことが挙げられる[Nikka2006]。ペルソナをデザインしたあとには、具体的なペルソナの製品利用シーンやユーザの振舞いなどをデザインする必要があるが、特にUCDプロセスに通じていないメンバーの多い研究開発プロジェクトでは、どうしてもペルソナ視点の発想を進めることが難しい。フィールドでの観察やインタビュー時に、その後のシナリオメイキングに活用できるような質問をすることも考えられる。しかし、これもペルソナの詳細化には役立つとしても、研究開発のプロジェクトメンバーがシナリオを作成するときの議論フレームワークが現状では不足している。
■ファシリテーション技法
企業において、会議やプロジェクトを円滑に運営し、組織力をフルに発揮させることができれば、業務の生産性が高まり、そのノウハウを企業体全体で共有することにより、企業の競争力を高められる。ファシリテーション(協働促進)技法とは、コーチングとも呼ばれ、グループをそのグループのゴールに向かって円滑に進められるようにする技術の総称である[Hori2004,Nakano2003]。
ファシリテーション技法の一例として「すごい会議」という方法とその実践例が提案されている[Ohashi2005]。「すごい会議」において特徴的なのは、「問題解決シート」という紙のシートに事項を書き出してから発表し、議論を進めるという会議の進行手法である。問題/懸念/望ましくない状況を問題解決シートに記述し、その上でそこに挙げられた課題を「どのようにすれば~」という口調の文章に書き換える。例えば、「資金が足りない」という課題が挙げられれば「どのようにすれば資金が得られるだろうか?」という口調に書き換える。つまり、どのような解決策の可能性があるのかという文言に置き換えることにより、議論の活性化が期待できるものである。
■「すごい」ペルソナ法~UCD手法とファシリテーション技法の融合
ここで、UCD手法のひとつである「ペルソナ法」とファシリテーション技法のひとつである「すごい会議」とを併せて活用する『「すごい」ペルソナ法』を提案する。本手法は、特にペルソナデザインからシナリオデザインに至るプロセスにおいて、プロジェクトメンバーの議論フレームワークとして活用できるものである。
基本的な考え方としては、「すごい会議」における問題解決シートをペルソナ視点で記述するというようものである。ペルソナのある生活シーンにおいて、そのペルソナがその時どのような問題を持つのか、どのような懸念事項があるのか、望ましくない状況は何か、他のペルソナに対してどのような考えを持つのか、といったように、ペルソナにとっての問題解決シートをペルソナ毎に作成する。そして、作成した問題解決シートを「どのようにすれば~」という口調の文章に書き換える。例えば、「ペルソナAは~電子ファイルを転送する方法がわからない」という課題があるとしたら、それを「どのようにすればペルソナAは電子ファイルを転送できるのか」といったように文章を書き換える。このように課題をどのように課題を解決するのかという方向に発想を換えることにより、議論を活性化することが狙いである。また、ペルソナ視点で課題を考えることにより、ペルソナ間のインタラクションもイマジネーションしやすくできる。
従来のペルソナ法では、ペルソナをデザインすることも困難であるが、ペルソナをデザインした後に、そのペルソナ起点で妥当性のあるシナリオをデザインすることに難しさがあると考えている。研究開発プロジェクトメンバーはUCDやユーザビリティの知識を持ち合わせていることは少ない。このような場合、プロジェクトにペルソナ法を単純に導入しても、UMLのユースケースを記述するもののように議論されてしまうことが多い。例えば、「 *私の*イメージではペルソナAは~する」「ペルソナAにとって* 私なら*技術的に~する」といったように、開発者視点での議論になりがちである。本手法を用いることにより、「*ペルソナAなら*~する/しない」といったように、プロジェクトメンバーの議論をペルソナ視点でファシリテートすることが可能になる。
また、従来のペルソナ法ではプロジェクトメンバーにペルソナ法を理解してもらい継続的に活用してもらうために手法自体を推進するコストがかかるが、本手法では議論を活性化して問題解決に導くための議論のフレームワークが手法の中に取り込まれているため、メンバーがペルソナを認識したり理解するのにも役立つし、なおかつ継続的に議論をペルソナ起点で推進することにも役立つ。
■研究プロジェクトにおける実践例
ここでは、企業研究所において本手法を実践した事例を示す。図1に提案する手法の全体像を示す。全体的なプロセスとしてはUCDプロセス[Yamazaki2004]を踏襲したものであるが、製品像やターゲットがあらかじめ具体化していない技術視点の研究開発プロジェクトとしてスタートしている点が異なる。
主だった研究開発のミッションを基にしておおよその市場を定義する。ステイクホルダーの仮説をたて、想定ユーザのフィールド観察やインタビューを実施する。

図1: UCDプロセス実践の全体像
次に、観察やインタビュー分析結果をメンバー間で共有した上で、ペルソナをデザインする。図2に示すようなペルソナのキャストを作成し、これらをプロジェクトメンバーが常に参照できるような状態にしておく。

図2: ペルソナのキャストとペルソナ間の関係
ここで、ペルソナを用いてシナリオを作成する。例えば、ペルソナが人材を組織内から集めてあるタスクチームを立ち上げて仕事をするというような場合に、本稿で提案する手法を適用する。その場合、次に挙げるようなペルソナ視点の問題解決シートを作成する。
・モリーが企画立案するときの課題は何ですか?
・ナンシーの抱える困り事/課題は何ですか?
・ケントはそのとき誰に相談すると思いますか?
問題解決シートをプロジェクトメンバーに回答してもらい、そこで挙げられた困り事や課題を「どのようにしたら~が解決できるか」という文章に置き換えてブレインストーミングを繰り返す。本手法を実践することにより、メンバーは各ペルソナ視点で発想することもできるし、ペルソナ間での関係性の理解も進む。また、新しい技術で解決すべき課題と、運用やコミュニケーションで解決すべき課題を明確にして開発事項の議論を進められる。
本手法でペルソナとそれらによるシナリオがある程度見えてきた時点で、ペーパープロトタイピング[Snyder2003]によってイメージを具現化する(図3参照)。この時点でまたシナリオの矛盾などを洗い出した上でシナリオを改善したり新たに事項を追加する。

