研究紹介

  • ここでは慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス古谷知之研究室で行っている研究事例の一部を紹介しています。
  • 当研究室では、データサイエンスとその応用についての研究を行っています。具体的にはベイズ統計や時空間統計の手法を、国土安全保障分野(安全・環境・交通・観光)や公衆衛生・医療・健康・スポーツ分野などに応用しています(もちろん、推測統計学などの古典統計も用います)。

無人機を活用した環境安全のデータサイエンス

  • 無人機はデータサイエンスや3Dプリンタと並び、21世紀の主要産業の一つと言われています。中でも無人航空機(UAV: Unmanned Aearial Vehicle)の世界市場規模は、今後10年間にUS$52億規模からUS$116億規模に成長するといわれています。
  • UAVは、ドローン(Drone)やUASなどとも称されることがあります。長時間航行可能でペイロードが大きいものから、短時間航行でペイロードも小さいが安価でポータブルなもの、小鳥や昆虫くらいのサイズの情報収集目的のものまでさまざまです。
  • 米国が2015年にUAVの非軍事利用・商業利用を解禁するほか、ドイツ・イギリス・オーストラリア・カナダなどでもUAVの研究や商業利用が活発となってきています。UAVを使った宅配サービスやSLAM(自己位置測定と環境地図作成を同時に行う)、ナノ・ドローンなどの映像は以下を参照してください。
  • その一方で、航行空間での安全性の確保や情報収集時のプライバシー確保も課題として指摘されています。
  • 我が国でもUAVの商業利用や研究が進められつつあります。画像解析技術を用いて詳細なDSM (Digital Surface Model) を構築するのに優れているほか、GNSSや準天頂衛星を活用した位置精度の改善も期待されている。国土面積の広さから国内UAV市場規模は小さいと思われがちだが、道路などのインフラ維持管理のためのモニタリングや東南アジアでの展開を見据え、環境安全モニタリングデータの収集と解析が、今後ますます求められると考えられます。
  • 研究室ではScanning the Earth projectの一環として、東日本大震災後の福島第一原発事故による放射線モニタリングにUAVを活用しています。
    • Furutani et al. (2013) "A Study on Micro-Scale Airborne Radiation Monitoring by Unmanned Aerial Vehicle for Rural Area Reform Contaminated by Radiation", Proceedings of the Disaster Management 2013, The 9th Annual Conference of International Institute for Infrastructure, Renewal and Reconstruction.(received a highly commended award)presentation slides
  • 上記以外にも以下のようなテーマに取り組んでいます。
    • UAVの防災への応用
    • 自動車走行サーベイとUAVサーベイの統合活用
    • 3Dプリンタを活用したUAVサーベイ支援、など

プローブデータを活用した交通安全とまちづくりのデータサイエンス

  • 車両プローブデータを用いると、車の位置情報や走行履歴を把握することができます。東日本大震災の際には、プローブデータを事業者が公開することで通行可能区間を可視化することで被災地での移動支援を行い、プローブ・ビッグデータ利活用への機運が高まったと言えます。
  • プローブデータの加速度データを用いれば、急ブレーキ箇所を把握することもできます。すでにいくつかの事業者や自治体では、急ブレーキ多発地点の地域交通安全対策への活用や、カーナビへの交通安全情報提供、運行行動連動型保険(PHYD: Pay How You Drive)などのサービスを始めています。
  • 交通安全まちづくりといえば、従来は住民へのアンケートやワークショップ開催を通じてのヒヤリ・ハットマップ作成、調査員を使っての交通量調査など限られた方法でしかデータ収集ができていませんでした。しかし蓄積されたプローブデータを用いれば、そうした方法に頼ることなくヒヤリ・ハットマップを作成することができます。さらに急ブレーキ多発箇所地点を、交通事故発生地点や境域気象情報と重ね合わせることで、ヒヤリ・ハットの原因や事故との関連性を解析することができます。
  • なぜプローブデータの急ブレーキ箇所データが交通安全まちづくりに有効なのでしょうか?事故災害では「ハインリヒの法則」があると言われています。この法則は、「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背後には300の異常が存在する」というものです。つまり、急ブレーキ箇所が多発する地域では交通事故が発生する可能性があると考えられます。もちろん、急ブレーキ多発地点と交通事故発生地点が一致するとは限りません。そのため、ヒヤリハットデータと実際の交通事故発生箇所や気象情報との関連分析が必要となるわけです。
  • 研究室では、事業者が蓄積したプローブの急ブレーキ箇所データや車両走行履歴データを用いて、ヒヤリ・ハット地点の時空間解析と交通安全まちづくりへの適用を進めています。また、自動車技術会のWG「ビッグデータを活用した交通安全まちづくり」や境域防災情報サービス協議会などでも検討を行っています。

