ある施設から一定範囲内の人口を集計する

  • ここでは、GISのバッファ機能とネットワーク解析機能を使って、ある施設から一定範囲内の人口を集計し、非常時に生じうる被害や、災害発生後の救助の可能性について検討する方法を学びます。
  • まず、発電所(ここでは原子力発電所)と化学工場での事故災害を想定して、原子力発電所や化学工場から放射性物質や化学物質が飛散した場合に、どの範囲でどの程度の人々が影響を被るかを把握します。この場合には、バッファリング機能を用いて、範囲を特定することが出来ます。
  • 次に、災害発生時にけが人などを近隣の病院に搬送し、トリアージなどによる災害医療による治療を受けられる可能性を評価します。このときには、病院のリストから救急告示のある病院を抽出し、深刻な大規模事故災害が発生する可能性がある施設から、或いは病院からの道路距離(時間距離など)に基づいて、ネットワーク解析によりアクセス圏を特定することが出来ます。

バッファ機能により事故災害による防災地域圏内の人口を集計する

  • まず、演習1で構築したデータベースのうち、原子力発電所と化学工場のポイントデータ、市区町村と500mメッシュの人口データを用意します。予め、各レイヤの座標系を定義しておきます。
  • 例えば、原発から30km圏を原発防災地域に指定したときに、その範囲に含まれる人口を集計することを考えてみましょう。このとき、GISのバッファリング機能を使って、原発から30km圏を計算します。
  • バッファを使うには、まずArcGISのツールバーから「ジオプロセシング」→「バッファ」を選びます。次に、「入力フィーチャ」に原子力発電所の位置、「出力フィーチャークラス」に出力レイヤの名前、バッファの距離に「30キロメートル」を指定して、30km圏バッファを作成します。ここでは、「NPPB30.shp」というシェープファイルを作成することにします。
  • 次に、ツールバーの「選択」→「空間検索」を選びます。「空間検索」画面上で、ターゲットレイヤに全国市区町村境界データ(japan_ver71)、ソースレイヤに上記で作成したバッファ圏(NPPB30)、空間選択方法に「<ターゲットレイヤフィーチャ>が<ソースレイヤフィーチャ>と重なる」を選び、OKとします。
  • すると、原発からの距離30km圏にかかる市区町村が選択されます。30km圏内に重なる市区町村の合計人口数を集計してみましょう。属性テーブルの人口データの行頭をクリックして、統計情報を選択すると、「選択フィーチャの統計情報」が現れ、合計人口数を把握できます。
  • また、選択された自治体が、どの原発の圏域にあるのかを記録すると、原発毎の圏域人口を集計することが出来ます。
  • バッファ機能は、汚染物質が大気にのって拡散するような災害の影響範囲を把握するのに有益と言えます。影響を受ける地域での意志決定は、基礎自治体(市区町村)単位でなされることが少なくないため、自治体単位で影響を受ける人口を集計することは、意味がないとは言えません。
  • 他方、暴露人口などを詳細に把握したいときには、より詳細な集計単位で分析することが望ましいと言えます。集計単位の規模や形状の影響を小さくするために、詳細なメッシュ単位で人口数を集計する方法もあります。そこで次に、特定の原発を選び、500mメッシュ単位で人口を集計してみよう。
  • 上記の方法で作成した原発30kmのデータ(NPP30B)の属性テーブルから、特定の原発のバッファを選択します。同様に、ツールバーの「選択」→「空間検索」を選びます。「空間検索」画面上で、ターゲットレイヤに集計対象となるメッシュデータ、ソースレイヤに上記で作成したバッファ圏(NPPB30)、空間選択方法に「<ターゲットレイヤフィーチャ>が<ソースレイヤフィーチャ>と重なる」を選び、OKとします。このとき、ソースレイヤボックスの下の「選択フィーチャを使用」チェックボックスがチェックされていることを確認してください。
  • メッシュデータの属性テーブルから、選択されたメッシュのみの人口数を集計してみてください。また、市区町村単位で合計人口数を集計した結果とを比較してみてください。

ネットワーク解析によるアクセス圏を設定する

  • 実際に大規模災害が発生した際には、けが人などを迅速に救急搬送する必要があります。救急車などの緊急車両を利用する際には、道路網状を車両が移動することになるため、ネットワーク解析により予めアクセス圏を把握しておくことが望ましい。ここでは、緊急車両搬送により片道15分で搬送可能(往復で30分)を目安にアクセス圏域を把握しよう。
  • ネットワーク解析を使うには、道路網のデータをマップ上に追加しておく。ここでは、研究室のデータベースのうち、全国デジタル道路地図データベースを用いる。
  • 一般病院のデータもマップレイヤに追加し、属性テーブルから「救急告知」が1となっている病院を選び、新しく救急病院のデータを作成し、マップレイヤに追加しておく。
  • ツールバーの「カスタマイズ」→「エクステンション」から「Network Analyst」にチェックし、再びツールバーの「カスタマイズ」から「Network Analyst」を選ぶ。すると、Network Analystツールボックスが現れる。
  • Network Analystツールボックスの「Network Analyst」→「新規到達圏」を選ぶと、マップレイヤに「到達圏」レイヤが現れる。また、Network AnalystツールボックスからNetwork Analystウィンドウの表示をアクティブにしておく(コンテンツの下にウィンドウが現れる)。
  • Network Analystウィンドウの「施設」を右クリックして、「ロケーションの読み込み」を選び、上で作成した救急病院のレイヤを読み込む。
  • さらに、「到達圏」レイヤを右クリックして「レイヤプロパティ」を選び、「解析の設定」の「インピーダンス」を「所要時間(自動車)(分)」および「デフォルトのブレーク値」を「15」とする。
  • 「解析の実行」をクリックすると、病院から車両で15分でのアクセス圏が表示される。
  • 15分アクセス圏内に含まれる500mメッシュ人口を集計し、当該の都道府県の総人口煮染める割合を計算してみよう。

応用問題

  1. ある事故災害や自然災害、テロ災害を想定して、自衛隊基地や災害救助ヘリのヘリポートからの救助可能範囲或いは到達時間圏を示しなさい。
  2. 原発や化学工場での事故災害を想定して、施設から30kmバッファ圏内の人口の何割が、救急病院からの車両搬送または災害救助ヘリのヘリポートから15分到達圏にカバーされているかを計算しなさい。また、病院の病床数との比率を計算し、救急搬送された場合に、実際に対応可能なキャパシティであるのかどうかを検討しなさい。

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Last-modified: 2012-05-07 (月) 18:31:09 (2632d)