2000年度 小熊研究会U 月曜6限 卒業論文用研究計画および調査経過報告

総合政策学部4年 No.79703302 貴戸理恵

「家庭でも学校でもない、子どもの居場所――横浜の学童保育のゆくえ」

 

はじめに――問題意識および用語説明

「働きながらの子育て」に否定的なイメージを持たれた時代がありました。「母親が働くと子どもが非行化する」「母親が子どもを学童保育に預けて働くことは、子どもを教育する義務を果たしていない」などと、行政が公の場で答弁していた時代です。[連協:行政に対する公開質問状:1971]

 こうした考え方は、厚生省が「男女共同参画モデル」を打ち出す現在では、表面上は影を潜めたかに見えますが、未だ根強く法・制度や人々の心に内面化されています。しかし、親族や近隣による育児ネットワークがほぼ崩壊した現代、母親が家にいてたった一人で子育てをすることは不可能です。育児ノイローゼ、児童虐待といった子育てをめぐる痛ましい出来事は、信頼できる育児ネットワークを持たず、育児援助から母親が疎外され、孤立してしまったことに原因の一端を見ることができます。

 学童保育は、親が働いている時間子どもを預かる託児所的施設であるだけでなく、子育ての場への多様な価値観の介入と、親同士の育児ネットワークの形成によって、「働いていても、豊かな子育て」ではなく、「親の就労の有無を問わず、より豊かな子育て」という発想を可能にする場です。

私は昨年1年間、横浜市の学童保育施設に、アルバイト指導員として、ボランティアとして、調査者として関わってきました。私の問題意識の核は、「働きながらも、人々と連帯し、多様な価値観の中で、自分の手で子育てしていく」親たちの育児実践の場として、また、子どもたちが評価や管理のまなざしから開放され、存在を肯定されて、安心してのびのび過ごせる居場所の一つとして、学童保育の果たす機能を評価し、守っていきたいというものです。

 

学童保育:「共働き・母子・父子家庭の小学生の子どもたちの放課後及び春・夏・冬休みなどの学校休業時の生活を保障することを通して、働く親の生活と権利を守る」留守家庭対策事業。[連協:1999]民間に事業委託、約12.000円余りの保育料、父母会あり、施設の保障なし。(委託の場合)

はまっ子ふれあいスクール(“はまっ子”):「児童の創造性、自主性、社会性などを養うため、児童が通いなれている学校施設を利用して、異年齢児間の遊びを通じた交流を促進し、もって児童の健全育成を図ることを目的とする」全児童対策事業。[教育委員会:1995]教育委員会が実施、保育料無し、「チーフパートナー」として退職校長、小学校の空き教室利用。

学童保育連絡協議会(連協):学童保育の制度充実を求めて行政に働きかける、学童保育運動の中心となる全国組織。

 

1.昨年度までの研究結果の報告

11.「学童保育と“はまっ子ふれあいスクール”の違いについて――“学校”の中で“生活”できるか」99年小熊ゼミ)

〈概要〉このレポートの主題は、学童保育と“はまっ子”の非制度的な差異に着目し、連協の運動資料とフィールドワークで得た親・指導員の当事者言説の分析を通して、連協の対“はまっ子”運動における論理的限界の指摘と、新たなレトリックの提案を行うことであった。

はまっ子ふれあいスクールは、「留守家庭児童対策」である学童保育とは事業目的を異にする「全児童対策」として1993年度よりスタートした。しかし、両事業はともに放課後の小学生児童を対象とするなど競合する一面を持っており、政府が暗黙に示唆する「一本化」への反発から、連協は“はまっ子”と学童保育の差異化に務めてきた。その際連協の用いた差異化の手段は、開設時間の長さ・おやつの有無など制度的なものであったが、それは“はまっ子”がそうした制度を充実させることによって、学童保育に近づくことができることを必然的に肯定してしまうという、論理上の限界を孕んでいた。

このレポートでは、現場の親・指導員が感じている非制度的な差異を言語化することによって、結論として以下のような新たなレトリックを得た。

「子どもにとって、教育的指導の対象空間である学校と保護的指導の対象となる生活の場は、分離していなくてはならない。よって子どもたちが生活を営む学童保育は極力、学校施設の中で行われるべきではなく、その意味で学童保育が“はまっ子”的なものへ変革されることは、学校による子どもたちの生活領域の侵害であり望ましくない」

 

12.「子ども・親・指導員にとっての学童保育――横浜市めだか学童クラブの場合」99年上野ゼミ)

