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2005年06月23日

オープン・アーキテクチャ戦略

 國領二郎、『オープン・アーキテクチャ戦略』、ダイヤモンド社、1999年.

システムに無駄がないということは、そのシステムを構成する各部位の相互依存性が高いということであり、統合度が高まることを意味する。 1980年代に日本の製造業は統合度の高い製品を統合度の高い組織でつくってきた。 これは日本の製造業の全体として、モジュール化を否定することで発展してきたと言える。 モジュール化は、企業が得意領域に経営資源を集中し、それ以外については大胆な提携によって他社資源を活用する、オープン型経営を採用することと密接に関係している。 具体的にはアウトソーシングやパッケージソフトの導入、事業部門の売却や合併などである。 情報技術が急激に発展しつつある今日の情報技術は分散的な協同を強力に支援する。 ネットワーク上では次の3つの要因が相互作用し合って多様な主体が発信する情報を結合させることで価値がうまれる経済が形成している。 ①機械系システムと人間系システムの処理能力向上のアンバランス(情報過多)、②ネットワークの普及による情報の不対称性の構造変化、③情報と媒体のアンバンドルによる情報の非物財的特性の表面化である。情報システムのモジュール構造は資源利用の無駄を許容しながら、独立した組織は分散的な開発を行うことによって生じる創造性の増大できる。
オープン・アーキテクチャ戦略は本来複雑な機能を持つ製品やビジネスプロセスを、ある設計思想(アーキテクチャ)に基づいて独立性の高い単位(モジュール)に分解し、モジュール間を社会的に共有されたオープンなインターフェースでつなぐことによって汎用性を持たせ、多様な主体が発信する情報を結合させて価値の増大を図る企業戦略のことである。 オープン・アーキテクチャ戦略はネットワークの特性を最大限に活用し、その価値を最大化することができる。 オープン・アーキテクチャ戦略という視点をもつ多くのビジネスのモデルからは特にSCM(Supply Chain Management:供給連鎖管理)とCRM(Customer Relationship Management:顧客関係性管理)に関連しているテーマをあげながら多様な主体の情報結合に必須のフラットフォームを提供するビジネスについて議論している。 本書では、情報産業における水平展開型ビジネスモデルと顧客参加型ビジネスモデルをあげている。 水平展開型ビジネスモデルは得意領域に経営資源を集中投入しつつ、足りない機能についてはそれを最も得意としている企業に補完してもらうことである。 それは、多様な主体がもつ情報を結合させ、価値の増大を図るメカニズムである。水平展開型モデルへの展開を思考する場合に重要なのが、インターフェースのオープン化である。 自社システムのインターフェースを世の中のデファクト・スタンダードとしていくのが有効である。 オープン・アーキテクチャ戦略の一形態になりえる。 一方、顧客参加型モデルは顧客が手にする情報の量や質の変化により、かつて販売者と顧客の間に情報の非対称性が逆転しつつある。 顧客間のインタラクションおよび電子市場の新たな関係性を通じて顧客は新たな価値を生産している。単なる消費者であった顧客を積極的な価値の生産者にしていく。 様々な企業や個人の情報を結合させることは簡単にできるのではない。 それをビジネス化したのがフラットフォームビジネスである。 フラットフォームビジネスは①取引の探索、②信用(情報)の提供、③経済価値評価、④標準取引手順、⑤物流など諸機能の統合の5つの機能を提供する。以上のようなオープン・アーキテクチャ戦略は分散・自律的なシステムを構築が可能になり、社会において協同モデルを提示する。
<コメント>
オープン・アーキテクチャ戦略は組織・社会において自律・分散的なシステムを可能にすることができると思う。それによって、企業及び組織間においてはその関係性がます重要になってくるのではないかと思う。つまり、各々の自律・分散的な有機体(企業・組織・社会)が他の有機体(企業・組織・社会)との協同的な関係を有効に構築するためには「関係性」を明確にする必要があると思う。関係性の理解は各有機体の間とのコミュニケーションとそのツールの理解は同じことであろう。                                          <池 銀貞>

投稿者 student : 2005年06月23日 07:58

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