RACレジュメ
「東南アジア」という言葉
本日のテーマ
•東南アジアという言葉はいつごろから使われるようになったか?
•だれによって、どのような意味で使われるようになったか?
•それ以前には、この地域はどのような名称で呼ばれていたか?
さまざまな呼称
•「インド」:「アジア」とほぼ同範囲
•ガンジス川の向こうのインド
•Further
•インドシナ
•マレー群島
当時はまだ東南アジア全体を指す名称は存在していなかった
19世紀末の世界地図に載った東南アジア大陸部
19世紀末の東南アジア島嶼部
蘭領東インド、仏領印度支那、英領馬来、英領北ボルネヲ、
サラワク王国(英保護領)
ブルネイ(英保護領)、
泰国(シヤム)、英領緬甸、米領比律賓
「東南アジア」の初期の用例
•Howard Malcolm, Travels
in South
太平洋問題調査会
•Institute of Pacific Relations(IPR);1925年設立
•日本にも支部が設立された
•1941〜42年頃から「東南アジア」という表現で統一されるようになる
•K.M. Panikkar, The Future of
•専門書で「東南アジア」という表現をタイトルに用いた最初の例
日本における初期の用例
•「東南アジアに於ける日英の抗争」『満鉄調査月報』昭和12年7月(1937)
•松田壽男「漠北と南海」、昭和17−8年(1942-3)
•ハイネゲルデルン(Robert
Heine Geldern)「東南アジアの民族と文化」、昭和17年(1942)
• 松本信広「印度支那の民族と文化」、昭和17年(1942)
•「東南アジアにおける国家と王制の概念」
•「東南アジアとは、ビルマ、シャム、仏領インドシナ、マラヤ、蘭領東インド、英領ボルネオ、フィリピン群島を含む」(1943年)
•これは学問的表現として「東南アジア」という名称を使った初期の例
「東南アジア」の一般化
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1943年8月:ケベック会議
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Southeast Asia Command(東南アジア司令部)の設立
本部はセイロン(スリランカ)のコロンボに置かれた
•Lord Mountbatten
東南アジア司令部の管轄地図(1943年)
日本敗戦後、戦勝記念パレードに参加するマウントバッテン卿
第二次大戦後の展開
•1945年5月、
アメリカ国務省が東南アジア課を設置
•東南アジア政策
戦後のアメリカ外交の柱のひとつ
•冷戦構造の下で東南アジアの共産化を阻止することが必要だった
ドミノ理論
東南アジア条約機構
South-East Asia Treaty Organization
•SEATOと略称される
•1955−1977
•NATOの東南アジア版
•本部はバンコク
•冷戦構造下で東南アジアの非共産主義勢力を保護する役割を果たす
•アメリカ主導
•1973年、パリ協定
存在意義を失う
•1975年、サイゴン陥落
北ベトナムによる南ベトナムの併合
ラオスの社会主義化
カンボジア、ポルポト政権成立
大量虐殺、国土の荒廃
•1977年、ニューヨークで解散宣言
東南アジア諸国連合Association of Southeast Asian Nations
•1967年
•最初の本格的な地域協力機構として結成
•最初の加盟国:インドネシア,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイの5ヵ国
•略称は ASEAN(アセアン)
•目的:当初は,冷戦と地域紛争を切り離し,相互対立に代わって,社会・経済,文化面の相互協力を促進させる
•1970年代:ニクソン・ドクトリン
アメリカのアジア離れ
米中接近に見るアジアでの緊張緩和が進む
•1971年、 中立地帯宣言
東南アジア地域における大国間のバランス
を求めた
地域紛争の自主的・平和的解決の方向
•1975年、サイゴン陥落後
域内緊張が高まる
•1979年、ベトナム軍のカンボジア侵攻
•危機は深まったが,インドシナ諸国との共存を求めた
•1984年:ブルネイ加盟
•1995年:ベトナム加盟
•1997年にラオス、ミャンマー加盟
•現在9ヵ国
東南アジアのほぼ全域をカバーする機構
組織
•決定機関は外相会議
•常設の中央事務局:ジャカルタ
•経済閣僚会議:貿易,資源,技術等の協力のための委員会
•域内特恵制度の拡充や関税引下げ域内経済協力
•発展途上国の
地域協力機構のモデル
ジャカルタの
アセアン中央事務局
米英間の綴りの相違
•South-East Asia:英語、欧州語
•Southeast Asia :米語
•「東南アジア」か「南東アジア」 か?
D.G.E.Hall,A History of
In Search of
In Search
of Southeast Asiaの
著者たち
まとめ
•「東南アジア」という呼称は比較的新しい
•第二次世界大戦を契機として一般化した
•この名称は他者が与えた名称である
•アセアンの結成以後、域内各国相互の連帯感が生まれている