小熊研究会 中間報告レジュメ
「インターネット」
−電子コミュニティーにおけるコミュニケーション−
丹羽 大介 (環境情報学部3年 79857267)
1 テーマの設定
2 調査対象
(1)同期型コミュニケーション…コミュニケーションをする人達が同時にインターネットに接続した状態でおこなわれるもの
(1−1)ページャ型チャット
(1−2)コミュニティ型チャット
(2)非同期型コミュニケーション…コミュニケーションをする人達が随時インターネットに接続し、 なんらかのメッセージを伝えあうもの
(2−1)電子メール
(2−2)電子掲示板
(2−3)
Web(ホームページ)3 実際に扱うフィールドの紹介
・今回はそのなかでも特にチェスを扱う。
ていない
(2)コンピュータおよびインターネットのリテラシーの程度は人によってばらばらで
ある
(3)年齢層は幅広いが、テレホーダイサービスの関係上中心は10代後半〜20代前
半である
(4)ログイン数は20〜100くらいで、そのうちリピーターの数は30人前後である。
4 調査方法、その意義と限界
例 「ネットで知り合った人と実際にあってみた感想は?」
「うーん、普通。ちょっと違うところもあったけど、そんなに大きくは変ってない」
再構成したことをまとめてみる。
5 具体的な問題設定とアプローチ
6 ストーリーの展開と考察
A
大学生 20歳 男B 大学生 19歳 男
C 高校生 17歳 女
D 高校生 16歳 男
E 高校生 16歳 女
F 高校生 15歳 女
→ここでアクターたちは、「いずれ実際に会う」という前提から、なるべく「自分」を正確に伝えようと努める。しかし当然ながらそこにはぶれが起こる。それを、前述のアプローチから考察していく。
→
Yahoo Gameにおける非公開テーブルのシステムは、もともとは悪質なユーザーの排除のために作られたが、実際にはプライベートチャットのために使われることがほ
とんどである。このシステムは当サイトにおける濃密な人間関係の形成に重要な役割
を担っているといえる。
→このサイトにおいて「ネット上で知り合ってから実際に会うまでが1ヵ月以上」とい
うのは極めて長い方である。これは偶然によるものではあるがネット人格形成のケー
スとしては興味深いといえる。
(T)そのひとの身体的・性格的な特徴や、社会的な属性をストレートに聞くような質問
が非常に多く出た。『自己紹介の繰り返し』
例:「勉強できるの
?」「よく遊ぶところは?」「好きな服のブランドは?」→ビーチとウェルトハイマーの研究(1962)によれば、対人認知の内容は大きく分
けて次の5つであるという。
1 身体的認知(顔・スタイル・体型など)
2 社会的背景の認知(家族・職業・出身など)
3 性格認知(性格特性・態度など)
4 相互作用の認知(自分に対する対応の仕方・情緒など)
5 社会的活動の認知(関心・欲求など)
対面コミュニケーションにおいてはこれらのうちの多くは予め分かっていることが多
い。しかしこのケースの場合アクターたちに与えられた情報は、関東周辺に住んでい
ることと年が近いことだけである。従ってこの不足を補うために上記のような質問が
多く出たと考えられる。ここから、アクターたちがお互いの同一性を決定するのにか
なりの努力を払っていることが読み取れる。(これらの質問は当然ながら、ネット上
のコミュニケーションにおいて必ず出るわけではない)
→非公開テーブルを作ってプライベートチャットが出来るという
Yahoo! Gamesの機能がなければこのような質問はしにくい。逆にこの機能のために、アクターたちはお
互いに関する情報を相当程度確保することが出来た−はずである。
(U)アクターたちは
Yahoo! Games以外ではほとんどコミュニケーションを取らなかった。ページャソフトでチャットすることもなく、メールもあまりやり取りしなか
った。
A「ここでいつでも話せるわけだから わざわざメールをやり取りする必要はない
と思うけど」
→利用できるチャンネルの少なさによる「自己循環」の発生
「…小説であれば登場人物の感情の動きや表情が形容されるけれども、ネットワーク
上の<場>では、性格設定に至るまで読む人が自分で判断しなくてはならない。も
ちろん想像の材料は、その<場>に記述された文章しかない。それゆえに、書かれ
た文章から判断した雰囲気を基準に、書かれた文章のニュアンスを決めるという自
己循環過程が発生する。(中略)実時間を共有している状況なら、その都度のフィ
ードバック作用によって解釈の方向を修正する余地が生じる。…相手が眼前に存在
する対面状況のコミュニケーションといえども、メッセージの解釈においては相手
の存在がこちらの意識内に取り込まれるが故に、究極的には自己対話である。しか
し、対面では解釈の対象たる表情などは相手が発するものであるのに対し、ネット
ワーク上のコミュニケーションでは『相手の表情』自体が想像の産物なのだ。そこ
には自分で想像した相手の表情に、自分自身が反応するという一種のハウリング現
象が発生する(江下 2000)」
→クロンバッハの「暗黙のパーソナリティ理論」(1955)
「私たちは人の性格特性が一般にどのように結びついているかについてある信念を持
っているという。この信念を『暗黙のパーソナリティ理論』とよぶ。(中略)たと
えばある人がまじめで誠実ならば、その人はおそらく温かい人柄であろう、と考え
るというわけである(人間関係の心理学 p61)」
情報からどのように同一性をはかっていくかは個々人に委ねられる。そしてそれが「な
かなか裏切られない」
→チャンネルの少なさはコミュニケーションの多様さによってある程度補われうるが、
このケースの場合はそれが無かった。したがって情報を得れば得るほど、ネット人格
はぶれを増していったのではないかと考えられる。
れがあったのではないかと
"推定"できる。ただし"断定"は出来ない。
参考:
Aに対する他のアクターたちのネット上におけるイメージB
金持ちのお坊ちゃんタイプで気取っている。C
口数が多くてしかも口が悪い。性格自体はそんなに悪くないんじゃない?D
頭がよくて論理的な人。かなり人気がありそう。E
紳士的で優しい。他人に気を使うタイプ。F
内向的で静かな人。勉強好きそう。
7 参考文献
ネットワーク社会の深層構造 江下 雅之著 中公新書
人間関係の心理学 斎藤 勇編 誠信書房
電縁交響主義 金子 郁容他著
NTT出版現代思想 1996年4月号 青土社
ポストメディア論 デリック ドゥケルコフ著
NTT出版情報の空間学 黒崎 政男監修
NTT出版