2001年1月22日 小熊研究会1

マーシャル・マクルーハン 『グーテンベルクの銀河系』

丹羽 大介(環境情報学部3年 79857267)

 

1 マクルーハンの略歴

1911年 カナダ生まれ

2 マクルーハンが問題視した社会状況とそれに対するアプローチ

→大衆社会の出現、一方で「異議申立て」運動がおこる

64年に『メディア論』として結実

3 表音文字の発明

「アルファベットは視覚と聴覚を分離し両者の関係を断つのみならず、それぞれ自体では無意味な文字と音が恣意的に結びつけられているという関係を除いては、すべての意味を文字の音から切り離すのである」(p75

 非文字社会にあっては、五感は常に通い合っている

→遠近法的(=三次元的)空間認知…文字使用により、人間はイメージのやや前方に焦点を合わせ、イメージの全体像を瞬時に概観することが可能になる(p61

 「私」が世界を見るという発想が生まれる

 一方で非文字社会にあっては「私」は世界の中にある

言葉による思考を行動から切り離すことが可能なのだ、という発想が生まれる

 非文字社会はそのような発想が無い…(西欧的な目から見ると)抑圧的

 一方で文字使用に慣れた人は精神分裂病の危機にさらされることになる(p37

→同一平面上で事象が次々に発生すると考える西欧人

 暗示的で呪術的な世界の中にすむ非文字社会の人

4 印刷技術の発達

  • 視覚の、より強度な分離(黙読の発生)

     中世において読書は「音読」が基本だった(p70)(ラテン語文法や書体の不統一などが理由)

    →世界のあらゆる事物を視覚化しようとする試み(e.g. 統計学)

     それを見る「固定された視点」の確立

  • 「作者」という概念の登場

     中世においては、さまざまな著作物が適当にまとめられていた(p202

     また、写本を写すという行為は読書であると同時に生産でもあった

     印刷技術による生産者と消費者の分離(p318)→近代社会における専門化の一因

  • 市場の圧倒的な拡大→出版物に書かれる語として、民族語がラテン語に取って代わる(p317

     民族語の可視化→ナショナリズムの発生、「平等」という発想(p336

    この作用はあらゆる分野に及ぶ(e.g. 価格システムの成立=資本主義の成立に不可欠)

    中国人は西欧人より印刷技術に早く到達していたが、それを近代社会の成立に結び付けることが無かった(p57

    5 電気(テレビ)の社会

     特定の感覚の分断を行わない、「クール」なメディア

    印刷された書物のように、感覚の切り離しを要求するものは「ホット」メディアとよぶ

    グローバル・ヴィレッジへ(カトリシズムへの傾倒との関連?)

    6 その後

    7 参考文献

    M, McLuhan The Gutenberg Galaxy 1962(=1986 森 常治訳 『グーテンベルクの銀河系』 みすず書房)

    M,McLuhan Understanding the Media 1964(=1987 栗原 裕 河本仲聖訳 『メディア論』 みすず書房)