図3: ペーパープロトタイピングによるイメージの具現化
■まとめと今後の展望
本手法を実践することにより、開発プロジェクトにおける議論をペルソナ中心で進めることもできるし、製品開発に必要なシナリオにおいて常にペルソナの活動するシーンやコンテキストを盛り込んだものにすることができる。
また、技術者がペルソナ視点で研究のアイデアをプランニングするきっかけも与えられ、プロジェクトをユーザ中心に進める上でのプロジェクトマネジメントツールしても有益である。
現状の課題としては、プロジェクトに途中から参加したメンバーに対する対応は特別なケアが必要である点、旧来組織特有の役職など組織上のパワーが働かないようにする点が挙げられ、これら課題は本手法ではまだカバーできていない。これら課題を解決しつつ、企業の開発プロジェクトにおけるUCDプロセス実践を継続する。
■参考文献
[Beyer1998] Beyer, H., and Holtzblatt, K.: Contextual Design - Defining Customer-Centered Systems, Morgan Kaufmann, (1998).
[Carroll2000] Carroll, J.M.: Making Use - Scenario-Based Design of Human-Computer Interactions, MIT, (2000).
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[Cooper2003] Cooper, A., and Reimann, R.: About Face 2.0, Wiley, (2003).
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[Hori2004] 堀: ファシリテーションの技術 - 「社員の意識」を変える協働促進マネジメント, PHP研究所, (2004).
[Iga2007] 伊賀, 丸山, 伊賀: モノヅクリノカタチ - コンテンツの企画・設計・制作プロセス, 東海大学出版会, (2007).
[Kurosu2001] 黒須, 堀部, 平沢, 三樹: ISO13407がわかる本, オーム社, (2001).
[Nakano2003] 中野: ファシリテーション革命 - 参加型の場づくりの技法, 岩波書店, (2003).
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June 26, 2007
「新訂版More Effective C++」出版

新訂版 More Effective C++
スコット・メイヤーズ (著), 安村 通晃, 伊賀 聡一郎, 飯田 朱美, 永田 周一 (訳)
April 06, 2007
やめられる力
企業などの組織内において新しいイノベーションを起こす人材であり続けるには、その組織を「やめても大丈夫」という臨界点をこえている必要があると思います。極端な表現をすれば「やめられる力」とでも呼べるかと思います。
アメリカがイノベーションを続けられるように思えるのも、学歴や収入の高さなどもあるし、そこで何かしらキャリアをつむことができれば、どこに移ってもやっていけるという自信があればこそだと思います。
「やめられる力」のバランスにおいて、自分の方が組織よりも優位に立てる人間を集めることができれば、イノベーションのきっかけにつながるのではないでしょうか。
(仕事に対して無責任でよい、という意味ではありません。仕事に対して失敗を恐れずにアグレッシブにのぞむには、無防備ではいられません。何も支えがないのに無鉄砲にやりたいことをやれ、とそそのかすようなやり方はあまりに乱暴だと思います。そこには単に「若さ」という「やめられる力」が裏にあればこそなのであって、その条件を満たしているかどうかを個々人が自覚している必要があると思います。)
April 02, 2007
「モノヅクリノカタチ」出版

モノヅクリノカタチ~コンテンツの企画・設計・制作プロセス
(東海大学総合情報センター新情報教育プロジェクト編/伊賀彩子,丸山有紀子,伊賀聡一郎)
というタイトルで、夫婦で編集・執筆に携わった本が出版されます。
情報技術の発達に伴い,ますますコンテンツの重要性が高まってきた.本書ではコンテンツ制作プロセスを「企画・設計・制作」の3段階に大別し,前半では必要な知識や方法論について概説し,後半では実践的なワークショップ形式の例題を掲載する.
という内容で、導入的な教科書としての位置づけとなっています。ご興味のある方はぜひ。
Read more "「モノヅクリノカタチ」出版"March 11, 2007
del.icio.usのblog postingをやめた
del.icio.usのブックマーク情報をブログエントリーとしてポストするように設定していました。ブログを更新する時間がとれないと、ブックマークばかりが並ぶことになり、何だかspamサイトのような風貌に…。del.icio.usについてはサイドメニューで十分のような気がするのでblog postingはやめることにしました。
研究スタンスに思う
http://cafe-ten.net/
昨日、大学で打ち合わせのついでに、カフェ展の出し物の様子をちょっとだけ見させてもらいました。ウェブ系のフレームワークと同様、センサー類でも非常に多くのツールがあるので、いろいろ自由に楽しくモノを作っている感じがして、自由な発想から何かが出てきそうな期待を感じました。何かしらデザインの手がかりを求めている方には楽しみなイベントだと思います。
ただ、題材として選んだフィールドに関する観察・洞察が若干不足しているのではないかと、ちょっと心配になりました。「センサー」と「スイッチ」で「どう作るか」というhowに意識をとられているような気がします。「what」「why」を問う必要があると思います。「楽しくやる」のは、当然として、何のためにやっているのかを考える場が必要なんだろうなと思いました。それを考える場として、今の日本のHCIのコミュニティは適切ではないと思いますが。
February 09, 2007
bean-throwing ceremony

The other day, we've scattered roasted soybeans to drive demons away. I wrote a face of red demon and I also acted as him.