〈概要〉このレポートでは、横浜市の学童保育の施設間格差の問題を取り上げ、子ども・親・指導員それぞれにとって学童保育がどのような意味を持つかを調査した結果、横浜市が実施している委託制度の矛盾を明らかにした。委託制度は父母会と指導員との間に雇用・被雇用という非対称的な関係を作り出すため、父母会の側に指導員に対する配慮があり、指導員が劣悪な労働環境に耐えて質の高い保育を提供するときのみ、「いい学童」が成立する。尚、そうした指導員の背景にあるのは、子どもや働く親への強い連帯感と、閉鎖的な女子労働市場である。

 

2.研究計画

21.研究テーマの名称

「家庭でも学校でもない、子どもの居場所――横浜の学童保育のゆくえ」

 

22.研究内容

 本研究の主題は、子ども・親・指導員にとって、横浜市の学童保育のより望ましい状態とは具体的にどのようなものか、またそれが実現されるためにはどのような制度が必要かを、探ることである。

 昨年度までの研究結果から、学童保育の望ましい状態として、主に3つの条件を引き出すことができる。

@     開設場所、運営費に対して充分な公の補助があること。(親の金銭的・事務的負担の軽減)

A     子ども・親・指導員の意見が運営に反映されること。(運営に対する行政の介入は最小限、育児ネットワーク重視、学童保育は「子どもの権利」という発想の導入)

B     指導員の労働環境が改善されること。(専門性の評価、賃金・雇用の保障)

 また、昨年度の研究では、フィールドワークを通して横浜市が採用している委託制度の問題点を2点指摘した。ひとつは、父母会と指導員が雇用・被雇用の関係にあり、指導員の労働環境が劣悪になっていること、2つ目は運営及び費用に関して父母会に過度の負担が掛かっていることである。上記の3条件は、このような委託制度のもとでは満たされることができない。

本研究は、「では、どのような制度の下でどのように実現可能か」という問いにできる限り明確な答を出したい。また、「そのために、いま、横浜の学童保育関係者はどうしたらよいか」という問いについても、横浜市学童保育連絡協議会に対して、運動方針の提案という形で答えていくことを目的とする。

 

23.研究対象

研究対象は、@横浜市の委託制度下の学童保育、A横浜市の全児童対策である「はまっ子ふれあいスクール」、B東京都の公立公営の学童保育、C東京都の全児童対策である児童館、D横浜市の学童保育連絡協議会の5者である。

@〜Cでは、「委託or公立公営」という「運営形態」及び「留守家庭児童対策(学童保育)or全児童対策」という「事業目的」の2つの変数を採用した。

 第1の変数である「運営形態」は、それぞれの制度の持つ利点と問題点を比較・検討し、より望ましい制度を提案するために採用する。学童保育運動では、近年まで共同保育→委託→公立公営という流れが展望されていたが、運動の成果があって公立公営が増えた結果、「育児ネットワークが形成されない」「元の指導員が非常勤化、解雇された」といった新たな問題が認識されるようになった。従って、現在では公立公営が委託制度より望ましい学童保育の形態であるとは言えないため、2つの制度を同じ土俵で分析することが必要である。

 第2に「事業目的」という変数を加えたのは、子ども同士のふれあいや遊びを目的にする「全児童対策」と、子どもにとっての生活の場である「留守家庭児童対策(学童保育)」の違いとはどのようなものか、またその違いは関係者によってどのように認識されているかを調べるためである。「ゆめはま教育プラン」(横浜市教育委員会)によると、2002年までに“はまっ子”は全小学校に設置される予定であり、児童福祉の予算削減のため、学童保育との実質的一本化が検討されるものと思われており、今後の横浜の学童保育の動向を考えていく上で、この変数は必要である。

また、Dの横浜市学童保育連絡協議会(以下、連協)を対象に含め、その運動論理の背景にある組織的・歴史的特性を明らかにすることによって、これまでの連協の論理の限界と、より運動に有効な、新たな論理構築の可能性を探りたい。

 

24.研究方法

研究方法は、主に参与観察法を採用する。

「学童保育のより望ましい状態」を規定するのは、現場の利用者である子ども・親・指導員であり、本研究にとっては当事者言説を汲む定性調査が不可欠であること、また、近年の横浜の学童保育運動は変化が激しく、連協などのまとめた運動資料の有効性が限られていることが、その理由である。

具体的には、以下のような事柄が挙げられる。

@横浜市の学童保育については、中心的なフィールドと位置づけ、2ヶ月程度の参与観察を行う。(済)

