小熊研究会2「第12回」99・1・11 総合政策学部四年 本好宏次 「想像の共同体」 アンダーソン(Benedict Anderson、インドネシア研究者) 問題意識と執筆意図 1、序 ・社会主義世界におけるナショナリズムの勃興、国境内における「サブ」ナショ ナリズム→「ナショナリズムの終焉」? 執筆目的:マルクス主義の「変則」としてのナショナリズムの解釈 理論的出発点:ナショナリティとナショナリズムは文化的人造物 問題意識:文化的人造物が深い愛着をもつのはなぜか 「国民」概念と定義:「イメージとして心に描かれた想像の共同体」 (限定的・主権的に想像される) 2、文化的根源 ・ナショナリズム成立の歴史的背景 ・三つの相互に連結した確実性の減衰 (1)宗教共同体(聖なる言語としてのラテン語の地位没落) (2)王朝国家(中央-周辺、階級的、求心的政治システム) (3)時間の了解(メシア教時間→「均質で空虚な時間」=同時性) →出版資本主義によって促進、実現(小説と新聞) 3、国民意識の起源 ・言語的多様性の宿命性+資本主義+印刷技術→新しい形の創造の共同体の可能 性創出→近代国民登場の舞台を準備 ・資本主義の役割 (消極的意義) 1、ラテン語の秘儀化(古典文芸の復興) 2、宗教改革の衝撃(ルターの俗語聖書) 3、行政俗語の偶然的発展(絶対君主制行政中央集権下) (積極的意義) 1、生産システムと生産関係(資本主義) 2、コミュニケーション技術(印刷・出版) 3、人間の言語的多様性という宿命性 →これら三つの偶然かつ爆発的相互作用 ・出版資本主義(親縁関係俗語の「組み立て」)→機械的に複製できる「出版 語」の創造→「国民意識の基礎」 「国民意識形成」に出版語の果たした役割 1、ラテン語の下位、口語俗語の上位に「交換とコミュニケーションの統一的 な場」を創造→国民的な創造の共同体の胚を形成 2、言語に新しい固定性を付与→「古さ」のイメージ形成 3、行政語以外の権力の言語を創造→「出版語」が政治文化的名声を獲得 「出版語の固定化」と「口語間の地位分化」 本来無自覚的な過程→公式モデル化→意識的利用へ 4、クレオールの先駆者たち ・新興アメリカ諸国家のナショナリズム形成要因(ヨーロッパと相違) 本国の支配強化(商業的独占、中央集権化、大量移住)? 自由主義、啓蒙主義? →実際はクレオール役人とクレオール印刷業者が決定的役割 ・偶然的・恣意的な行政単位の形成(南アメリカ)→地理的、政治的、経済的要 因影響下でしだいに実体化(新生共和国の自足的性格) ・人々の愛着はどこから? 行政組織の意味創造→時間・身分・空間的な「旅」「巡礼」(宗教的巡礼)(ヴィ クター・ターナー) 世俗的巡礼(巡礼路変化) (1)絶対王制の台頭(大官僚制) 封建的旅→絶対主義役人の上昇らせん→同僚役人との間での相互連結の意識、 役人の人的互換性の経験→新貴族の絶対主義イデオロギー創造 (2)世界帝国の登場 クレオール役人の巡礼(縦・横方向が狭く限定) 一行政単位内の巡礼→同伴者との出会い→共同性の形成(領域的広がり、共通 の運命:本国人と同じだが隷属的地位) →「不条理」の論理(背景に生物学的、生態学的汚染の概念の拡大とマキャベリ主義) →啓蒙主義の間接的影響(ルソー、ヘルダーの広範な影響) ・出版資本主義の到来 新聞発行→出版革命、印刷業発達 →北アメリカのコミュニケーションと共同体の知的生活の要 新聞の特色 地方性と非対称性(本国人は植民地の新聞を読まず、クレオールは本国の新聞も読む) 多元性(広大な領域的広がりと地方割拠性の併存) →アメリカ人意識の醸成 →時間軸に沿った同時性観念の形成 5、古い言語、新しいモデル ヨーロッパナショナリズムの特徴 (1)出版語の中心的重要性(イデオロギー的、政治的) (2)海賊行為(モデル化→意識的に達成すべき対称としての国民) ・出版語の影響 ヨーロッパ外古代の複数化→ヨーロッパ文明の相対化 言語学の発達→古い聖なる言語と俗語の存在論的対等・平等性→ラテン語の没落を促進 辞書編纂革命、専門的知識人の精力的活動→ナショナリズム形成に中心的役割、 大学図書館、「読書階級」=中産階級の勃興 ブルジョワジー勃興以前、支配階級はその凝集性を言語外、出版語外で創出 →ブルジョワジー出版語によって、かれら自身の同類の存在が創造可能に 読書き能力、商業、産業、コミュニケーション、国家機構の成長→俗語による 言語統一を推進(俗語の絶え間ない相互浸透) 言語統一化の帰結の劇的な政治的効果 (特定俗語の国家語化→従来その俗語を使用した臣民に圧倒的優位) ・海賊行為 フランス革命の経験→出版、印刷によって「概念」化「モデル」化 南北アメリカの独立運動→「概念」「モデル」、「ブループリント」化 6、公定ナショナリズムと帝国主義 民衆の言語ナショナリズム登場→排斥・周辺化されそうになった権力集団(王 朝、貴族)による応戦として(民衆モデルを翻案した保守的政策) →19世紀中にアジア、アフリカの広大な属領においても実施 →非ヨーロッパにおいて採用・模倣(日本、シャム〔タイ〕) →世界規模での矛盾としての同化政策 ・言語学・辞書編纂革命 王朝国家君主のディレンマ(特定の出版俗語の採用)→帝国を結合する統一言 語の必要性(ハプスブルグ家のドイツ化推進)→「普遍・帝国的」地位と「特 殊・国民的」地位の二重性 国民的理念の威信の高まり、国民的帰属による王権の正当性維持 (資本主義、懐疑主義、科学時代での「神聖性」「古さ」代替、ヨーロッパ諸 君主の「帰化」)→諸刃の剣(多数のうちの一人、代表機能にすぎない) ・「ロシア化」 新旧二つの相対立する秩序(国民と王朝帝国)を暴力的かつ意識的・意図的に溶接 (広大な多言語領土における帰化と王朝権力の維持を組み合わせる方策、アメ リカとフランスのがモデル→のちにそれ自身がモジュール化) →ロンドン式公定ナショナリズム→マコーレーによる英国式教育制度(精神的雑婚) ロシア化、イギリス化における領域的影響 ロシア「地続き」→歴史、政治、宗教、経済的紐帯 イギリス「熱帯の属領の寄せ集め」→ビピン・チャンドラ・パールの例 →数千のパールを世界中で生産 (=英国の公定ナショナリズムの基本的矛盾、帝国と国民の矛盾が先鋭化) ・日本の「公定ナショナリズム」 日本の明治藩閥(プロシア・ドイツモデル) 廃藩置県、教育勅語、徴兵制、プロシア式憲法制定など 偶然的三要因によるプラス作用 (1)民族文化的同質性 (2)日本的な単一王朝(天皇家)による王位独占とその古さ →公定ナショナリズム発揚のために天皇を利用 (3)夷人襲来→国民的枠組みの国防計画に住民結集 西洋進入によるタイミング(ヨーロッパナショナリズムによる「国民共同体」 の存在、国際的規範を参考にした国防編成) 富国強兵政策の成功、日清・日露戦争、台湾・朝鮮併合→学校、出版による喧伝 →藩閥政府の正当性創出 支配サークル外においても攻撃的帝国主義的性格 要因 (1)長期にわたる孤立 (2)公定国民モデルの力 (丸山真男、北一輝『日本改造法案大綱』) 帝国膨張における日本化政策(国策)の自覚的遂行 朝鮮・台湾・満州人(戦間期)、ビルマ・インドネシア・フィリピン人(太平洋戦 争勃発後)→ヨーロッパ式モデルを実施要領とする同化政策(大英帝国と同様に 日本化した朝鮮・台湾・ビルマ人は本国への巡礼の道からシャットアウト) ・発展途上国におけるモデルの自覚的信奉(支配階級、指導的部分) タイ 政策手段発動としての公定ナショナリズム(ワチラウット) (初等義務教育、宣伝活動、国史編纂、軍国主義、王朝と国民の一体化) ハンガリー ドイツ語の国家語化に反抗したマジャール人貴族によるマジャール化推進 強制的マジャール化政策→反動と公定ナショナリズムの結合 7、最後の波 資本主義の発達→コミュニケーション手段の変化→二重言語のインテリによる ナショナリズムのモデル化(コピー、翻案、改良)→ラジオ・テレビの発達・普 及(多重言語放送→文盲・他言語話者) 第一次大戦時に王朝主義の終焉(ハプスブルク、ロマノフ、ホーエンツォレル ン、オスマン)→国民国家が正統的国際規範に 第二次大戦後の新国家 (アジア、アフリカの植民地におけるナショナリズムの「最後の波」) 「アメリカ」モデル、ヨーロッパ言語ナショナリズム(人民主義)、公定ナショ ナリズム(ロシア化の政策志向)をそれぞれ継承 →民衆ナショナリズム+公定ナショナリズム (民衆の情熱+体系的マキャベリ的国民主義イデオロギー) ・19世紀半ば以降の巡礼の旅の変化(多様な群集) (1)交通手段の発達による物理的移動の増加 (2)「ロシア化」のイデオロギー的側面 (植民地帝国の巨大化→植民地官僚需要増大→二重言語の巡礼者増加) (3)近代的教育の普及(二重言語のインテリ) →読書と出版物発行→想像の共同体の概念の流布(均質で空虚な時間を漂う) →近代西欧文化、19世紀ナショナリズム・国民・国民国家のモデル入手が可能に ・インドネシアの図解事例 地理的分散、巨大な領域、膨大な人口、宗教的多様性(ムスリム、仏教徒、カ トリック、プロテスタント、ヒンドゥ・バリ、アニミズム)、民族言語的多様性 スマトラ東海岸の民族とマレー半島西海岸の住民(物理的に近く、民族的親縁 関係があり、意志疎通可能、共通の宗教)、アンボン人(母語、民族、宗教的 に全く異なる)→「アンボン人=インドネシア人同胞」「マレー人=外国人」 ・インドネシア国民意識形成の要因 (1)合理化・中央集権化されたヒエラルキーとしての学校(国家官僚機構と構 造的に相似形)→画一化された教科書、標準化された卒業証書と教員免状、年 齢集団による学年制、学級の編成、教材→独立した整合的経験の宇宙創出 (2)ヒエラルキーの地理(小学校:植民地全域の町村に分散、中高:州都、 高等教育機関:首都バタヴィアと都市バンドゥン)→並行して官僚の巡礼→ 植民地の地図に領域的輪郭をもつ想像の現実性を付与 「劣等」「そこに属している」という意味の「インランデル」、「ネイティヴ」、 「土民」概念の形成→ことばの指示内容の明確化→「インドネシア人」形成 インドネシア語の自覚的存在化という偶然(オランダ語による原住民教育の遅れ) →官界へ普及→出版資本主義→市場とメディアへ進出→インランデル形成 ・ナショナリズムは言語共同性なしに想像されうる (コミュニケーション技術の発達、ナショナリズムのモデュール的性格) 言語的一体性なしに想像の共同体を表現した例としてのスイス・ナショナリズム (多言語国家スイス、ドイツ、フランス、イタリア語の法的対等性) スイス国家の若さ、後進性(地形、資源の欠如) 8、愛国心と人種主義 国民は(心からの自己犠牲的な)愛をよび起こす→ナショナリズムの文化的産 物(詩、小説、音楽、造形美術など)による政治的な「愛」の表現 ・言語描写→人が自然に結び付けられているものを指示 (1)親族の語彙(祖国、マザーランドなど) (2)故郷の語彙(くに、ふるさとなど) 「国民」→「自然のきずな」「ゲマインシャフトの美」→非選択性による無私 無欲的性質(人種、性、生まれ、生まれた時代などと同質) 利害をもたないということ(→犠牲を要求できる)→「究極的〔自己〕犠牲の 観念は、宿命を媒介とする純粋性の観念をともなってのみ生まれる」→道義的 崇高さ(国以外の団体には人はたやすく参加、脱退できる) ・言語 (1)言語の原初性 (2)特殊な同時存在的な共同性(とくに詩歌) (同時に知らない人々が同じメロディーに合わせて同じ歌詞を発する斉唱のイメージ) →想像の共同体を物理的共鳴のなかに体現→無私の唱和、想像の音による結びつき 言語の歴史的宿命性の逆説(言語により想像された国民は開かれかつ閉ざされたもの) ・人種主義 ナショナリズムから派生?→人種主義の起源は国民の観念にではなく、階級イ デオロギー・支配者の神聖・貴族の血と育ちにある 人種主義は国境内で現れる→外国との戦争より国内的抑圧と支配を正当化 人種主義とヨーロッパ支配の関連 (1)公定ナショナリズムの勃興と植民地のロシア化 民衆俗語ナショナリズムへの応戦→君主の国内的立場を基礎付けていた生得の 遺伝的優越性原理を広大な海外領土まで拡大一般化 (2)人種主義の貴族的、擬似貴族的由来 植民地帝国の官僚機構の拡大とロシア化推進政策→(プチ)ブルジョワジーに 内地以外で「貴族する」ことを許した→「白人の連帯」(奇妙な超国家的性格) すべての愛着の対象は「想像されたもの」→生まれてから死ぬまで、言語を通 して過去が蘇り同胞愛が想像され未来が夢みられる 9、歴史の天使 「革命」「ナショナリズム」という双子の概念(インドシナの社会主義国が体現) →資本主義・マルクス主義と同様「特許権の設定できない発明品」 