トラッキングデータを活用したスポーツのデータサイエンス

  • 野球・サッカー・アメフト・ラグビー・バレーボール・テニスなどの球技では、選手やボールの軌跡データをロギングしその移動履歴を解析することで、試合中の戦術の検証などを行っています。移動履歴データを収集する主な方法として、(1)競技場を俯瞰する形でカメラを配置し録画データをモーションキャプチャにより解析する方法、(2)ヘッドギアやシューズ、ボールにICタグやGPSを埋め込みデータロギングする方法、などがあげられます。サッカーの国際試合などでは試合直後に得点シーンを動画で見ることができるサービスが始められています。今後、こうしたスポーツデータを解析しテレビ中継と連動することで、スポーツ番組の楽しみ方が変わってくることなども期待されています。
  • こうしたスポーツデータの解析には、時空間統計分析の手法が有効ですが、まだまだこうした手法が十分に活用されているとはいえません。研究室では、時空間統計分析の手法をもちいて、モーションキャプチャデータを用いた場合の選手やボールの移動のアニメーション化や解析を行っています。
    • "A Study on Soccer Offense Patterns Via Spatio-temporal Statistical Analysis - Preliminary Findings From Spanish National Team in 2013 Confederations Cup Games-", International Conference on Sport Statistics and Performance Analysis, 2014. Presentation slides
  • スポーツデータの解析に時空間統計学を持ち込むことにより、例えばコーチの選手に対する指示内容の数値化(に意味があるのか)や、ボールを保持していない選手のパフォーマンス評価などに活用できると考えています。
  • 今後、特定の選手間の連携した動き方に見られる規則を発見することや、選手の動きを音楽や光などとして表現することも検討しています。

PHR・PMR・GISを活用した公衆衛生・医療・健康のデータサイエンス

  • 我が国の医療費は2012年に38.4兆円に達し、比較可能な2000年以降で最高額となり、社会保障関係費は我が国の政策経費の約半分を占めるようになりました。厚生労働省の試算では2025年に52.3兆円になると予測されているが、高度医療・高額医療の普及などもあり医療費はさらに増加すると考えられます。増加する医療費の抑制は我が国が解決すべき重要課題の一つといえます。
  • 研究室では、医療費の予測と増加要因の解明、医師数の予測と地域的な偏在などの問題にも取り組んでいます。医療費を抑制することは、医師の給与を減らすことも意味します。医師の待遇が悪い地域には、なかなか優秀な医師が集まりにくいでしょう。医療アクセスの地域的アンバランスを改善しながら、医療費抑制の問題に取り組むことが重要だと考えています。研究室では、空間計量経済学や空間統計学の手法を用いて、従来の計量経済学の手法より予測精度が高く、空間的な不均衡を考慮したモデルを開発し、医療費の予測を行っています。そのサブモデルとして、医師数や患者数などの予測モデルを開発し、医師数(必要医師数)の地域的偏在などの課題を考える上での基礎的な資料を作成しています。
  • 医療費増加抑制策として、電子化されたレセプト(診療報酬明細書)データやICTを活用した健康管理、未病・予防による健康増進、医療・介護・看護の機能連携、在宅医療や療養型病床の推進による在院日数短縮、診療報酬の適正化、後発薬(ジェネリック医薬品)の活用などが有効な施策と言われています。
  • 他方、医療・介護機関へのアクセス改善による治療期・回復期への対応や、外出機会増加などモビリティ対策による生活習慣病などの予防医療・未病への対応といった、医療と交通の中間領域での対策も効果的ではないかと考えています。
  • そこで、病院や診療所に関するデータとGISを活用して医療アクセスの重点支援地域を明らかにするような研究に取り組んでいます。人口減少地域における診療所や地域公共交通の参入退出が診療所へのアクセスに与える影響や、重要疾病対応可能病院へのドクターヘリや救急車でのアクセシビリティを分析することにより、日常医療や緊急医療でのアクセシビリティを改善すべき地域を浮き彫りにすることが出来ます。それによって、地域における医療サービスや公共交通サービス供給のありかた、医

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Last-modified: 2014-07-31 (木) 02:44:18 (1118d)