「革命と社会運動」

0.このテーマを学習する意義
・革命や社会運動のイメージ(「異常事態」「非日常的」)
・革命や社会運動の存在しない社会は「正常」なのか?
→誰一人として反対者のいない社会は「異常」ではないのだろうか?

1.革命の定義
・大衆が参加する社会運動
・暴力や脅迫を伴う
・前任者を上回る統治能力の発揮

2.社会運動の定義
・集合的行為を通して、共通の利害関心や目標を達成しようとする試み
→「集合的行為」については(3)を参照のこと

2'社会運動のタイプ(アバール)
-----社会レベルでの変革を目指す
・転換型運動(暴力による大変革を狙う)→イスラム原理主義者による革命運動
・改革型運動(社会体制の一部の変更を狙う)→妊娠中絶反対団体
-----個人レベルでの変革を目指す
・救済型運動(人々の堕落からの救出を狙う)→宗教運動
・部分改変型運動(個人の中の部分的な変化を狙う)→アルコール依存症者更正協会

3.集合的行為の条件(ティリー)
・「組織化」「十分な資源」「参加者共通の目標」「時期」→資源動員論

4.社会の変化と社会運動
・社会科学の目標=安定的な構造の発見
・経済秩序の不安定化→階級闘争→政治、社会システムの打倒(マルクス)
・「労働者こそが未来社会を展望し、実現してゆく」
→経済的視点から階級的運動として社会運動を見た
・国家の定めた憲法によって個人と共同体を結合させる(ヘーゲル)

・構造自体が安定性を失い、変動を繰り返す現代→社会科学の前提の揺らぎ
・社会的分業が多様な部分システムを生み出す(アダム・スミス「国冨論)
→様々な変化に対する社会システム対応への疑問「いかにして社会秩序は可能か」
・全体社会には機能があり、システムの各部分はそれに貢献する(パーソンズ)
・部分システム自体に問題を解決する能力がある(ルーマン)
→複雑性を緩和する「自己言及性」と問題を解決する「偶然性克服的学習プロセス」
・現代では、既存の規則で社会の全構成員を統合することはできない(ハーバマス)
・可変的アイデンティティにより、社会システム維持が行われていると考えた,
→誰にとっても絶対的に真なるものは見つかるのか?(超現実的理念、理想)
→システムが自己維持のために外部の問題を解決する手段として社会運動を見た

・階級闘争の形態次第で、単なる社会の再生産ではなく、社会の生産が可能(トゥレーヌ)
・「支配」「防衛」ではなく「指導」「異議申し立て」
→中間階級は社会運動の中心であり、システム維持の中核でもある

・システムが内部化不可能な外部性があるのではないか(メルッチ)
・全ての価値は平等ではなく、競争を勝ち抜いた価値が匿名化し、社会を支配する
→「奴隷主・領主・資本家」と「教育・医療技術・法律・言語」
・匿名化した権力の所在を明らかにすることが新しい社会運動の目的
・新しい社会運動の役割
→制度的変動の発端となる
→運動の展開を通して新しいエリートを形成し、社会に送り込む
→社会的秩序の機能に変化を及ぼす

5.現代日本と社会運動
・総力戦時代における統合が、闘争をシステム内の機能に変質させた(大河内一男)
・紛争や排除を、国民共同体の運命的一体性の下で統合した
・非合理的で専制的なファシズム型(ドイツ、イタリア、日本)
・合理的で民主的なニューディール型(アメリカ、イギリス、フランス)
→戦争遂行の機能性の一点にしぼって社会を作った点では変わりはない
→階級社会からシステム社会への移行
→国家官僚制支配・専門家を頂点とする中央集権体制の問題

「青森県六ヶ所村の事例」
・戦後、食糧増産のために緊急開拓募集(粟、稗、馬鈴薯の生産)
・農業→養豚→酪農(54年)→ビート(62年)→水田→開発(69年)
・「むつ小川原湖・臨海コンビナート計画」(69年)
・ニクソンショック(71年)、第4次中東戦争(73年)、イラン革命(79年)で頓挫
・「石油備蓄基地」(79年)(現地雇用者50人)
・「核燃料サイクル基地」(84年)
→土地を売ってしまったら、もう何をされても仕方がないのか?
・生活水準上昇→人々の期待水準上昇→実際の生活条件の裏切り→反発(ディヴィス)
・行政府の力不足→平和的運動→当局側の武力行使→運動の暴動化(ティリー)

6.まとめ
・これまでの社会運動は、システム内での権利の獲得を目指すものだった
・しかし、システム内統合の進展が新たな問題を発生させた
→年金、医療保険、産業公害、原発、土地闘争、いじめ、登校・出社拒否等
・自分たちがこうしたジレンマに直面していることを、絶えず自覚することが大切
・システムの単なる拡大ではなく、システムを変化させることが、社会運動の役割
→「帰化」から「共生」へ
・問題意識の希薄さや無批判な人間の多さは、国家支配の浸透の高さの証拠ではないだろうか

参考図書
山之内靖「システム社会の現代的位相」(岩波書店)
鎌田慧「六ヶ所村の記録(上・下)」(岩波書店)
井上俊、上野千鶴子、大沢真幸他編「現代社会学の理論と方法」(岩波書店)
似田貝香門、梶田孝道、福岡安則編「リーディングス日本の社会学 10 社会運動」(東京大学出版会)
福岡安則「在日韓国・朝鮮人」(中公新書)