A「はまっ子ふれあいスクール」、B東京都の学童保育、C児童館については、23日程度の参与観察と、関係者へのインタビュー調査を行う。

D横浜市連絡協議会については、連協が毎年発行する運動方針を明記した内部資料「横浜の学童保育運動」を分析する。(済)また連協の役員、事務局職員をはじめとする関係者にインタビューする。

 

25.理論仮説及び作業仮説

理論仮説

学童保育は、子どもにとって安心してくつろげる生活の場、親にとって育児ネットワーク形成の場、指導員にとって働きやすい職場であることが重要なので、「委託」「公立公営」「全児童対策と一本化」という既存の選択肢以外の、「公立(民間)委託」(開設場所・運営費・指導員の身分などの最低基準は公的に保障され、且つ運営方針の決定権や人事権は当事者に帰属する)とも言うべき制度が必要なのではないか。

また、そうした「虫のいい」要求を、行政に対して正当なものとして主張していくためには、連協自身の運動方針の見直しが必要なのではないか。

作業仮説

(主に対象A、B、Cについて)

“はまっ子”では親同士のネットワークが希薄ではないか。

“はまっ子”では子どもがのびのび生活できていないのではないか。

“はまっ子”ではパートナー(学童保育の指導員に当たる、子どもを見守る大人。しばしば小・中学校の退職校長である)の利益が過大に考慮されているのではないか。

“はまっ子”は、「地域との連帯」を掲げる「ゆめはま教育プラン」の一環に位置づけられているが、実は地域から孤立した学校管理的な色彩が強いのではないか。

“はまっ子”と学童保育の違いは、当事者たちによってどう認識されているか?

公立公営の学童保育では、「親にとっていい学童保育」が実現されていないのではないか。(金銭的・事務的負担は軽くなったが、育児ネットワークが希薄になったのでは)

指導員の公務員化は問題が多いのではないか。公に定められた一律の資格で、指導員職のようなケア労働の専門性は測定され得ないのではないか。

子どもへの影響に「公立公営or委託」という制度差による違いはあるのか?

児童館と学童保育の違いは、当事者たちによってどう認識されているか?

 

26.本研究の意義

 本研究の意義は、@学童保育を研究対象とした研究蓄積への貢献、A横浜市における学童保育運動への貢献の2点である。

 @とは、これまで児童福祉的アプローチ、フェミニズム・女性学的アプローチ、運動的アプローチのいずれかでしか語られてこなかった学童保育を、それらの視点を総合的に取りいれ、多面的に描き出すことである。

Aとは、子ども・親・指導員が望む学童保育とはどのようなものか、またそれはどのような制度の下で実現可能かを具体的に明らかにし、連協の方向性を示唆することによって、学童保育運動をより有効なものにしていく糧になり得る、ということである。

 

27.本研究の限界

本研究の限界は、以下の4つである。

@対象を横浜市および東京都に限定したため、学童保育の都市部・農村部による違いが明らかにできないこと。

A児童福祉概念の変遷や、学童保育の起源及び時代ごとの社会的位置付けの変化など、歴史的アプローチに欠けること。

B他国の学童保育との比較という国際的アプローチに欠けること。

C研究の意義として指摘した「学童保育運動への貢献」は、あくまで本研究の目標に過ぎず、希望的観測の域を出ないこと。

 

3.調査経過報告

31.公立公営の学童保育

・「芳水学童クラブ」(品川区)

 子ども数30人、指導員(正規)2人、保育料3.000

行政が保障する恵まれた施設(1F4畳程度の指導員専用部屋、10畳程度の床張りの遊び部屋、2F

10畳程度のゆったりくつろげる畳の部屋)→東京都では狭い方

 東京都は公立公営の中でも例外的に正規職員が多いが、今非正規化の動き

行政の介入(おやつは手作り禁止、キャンプ禁止、指導員は父母会に出席してはならない、通信は月一回にしなければならず内容を行政がチェック、連絡帳は1年生のみ使用など)

「手厚い保育はもう必要ない」という発想→「非常勤」「嘱託」「臨時」など非正規化、一年雇用→人件費削減(待遇:11:006:00勤務で年収200万未満)

「教育と福祉の融合」(品川区、北区、中野区etc.)すなわち児童館と学童保育の「一体的運営」、「セクショナリズム(子どもの分断)を廃す」?→児童福祉の予算削減、「地方行政のスリム化」

 

