【談話室】オウムの欺瞞、堂々と論破を
[1995年04月18日 東京朝刊]

 野村亨 43 

 (神奈川県藤沢市)

 一連のオウム真理教に関する報道を見ていて、いくつか気になることがある。

 第一に、同教団幹部はしきりに自分たちを「仏教徒」であると称しているが、同教団の施設にはヒンズー教の神であるシバ神の像が飾られている。インドでも通常、仏教寺院に他の宗教の神が祭られるということはない。また、彼らはしきりに「超能力」を売り物にしているが、本来の仏教の教えは個人の精神的な向上を説くものであって、超能力の獲得などとは本来無関係である。

 同教団が使う仏教用語も、本来の意味からかけ離れたものである。たとえば“強制されて金銭を出す行為”は「布施」ではないし、“家族そろって「出家」する”などということもありえない。

 第二に、今回の事件に関して仏教各宗派や他の宗教団体がおおむね沈黙を守り、手をこまねいているのはなんとも不可解である。怪しげな教団を相手にしたくないという気持ちは分からないではないが、相手が「仏教」を名乗る以上、仏教各宗派には、正しい仏教とは何かということを堂々と主張して相手の欺瞞(ぎまん)を論破する責任があるのではないか。ロシアにおいてロシア正教の神父がオウム真理教の元信者の救済活動をしているのを見るにつけても、日本の宗教団体の奮起を期待したい。(大学助教授)

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