「革命」 出版資本主義→フランス革命の経験(記憶/学習)→(海賊版と海賊行為)→ 「モデュール」の理論化・実験→ボルシェビキ革命計画と成功、体系的プログ ラムの実行→革命が想像できるようになる→中国、カンボジアへ 「ナショナリズム」 革命と同様に時代、政治体制、経済、社会構造に応じる調整と適応の過程を経験 ・ナショナリズムの想像力 モデュール化の極端な例 カンボジア(革命) ベトナム(ナショナリズム)→「南越」「越南」? →国民とは「多くのことをすっかり忘れている」(ルナン) 本来は両国とも発展途上国、未整備未発達な条件 ・「公定」ナショナリズム=国家から発散し国家の利益に奉仕 →革命家+国家権力→革命家が王朝国家の遺産を相続→妥当なモデル 10、人口調査、地図、博物館 問題意識:「第三世界」(=19世紀植民地国家)の政策がいかにして、無意識にナショナリズムを生み出したのか ・権力の三制度 人口調査(人々の抽象的数量化/系列化、支配下の人間の性格付け) 地図(政治的空間の最終的なロゴ化、領域の地理) 博物館(「普遍的」冒涜的系図化が連関しつつ国民主義的想像力形成、系譜の正統性) →相互に関連し支配領域(植民地国家の歴史と権力)想像の様式を形成 縦糸と横糸 縦糸:トータルに捉え分類する格子(支配物に適用) →格子によって属性の境界を区切り、限定し、数量化(下位分類としての「そ の他」→現実の不規則性を隠蔽) 横糸:シリーズ化(複製可能な複数から構成されているという世界観) 11、記憶と忘却 問題意識:新興国民がいかにして、なぜみずからをむかしからあるもの(アン ティーク)と想像するのか? ナショナリズムが新しい意識のかたちを表現→断絶の自覚と古い意識の忘却が、 それ自体の物語(ナラティヴ)を創出 ・新空間と旧空間 なぜナショナリズムが旧世界ではなく新世界にまず現れたか (1)継承、転覆、破壊ではなく並存の確保が目的(新ロンドン、旧ロンドン) (2)親族同士の革命戦争という側面(「白人」「キリスト教徒」「言語によ る意志疎通可能」)→物理的撲滅と隷属への恐怖感なし 「旧」地名の「新」版として命名する習慣(ニュー・ヨーク、ニュー・アムステルダム) 「新」と「旧」が同時代的に理解され、均質で空虚な時間のなかに共存 →相続の言語ではなく、兄弟競争の言語としての理解 南北アメリカの二重性 言語、宗教的信念、慣習、伝統を共有する共同体との併存の感覚、同時性の感覚 →大きな政治的意義(条件:大規模集団、定住、従属) ・新時代と旧時代 19世紀ヨーロッパで発展した「第二世代」国民主義運動 南北アメリカの独立国民国家を遺産相続→独自に歴史的伝統を表現する必要性 →「眠りからの目覚め」という比喩と想像(新時間から旧時間への移行) =原初的本質への回帰 (1)並存感(なぜ野蛮な新世界より遅れて旧世界で登場したか)→遅い目覚め (2)ナショナリズムと言語のつながり 多言語政体→共同体を分離する政治的機能→俗語使用に不慣れな識字者 →「眠り」の説明(言語を「再発見」)→国民性に歴史的奥行きを付与 ・兄弟殺しの安心 大規模な宗教紛争→フランス人同胞による兄弟殺し(カトリック、プロテスタ ントともに自らを「フランス人」とは考えていなかった)→歴史解釈の国家キャ ンペーン(学校制度媒介) 「家族の歴史」としての記憶、すでに忘れ去ってしまわなければならない事実 (南北戦争、イギリス建国の父ウィリアム王→不断に記憶/忘却) アメリカ人「兄弟」としての黒人と白人(ミシシッピー河を仲良く漂うジムとハック) 最初の忘れがたいイメージの創造(p.332)→記憶/忘却された南北戦争以前の アメリカ南部(黒人は依然として奴隷) 同胞愛の想像(19世紀)(暴力的な人種的、階級的、地域的対立によって分裂 した社会にごく「自然に」現れてきた新しい国民意識の表現形態) ・国民の伝記 記憶喪失をともなう意識の変化→忘却の過程で物語〔ナラティヴ〕が生まれる 複製技術時代の事実記録の近代的蓄積(写真、出生証明書、日記、成績通知書、 書簡、診療記録)→外見的連続性の記録、記憶からの喪失を強調→疎外→人物、 アイデンティティの概念生成→物語形成 近代的物語としての自伝・伝記 