2001年度春学期小熊研究会T

 

第8回(6/11)「国民国家」まとめ

 

総合政策学部二年 小山田守忠

学籍番号:7002308

ログイン名:s00230mo

 

T.主権国家の成立

・主権国家とは:国家が主権をもっている状態

 主権:最高、至高の権利、人を殺してもいい権利(国家は人を死刑にできる)

 ある国境内における権利をもつ=国家ごとに主権をもつ状態

・ヨーロッパでの成立は17世紀

 教皇:世界の究極的正義(宗教的権威)をもっている(might is right)

    =普遍的価値の体現である聖書の解釈権をもっている

    =正義:聖俗の権利を支える→裁判(宗教と政治が一体)

・16、17世紀に入ると教皇の権威が低下

異端、教皇と違う聖書の解釈をするやつらが現れる

 →「正義」が違う、政治が違う

プロテスタントの存在が既成事実化していく 

領主と結びついて教皇と戦う(ルター:ドイツ語(地方語)で聖書を書く=領主に分かってもらえばいい)

「違う正義」の宣言→大戦争に(お互いに読めない、正義・神が違う)

 ・近代国家の原則の成立

  @国境線の確定、A内政不干渉:国境を越えたらお互いにかまわない

   =国の数だけ「正義」が存在してもいい(そうしないと殺しあうしかない)

   →少数者に対する圧迫が生まれてくる

 ・主権の登場:領域内では絶対的権力として存在

 ・政教分離原則の登場(それまでは一致)

  これ以前は互いの「正義」を掲げたため戦いが起きた

  →「正義(宗教)と権力(政治)をきりはなそう」

  思想、信条の自由:王様は政治権力のみをもつ、個人の中で何を信じていようがかまわないが、外に出すと罰される

 ・現実にはこうはいかない、揺り動かす要因が出てくるため政教分離が徹底しない

  →絶対王政が出てくる(「王権神授説」は原則違反)

  その他の原則もあまり貫徹されず、国民国家へ

 

U.国民国家の成立

 ・国民国家とは:国民がいること、また国民と国家が一致していること=国民主権

 ・国民とは何か:身分制の崩壊と地方制度の破壊が前提

 cf.日本 主権と国民国家が一気に入ってくる

    欧米 ワンクッションもっていた(領主の力は絶対王政期に振興していた)

       身分制は残存(仏革後まで)

       「王の首を切った」=国民国家の誕生、国民ができる→国民主権へ

 ・仏はパリで革命、地方は王党派が残存→中央集権化、領主の首を切って任命制に

  領主の地域圏(レジオナール)をなくして県をつくる(地方自治の徹底的な破壊)

  →少数言語集団の圧迫(共通言語・文化が降りてくる)

 ・国民はいろんな意味で均質でないとダメ

  少数派の弾圧、身分制度の破壊→国民主権へ

(「地方からでてくるものは国民の代表として・・・」)

平等化と少数派(貴族も)の圧迫が共に進む

 

V.国民国家の政治的効果

 ・軍事力の強化:国民は強い(兵力資源として多い、やる気がある)

  王朝は貴族中心で下はやる気がない

 ・近代化に有利:中央集権、身分の撤廃、均質化(貴族は農村社会向き)

  都合のいいところだけ取り入れる(王様は残る、など)

 ・国家に国民を一致させるか、国民に国家を一致させるか、という問題

  19世紀頃は国家に国民を一致させる方が多かった

  →反動ガ起きる(自由民権運動など)中産階級が担い手

 ・民主化運動とナショナリズムはなかなかいい関係であると同時にとても複雑

  民族差別が出てくる(ユダヤ人=特権階級←「潰せ!」ナチス、労働党)

 ・racismNation Stateの関係:仲が悪い面も

  人種は国境を越えて存在する、国境で縛れない

  (白人連合としてのEU(他者としての)黄色人種、黄禍論)

  キリスト教:普遍主義だからNation Stateと仲が悪い(国境を越えてしまうため)

  Racismとも仲が悪く三者三つ巴、またキリスト教は保守と結びつくことも

   →教育の世俗化、政教分離→スカーフ論争「スカーフやめろ」

  とにかく複雑

raceNationがくっつくことも(掟破り?)

 raceはとても曖昧なもの、「日本人種」(人種=Nation)はあるか?黄色人種は?

 遺伝の概念が今と違うために一概にはいえない部分も

 「獲得形質」(1920世紀)親の形質が子にうつる(現在では否定)

(「親が勉強すると子の頭がいい」など」

親がアメリカにいると「アメリカ人種」になる

 →国民性の話になっていく(「アフリカ人だから踊りがうまい」は×)

 ドイツでは結びつきやすい(民族→国家)

 フランスは領域的、その中の少数者を同化してフランスNationをつくる

 論理的には二者は仲が悪いはずなのだが、実際にはかなりくっついている

 ・Nation Stateをどう考えるか?

  現在の潮流としてはNationalismracismの位置付けで

@     べったり(社会学、文化研究系)

A     まったく別(政治思想系)

  に分かれる

  本来考え方としては両者を別とする(ハンナ・アーレントなど)

  国民国家と帝国主義は仲が悪い:帝国主義は国境を越えて侵略する、侵略すると国民の均質性が脅かされるというジレンマに陥るはず

・日本の例:あれはNation stateだったのか?天皇は何だ?(丸山真男「あれは違う」)

 国民の均質化はしたが、民主化はしなかった

 

W.現代社会と国民国家

 ・Nation Stateの危機

  見果てぬ夢としてのNation State、原理原則としてはまだ完成していない

→「民主化していない」、「永田町は国民の意思に反している」

 ・多民族国家:Nation Stateの限界を超えたものではなく、バージョンアップ

  均質性を失ってもやっていくために多民族共存していく

(例:アメリカ、文化的多元主義はアメリカのNationalism

どこまで均質化するかが問題に、言語まで?文化も?

 ・法律制度の適応を民族集団によって変える?

  →「民族」がどこまでか、わからない

  →平等性をどこで確保するか(アファーマティブアクションによる逆差別など)

  →どこまで異文化尊重をするのか(割礼をイスラム教徒なら許すのかなど)

・国籍の違うものをどうするか、どこまで平等にするか、権利をあたえるか

 (「住民」だから地方参政権を与える、など)

・「国民の権利」と「市民権」をわけるべき

 日本は比較的問題なくできるのでは?(数がすくない、均質化が進んでいる)

・域外外国人に対する問題(国境を越えると問題にならない・できない)

・内政不干渉というが、自由経済原則はのさばっているという矛盾

 ではどうやってNation Stateを抑制するのか→難

 コミュニケーション技術、交通が発達してくるとNation Stateを転がすのが難しい