バイオインフォマティクス(Bioinformatics)
〜〜遺伝子・ゲノム・細胞から生命をコンピュータで解明・予測する〜〜
研究会名: 冨田勝研究会
研究会形態:C型・4単位
研究会テーマ:「バイオインフォマティクス」
担当者名: 冨田勝 環境情報学部教授、医学部兼担教授
はじめに
生命科学と情報科学の境界領域である「バイオインフォマティクス」は21世紀のサイエンスとして近年脚光を浴びています。ゲノム計画が進み、近い将来ヒトをはじめとする様々な生物の設計図(ゲノム配列)がインターネットで公表されるようになります。その設計図をもとに、生命のしくみを予測したり、コンピュータ上で再構築したりすることが、今後の生命科学の中心になると考えられています。
2000年6月現在、ヒトゲノムの97%の読み取りが終了しています。ヒト以外では現在までにすでに約30の生物種の全ゲノム配列がパブリックの
データベースに格納されています。
2001年度のSFCカリキュラム大改革に伴い、SFCに看護医療学部が併設され、生命科学分野の科目が大幅拡充されます。 生物学科でも情報科学科でも学べない新しい21世紀の学問に挑戦し、私たちと一緒に新分野を開拓する情熱ある学生を求めています。
研究会運営
本研究会は大学院のプロジェクト「遺伝子情報解析」と合同に運営し、活動は研究中心です。研究プロジェクトは「ゲノム情報解析」「細胞シミュレーション」および「脳モデリング」と大きく3つのカテゴリーに分けられ、グループまたは個人で進めます。学期末には各自成果を合宿で発表するとともにタームペーパーとして提出し、優秀なものは論文集に採録されます。
年4回の研究会合宿のほかに、親睦のための懇親会、
ボーリング大会、ゲーム大会なども予定しています。これらのソシアルイベントも重要な研究会活動の一部と考えています。
評価方法
研究過程およびその成果で評価します。
受け入れ予定人数
最大50名(2、3、4年生合計)
高校生物を選択していなかった人やプログラミングが得意でない人でも特に問題ありません。
冨田研説明会
7月3日(月) 16時40分〜18時
7月7日(金) 16時40分〜18時
デザインスタジオA棟 地図はこちら
説明会参加者は事前にご連絡ください。
連絡先
mt@sfc.keio.ac.jp
ヒトゲノム計画とSFC
冨田研はヒトゲノム計画の一環である文部省プロジェクトの遺伝子情報分野を正式に担当しています。私たちの究極の目標は、生命の設計図であるゲノム情報(DNA配列)の意味を解読し,それに基づいて生命を再構築することです。SFCのこの研究課題には文部省の他に科学技術省所管の科学技術振興事業団から大型の研究予算が与えられています。情熱ある人は学年に関係なくこれらの国家プロジェクトに参加・貢献できます。
塾内外とのコラボレーション
私たちは塾内の医学部分子生物学教室や医学部病理学教室と密接なコラボレーションを行なっています。塾外では、東京大学ヒトゲノム解析センター、奈良先端大学院大学バイオサイエンス科、理化学研究所、英国ケンブリッジ大学動物学科、米国 TIGR 研究所、米国カルフォルニア大学アーバイン校などと協力関係にあり、夏休みと春休みなどに有志が渡米・滞在して共同研究を行うこともあります。
学会発表
国内外の学会やシンポジウムには積極的に参加して研究発表を行ないます。優秀な研究成果は学年に関係なく学術論文誌に投稿したり 学会発表します。 生命情報科学に必要な生物学と情報科学の両方のエッセンスを効率良く学べる大学学部は今のところ世界でもSFC以外にほとんどありません。したがって、一所懸命勉強/研究すると、学部生でも学会発表などのチャンスがあります。
また、頑張って顕著な成果を出した学生には、奨学金や海外旅費補助など様々な制度で優遇しています。
おわりに
学問、特にサイエンスの本質は「好奇心」、すなわち面白いから勉強/研究するのであって、究極の「あそび」といえます。月着陸を果たしたのも、火星の生物を探索するのも贅沢な「あそび」なのです。したがって苦痛に絶えながら
歯を食いしばって頑張るようなものは学問ではないと考え、私達は研究の楽しさと遊び心を大切にしています。
冨田研究室では私のことを「先生」と呼ぶことは禁止されており、学生は私のことを「冨田さん」と呼びます。新分野を開拓するときの宿命ですが、私達には
手本となる先駆者や教科書が存在しません。だからすべての学生は、福澤諭吉の いう「半学半教」を実践し、学びながらそれを後輩や仲間に教えます。私自身も例外でなく、教えながら学生から多くのことを学びます。そこには「師弟」の関係
はなく、私は学問や研究を行なっていく上での「先輩」にすぎないと思っています。
三田評論1998年4月号「細胞まるごとシミュレーション:電子化細胞実現までの道のり」