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2007年01月17日

無知は自立を妨げる

MV new office v.2.JPG
(マヤビニックの新事務所:サンクリストバル市の近郊に建設中で、ほぼ完成しています)


今年の賀状には次のような挨拶を書きました。

 あけましておめでとうございます。
昨年は三月までメキシコで暮らしていたため、新年の挨拶もできず失礼いたしました。今年も元旦から五日までメキシコに行きます。私が支援しているチアパスのコーヒー生産者協同組合に対する技術協力のためです。私はこのプロジェクトのコーディネーターで、資金は国際協力機構、専門技術はゼミの顧問二人が提供しています。プロジェクトの目的は品質向上による組合(員)の収入増ですが、品質改善には組合の組織と組合員の意識を改革する必要や、私たちではなく彼らが主体的に取り組むことの重要性が見えてきました。プロジェクトは来年三月まで続き、前途多難ではありますが、いずれ皆様の食卓にもメキシコ先住民のつくった美味しいコーヒーを届けることができればと、夢見ております。末筆ながら、皆様のご健康とご多幸を遠いチアパスの地からお祈り申し上げます。 二〇〇七年元旦

 今日は、この賀状で詳述できなかった協同組合の組織改革や組合員の意識改革について記述し、プロジェクトの途中報告とさせていただきます。

 組織改革については、昨夏の日本研修の結果、組合顧問が出した結論です。すなわち、コーヒーの品質改善には各生産工程の管理が重要であり、従来の組織では対応できないことがわかったのです。具体的には、それまで不明確であった責任体制を明確にし、各農家から送られてくるパーチメント(果肉を除去し、乾燥させた、殻付きのコーヒー豆)を受け取り、生豆(パーチメントを脱穀した、焙煎前の状態)にする担当者を2名、倉庫兼工場に常駐させること、そしてこの生豆を国外向けにはそのまま輸出、国内向けには焙煎して販売する部門を増員、強化することが、役員会、(各村の)代表者会議、総会の議決を経て決定されました。しかしながら、重要事項の意思決定はボトムアップ式で合議制のため、この組織改革には半年ほどの時間がかかり、現在でも生豆部門の担当者は暫定的です。ここに一般企業との大きな違いがあり、よくいえば民主的ですが、意思決定にスピードが要求されるビジネスの世界では利益を失うことにつながると思われます。

 次に意識改革ですが、こちらのほうがより重要な問題を含んでいます。というのも、協同組合といいながら、協同(協働)の精神が醸成されておらず、組合の共同の利益のためではなく、私的な利益を優先させる傾向のあることが明らかとなってきたからです。具体的には、品質改善に欠かせない共同作業よりも各家庭単位での作業のほうが楽なので、なかなか共同作業の重要性を理解してもらえないことや、組合幹部の使途不明金や不明朗な会計処理などモラルハザードの問題があります。要するに、協同組合の大原則である互助互恵の精神が欠如しているのです。そして、それは私たち支援者の責任でもあるといえます。マヤビニックという協同組合は、その母体である団体の組織員が悲劇的な虐殺事件(1997年12月)にあっているため、国内外から様々な支援の手がさしのべられ、援助に対する依存体質が強まり、自助努力による組合経営の健全化、合理化が遅れたと思われるのです。一例を挙げます。昨年8月の訪問時のことです。外国からの寄付で購入、設置した立派な加工設備を紹介された直後、組合幹部が私のところに歩み寄り、「この施設には、欠陥豆を自動的に選別する光学式の機械がまだ足りないのだけど、日本から資金提供を受けれらないか」と言うのです。私は専門家ではないので、さっそく横にいた技術顧問に聞いてみました。彼の答えは次のようなものでした。「この設備ですら十分使いこなしているとは思えない。たとえば、生豆の大きさを選別していない。生豆の大きさを揃えることは価格交渉力を上げるのに重要なのに、その初歩的な作業もしていない。ただ機械を買ってもらっただけで、その使い方を十分に知らないのだろう。ましてや、自動選別機を入れると、今の前処理が不十分なので、良い豆まではじく可能性があり、歩留まりが悪くなる。つまり、かえって収益が悪化する可能性がある。必要なのは、選別機を買うことではなく、手選別することだ。機械よりも人間の目で選別する方が確かだし、雇用の創出にもつながるから」

 このプロジェクトの究極の目的は自立支援にあります。つまり、お金にしろ、技術にしろ、支援が必要でなくなるようにするための協力です。単にモノを買って与えることは厳に慎まなければならなりません。そこで、本プロジェクトのコーディネーターとしては、物品の購入よりも技術支援、具体的には日本での研修を重点的に行うことを考えています。生産者が消費者のニーズ、品質要求、消費国のコーヒー文化、コーヒー産業の動向を知ることによって、彼らがどのように自分たちの生産方法や販売方法を変えたらよいと思うのか、思わないのか、それを考えてもらえればと思います。なぜなら、先住民の生産者が飲んでいるコーヒーは輸出できない屑豆、しかも煮立てるという作り方です。これでは、消費者がどのようなコーヒーを評価し、望んでいるかはまったくわからないと思うからです。無知は商機を逸し、自立を妨げるのでは…

 最後に、前述した不明朗な会計処理については外部監査が導入され、使途不明金については責任追及が始まっています。また、今後の組合経営の健全化、合理化のため、国際協力機構に対してシニアボランティアの派遣を要請することが決まっています。自立支援の実現には、そのためのロードマップを敷くことが必要だと肝に銘じています。

投稿者 J.Yamamoto : 10:12 | コメント (41) | トラックバック