研究活動

古谷研究会 最終研究発表 概要                               環境情報学部 3年  鹿久保翼

「ドイツの長期滞在型保養温泉地と日本の短期観光型娯楽温泉地の違い」     日本における長期滞在型保養温泉地 → 長期滞在型医療温泉地への展望

はじめに 近年、忙しい都市での生活に疑問を感じた若い世代を中心に“癒し”が求められている。そのなかで手軽に楽しめる温泉観光地の魅力がますます高まっている傾向にある。しかし、今後の温泉観光地を考えてみた時に本来ならば温泉地が持っているはずの療養、保養機能を重要視していない既存の保養温泉地では多くの人が求める“癒し”の空間を提供できているのかどうか疑問に感じている。

2、 目的  ドイツのバーデンバーデンなどに代表される療養、保養温泉地と日本の保養温泉地では何が違うのか考えてみた時、今の日本においては観光、娯楽としての温泉がメインになっており湯治としての温泉の価値が見えてこないことが最大の違いではないかと気づいた。したがって、この違いがどのような要因により生じたのか分析することでどのようにしたら療養、保養温泉地として長期滞在型医療温泉地への変貌を遂げられるか考察できるのではないかと考えている。

3、 仮説 ドイツにおける温泉地と日本における温泉観光地ではその成り立ち=地理的条件、発達形態(社会制度)、地質的条件及び温泉成分に違いがあるのではないだろうか。

4、 日本の温泉について   1)温泉地の分布  図を参考に ・日本の温泉 ・利用源泉数:18508 ・未利用源泉数:8533  = 総源泉数:27041 温泉地数:3102     温泉を有する市町村数:2292   ・歴史  温泉は『古事記』『日本書記』などに温泉の記述が見られており、伊予の湯(道後)、有馬の湯(有馬)などは早くから歴史に現れた温泉の一つである。草津温泉はヤマトタケルノミコトが発見したという伝説がある。中世、室町時代になると僧瑞渓が長期療養を説き、温泉地での長期滞在が広がった。江戸時代に入ると温泉の効能が発表されて将軍、大名など支配階級から庶民にまで湯治へ行く文化が広まり、温泉番付が作られ草津温泉の知名度があがるようになった。明治維新後は農漁民の骨休めとして自炊湯治場が盛んになったが、以後は支配階級の保養温泉地開発が盛んになり、箱根、熱海、白浜などがその代表例である。第二次世界大戦後の高度経済成長期には団体客中心の一泊二日二食型旅館経営が主流となり、温泉地=娯楽施設としての認識が形成されてくる。そして、生活向上、しかし不景気という現状のなかますます日本人の温泉志向が高まってきている。  また、十数年前から地下1000mを超える温泉大深度掘削が可能となり、「ふるさと創生1億円事業」の導入もあり、非火山地域での温泉湧出が相次ぎ、日帰り温泉地が各地に誕生した。それにともたって温泉志向の多様化が進み、個性的な温泉地が強く求められると同時に自然環境や温泉情緒などの地域環境が保全された温泉地が高い評価を得ている。

2)定義 地中から湧出する水、及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)であること。何も溶存していなくても地表での温度が25℃以上あるか、25℃以下でも定められた物質(下:表1)が規定以上溶存していること。

物質名       含有量(1kg中) 物質名       含有量(1kg中) 溶解成分(ガス以外)  >= 1000mg フッ素イオン >= 2mg 遊離CO2 >= 250mg ヒドロひ酸イオン >= 1.3mg ストロンチウムイオン >= 10mg メタひ酸イオン >= 1mg バリウムイオン >= 5mg 総硫黄 >= 1mg フェロ、フェリイオン >= 10mg メタ硼酸 >= 5mg 第一マンガンイオン >= 10mg メタ珪酸 >= 50mg 水素イオン >= 1mg 重炭酸ソーダ >= 340mg 臭素イオン >= 5mg ラドン >=200億分の1キュリー 沃素イオン >= 1mg ラジウム >=1億分の1mg リチウムイオン    >= 1mg

3)温泉地の適応症 ・温泉には様々な種類があり、それぞれによって効能が決まっている。 *一般的適応症 [浴用] 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、        慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復

4)療養温泉とは  日本における療養温泉の定義 国民保養施設  環境省は、国民の健康増進と健全な休養をはかることを目的として、得に優れた条件を備えた温泉地を国民保養温泉地と指定している。                 表2を参考に 1、 泉質が療養泉として顕著であること 2、 温泉の湧出量が豊富なこと 3、 利用上適当な温度があること 4、 環境衛生的条件がよいこと 5、 まわりの景観がよいこと 6、 気候的に保養地に適していること 7、 温泉顧問医がいること(医療施設があること) 8、 適当な保養施設があること 9、 交通の便が比較的よいこと 10、 災害にたいして比較的安全であること

●(S56年から) さらに都市化の進展、高齢化社会が進む中で温泉の果たす役割増大 →温泉の有する保健的機能を積極的活用 →「国民保健温泉地」の整備 21箇所

	