32.指導員の専門性の問題

・根強い「誰にでもできる」意識→ケア労働の専門性の規定が必要

「資格か経験か?」連協のジレンマ ex.)船橋市の学童保育の例

資格試験をパスする能力より経験が大切、経験は言葉にできない、しかし社会的認知を得るために理論化は不可欠

 

33.学童保育の多様な展開

1998年児童福祉法改正に伴い「放課後児童健全育成事業」として法制化

運営形態は公営と法人が増えている。公営51.9%(+2.4)、法人運営7.8%(+4.1)、地域運営委員会運営17.8%(−0.3) [93年度調査比較]

基準を満たせば学童保育→保育ビジネス、NPO

 ex.)札幌の「英会話学童」:保育料は50.000円、英語を話さなくてはならない空間

*制度、内容のより明確な法的規定が必要

 

34.少子化問題と学童保育

児童福祉の充実は少子化問題と併せて語られる。(育児環境を整備して出生率の上昇を図る)

Who cares?「国家を運営する上で、人的資源である国民が減少することを、政府が問題視している」

  cf.)出生率上昇以外の選択肢:移民受け入れ、高齢者・女性の雇用促進、女性隔離徹底

・逆転の発想:国家と距離を取りつつ、自分たちの利益のために「少子化対策」を利用する。[足立:2000]

 →しかし学童保育に関しては、国家と市民の利益があからさまに異なっている。

*少子化対策としてではなく、育児対策としての学童保育対策を。

 

35.全児童対策or留守家庭児童対策?

「留守家庭の子どもたちの放課後を守るのは学童保育」[連協:2000]の限界

“はまっ子”との差異化の手段、対抗論理 留守家庭児童=「保育に欠ける」児童という意識

子どもの分断 ex.朝日新聞「カーテン記事」

・「育児」の変容(家庭で育児→ネットワークで子育て)

「子どもの集団で育つ権利」「親の育児ネットワーク」は、全家庭にとって必要←“専従子育て者のいる家庭が育児環境として望ましいわけではない”[落合:1989]

*ゆくゆくは、全児童対策としての学童保育事業を。

 

36.小学校を脱学校化する起爆剤としての学童保育

学童保育の学校施設利用が望ましくない理由は、学校の「管理性」「閉鎖性」

→「学校の中の学童保育」は、それに風穴を開け得る。

*しかし、現時点では小学校の管理的色彩が強く、学童保育が「管理性」「閉鎖性」に染め上げられる可能性が高い。よって、“はまっ子”と学童保育が一本化することによって事業の脱学校化を図ることは現実的でないので、両事業は当面のあいだ独立したものでなくてはならない。

 

4.資料

41.学童保育数と国の補助金の推移

 

*図省略

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

42.学童保育(放課後児童健全育成事業)の99年度予算

・全国:総額 548000万円(昨年度比83000万円増)

    補助対象か所数 9000か所(昨年度比1100か所増)[子ども白書:1999]

・横浜市の予算に見る学童保育と“はまっ子”比較

 

か所数

予算

職員の待遇

保育料

学童保育

150か所

  949761千円

週約35時間勤務、146千円

平均約12千円

はまっ子

233か所

 176278万円

 週30時間勤務、186千円

無料

[連協:1999]

43.学童保育市町村別実施状況

 

公立小学校数

学童保育数

児童総数

実施形態

条例

品川区

40

40

1684

公設公営


横浜市

347

150

5123

委託

[連協:1999]

44.行政の介入

おやつの提供:事前に、市販の菓子等(果物を含む)を数日分購入し、当日の出席児童に提供する。

保護者への情報提供と収集:通信等おしらせは、月1回程度の発行とする。連絡帳は、新1年生のみとし、その他、必要に応じて対応する。保護者会は、年度当初の指導説明と夏休みの過ごし方を含め、年34回以内で開催するものとする。保護者会は館長の出席により、2時間以内で終了すること。

…留意点:合宿については、学童の単独事業では行わない。[品川区児童センター事業運営実施要領]

 

45.学童保育指導員に求められる専門的知識と技能

@学童保育に対する親の願いと学童保育の役割が理解できていること。

A小学生期の子ども理解(現状、心理、発達に関すること)

