2001年度春学期小熊研究会T

 

第7回(6/4)「言語」まとめ

 

総合政策学部二年 小山田守忠

学籍番号:7002308

ログイン名:s00230mo

 

T.近代的国民国家における「国語」とは

1.ヨーロッパ中世、中国社会の基本的システム

・書記言語(聖なるもの)と音声言語(俗なるもの)の分離が大原則

・皇―王―貴を結んでいるのが世界共通言語=書記言語(ラテン語・漢文)

  これによって政治文書、宗教上の文書が書かれる(政教分離がないのでほぼ同じもの)

  (宗教的権威と政治的権威の分離がNation Stateの大前提)

 ・各地の音声言語はバラバラだがそれをラテン語・漢文がつなぐ

  →文通は可能、会っても話せない

 ・人の移動は原則としてあまりない(土地売買(「私有」の観念)がないため)

  例)最終手段としての一揆、兆散:土地を捨てて逃げていく→行く当てがない

    農民にとっても領主にとってもマズイ

 ・旅の商人は移動が可能だった

  通行手形:様々なレベルのものが存在、後のIDに(→「市民権」につながっていく)

  (IDは移動する人間にだけ必要、今は誰もが移動するので皆IDが必要に)

2.近代国民国家化にともなう言語の変化

 ・書記言語(聖、身分高い男)と音声言語(俗、身分が低いもの)の一致

 ・漢字は読み方が一定していないからこそ世界共通言語になりうる(お経の日本語読み)

  ラテン語はさっぱり分からない(分かる人は司祭など少数)

  →そのため司祭が地方の裁判官等を兼ねることが多い

 ・国境線が引かれる

 ・統一の過程

@ラテン語、漢文の放逐:王の俗語にあわせていく、書記言語と音声言語の一致

 →俗語を書き始める(ダンテのトスカーナ語による小説など)

 →聖書の俗語化(マルティン・ルターのドイツ語の聖書、アルビ派のオクシタン語聖書など)

 力のなくなった教皇はこうした動きを止められなくなる

1539       フランク王国のフランソワ王がオイル語をフランス語に

(「ラテン語は使わない」宣言)

   →「神の言葉」を使わない、王の言葉を使う→バチカンの教皇が読めない

  A国家語への翻訳作業

   ラテン、ヘブライ、アラビア語などを俗語化していく作業

   アカデミーフランセ−ズ:国家による言語機関

   俗語で概念を構築していくのは非常に困難(cf.井上ひさし『吉里吉里人』)

  B地方の俗語の放逐

   少数言語集団の弾圧

 ・分裂した言語の統一

@書記言語と音声言語の一致(日本:言文一致運動)

A聖なる言語と俗なる言語の一致(政教分離が大前提)

 宗教言語で俗なるものを書いてはいけない、俗語は金、セックス、喧嘩のやり方ばかり発達している→抽象概念の欠如

 →俗語を国家の言語にしていく(法律用語等をつくっていく、完全翻訳は難)

B身分の高低の統一(身分制の破壊へ)

U.言語の政治的機能

 1.「上から」と「下から」の言語政策

 ・方言の圧迫は事実の反面、国語の発生によって身分の統一が達成される面も

  国の民主化の問題に関わる(下層民と政府の言葉が同じになる)

  →政府が下層民のいう事を聞かざるを得なくなる

  →政府と下層民が「同じこと」をいうようになる

 ・「国家語」と「国民語」の違い

  政府主導で「同じ言葉を話せ」という場合と、都市部のインテリが下層民のために「統一語をつくってあげよう」とやる場合の両側面がある

  ナショナリズム(国民的一体性)と不可分

  上層に下層を合わせるのか、その逆かも問題に(文化でも同じ問題が発生)

  基本的には「上」にあわせることが多い(上層の文化が国民の文化に)

 ・後進国ナショナリズムの問題

  上層が他の文化に「汚染」されている場合、「下」が主導的になりうる(ドイツなど)

・言語の統一には上からと下からがある

 例)ドイツの言語運動:田舎の農民の言葉が「ドイツの言葉」であると都市部のインテリが言う構造

  「女の言葉」:前近代、男は学んでいる=汚染されている

   →「民族性をもっているのは女」と都市部のインテリが言う(本当に下から?)

