都市のスタイルに着目したファッションブランド戦略

環境情報学部3年 中村仁美
 

1. はじめに

 今学期を通しての研究キーワードは、「海外都市」「富裕層(ショッピング)」「都市ブランド」「プロダクトブランド」である。都市、観光という視点を持ちつつブランディングを学んでいくことで、都市ごとに消費動向やスタイルも異なること、またその差異化が都市にとっても地域活性化や観光客の呼び込みにつながり、必要不可欠であることがわかった。複数の都市や国に市場をもつブランドは、そういった都市ごとのスタイルの違いを考慮した戦略、戦術をおこなっているのだろうか。移り変わりの速い「ファッション」という消費に絞り、「東京」というスタイルを分析したマーチャン・ダイジングを考えたい。

2. ファッションとは

2.1. ファッションの定義

 ファッションという言葉の定義としてあるのは、ひとつは「服飾」という意味である。ほかに、「個性の主張すること」について、服飾に限らずあらゆるライフスタイルの中での個性表現に使われる。ファッション・コーディネート、ファッション・センスといったときにはこの意味合いである。また、人々の個性主張によって広く一般に受け入れられたスタイル、すなわち「流行、トレンド」という意味で使われる場合も多い。人が自分の個性表現の必要性を感じるのは、周囲に多くの人が存在してこそである。つまり、ファッションは人口の少ない地方ではなく、人工の多い都市の中でつくられるものだ。(参考:実践ファッションマーケティング第I部)

2.2. ファッションの特徴

 ファッションは「いま」という一瞬であると同時に、浸透していくには時間がかかるという性質をもっている。また、他者との差異化の手段であるにもかかわらず、その価値観を共有する他者がいなければ存在できないという特徴ももっている。そしてその価値観は、例えば高級ファッションブランドに対する見方が国などによって違うように、都市ごとの文化や志向により異なるものである。(参考:ファッション都市論序章)
現在は不況であるがしかし、日常に必要な物は家庭内に飽和状態である。そのため、ショッピングという行為は「楽しむ」という目的のためにおこなわれることが多くなった。またその消費動向はライフスタイルに規定される。ライフスタイルは社会・経済の動向を反映して急速に変化するが、その背景にあるのは「生活文化」の論理である。日本の生活文化の特徴は、日本の風土を基盤としつつ、渡来・外来文化の総合化とも言える適応力にある。導入された外来文化のほとんどはいったん急激に普及し、その中で伝統的ライフスタイルや思考になじみにくい部分を切り捨てて、残りの文化を伝統文化と融合させる、というようにジャパナイゼーションされてきた。さまざまなライフスタイルの中でも特に「衣文化」はもっとも西欧化の激しい分野だといえる。洋服が日常化し、活動性の弱いキモノは正式な場で飲み着用されることが多い。しかし現在では、海外で成功している日系デザイナーたちがキモノのコンセプトを導入して成功するなど、キモノの洋服化、ジャパナイゼーションの兆しも見られる。
衣服に、単なる体温調節や外界からの防備といった生理的・物理的な効用のみではなく「自己表現」「コミュニケーション媒体」「ファッションを楽しむ」といった付加価値が重視されるようになり、衣服は衣食住という基礎的なライフスタイルの中でもっとも情報的性格を持つといえるだろう。(参考:21世紀ライフスタイル革命)

2.3. モダン・ファッションの広まり

 ファッション都市としてまっさきに思い浮かぶのがパリだろう。パリがファッションの支配権を握るのは世紀末のころからであり、本格的にモダン・ファッションが回転するようになったのは1920代になってからである。19世紀後半のパリのファッションの中心はウォルトという人物である。彼は、パリのオートクチュール繁栄の基礎を築くこととなった。50年代末、アメリカの百万長者の娘とイギリスの公爵の結婚にて、イギリス貴族のウェディングドレスをデザインするとともにアメリカの金持ちという新しい顧客を手に入れた。貴族階級が没落し、ファッションからすれば王侯貴族お抱えのデザイナーが金を持った一般人のドレスを作るようになったというわけだ。これは、ファッションの世俗化を意味しており、ファッションが都市化してきたことになる。またこのときにできた、パリと、ロンドン・ニューヨークの関連がパリをファッションの中心としたのである。ヴォーグやレディース・ホーム・ジャーナルという雑誌の登場もファッションの都市化を広めた一つの要因になっている。現代においてはパリ、ロンドン、ニューヨークにミラノ、東京というふうにファッション都市が多分化している。(参考:都市を翔ける女)

3. 研究の位置づけ

 企業のブランディング、ファッションのマーケティングは既に研究分野として広まってきている。さまざまなアプローチからのマーケティングが研究されており、とりわけファッションに関しては人々の感情に訴えかけたデザイン、マーケティングが新しい考え方として登場している。マーケティングの中でも、広告や店舗設計といったマーチャン・ダイジングに着目していきたい。また、ファッション都市を形成についても研究がなされている。ファッション都市としての街づくり提案としては、ファッション産業と連携した地方都市活性化、若者が集まるイメージ作り、インターナショナル性などがあげられている。そこで、既にファッション都市としてある程度確立しており、これからも成長の可能性を秘めた東京という都市に着目した、ファッションブランドのマーチャン・ダイジングを研究する。東京でブランドが展開に成功していくことによって東京はますますファッション都市として発展していくことになるはずである。

4. 研究へのアプローチ

 ファッションが東京というスタイルを理解してブランド展開していくにはどうすればいいか。これについて、まず現在ある多くのファッションブランドの中からブランドを限定して検証していくべきである。ブランド限定にあたっては、市場にあるブランドを整理してブランドの位置づけを明らかにしてからおこなう。ブランド整理にあたり、「ブランドが生まれた都市、年代によってブランドにも特徴があり、グルーピングできるのではないか」という作業仮説を立て、来期以降の研究課題の第一段階とする。
 東京という場所でのブランド展開に限定しているため、東京のスタイル、ファッションとはなにかということについて、日用品のデザインやライフスタイル、イメージワード、ファッションコレクション、ファッション史を海外のファッション大都市とよばれるパリ、ロンドン、ニューヨーク、ミラノと比較する。それをブランド展開に生かすため、現在どんなマーケティング、マーチャン・ダイジングがおこなわれているか、さまざまな事例や戦略を学ぶ。

5. 参考文献

実践ファッションマーケティング 下川美知瑠著
ファッション:ブランド・ビジネス 山室一幸著
ファッション・マーケティング 杉原淳子著
21世紀ライフスタイル革命 板東慧著
ものづくり都市の再生 藤原肇著
ファッション都市論 南谷えり子・井伊あかり
都市を翔ける女 海野弘


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Last-modified: 2006-07-25 (火) 01:09:54 (4839d)