数理と社会8回目
1.生命保険料の計算
1)基本的な計算規則(復習) 大数の法則 収支相等の法則 給付・反対給付均等の原則 純保険料+付加保険料(経費+利潤)=営業保険料
2)生命表
完全生命表(厚生労働省) http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/19th/
第19回生命表では、平均寿命は男77.72年、女84.60年となっている。
生命表諸関数:生存数、死亡数、生存率、死亡率、死力、平均余命、定常人口(2種)
ex. 30歳男子について見る
生存数l30=98490人 死亡数76人(0.5年生存したと考える) 31歳男子生存数l31=98414
このうち死亡数81人(1.5年生存したことになる)
x歳の死亡率を dx
とし30歳男性が全員死亡する間生存数のべ人数は (l121 = 0 とした)
0.5 d30 + 1.5 d31 +
2.5 d32 + … + 90.5 d120
= 0.5 (l30 - l31) +
1.5 (l31 - l32) + … + 90.5 (l120 – l121)
= 0.5 l30 + l31 + … + l120
平均余命は ex = 0.5 + (l31 + … + l120)
/ l30
生命保険会社の生命表 死亡データは国民死亡データより良好
全会社表 農協経験生命表 簡易生命保険生命表
3)生命保険料の計算
30歳男子が1年以内に死亡したら100万円支払うという1年定期保険(掛け捨て保険)の自然保険料(死亡率のみで決定、ただし、経費等を考慮外とする、完全生命表に基づく)
収支相等の原則から 98490P = 76×100万円 より、P = 772円
年度末に支払われるとすると(年利率 2%)98490P =
76×100 / 1.02 , P = 757円
死亡と同時に支払われるとすると(半年計算)
98490P = 76×100 / 1.021/2,
P = 772 / 1.021/2 = 764
120歳(死亡率1とする)なら 100万円/ 1.021/2, P = 99万円
平準保険料(10年定期、男子30歳) 毎年同額の保険料
10年間に死亡した場合に死亡保険金100万円を支払う
収入 支出
P×98490(=l30)×1 100×76×0.990148
P×98414(=l31)×0.980392 100×81×0.970733
P×98333(=l32)×0.961169 100×86×0.951699
P×98247(=l33)×0.942322 100×90×0.933038
P×98156(=l34)×0.923845 100×93×0.914743
P×98063(=l35)×0.905731 100×97×0.896807
P×97966(=l36)×0.887971 100×103×0.879223
P×97863(=l37)×0.87056 100×112×0.861983
P×97751(=l38)×0.85349 100×122×0.845081
P×97630(=l39)×0.836755 100×133×0.828511
P×898878 89216
収支相当の原理から保険料年払いの場合 P = 892160000 / 898878 = 993円
2.損害保険料の計算
損害保険は発生した損害額を補填するのが目的であり、保険金額はその支払い限度額を意味する。物権の時価(保険価額)を超えて設定された場合、利得禁止の原則によって超過部分は無効になる。この規定は重複保険にも適用される。保険金額が保険価額より低い場合比例補填方式によって支払い金額が算定される。
Ex. 保険価額1000万円 保険金額800万円 の火災保険
支払われる保険金=損害額×保険金額÷保険価額
比例補填方式採用の理由:保険価額V円の物件 n戸で、r戸に火災発生、損害額L円の見込みなら、対千保険料P円はnPV / 1000 = rL となる。もし S<V という一部保険の場合を考える。収支をみれば、n P S / 1000 <
n P V / 1000 = r L 収支相等の原則がなりたたない。左辺が r L’ (L’ は支払保険金) に等しいとしなければならない。これより、比例補填方式が得られる。 L’ = L S / V
Ex. 時価1,000 万円の家屋1万戸につき、つぎの損害データのもとでの保険料
損害区分(万円)平均損害額(万円) 火災率 発生件数 損害額計(万円)
1 – 100 50 0.0075 75 3,750
101 – 200 150 0.0010 10 1,500
201 – 300 250 0.0006 6 1,500
301 – 400 350 0.0003 3 1,050
401 – 500 450 0.0002 2 900
501 – 600 550 0.0001 1 550
601 – 800 770 0.0001 1 770
801 – 1,000 990 0.0002 2 1,980
計 120 0.010 100 12,000
保険料*10,000 = 75*50 + 10*150+6*250+ … + 2*990 = 1.2
対千料率は 1円20銭