小説や新聞と同じ、均質で空虚な時間内に設定(歴史的枠組み、社会学的設定) 国民の伝記 模範的自殺、感動的殉国死、暗殺、処刑、戦争、ホロコーストが重要→→物語 の目的のためこれらの暴力的死が「われわれのもの」として記憶/忘却されね ばならない 12、<遠隔地ナショナリズム>の出現 メディアの発達による新しい種類のエスニシティの誕生、「想像上の故郷」な どナショナリズム論を現在の新しい状況に応じて発展 近代の想像物してのナショナリズムとその「弟分」としてのエスニシティ ・エスニシティを生み出した要因(資本主義の出現と関係) (1)マスコミニケーション (2)出版資本主義→ラジオやテレビの発達(遠方への影響、身近さ、視覚・聴 覚による即効的影響力、共通語以外の言語使用者へのメッセージ力) ・大量移民と世界市場 長距離交通手段の発達による近代初期の移住(市場の力による)→人間の身体 と商品の異質性(記憶、習慣、信念、食習慣、音楽、性欲=生まれた場所では 本来自然、無意識だが…) 軽蔑的呼称「クレオール」「植民地人」→ヨーロッパ人でないヨーロッパ人→ アイデンティティのよりどころの喪失→国民意識の発達 現代の市場指向移民の規模・移動の速さ→伝統的移民政策(ゆっくり同化させ る)が困難に→異質な環境での道徳的・経済的「救い」追求→ゲットーの形成 ・新しいアイデンティティ →資本主義は移民に対して新しいアイデンティティを想像するように働きかける ギリシアから外国人労働者の写真(ドイツ) ルフトハンザ航空のギリシア旅行の宣伝ポスター(ドイツの工業都市で惨めな 生活を送ることによるギリシア人としての「エスニシティ」維持) 移民コミュニティにおける独自のエスニシティ(現代の資本主義によって大規 模に作られた労働者の流れへの反動としての「ドイツのネオナチ」「アメリカ のホワイトパワー」) ・自国民と戦う国民軍 国民主権とナショナリズムの結びつき 国民軍の神話化(国民主権を保証するのは国民軍である) →自国内の同胞市民と戦い続ける国民軍で満ち溢れいている 言葉の上では民族平等のナショナリズム 軍隊の派遣は特定のエスニック集団に支配された権力構造の維持が目的→不満 ・反感→エスニック、擬似エスニシティ、人種に沿った集団的対立 世界の周辺部での紛争(超大国の代理戦争としての性格) →超大国の軍事支援→民族・エスニシティ・人種によって自らを規定している 武装集団に武器提供(アジア・アフリカでの例) ・遠隔地ナショナリストの出現 北アイルランド、ベルファストのIRA(米国・英国内のIRA支持者、国際軍需市 場での武器購入、リビア、中近東での軍事訓練、情報の獲得) クロアチア人指導者(世界中に分散したクロアチア人コミュニティから資源獲得) ナショナリズムは時代遅れのものか? 移民はある国に生涯居住すれば、その国を祖国あるいは母国と思い、国民感情 を抱くようになるのが当たり前という古い考え 歴史的にみてナショナリズムの次に生み出されたものがエスニシティ →ナショナリズムと結びついて複雑かつ爆発的な事件を引き起こす例 (米国でのエスニック・アイリッシュ→IRA支持者「アイルランド民族主義者」) ニューヨークのユダヤ人、ロサンゼルスのベトナム人、ベルリンのトルコ人な どの新タイプ民族主義者「遠隔地ナショナリスト」→ファクスなどの通信手段 「想像場の故郷」での戦い→アイデンティティを基にした政治活動参加への誘 惑→市民権なき参加は無責任→政治的機会主義者に利用される危険性 13、現在の状況と関心 インターネットや衛星放送などの「新しいメディア」の爆発的普及 EUのような国民国家を超えた枠組みの出現 参考文献 アンダーソン『増補 想像の共同体』(NTT出版) アンダーソン「<遠隔地ナショナリズム>の出現」『世界』(1993年9月号)179ページ -------------- 本好宏次 Koji Motoyoshi 慶應義塾大学 総合政策学部 四年生 〒251 神奈川県 藤沢市 鵠沼海岸 4-9-11 TEL & FAX:0466-33-6286 E-Mail:s95997km@sfc.keio.ac.jp URL:http://web.sfc.keio.ac.jp/~s95997km