小熊研究会1(〇二年度春学期)課題

 小熊研究会1(〇二年度春学期)課題

 次回の研究会は、課題図書を学生に報告してもらうことを考えている。参加する者は、下記の本をできるだけ読んでおくこと。そうでないと、参加しても身につかない。

 なお本については、@慶應の図書館で探す、A早稲田の図書館で探す(慶應と相互貸借協定がある)、B公立図書館で探す(カウンターで申し出て県内で取り寄せてもらえば、大部分の本は集まる)、などの方法をとれば集められる。買うときには、神保町の三省堂書店か、東京大学の駒場か本郷の書籍部に行くのがよい。半端な本屋に行っても、無駄足になることが多い。

 本を読むときは、線をひきまくったほうがよい。線を引いておけば、内容を忘れても、あとで思い出せる。本を借りた場合も、必要な部分はできるだけコピーした上で線を引いたほうがよい。

 読みなれない難しい本は、あまり時間をかけずに、まずは全体をざっと読む。どうしても分らない部分は、どのみち知識がつくまで分らないので、時間をかけても無駄になることが多い。「とりあえずどういう本か」を把握することが大切。あとは、実際に研究会で解説を聞いてから、もう一度読んでみればよい。

 以下は、課題である。

1、これまで小熊研究会1を履修したことのない者は、

 ベネディクト・アンダーソン「想像の共同体」(NTT出版)
 田中克彦「ことばと国家」(岩波新書)
 ホブズボーム、レインジャー編「創られた伝統」(紀伊国屋書店)

 のうちから二冊以上を読み、まとめを作成してくること。それぞれA4一枚程度でよい。長く書きたい者は書いてもよい。また、2で挙げてある本を、五冊以上は手にとっておくこと。

2、これまで履修した経験のある者は、以下の本から二冊以上を読み、まとめを作成してくること。おなじく、それぞれA4一枚程度でよい(長く書きたい者は書いてもよい)。また他の本についても、少なくとも五冊以上は手にとっておくこと。なお、1で挙げた本を読んだことのない者は読んでおくこと。

@イ・ヨンスク「『国語』という思想」(岩波書店)
 「国語」という概念が日本に定着した過程、およびそれが植民地支配でどのように働いたかを検証したもの。田中克彦の弟子。「ことばと国家」と併読するとよい。

A吉見俊哉「<声>の資本主義」(講談社学術選書メチエ)
 社会学者による、日本における音声メディア史。ラジオ・レコード・電話・大道芸などをとりあげる。マーシャル・マクルーハンの「メディア史」などと併読するとよい。

Bタカシ・フジタニ「天皇のページェント」(NHKブックス)
 人類学やメディア・イベント研究を応用した近代天皇制の分析。天皇家のメディア戦略を考察した多木浩二「天皇の肖像」(岩波書店)および若桑みどり「皇后の肖像」(筑摩書房)と併読を勧める。

C橋本毅彦・栗山茂久編「遅刻の誕生」(三元社)
 近代日本における時間意識の変化を、学校・鉄道・時計といった制度や技術の変化から追跡した本。見田宗介「時間の比較社会学」(岩波書店)との併読を勧める。

D黒川みどり「異化と同化のあいだ」(吉川弘文館)
 エスニック社会学の知識を応用した最新の被差別部落研究。梶田孝道編「国際社会学」(名古屋大学出版会)の第2章を併読するとよい。

E牟田和恵「戦略としての家族」(新曜社)
 いわゆる「近代家族」論の日本近代史への応用。落合恵美子「二〇世紀家族へ」(NHKブックス)と併読すること。

F佐伯順子「色と愛の比較文化史」(岩波書店)
 近代日本における「恋愛」という意識の成立を、明治期の文学の分析から追跡したもの。上野千鶴子「近代家族の成立と終焉」(岩波書店)と併読するとよい。

G今西一「近代日本の差別と性文化」(雄山閣)
 文明開化によって、性意識や裸体、漂泊民などに対する意識がどのように変化したかを論じた論文集。

H品田悦一「万葉集の発明」(新曜社)
 近代日本における「伝統の発明」のケース・スタディ。万葉集がどのように「国民的」な古典になったかを検証。木博志「近代天皇制の文化史的研究」(校倉書房)やホブズボーム編「つくられた伝統」などと併読すること。

I木村直恵「<青年>の誕生」(新曜社)
 明治二十年代における政治意識の変化と「青年」概念の誕生を、ブルデューの「ハビトゥス」概念も応用しつつ検証したもの。アリエス「<子供>の誕生」(みすず書房)、ロジェ・シャルチエ「書物の秩序」(ちくま学芸文庫)を併読するとよい。

J牧原憲夫「客分と国民のあいだ」(吉川弘文館)
 自由民権運動期における「国民」概念の成立を、天皇の巡幸や儀式などの分析を交えて論じる。丸山真男「現代政治の思想と行動」(未来社)の「日本のナショナリズム」と併読するとよい。

K小熊英二「<日本人>の境界」(新曜社)
 沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮といったマイノリティを、「日本」という近代国家の境界領域として分析したもの。

研究会履修についてのお問い合わせは以下のアドレスへお願いします。
s00230mo@sfc.keio.ac.jp
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