●(H5年から) 余暇時間の増大、自然とのふれあいを求める声が高まる →自然の活用に適した温泉地  →「ふれあいやすらぎ温泉地」の整備 20箇所

<療養泉の定義> 温度(温泉源から採取される時の温度)が25℃以上、かつ温泉水1kg中に溶けている物質量(下表) 物質の総量(ガス性のものを除く) > = 1000mg 遊離炭酸 (CO2) > = 1000mg 銅イオン > = 1mg 総鉄イオン > = 20mg アルミニウムイオン > = 100mg 水素イオン > = 1mg 総硫黄 > = 2mg ラドン > = 300億分の1キュリー

5)魅力ある療養温泉地について 魅力ある温泉地と国民保養温泉地の関係  <北海道・東北ブロック> 層雲峡、白金・富良野、知床・ウトロ、十勝川、定山渓、登別、洞爺湖、 湯の川、鶯宿、花巻温泉郷、松島海岸、秋保、

<関東・甲信越ブロック> 那須湯本、鬼怒川、伊香保、草津、箱根湯本、宮ノ下・強羅、真鶴・湯河 原、越後湯沢、石和(山梨)、大町(長野)、天竜峡・昼神 <北陸・東海・中京ブロック> 宇奈月、和倉、金沢、山代、山中、芦原・東尋坊、新穂高、高山、下呂、 熱海、伊藤、熱川、稲取、下田、堂ヶ島、西浦、鳥羽、志摩 <近畿・四国・中国ブロック> 城崎、有馬、白浜・椿、勝浦・湯川、三朝・関金、米子・皆生、 玉造、湯田、道後、 <九州・沖縄ブロック> 嬉野、雲仙、内ノ牧・赤水、別府温泉郷、城島高原・湯布院、指宿、

5、 ドイツの温泉地について  1)温泉地の分布 図を参考に <温泉地の成り立ち> ・ドイツの温泉 大小約140箇所の療養・保養温泉地     20箇所では温泉水の販売     その他クナイプ療養地、海水浴場など120の保養地が整備 = 合計260箇所の保養地

・歴史:バーデン・バーデン バーデン・バーデンの歴史は、ストラスブールに駐屯する古代ローマ軍が、この地に20カ所の源泉を発見したことから始まった。古代ローマ人は、この地をAureliaAquensis?と呼び、軍馬、兵士、そして皇帝のための3つの浴場を建設した。中世には宗教改革、30年戦争時は苦難の道を歩み、温泉は衰退したが、18世紀半ばから、飲泉が盛んになり、王室、貴族の避暑地、社交場として発展し、19世紀にはカジノ、競馬といった活動が盛んになる一方で、1872年には、本格的な浴場施設としてフリードリッヒ浴場が建設された。第二次大戦後1969年に西ドイツ連邦政府は保養温泉地の充実のため、クアミッテル(温泉治療館)を整備した。今日のバーデン・バーデンは、こうした当時の華やかな雰囲気を持つクアハウス、クアパークおよびフリードリッヒ浴場を中心に、ホテル、コンベンション施設、現代の富豪の別荘、最新の医療施設が加わり、社交、保養、そして治療施設の3つがともに充実したヨーロッパ随一の格式を誇る保養都市となっている。療養型温泉地 → 娯楽型温泉地 →療養型温泉地

2)定義 ドイツにおける温泉の定義:鉱泉と温泉 地表の気温より著しく温度の高い(日本の温泉法では25度以上)湧水を温泉、それ未満の温度の湧水を鉱泉(冷鉱泉)とよんで、常用水と区別される。これは1911年にドイツのバート・ナウハイム温泉で採択された鉱泉の定義(ナウハイム決議)が大元になっており、ナウハイム決議では16種類の物質の含有および湧水温度が20度以上とされた。20度の根拠となるのは、地下水がその地の気温より高い水温を保って湧きでる特殊性を考慮したものといえる。

3)温泉地の適応症    表3を参考に          

6、 まとめ  なぜ日本の療養温泉地は魅力があまり高くないのか?

7、 今後の予定 日本における保養温泉地の見直し ・保養温泉地と非保養温泉地の比較      Ex.四万温泉と草津温泉(どちらも群馬県) 全国温泉番付の図式化 全国保養温泉地の図式化(含効能別分類) ドイツ年間および観光局資料の捜索

8、 参考文献 日本の熱い温泉と地質 土井和巳 富士テクノシステム 温泉科学の最前線 日本温泉科学学会 西村進 ナカニシヤ出版 温泉学入門―温泉への誘いー 日本温泉科学学会 コロナ社   図引用 世界温泉文化史 ウラディミール・クリチェク 国文社 地図情報 1998年9号    全国温泉大辞典   新観光地理学 山村順次  大明堂   世界の温泉地 山村順次  大明堂  図引用   入浴・温泉療養マニュアル 日本温泉気候物理医学会・日本温泉療法医会   医者がすすめる驚異の温泉 白倉卓夫 小学館文庫   世界の温泉&SPAリゾート サンブックス   NPO法人 健康と温泉フォーラム http://www.onsen-forum.co.jp   ウィキペディア(Wikipedia)http://ja.wikipedia.org/wiki/


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Last-modified: 2006-02-02 (木) 14:18:11 (5007d)