  「下から」だからといって必ずしもよいとはいえない

・母語の登場:1213Cのドイツで出てくる(民族のほうが国家より上)

 母語はフランスではポピュラーではない(National Languageのほうがポピュラー)

 その後「母語」はナチス期に台頭

 果たして「下から」がよいのか?(ナショナリズムにしても同じ)

・外国人労働者問題にも絡む(フランス:教育する、ドイツ:あまりしない)

2.第三世界の国語

・言語統一が出来ていない

・米・英語が高等教育の大変を占める

@共通言語が少ない(インド:公用語が18もある)

 全体を結ぶのは英語しかない

A近代国家を運用していけない

 抽象概念、テクニカルタームの不足、整備しても使われない

 例外は日本、韓国、中国(漢字文化の存在、明治期に日本から漢字を媒介に概念輸

入)ドイツはナチス期に無理やりやった

 ヨーロッパはラテン語(元素記号など)を多用(古代文明があると強い)

・中等、高等教育になると母語と公用語が分かれる→ドロップアウトの多さに繋がる

 英語をそうとう教えなくてはならないので相当のハンディキャップ

  →これをクリアーできるのは金持ち連中だけ

・識字率の低さの問題:俗語以外で読み書きするため

 →上層・下層がはっきり分かれていく

 政府の公式言語は英語、あとはバラバラ(読めるのは一部のアッパークラスのみ)

 →上層・下層で情報量が全然違う(上層:儲かる、下層:儲からない、教養なし)

・現地の俗語出版物もあるが、公用語の出版物とでは中身が全然違う

 公用語出版物:クオリティペーパー→知識人、官僚など

 俗語出版物:ゴシップ→一般下層民など

3.地方語の復権運動

80年代の先進国において主にアイデンティティの確認作業の一面として、ある程度認められる(芸術面側面、非政治的)

・地方の少数言語は復権しても国家を運営できないが、アルザス、沖縄、在日のように「本国」からの影響をうけてしまうことも

V.日本の場合:国語形成過程に沿おうとした部分と沿わなかった部分がある

 <沿った部分>:国語(話し言葉)の完成(皆同じ言葉を話す)

  (←テレビの普及、明治政府の強権など)

 ・国語が完成した要因

@     政府の統一

A     植民地されなかった

B     地方ごとに分割統治されなかった

C     中央集権の結果、文化の中央が東京一つにまとまった

→標準語で書かれたものが全国に流れ出す

D     地方語に力がなかった

・地方言語の復権はそれを話す人口数によって決まる

   政府、大学、技術、印刷等をもっているかどうか、人口が多いと放送局・出版社が成り立つ(インドの少数言語:人口4、5千万人)

  <沿わなかった部分>:漢字の放逐が完全に出来なかった

  ・漢字廃止論の登場

@     反中国意識(日清戦争後)

A     下層民に分からない(全て読み下し文、漢字四万字→読めるのはインテリだけ)

   →富国強兵の一環としての下層民教育(→下層民にも教育を→民権→自由民権が「中国叩き出せ」に)

   近代概念の整備が漢字中心に行われる→漢字の縮減

   古典学者がこれに反対、「古典が読めなくなる」「天皇の名前が書けなくなる」

  ・民衆に分かる言語を官僚、知識人が求めたのと、軍からの圧力(兵器の取扱書(全て漢文)が読めないなどの理由)で1800字まで削減

   「言語の易化=ナショナライズ」

   難読文字は不可に→在日の民族名が窓口指導で消えていくことに

  ・日本はある意味奇跡の国(「こんなにみんな漢字が読める」)