2001年度春学期小熊研究会T

 

第五回「外国人労働者」(5/21)講義まとめ

 

総合政策学部二年 小山田守忠

学籍番号:70002308

ログイン名:s00230mo

 

送り出す側の事情、受け入れる側の事情、移民の状況、受け入れ側の政策的な問題をそれぞれ考慮することが必要

 

1.送り出す側の事情(push要因)

@資本主義・貨幣経済の浸透

  自給自足している状態:移動の必要性なし

   ↓

  貨幣経済の浸透(近代化の一過程)

   ↓

  現金収入の必要性が出てくる

 

・農業の変化にともない現金収入の必要が増大

農村部「現金六割」、残り四割は自分の家で出来たものを食べる(GNPGDPは現金経済を前提としており、その低さは「食えてない・食えている」とは必ずしも一致しない)

→農業が商品作物になる(単作、「売れるもの」をつくる)→「豊作貧乏」の発生

→大量生産の為に肥料・農業機械を入れる必要がでてくる

→現金が必要になっていく(投資→売れない→借金→出稼ぎ)

・生活の向上にともない現金収入の必要が増大

  従来のものが新しいものに変わっていく(煮炊き→ガスコンロ)

  自給自足できないものが増えるに従って現金収入の必要が増す

 

⇒農閑期に都市部に出て行く

 国内の都心部にでるか外国の都心部にでるかはあまり問題にならない(言葉が通じないのは首都だろうが外国だろうが同じ)結局はどちらのほうが行きやすいか、伝手がいるか・いないか、どっちのほうが稼げるかといった選択の問題

 

A信用経済の浸透

  ・送金ができる(書留、電子送金→出稼ぎ)

B通信技術の発達

 ・伝手をたどることができるようになる

C交通技術の発達

 ・「行ける」ようになる

 ・安く行けるようになる(蒸気機関の発明、船に応用→渡航費用の低下)

 Dテレビの普及

  ・テレビは国内の地方差を埋めるという意味でナショナライズを進めると同時に国家間の均質化を促進するという意味でグローバライズを進める

   →途上国の方が教育のナショナライゼーションが進んでいないため外に出て行きやすい(どこに出ても同じ)

 E国内の経済・政治状況の影響

・教育水準の発展に産業がついていかないために、大学を出ても職がない(産業基盤がない)状況が発生

→外国人労働者になって出て行く

・政情不安のために海外に出る

・高学歴階層は高等教育を英・米語でやる

 →英・米に出るのは言語的に楽

F国策としての外国人労働者(フィリピン、ベトナム等)

 ・外貨の不足:外で稼いで本国に送金→ドルベースの外貨収入に

 ・長期的に見ると必ずしも得策とはいえない

  働き盛りの教養のある人間を外に出してしまうのは人材の無駄使いでは?

G国が「民主化」したときに出てくる(出国規制が緩む)

 

2.受け手側の状況(pull要因)

 @経済的に豊か

 A景気がよい

 B通貨が強い(日本―80年代末〜90年代前半に外国人労働者問題が増える、85年にプラザ合意、円が対ドルで2倍に)

  来る側から見ると選択の問題(経済の良し悪し、景気、通貨などの判断で選ぶ)

  →現在「来てない」ことは「永遠にこない」ということではない

 C労働力不足(ヨーロッパ諸国)

  ・戦前の移民:ポーランド人のドイツ行き(農業)、「国内移動」も多い

   在日もほぼ同じ、出稼ぎの一種、日本側はむしろせき止めていた

   (1930年代末からは強制連行)

   二大送り出し地域としてのイタリア、ポーランド(→アメリカ新移民)

・戦後の移民:戦後復興で人手が必要に

   ドイツ:900万人死亡、西に1000万人が流れる(血統主義が必要になった背景)

   19501960年代にトルコと契約して労働者の受け入れ、イタリア系の流入

 D連邦内移動(英連邦の人々:パキスタン、インド、カリブ等)

  ・英連邦市民権:域内移動が楽

   移民は決して無作為にくるのではなく、「縁」のあるところにくる

   旧植民地にくるのが大半、つてをたどって同じ国から大量にくる

 

3.移民の状況(定着の問題)

 @移民はどのような世界に住んでいるか

・伝手をたどってやってくる→誰かが迎えに来ていてその家に転がり込む

             →誰もこない

   →仕事を始める(非合法、合法(公認、非公認))

  合法、公認の場合は定着(言葉を学ぶ、家族を呼ぶ)

  そうではない人々(数年で帰る、など)は言葉をおぼえない(数、指示語だけ覚える)

  コミュニティをつくって生活(料理屋、食材屋→教会、互助会→学校→新聞社)

  コミュニティが安定していると言葉をおぼえる必要がない

   →二・三世になると変化

 A二・三世の問題

  ・ホスト社会の言語、生活習慣に関して色々なケースが発生してくる

   →教育上の問題(祖国語も現地語もできない、抽象概念の欠如など)

→社会適応の問題(暴れる、酒を飲む、文化摩擦、など)

   放っておけば何とかなるという問題ではない

  ・アイデンティティ・クライシス:不安定な状態、社会に適応しにくい

   →アイデンティティを安定させるための文化多元主義

(移民の文化を認める全てを認める)

   とりあえず安定するなら「違う」ものでも認める

   文化体系とは1か0かではない、象徴的なものだけを取ってこれる

   (名前だけは民族名、など)

 

4.受け入れ側の政策

移民の完全シャットアウトは困難、入ってくるものはpush要因があるのでしょうがないが、その「入り方」はホスト社会側が決定できる(ジャパユキさん・特殊技能、留学生→就学生など)

→入れるんだったら国内体制を変える必要(健康保険を出した方が治安維持?)

・地方自治の問題

 特定の地域に集まる(伝手をたどるため)

 →町の人口の2,3割が外国人という状況にもかかわらず、文部省の締め付けがつよいため、必要な言葉を教えられない(→家族関係の悪化、アイデンティティ・クライシス)

 ・現地語をどの程度教えるか(第一言語として、シンボルとして)

  →1世二世ではやったほうがいいが、三世になると微妙

 ・流入段階から定着段階へ

  入ってくる数が減っても中でつくるから数が増える状況

  →教育・社会保障を考えなくてはならない

  →ほうっておくと犯罪が増えるなど大変

  入ってきたものはちゃんと社会に組み込んだ方がいい