小熊研1 レジュメ

「図解『<日本人>の境界』」

総合政策学部3年 松井洋治

学籍番号: 70008493

テーマ

近代日本の沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮をめぐる政策論の言説を検討し、「日本人」の境界がどのように設定されてきたか、すなわち、それら一群の人々はいかなる要因と形態によって、『日本人』に包摂され、あるいは『日本人』から排除されたのかを探求する。

問題意識

→「支配者」以上の「支配者」が存在する両義的事例の分析 ←最上位の支配者を対象に据えたサイードのオリエンタリズム論への批判

対象

「日本」の領域変動−侵略や「復帰」など−における「日本人」の境界設定をめぐる政策論の言説。とくに教育と法制を重視。

方法論

知識人の言論だけでなく、政治家の発言、官庁の内部文書、現場教官の意見、議会の審議録などに対する言説分析(「言説が『現実』に影響をあたえる接点」の重要視)

※ その地域を「日本人」の境界の内側と位置付けることを「包摂」、外側と位置付けることを「排除」と名づける。

※ 「包摂」と「排除」という二者択一の政治のことばによって表現されえなかったものに留意 →「政治の言葉」が使用者の立場や使用される文脈によってどのような意味や解釈を与えられるかを重視

全体の構成

序論

第T部 「政治の言葉」の枠組が完成していく経緯

第U部 枠組の危機に対する批判と、改革の試みと、挫折の経過

第V部 枠組にとりこまれた被支配者側の動向を中心に、支配側との抗争

第W部 戦後の沖縄復帰運動における政策論

結論 (1)脱亜−興亜、統治―批判の四象限図式

   (2)支配側のアンビヴァレンス(「日本人」であり「日本人」でない曖昧な位置付け)

     (2−1)「日本」国家総体の立場のアンビヴァレンス

(2−2)勢力、立場それぞれの利害からのアンビヴァレンス

(2−3)論壇上の知識人のアンビヴァレンス

   (3)被支配側の対応

(3−1)「日本人」への完全な分類を希望

(3−2)「日本人」からの分離(マイノリティ・ナショナリズムの形成)

(3−3)支配側から与えられた、「日本人」であり、「日本人」でない位置の積極的読み替え

→「日本人」ということばの定義の解釈争いの発生

   (4)「有色の帝国」概念の提示 ――その特徴と対処法――

「日本人」であり「日本人」でない存在という位置 →国民国家の論理を相対化する可能性の場

本発表の重心

・本発表は、「政治の言葉」の枠組の形成、再考の過程を、支配者側の立場の記述に重心を置いて発表する。

・発表する箇所→ 第T部(第1章〜第6章)、第U部(第7章〜第11章)、第16章、第17章

発表内容

 

 

 

1・2章

沖縄

 

 

 

 

3章

アイヌ

 

 

 

 

4章

台湾

(教育)

 

5章

台湾

(法制)

 

6章

朝鮮

 

 

7章

植民政策学と

人種主義

 

 

8章

朝鮮の法制改革

(植民者と通婚問題)

 

 

9章

日系移民問題と

三・一独立運動

 

 

10章

台湾の法制改革

 

 

 

11章

朝鮮参政権問題

 

 

 

16章

総力戦体制と

朝鮮・台湾・内地の

「皇民化政策」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17章

敗戦直前の

参政権付与

 

 

 

 

 

 

○ 第1・2章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1・2章:沖縄政策の特徴

日本人と「同種」とされた沖縄への同化教育政策の成功と

後回しとされた法制面での旧慣温存政策の並存

○ 第3章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3章:アイヌ政策の特徴

「日本人」とは「別種」とされたアイヌに対する「日本人」への同化、「日本人」からの排除の並立(漸化主義)

○ 4章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4章 台湾への教育政策

はじめて戦争によって獲得した領土である台湾の統治方針の決定は、アイヌと同様の漸化主義(当面は「旧慣尊重」、将来の「同化」は否定しない)のもとで先送りにされた。

○ 5


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5章: 台湾の法制の特徴

「自治王国構想」、「『日本』編入構想」のいずれの方針を貫徹しえなかっため、台湾の内側からも、外側(内閣・帝国議会)からも制御されない、総督の独裁状態が確立された。

○ 6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

韓国人の身分登録(国籍・戸籍)問題 →後に台湾にも反映

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6章: 朝鮮政策の特徴

折衷案としての台湾の総督独裁の踏襲・強化と、「日本人」であり「日本人」でない朝鮮・台湾人の位置の法的、言説的な確定

○ 7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7章: 植民政策学派による同化主義批判形成の特徴

人種主義を背景とした、間接統治・協同主義の「旧慣尊重」と、<植民者の自治>の混同により、<原住者の自治>としての「自治主義」という観念が生まれた。

○ 8

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8章: 日韓併合(1910)〜三・一独立運動までの朝鮮法制の議論

内地人朝鮮植民者「民権」と総督府特権の維持の対立から、朝鮮人・台湾人の「日本人」としての権利獲得の可能性が生じた。

○ 9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9章: 日系移民問題と三・一独立運動の二つの差別の問題に関する三つの統治批判論

多元主義・同化主義・分離主義の限界と末路

○ 10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原住者の自治も、内地参政権も与えられず →原の暗殺後、固定路線

10章 三・一独立運動をきっかけとした、朝鮮・台湾法制改革の特徴

結局、総督府の立法権は存続、改革は挫折した。

 

○ 11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11章 朝鮮総督府による法制の自己改革

内地の反対により挫折

 

 

 




○ 16

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16章: 戦争と皇民化政策の特徴

・植民政策学の同化主義批判の否定、朝鮮民族主義の否定、教育、徴兵の一視同仁と法制改革の不徹底

・非支配側による「政治のことば」の読み替え


○ 17

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17章: 朝鮮人の法制改革(台湾人も同様)

セクショナリズムによる改革の挫折