『ハマータウンの野郎ども』コメント1
〜メディア論から読み解くカルチュラル・スタディーズ〜
総合政策3年
70006572
中川 圭
■カルチュラル・スタディーズにおけるメディアの役割
多様性を含むカルチュラル・スタディーズを理解するにあたって、その議論の中心的な役割を果たすメディアの機能を解読していくことは重要である。それは、まず、第一に理論の側面から考えると、カルチュラル・スタディーズの中心人物とされる、スチュアート・ホールの議論の大部分がメディア論、または、それに近いかたちで述べられているという事実に加え、機能としてのメディア自体が実践としてのカルチュラル・スタディーズになりえるからである。
■ スチュアート・ホール
1932年ジャマイカ生まれ。裕福な家庭で育ち、英国流の教育を受ける。英文学を学びに英国オックスフォード大学に留学し、そこで移民としての生活が始まる。
バーミンガム大学現代文化研究センター(CCCS)所長。
雑誌『ニュー・レフト・レヴュー』の編集を手がける
※
『ニュー・レフト・レヴュー』:英国の左翼政治の重要な理論誌。ヨーロッパ大陸の批判的マルクス主義の動向を積極的に紹介
■ メディア論の歴史
第一局面(1920〜40年代)
大衆文化に対して否定的な影響のみを与える強力で広範囲におよぶ無媒介な力。
フランクフルト学派(構造主義/記号学)
ウォルター・ベンヤミン、ロラン・バルトなど
↓
第二局面(1960年代)
アメリカ行動科学による社会学的アプローチ「メディアは社会の反映にすぎない」
↓
「ヘゲモニー論」→「合意」、「コード化・脱コード化」、「現実効果」
↓
第三局面(1960年代〜現在)
イデオロギーがメディア研究に回帰する
■アルチュセールのイデオロギー論
アルチュセール:フランス構造主義の代表的哲学者。
国家装置:国家が具体的に権力をしばしば暴力という形で行使すること
イデオロギーの国家装置:国家から比較的独立した私的領域に属しているもの
→このイデオロギーの領域を経済的な生産関係によって決定されながらも、決定され得ない残余をはらみ、さらには逆に生産関係を決定するものとして捉えた。
■グラムシのヘゲモニー論
アントニオ・グラムシ:イタリアのマルクス主義者
「支配は、大衆の世界を操作することによって達成されるのではない。支配集団が文化的指導性を獲得するためには、抵抗する集団や階級、価値観と交渉しなければならない。ヘゲモニーは、階級構造によって自動的に決まるのではなく、複雑な交渉と利益の組み合わせの産物である。」
■ 第二局面から第三局面へのパラダイムシフト
● 「合意」
「合意」が存在し、メディアが流す → メディアが合意を生産する
「逸脱論」
● 「コード化・脱コード化」
コード化:メッセージの構成の瞬間
脱コード化:コードが読まれ理解される瞬間
● 「現実効果」
「イデオロギーによって、そのメッセージ性を目立たなくし、それによってメッセージは「現実」についての自然で自発的な提示であると思われるようになる。」
■ むすび
支配者 → 被支配者
高級文化 → 大衆文化
参考文献
・ 『カルチュラル・スタディーズ入門』上野俊哉/毛利嘉孝 ちくま新書 2000年
・ 『実践カルチュラル・スタディーズ』上野俊哉/毛利嘉孝 ちくま新書 2002年
・ 『現代思想 スチュアート・ホール特集』青土社 1998年
・ 『現代思想フォーカス88』木田元 新書館 2001年
・ 『カルチュラルスタディーズ入門』グレアム・ターナー 作品社