第7章；家族、婚姻、個人生活

　　総合政策学部三年　s96892hm 宮本裕子


１．家族生活

＊定位家族(Family of Orientation)と生殖家族(Family of Procreation)
＊居住規制 ー 「父方居住性」「母方居住性」「新居制」

＊近代家族から現代家族へ
   ラングの類型                      現代家族類型
     夫婦家族(conjugal family)         単独世帯
     直系家族(stem family)        →   核家族世帯
     複合(合同)家族(joint family)      拡大家族世帯

＊家族の機能
  ー 性的、情緒的欲求の充足
  ー 子の生殖と養育
  ー 子の社会化と文化の伝承
  ー 社会的な地位を付与し、承認を得る

＊家族構成員の役割；性、世代、年齢、続柄等、個人のポジションによって他の構成員 
                      から異なる役割期待が寄せられ、各人がそれを遂行できている 
                      か否かは家族の機能に大きな影響を与える

２．婚姻

＊＊結婚；協力と同棲を伴う、社会的に容認された、永続的な性結合を中心とする
            男女関係。同棲関係を通して、性的結合と経済的、情緒的協力
            とが結び付く。
    → 社会的、制度的側面と個人的、私的側面を同時に持つ



３．家族生活の危機① 

＊＊近親姦 ― 1980年の英米調査では、女性の3分の1、男性の1割が幼少時に望まぬ性交渉を受けた経験あり。全体の6、7割が父と娘の間の性的接触。

＊近親姦を犯す父(母)の特徴

「内向型」；予見しがたい外部の攻撃にさらされている被害感
「合理型」；子への性的表出は「子の為」と合理化
「暴君型」；孤独と愛情飢餓を隠そうとし、逆に男らしさを実証しようとする
「アルコール依存型」；泥酔して現実逃避と乳児期への退行を求める

 → 一般的に強い依存心、情緒不安定、自己規制ができず、社会的に孤立といった特徴が見られる。

 → 性交渉を持つことは、力と支配のシンボルであり、同時に精神的な絆をも埋められ          るという思い込み。

＊子供への影響

 － 将来他人との性交渉に障害をもたらす可能性

 － 親としてのロールモデルを失い、自己概念や人格全体の成長と成熟の妨げになる

＊＊家庭内暴力 ― 家族の一員がその他の構成員に身体的危害を加えること。
　　　　　　   ー アメリカでは年に600万人の女性が家庭内暴力にあい、そのうち二千                         人から四千人は夫の手によって死亡している。

＊要因；

 － 家庭の持つ特有の体質である、感情的激しさと人格的親密性が普通の社会環境では         抱くことのない愛情と憎悪を生む。

 － 「適度の暴力」が時に家族生活を円滑に運営するのに必要であることが、早期発見         を困難にしている。

 － 男女間に関する伝統的な立場の差が、妻への虐待を黙認することにつながる。アメ         リカ人の四人に一人は、夫が妻を殴ることを正統と見ている。


＊＊統合の解消（アンカップリング）― ダイアン＝ウォーガンによる、長期の関係性終                                        了の過程研究。「恋に落ちる」過程の逆。

４．離婚
①
＊＊法的側面

「有責離婚主義」；「姦通」「極端な虐待」「意図的な遺棄」「扶養義務不履行」
                  「常習的な過度の飲酒」「有罪の判決」
                   →離婚六原則(「離婚やむを得ず」）
　   　　　　　　　　（後に「不治の精神病」が加えられる）

「破綻離婚主義」；ニューヨーク州とカリフォルニア州が「折り合いのつかぬ不和」に                      よる婚姻の解消を許可。

＊＊各国の現状

＊離婚率の上昇；五世帯中一世帯が一人親世帯、そのうち六割が離婚による別離をした                世帯（イギリス）。年間結婚数が29万組の時、離婚する夫婦は26万組。

 － 女性の権利と自由が次第に拡大してきたことが要因
　  →生殖を管理する自由、職業選択の自由、生き方を規定する自由等

 － アメリカ人に特徴的な意識；「うまくいかなかったらやり直せばいい」
                              「自分の人生を楽しむべきだ」
③
＊＊子供に与える影響
＊イギリスでは離婚後、通常女性側に子の保護監督権が渡る
　　→ 一人親世帯の6割が離婚による別離をした女性の世帯主によるもので、社会の最           貧困下層を形成。

＊デーヴィット＝ブラッケンホーン『父親のいないアメリカ』；
　　　　　　　　権威ある大人のロールモデルとしての父親が家庭にいないことは、子                    供の人格的な成長に支障をきたす

＊婚姻や父性という形で表出してきた、男性の性的活動力や攻撃力がはけ口を失い、社      会の犯罪や暴力を増加させている

＊＊スウェーデンでは、乳児の約半数が未婚の母から生まれているが、そのことが逆に        金銭的な社会保障と、片親家族であることも社会通念として受け入れる体制を創       出することにつながっているため、一人親世帯率の高い他の先進国に見られるよ       うな貧困家庭や社会問題の発生も非常に少ない。
           ↓
   家庭内の不和がもたらすとされる社会問題の多くは、社会の金銭的保障と意識的
      な改革がされれば解決できる

