セドナという地名に聞き覚えがある人がいるとしたら、その人はかなりの旅行 「通」の方ではないでしょうか。日本の代理店で、グランドキャニオン見学が 含まれているツアーに申し込むと、大抵はラスベガスから飛行機を飛ばしてやっ てくるので、アリゾナのいろんな都市には行かずグランドキャニオンだけを見 て帰っていくケースが多いようです。まあ、グランドキャニオンだけを堪能し たい人にはそれでもいいのですけど、あの岩肌と枯れたアリゾナの大地に魅せ られた人なら、セドナに立ち寄ることを絶対にお勧めしたいと思います。
セドナは、グランドキャニオンから車で1時間ちょっと、フラッグスタッフからはそれ ほど遠さを感じないところに位置します。フェニックスとグランドキャニオンの中間 といったところでしょうか。ただ公共交通機関がないので、おそらく車で行くしか ないというのが、難点かもしれません。
私たちはグランドキャニオンでの、運動不足の足の限界に近いトレイルトラッ キングの後で、足は「がくがく」。アクセルとブレーキを踏み間違えたらどう しようか、と心配していましたが、べらぼーな直線の道路とほとんど前にも対 向車線にも車無しという好条件の下、少々飛ばして夕陽前にセドナに到着。 夕陽まではちょっと余裕があったので、先に今日の宿泊先、アップル・オーチャー ド・イン(Apple Orchard Inn)にチェックインすることにしました。
ここはB&B(Bed and Breakfast)と呼ばれる、日本で言えば朝食付きペンション のようなものなのですが、美果ちゃん曰く「そこがB&Bであるかどうかは、部屋の数で 決まるらしい」つまり、こぢんまりとした寛げる宿、といったところでしょうか。
早速に中を案内してもらったところ、私たちが期待していた以上の施設に、最
近会話の中に定着しつつある形容詞「ラブリー」を連発。すばらしいのは、
サブマリンと名付けられた岩を後ろにしたロケーションです。庭にテーブルと
チェアがセットされており、雨で無い限りは、サブマリンロックを見ながら、
朝食を外でいただくことができます。部屋は、私たちの御財布事情につき、こ
こでは最も安価な部屋をお願いしたのですが、充分すぎるほど行き届いた設備。
名前のとおり、リンゴをモチーフとしたオブジェやリンゴ柄のベッドスプレッ
ド、シャワーカーテン、果てはリンゴの香りの石鹸、どこで手に入れたのか、
それとも特注したのか、リンゴの柄が側面に入れてある、メモブロック。これ
でもかこれでもかというほどのリンゴの嵐に、またまた「ラブリー」発言続発。
一応申し上げておきますと「リンゴが嫌いなの、あのにおいと形と味、すべて
いやなの」という方には絶対お勧めしません。それは私にとって、ピーマンの
匂いと柄、あの緑の世界で一泊過ごせと言うに等しいからです。そういう希有
なB&Bを御存じの方がいらしたら、是非教えてください。
ここで私たちを出迎えてくれたのはPaulaさん。ここ数日の私たちの口癖風に言って みれば、格好は「ゴージャス!」という女性で、しかし気さくな、そしてとても 「ナイス」な女性でした。グランドキャニオンから土まみれになって到着した我々が 6時近い到着で「夕陽が見たい!どこがいいかしら?」とか「レストランはどこに あるの?」とか「ベッド周りのサービスをお願いします!」とかいろいろ言っても 嫌な顔ひとつせずに教えてくれました。うーん、これぞサービス。
部屋が6部屋しかないため、その日宿泊している客同士、Paulaさんを囲みながら テラスでワインを手に歓談、というのもこのようなB&Bの特徴です。私たちが宿泊 した日は、Paulaさんの知人であるリタイアしたお医者さんとその奥様、弁護士さん とその奥様といった具合で、後から考えてみると、私達って場違いだったかしら.... まあでも二人で150ドル(税込み)ですから、べらぼうに高い訳ではないと思います。
食事の前のテラス歓談で、なんと偶然なことに、君達が今朝トレイルにチャレンジ していたのを見たよ、追い抜かれたけどね、という方がいらっしゃいました。アジア人 もそれほど少ないわけでもなかったし、日本人も結構いたので、それでも私達を見た、 と認識して下さっていることは、よっぽど我々変だったのか?確かにトランシーバーを 使ったり、上から下に大声を出したりしてましたけど。誰がどこで見ているかわかり ません。皆さん、気を付けましょう。