2001年度春学期小熊研究会T

 

第三回(5/7)「ヨーロッパ」まとめ

 

総合政策学部二年 小山田守忠

学籍番号:7002308

ログイン名:s00230mo

 

☆ヨーロッパのナショナリズム

 それぞれの国のつくり方、歴史がナショナリズムの形態に大きく影響

☆フランス

1.中央集権国家フランス

Nation Stateの典型(絶対王政期、仏革期を通して中央集権的傾向が強い)

@地方自治が極端に弱い(≠米)

  革命後、各地方(王党派の本拠)の各種特権を「上から」つぶす

  Aナショナリズムを普遍的なものと見なす傾向が強い(=米)

  地方の伝統を重視しては中央集権はやりにくいため普遍的概念(共和・自由、平等

平和)や啓蒙教育を上から下におろす

  伝統文化にこだわるものは国家分散主義(政府への反抗)と捉えられる

2.「普遍的原理に近づくこと」が国家統合のナショナリズム

・少数民族を多数含んだ国家にありがちなナショナリズムの形

cf.中国・旧ソ連の共産主義、日本はそこまで至らず

  →普遍的なものを志向することとナショナリズムは必ずしも矛盾しない

・逆に普遍的原理同士は仲が悪い(米⇔仏:普遍原理が幾つもあってはまずい)

  cf.@中国の愛国・民族主義=少数者を含んだ中華民族主義≠漢民族主義

    (モンゴル・チベットは民族分裂主義?)

     Aアメリカ:アメリカ全体=Nation、一つ一つ(ユダヤ、ブラック等)=ethnic

  →「民族」は「つくられるもの」、それが地方・少数意識を脱却して国家を形成しうる

ものであればそれを「民族」と呼ぶ

 ・「つくられるもの」は決して偏狭なものではなく、むしろ未来性があるものとして認識

  →移民政策等様々な面に反映(フランスに同化できさえすれば問題なし)

3.仏ナショナリズムの影響

・「Nationalism=開いたもの、ethnic=閉じたもの」という基本認識

・普遍性に依拠しているため伝統より、「いかに我々はすばらしいもの(科学技術、革命の理念、議会制民主主義等)をもっているか」が問題になる

→それは世界中の人々が「わかる」はず(「わからないもの」は普遍的でない)

→ふるくから続くものは普遍的なもの意外誇らない

これは植民地をつくる上でも有効(「文明」の輸出)

・国内の少数言語集団には同化政策

  「仏語は「文明」が一番わかる(普遍的な)言語だから学ばせる」

 ・人種差別は「あいつらは「文明的」に遅れたやつら」という形

  (明確な差別になると「自由・平等」という国の威信を傷つけるため)

 ・与党・野党関係は「普遍性(科学・文明)⇔地方土着主義」

  (エコロジーも自然・土着文化の再評価という点で野党的)

  ex.「スカーフ論争」:イスラム移民学校の被り物(ヘジャ)の禁止

     左派知識人の中で論争(スカーフは遅れている(女性を縛り付ける)→女性解放のためにも禁止したほうがいい)

・中央集権の為に地方文化(カトリックの教会学校等)をつぶす必要があった

 →政教分離の問題に結びつく、宗教教育には不寛容 

 

☆ドイツ

1.連邦国家ドイツ

 ・州の自治権がものすごく強い(米)

  強力なプロイセンのリーダーシップの下で結合(≠米:独立戦争における協力

 ・ドイツのナショナリズム=民族的一体性、「国家は分かれていても皆ドイツ人」

  一民族が多国家に分かれていたものをまとめたものがドイツ

 民族が国家よりも先、民族生存の手段が国家(ナチス「民族が主、国家は手段」)

 →あくまで基盤は民族(Volk)、民族は「あるもの」であって、つくられるものではない

 Nation:人工的なもの、政治的なもの、国家を共通に作る仲間(文化が違ってもOK

 Volk:文化、歴史、血を共有している人々

 (余談:ドイツ留学をした西尾幹二は「民族の歴史」を書きたかった?)

2.民族的一体性としての土着文化

 ・Volk(民族)=大衆(ex.フォルクス・ワーゲン:大衆車)

 ・民族と大衆が何故一つになるのか

  フランスの先進文化の影響を強く受けた独皇室への反感

  →国の誇りは外国文化に汚染された都会ではなく、田舎の土着文化

・この形だと大衆の支持が得やすい

 グローバリゼーションの中で様々なスキル(英語、IT等)を駆使して儲けることができるのは人口の数%、残りの人々はそれに対する反感からナショナリズム、土着文化へと帰着する

 →ECに反対する農民(専門職、企業は賛成)

3.独ナショナリズムの影響

・先進国(攻め込む側)は主に仏型(「普遍性」を強調)、後進国(守る側)は独型(「固有文化」強調)

・国籍法への反映:血統主義(仏:出生地主義)

・文化=土着の泥臭いCulture(「勤勉な農民」「中産階級」が誇り)

・移民政策への反映:国籍を簡単に取らせない、地方の国体を認める

 (≠仏:一定条件のもとに移民を受け入れる、同化主義傾向が強い

 

☆イギリス

1.英連邦(United Kingdom

 ・連合国的な色彩が強い:王家の盟約を中心にして国家統合

  →各国独自の色彩もある程度認める傾向が強い

 ・仏との違い(中央集権か連合か)

  仏−直轄領に「文明」を流し込む

  英−委任統治(王→総督→首相)

 ・国民の権利と市民権が別(連邦内での移動は比較的自由)

 

EC

1.拡大国家としてのEC

 ・国家を超えた動きというより国家の拡大版に近い(「藩+藩+・・・=日本」に近い?)

 ・民主化の程度がECの文化:文化的普遍性を持たないものに対しては排外的

 ・国家をなぞる動きも(ECの歴史教科書作成、中世史までしか書けない?)

 ・主権国家の「たが」が外れ始めた結果としてのEC統合という側面も