５．再婚

＊＊再婚率
[イギリス]1900年には9割が初婚、残りの大多数は死別後の再婚
　　　　　→現在は100組に28組が再婚
[アメリカ]別離後一年以内に女性の3分の1、男性の5分の2が再婚
　　　　　　　　五年以内に女性の3分の2、男性の5分の3が再婚


＊＊再婚後の家族生活

継家族；家族内の大人構成員の少なくとも一人が継親である家族。養子と違い、親権や   ↓    相続権といった法的権利義務はない
「二核の核家族」－ 離婚、再婚の回数が増えるほどきょうだい関係と親子関係は複雑化                   する

問題点；→「面会交渉権（ヴィジテーションプリヴィレッジ）」が引き起こす問題
　　　　→家族の破綻を経験することで、極度に独立心が強い子供と、新たな家族への                多大な期待を秘める継親との複雑な関係
　　　　→義理の兄弟姉妹間での諍いや性的問題の発生　

６．様々な「家族」の形

＊＊コミューン；19世紀の思想家の提言で起った、家族生活に変わるより共同的な生活                   形態
   ex)オネイダ＝コミュニティー ；19世紀アメリカニューイングランドで30年間存続し                                   た。構成員全てが婚姻関係にあり、全員が子供た                                   ちの親になった。
      キブツ；イスラエルで今日も存在する10万人規模のコミュニティ。子供は構成員                  全員の責任で「子供の家」で生活し、週末を家族と過ごす。

＊＊同性愛者の家族；社会通念の変化と人工受精技術の発展により、同性の親が家族を                        持つことが可能になりつつある

＊＊独身；晩婚化、離婚率の上昇等の必然的独身者に加え、結婚という因習に捕らわれ             ない「創造的独身者」の増加

＊＊同棲；婚外性交渉に対する意識の変化
          → スウェーデンではカップルの6割が同棲しているため、法的地位が与えら                れるようになってきている。


７．先進国家族の歴史的移行

＊＊ヨーロッパ；子孫繁栄を目的とした共同体の権威主義制度「共同体優先主義」
                      ↓
             家族生活における愛情や情緒的、性的つながりを重視「情緒的個人主義」
                 「連続的一夫一妻制」「父系相続新居制家族」

＊＊アメリカ；「アメリカンホーム」という理想像 → 伝統的核家族
               ＊キリスト教と二重標準(ダブルスタンダード）
                      ↓
               個人主義を基礎にした、成功と競争の強調
                  →高い離婚率と再婚率、晩婚化

＊＊日本；直系家族世帯(拡大家族）の「家」制度 → 「核家族」の増加

「家族の戦後体制」
  ＊女性の主婦化；「農家の嫁」から「サラリーマンの妻」へ
  ＊こどもの価値の変化；「生産財」から「消費財」へ
    フィリップ＝アリエス「可愛がって教育する存在としての＜こども＞の誕生」で
             コストが増大→出生率の低下
  ＊「再生産平等主義」；2、3人のこどもがいてこそ家族という規範力の強さ    
  ＊「母原病」；「親の生きがいになるような子」コンプレックス


８.家族のこれから

＊＊日本家族は西洋化するのか

＊ハバード＝スペンサー「社会進化論」；後進社会(非西洋諸国）は先進社会
                                      （西洋諸国）の後を追って進化する 
                                           ＝ 「近代化」
 
  → 文化や生活様式は甲乙つけるべきものではなく、日本家族は日本流に変化

＊＊家族の崩壊
   
ー 「家」から核家族へ
    → 家族の義務という旧来の観念を軽視しての個人的幸福の追求

ー 離婚率の上昇と晩婚化

  → 家族は近代型から現代型、現代型から未来型へと移行しているに過ぎない


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                   -------- 参考文献 ----------

「家族」   T.パーソンズ／R.F.ベールズ著

「新しい家族学」  湯沢  彦著

「家族の崩壊」  我妻 洋著
          ー アメリカ家族の病理的側面。離婚、児童虐待、近親姦等

「シングルペアレント ー 男の家事、オトコの変革」  重川 治樹著

「シングルカルチャー ー ポスト家族のゆくえ」   青木 やよひ著
          ー 「創造的独身者」たちの体験談集

「居場所のない子どもたち ー アダルトチルドレンの魂に触れる」 鳥山 敏子著

「母原病」   久徳 重盛著

「未婚化社会の親子関係」  有斐閣選書   宮本みち子/岩上真珠/山田昌弘著

「21世紀家族へ」   有斐閣選書   落合恵実子著




                   -------- 重要単語 ----------


家族；親族関係によって直接結び付く人々から構成される集団。大人成員は子どもを養         育する義務を負う

親族；婚姻、または血族を結び付ける出自による関係

婚姻；社会的に承諾、是認された二人の大人成員の間の性的結合

核家族；二人の大人が実子、または養子と同一世帯に暮す世帯構成

拡大家族；核家族とその他の身近な親族がどうせ対、または親密な距離で暮す世帯形態

「核家族普遍説」；核家族は全世界のあらゆる人間社会に存在し、他と組合さって様々                    な形態の家族をつくるとする、人類学者J.P.マードックの論で、T.                    パーソンズらに影響を与える。