« 2007年01月 | メイン | 2007年10月 »

2007年04月03日

JICAプロジェクト1年目の総括:「地獄への道は善意で舗装されている!」

 JICA草の根技術協力プロジェクトの1年目が終了しました。このプロジェクトでは四半期ごとに成果報告書を提出するのですが、その報告書に記載した目標の達成状況と問題点をもとにして1年間(06年8月からスタートしたので、正確には8ヶ月間)の総括をし、今年度の活動に備えたいと思います。

1) 一次加工施設を建設する。

一次加工施設建設予定地(web用).JPG
(アクテアル倉庫前の一次加工建設予定地)

 マヤビニック(MV)に担当のチームがやっと編成されました。しかし、3月末までという期限付きで依頼してあった建設見積書は提出されず、5月末まで待つことになりました。この原因として、第一に、先住民社会を基盤とするMVでは重要事項の決定には各村(共同体)と全体(代表者会議や総会)のレベルでの討議と承認が必要で、合意形成に時間のかかることがあげられます。そして、もうひとつには、品質改善に占める一次加工の重要性の認識不足のため、建設意欲に欠ける点があったと思います。技術協力プロジェクトを実施するには、たとえ一方から他方への支援型であれ、相互理解と共通認識がいかに重要かを再認識させられる結果となりました。ただ、MVから生豆を輸入しているバイヤーから品質に伴う価格のインセンティブが付けられるようになったため、今後、品質改善意欲が高まることが期待されます。また、FTPとしても今夏はなるべく多くの幹部を日本研修に招待し、市場で高品質コーヒーがいかに価格面でも優遇されているか、その実態を知ってもらいたいと考えています。それから、こういった「箱モノ」は、使う側(被支援者)がその意義を十分に理解した上で主体的に建設に関与しない限り、使用されず野ざらしになるか、本来の使用目的とは異なる形で使われ、意図した成果が十分にあげられないことを過去の事例から学び、肝に銘じております。だからこそ、MV側に設計と見積を依頼し、こちらはアドバイザーに徹すること基本方針にしています。

2) マーケティング技術が向上し、適切な生産・販売計画が作成できるようになる。
 この点に関し具体的には、①生豆を年100トン生産する、②売上の1/3を焙煎豆にする、③売上を1.5倍以上にする、という目標があります。①については昨年120トンの生豆を生産したので目標はクリアしました。ただし、収入は1.2倍程度で、目標には達していません。その原因は、焙煎豆の売上が伸び悩み、②の目標に遠く及ばない1割弱にとどまったことにあります。そして、その伸び悩みの原因は、第一に、最大の市場であったカンクンがハリケーンの影響で顧客のホテルが閉鎖、MVの焙煎豆が販売できなくなったため、第二に、MVの焙煎機が故障し、1ヵ月半ほど稼動できかなったこと、第三に、焙煎担当者の能力・勤労意欲不足にありました。このため、MVは焙煎担当者を交代させ、新任者に、協力関係にある他団体(後述するCEDIAC)での技術研修を受けさせました。この結果、焙煎能力は月1.2トンから1.8トンに向上しました。ただし、この焙煎能力の上昇に見合った注文の増加がありません。この背景には、それまで積極的に顧客開拓をしてこなかったという経緯があります。そこで、FTPとしてはMVと相談し、今年度は国内市場での焙煎豆販売を拡大するための研修会をメキシコ市で開催する予定です。これまでMVでは顧客の獲得も価格の交渉もすべて受け身で、客が来るのを待つ、値段は先方が提示するのを待つという取引をしていました。それが彼らの置かれた現実だったからだとは思いますが、「値段の交渉をしたことがない」「コーヒーを売りに行ったことがない」というMVが、メキシコ市と日本での研修を経て、どう変わるのか変わらないのかに注目したいと思います。

3) 焙煎設備が整備され、焙煎技術が向上する。

焙煎機とハビエル(WEB用).JPG
(修理改良された焙煎機と新任の焙煎担当ハビエル君)
(このハビエル君は組合員の息子で18歳の高校生。将来は教員になりたいそうです。このような若者がMVの将来を担えば、明るい未来が開けると思うのは私だけではありません)

 前述した焙煎能力を最終的には月3トン以上にすることのほか、他組合員への焙煎技術の移転の仕組みが構築され、焙煎豆1kgあたりの平均販売単価が60ペソに上昇する、焙煎豆の年間売上高が200万ペソ以上になることを目標にしています。現在のところ、焙煎豆の平均単価は52.45ペソで、売上も47万5000ペソと、目標を大幅に下回っています。ただ、技術移転については、MVと協力関係にある団体(CEDIAC)を訪問した結果、その技術や設備は日本より劣るものの、しっかりとした専門家がおり、その専門家を日本研修で指導することによってさらなる技術と指導体制の向上が期待されます。そのCEDIAC(Centro de Drechos Indígenas, A.C.先住民権利センター)ですが、イエズス会のNGOで、この地域で10年以上、その前身を含めると30年以上活動しています。ある幹部は「神学校を出て、この地域に派遣された。35年前だ。ザビエルのように、日本に行きたかったのだけどね(笑)」と、冗談半分(だと思いますが)で話していました。日本では想像しにくいのですが、メキシコ(だけではありませんが)における宗教および宗教団体(そして筋金入りの活動家)がもつ意味と凄さを実感しました。

4) 生産者の果肉除去・乾燥技術ならびにパーチメント豆の品質が向上する。
 具体的な数値目標は、MVの高級焙煎豆であるGourmetタイプの売上が焙煎豆売上全体の3割になること。現在はこれが18.8%(1.7トン/年)で、まだ目標に達していません。このような数値目標をかかげることに疑問をもつ人もいます。事実、MVの焙煎豆をメキシコ市で販売している方々とは、この点に関し激論を交わしました。「われわれは単なる商売人ではない。MVの人々が可哀想だから支援しているのだ。数字で割り切るようなやり方には反対だ」といった具合です。その気持ちは尊いし、理解できますが、FTPとしては、販売および品質管理における数字の重要性、「客観的な指標」の有用性を訴えています。たとえば、品質管理についていえば、MVはパーチメント豆(果肉を除去し、乾燥させた殻付豆)を組合員から買い取るさい、その水分を手で揉んで感覚的に水分を計って(?)います。パーチメント豆の水分が重要なのは、水分が多すぎると輸送・保管中に腐りやすい、水分が少なすぎると品質面で悪影響が出るからです。このように感覚的に水分を計測していた結果、MVの生豆は理想とされる水分12%を大幅に上回る13.5%という検査結果が昨年の日本研修で示されたのです。「水分が1.5ポイント多いということは、100トンの生豆を輸入する場合、バイヤーは1.5トンの水を余計に買うことになるんだよ」と言ったFTP顧問の言葉が私には忘れられません。これでは顧客の信用を失い、慈悲にすがる取引しかできないでしょう。これでは本プロジェクトの最終目標であるMVの経済的自立にはつながらないでしょう。「地獄への道は善意で舗装されている」。この格言のもつ深い意味をどれだけMV(そしてフェアトレード)関係者は理解しているでしょうか。慈善がいけないとは言いません。慈善に終始していては被支援者の自立は永遠に望めない、だから、慈善の割合を徐々に減らし、良い意味でビジネスライクに取引をする必要があると思うのです。サパティスタのマルコス副司令官も、支援に依存しすぎるとシンデレラ症候群(白馬の王子待望症候群)になると警告しています(BOLETINES de CIEPAC No.534 http://www.ciepac.org/boletines/chiapasaldia.php)。

投稿者 J.Yamamoto : 17:40 | コメント (622) | トラックバック