個々の意欲を引き出す働きかけができること

こじれた人間関係を察知し、子どもたち自身で修復していけるようサポートできる

B留守家庭の子ども理解

心の変化を読み取り、共感しながら適切な対応ができる

C放課後の生活に対する理解

D子どもにとっての遊びの意味の理解と遊びの指導に関する知識、技能

子どもたちと一緒に楽しく遊び、活動できること

E生活にまつわる諸々の労働、生活技術

F集団での生活を時間と空間の両面から組みたてること

子どもの実態を踏まえた保育計画が立案できること

G生命と生活を預かる上での基本的知識と技能

病気やけがの基礎的知識、救急処置、危機管理能力、施設の維持管理と整備能力

H働きながら子育てする父母への理解と共感をもって、子どもの生活を親に伝える

I父母の願いや相談に応じながら、働く家庭の生活を支え励ます

J父母同士の結びつきをつける

K学校や地域、行政機関、他の児童福祉施設の理解と協力を得る働き掛けができる

講演会資料[連協:2000]

 

46.学童保育の法的位置づけ

・児童福祉法(抜粋)

[事業]6条の26項 この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童であって、その保護者が労働などにより昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設などの施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。

[放課後児童健全育成事業の開始など]34条の7 市町村、社会福祉法人その他の者は、社会福祉事業法の定めるところにより、放課後児童健全育成事業を行うことができる。

・社会福祉事業法(抜粋)

2条の3 次に掲げる事業を第2種社会福祉事業とする。

2 児童福祉法にいう児童居宅介護等事業、児童デイサービス事業、児童短期入所事業、児童自立生活援助事業又は放課後児童健全育成事業、同法にいう助産施設、保育所、児童厚生施設又は児童家庭支援センターを経営する事業及び児童の福祉の増進について相談に応ずる事業。

 

47.「逆転の発想」

少子化を極度に恐れる社会には、現在の男性中心的な日本の企業社会を維持しようとする意図や、「日本人」の減少を危惧するという、極めて一国主義的な憂慮が隠されていることに、わたしたちは充分意識的でなければならない…しかし、もう一歩踏み込んで、制度改革の実現を目指すのであれば、こうした政府の少子化への焦りを逆に利用することは可能なのではないだろうか。「優生保護法」の歴史に見られるように、日本の家族政策はつねに「人口」との関連で動いてきた。逆から見れば、それは「人口政策」という切り札が、実際の制度改革上、もっとも説得力のある起爆剤になることを意味している。…だからこそむしろわたしたちは、「少子化」を逆手にとって、望ましい制度改革の切り札にすればよいのである。これは逆転の発想である。[足立:2000]

 

48.少子化対策と児童福祉

品川区の厳しい財政状況と今後の少子高齢社会における児童福祉行政を見据え、また、区議会の提言を踏まえて、これからの児童センター運営についての検討を行うため、平成95月に課内の検討組織として「児童センター行政検討委員会」が設置された。…児童数が減少する中、少子高齢社会への新たな行政需要に的確に対応するためには、児童センター等においても簡素で効率的な行財政運営が求められ、常に不断の見直しに務めなければならない。…(児童センター担当職員と学童保育担当職員の)セクショナリズムを排し、全職員の相互協力の下、新たなニーズに対応できる体質に転換しなければならない。…具体的には、現行のセンター担当と学童保育クラブ担当で業務を融合化し、重複する部分を整理するものである。[児童センター行政検討委員会報告(品川区):1997]

 

参照資料及び関連データ

横田正子・大阪保育研究所 1984「子育ての大地を耕す」あゆみ出版

吉廣紀代子 1987「子どもに子ども時代を――遊びで育てる学童保育」東京書籍

加藤翠 1991「共働き子育て」中央法規出版

日本女子大付属家庭福祉センター 1993「学童保育の福祉問題」勁草書房

全国学童保育連絡協議会 1999「全国学童保育調査‘98

横浜学童保育連絡協議会 2000「横浜の学童保育運動2000年度定期総会議案」

全日自労建設農林一般労働組合全国学童保育指導員支部 1995「スウェーデン デンマーク ドイツの学童保育」

丸尾直美・塩野谷祐一 1999「スウェーデン」東京大学出版会

横浜市教育委員会 1995「はまっ子ふれあいスクール モデル実施報告書」

―――――――― 1998「『はまっ子ふれあいスクールに関するアンケート』集計結果」

―――――――― 1999「ゆめはま教育プラン――『まち』とともに歩む学校づくり」

・足立美樹 2000「『産育コスト』分担の現状と課題」東京大学大学院修士課程人文社会系研究科修論

・厚生省 1999「子ども白書」

・品川区児童センター事業運営実施要領

・東京都学童保育連絡協議会 2000講演会資料

・品川区児童センター行政検討委員会 1997「児童センター行政検討委員会報告」

・落合恵美子1989「近代家族とフェミニズム」