2001年度春学期小熊研究会T
第二回「アメリカ」(4/16)講義まとめ
総合政策学部二年 小山田守忠
学籍番号:70002308
ログイン名:s00230mo
1.アメリカにおけるナショナリズムとは?
「個々の民族集団を超えた多民族全てをくるみこむ国全体のまとまり」=国是
2.アメリカの国是
@個人の重視(≠エゴイズム)
A歴史は「可変的なもの」であり「創り出していくもの」
→多民族統合に有利
→アメリカのエスニックスタディーズに影響
「民族集団=歴史の中で作られてくる個人の選択的アイデンティティ」と認識
(cf.日本−多民族統合を国家の目標としていない(民族主義≒国家主義))
→未来志向が非常に強い
Bフロンティア・自由の拡大
「永遠に青年期の国」という常に前向きな姿勢が個人、国家形成に決定的
「フロンティアが広がる」=「アメリカの国が創られていく過程」=「歴史」
=「自由の拡大」という基本的発想形態
アメリカはもともと「欧州から迫害をうけて自由をもとめてやってきた人々」が作った国なので広大なフロンティアを「しがらみのない自由の天地」ととらえる
「領土拡張→しがらみのない土地の獲得→自由が広がる」
「Manifest
Destiny」:白人による世界支配という「明白な使命」(≠侵略?)
C協力関係(コラボレーション)の重視
「自由な個人」が勝手に動くと社会が混乱する、それを回避するために
・規制緩和・情報公開の元での完全自由競争
・協力関係に立って事業を起こす
建国史(開拓村、独立戦争)にもみられるコラボレーション
「個人+個人+・・・=村、村+村+・・・=州、州+州+・・・=国家」
→あくまでも末端の「自由な個人」が共通のプロジェクトの為に「下から」まとまる
→多民族統合のためにも共通の目的・共通の敵が必要
3.新移民流入に伴う新旧移民の対立
・移民国家アメリカ:ヨーロッパの古い「しがらみ」から逃れてきた移民の国
→プロテスタントの倫理的基盤(勤勉、貯蓄、投資、質素)に基づく均質的な社会
例)「勤勉な農民魂」:よく働く→農産物がたくさん出来る→市場で金になって評価される(マーケットの判定「神の見えざる手」)
自分の「よき働き」によって評価が変化
→「市場」はものすごく公平なものとして想定(ある意味社会主義的?)
・新移民の流入:ライフスタイルの違いが問題化、コラボレーションが崩れる
カトリック系の移民が都市部で賃労働を行う
→アメリカの国是(自由の精神)が内面化できていない、新旧移民の対立
3.移民排斥の背景
@二つの生活様式の対立
「田舎で自立する農民(旧)⇔大都市の工場で賃労働(新)」
農村の没落(農業人口3%)、地方自治の崩壊→アメリカの国是の大変動
→農民に恨まれる資本家、財閥と移民(大資本の手先、スト破りをする連中)
A環境保護運動との結びつき
「アメリカの大自然をぶち壊す大資本、移民」:従来の安定した均質な社会を壊す連中として従来のコミュニティ(及びその出身者)から叩かれる
B消費物資とのからみ
禁酒法と移民排斥の結びつき(マフィア=イタリア人というステレオタイプ形成)
移民排斥は宗派、民族対立よりもある社会構造の反映として火がつく
今その社会の中でどのように構造が変動しているかをみることが必要
Cグローバリゼーションの影響(19世紀後半)
太平洋横断航路、欧米の鉄道等交通手段の発達→移民の大量流入
Dメディア(郵便)の発達:伝手をたどって海外から移民が流入
E資本主義の発達:現金収入の必要増大→都会に出て賃労働
4.移民排斥から同化主義、文化多元主義へ
・移民コミュニティ内での再生産(教育等)が始まり、移民排斥だけでは現実に対応できなくなったため同化主義へ(英語教育、生活様式の教育等、アメリカの国是を教育)
・メルティングポット(人種の坩堝):移民もとけあって一つの「新しいアメリカ人」に
→それでも限界、文化多元主義へのアナログ的な移行
5.多民族国家アメリカ
・多民族を包み込む「統合の絆」としてのナショナリズム
第一次大戦が契機に(多民族が共存し協力して敵と戦う、民族自決・国際連盟)
従来の国是の変形としての「移民の国=多民族共存する国」
・統合の絆としてある程度続くAmerican way of life(thinking)を求める
(皆と協力して敵と(共産主義、原理主義、規制)と戦う「アメリカ人」、英語の重視等)
・ヒスパニックの特殊な位置
移民は本来、「海を渡って、一人一人やってくるもの」→受け入れ側が取捨選択可能
ヒスパニック系:陸路でぞろぞろやってきて都市部にたまる
・「多民族社会アメリカ」は都市部だけの現象
移民は土地がないため都市部に出て賃労働、多くの農村部では昔のままの生活様式