{\Large\mb ギデンズ『社会学』第21章「社会学の理論」}\\
{\large\mb 環境情報学部4年 小鳥 英之(79553608)}\\
{\large\mb 平成十年七月六日}\\ 

{\Large\mb 1.[\ 社会学における、様々な理論的相違や対立\ }
〜その必然性〜\ {\Large\mb ]}\\

{\mb ◇社会学の根本かつ基本的な主題(テーマ)}\\
\hspace*{0.7cm}‥「社会秩序は、いかにして可能か」&「人間と社会の関係を、
いかに扱うか」\\
\hspace*{2.5cm}→この問題の処理の仕方を巡って生じる、\underline{理論的対立}\\
  
※《理論的取り組み方の違い》は、どこから来るか。\\
\hspace*{0.7cm}→「社会をどう捉えるか」(〜何を中心に据え焦点を合わせ、
何に最も価値を置くか〜)の違い\\ \hspace*{2.5cm}+\ \ 
(政治的な)イデオロギーの違い\\
\hspace*{8cm}∞理論上のジレンマ∞\\
\hspace*{1cm}‐‐但し、どれが劣りどれが最も優れている、という形で
示されるものでは無い。\\
\hspace*{2.5cm}(各々に、長所・何らかの尊重されるべき点があり、
同時に、弱点・短所を抱えている)\\
 \hspace*{5.0cm}↓↓\\
\hspace*{0.7cm}☆相互補完するものとしての、様々な理論的取り組み方☆\\
  
\vspace*{0.5cm}
{\Large\mb 2.[\ 社会(及び個人)に対する、五つの主要な視座・考え方\ ]}\\
\hspace*{1cm}

i)\ {\large\mb 【機能主義】}\\
\hspace*{2.0cm}…〈マクロの理論/客観主義的/「社会秩序」へのアプローチ〉\\

*元来はデュルケムが提唱、そして第二次大戦後、パーソンズや
マートン等の理論活動によって、\\ \hspace*{0.4cm}
社会学における確固たる理論として形成・確立された。\\     
\hspace*{0.5cm}★戦後の、特に’60s〜’70sにかけては、社会学の理論の
主流として隆盛を極めた。\\

▽客観的に社会を一つの大きなまとまりのように捉え、
「一般的に説明(包括的に分析)出来る\\ \hspace*{0.7cm}枠組み」と見なす。
そして、
「社会があるから、人間がそれを認識できる」という考え方に則る。\\

◆「{\mb 構造ー機能理論(分析)}」(←’50sにパーソンズが提唱)\\

・マクロ社会学における機能主義の伝統を踏まえた上で、これを革新して
現代マクロ社会学の主流\\ 
\hspace*{0.7cm}たる位置に据えた。
(←機能主義を社会システム理論とつなぐ)\\
\hspace*{0.4cm}・人類学(マリノフスキー等)における機能主義の流れに
もヒントを得る。\\
\hspace*{0.9cm}…ある社会を、丸ごと外から眺める為の方法論\\

\vspace*{0.7cm}
(主張内容)\\
〜社会現象は、機能によって分析出来る。\\
〜機能的要件(社会の「目的」)への貢献(有用性)によって、
社会構造の形成・変動を説明する。\\
◎社会システム(個人・社会集団・組織・全体社会の各々)が、
「機能」という名の目的を持っていると
\hspace*{0.35cm}考え、それとの関係で社会現象を
説明していく。\\

※※この理論の繁栄や強力ぶりと表裏一体をなしていたもの※※\\
\hspace*{5cm}‖\\
\hspace*{0.7cm}戦後に最も安定した近代社会としてのアメリカ、という背景\\
\hspace*{0.7cm}(秩序ある繁栄の時代が続いた高度成長期\ =\ 国際的にはパックス・
アメリカーナの時代)\\
\hspace*{0.5cm}・社会認識としての「産業社会論」と蜜月関係にあった。\\
\hspace*{3.5cm}↓↓\\
\hspace*{1.5cm}〜広く受け入れられつつも、次第に非難・攻撃も
                                                 浴びるように〜\\

■欠点\\
‐社会変動が的確に説明出来ない。\\
‐この理論が描く人間は、社会の与える意味や規範をそのまま取り込む、
ロボットのような存在に近く\hspace*{0.3cm}なってしまう。\\
‐個々人は役割遂行者としてのみ社会システムに登場し関与\\
\hspace*{0.5cm}→その多様性・自由・生きる意味のようなものは、存在
出来ない事に…(個人の不在/主体性の欠如)\\

▼《衰退または指導的地位低下の(社会的)要因》\\

・産業社会に共通する一連の嵐(’60s末期〜’70s初期)と、
成長神話の崩壊('70s半ば〜)\\
\hspace*{0.7cm}→産業社会は一種の\.{閉}\.{塞}状況に…\\
\hspace*{0.7cm}→この状態が長引く事で、それ迄の社会を支えてきた理念・
発想を問い直す機運が上昇。\\

ii)\ {\large\mb 【マルクス主義】}\\

   …旧ソ連等の社会主義諸国は、これによって自分達の社会を構想した。\\
\hspace*{0.3cm}‥労働における疎外や階級闘争を主題とし、資本主義体制
を否定。\\

◇《特長的な、尊重されるべき点》\\
・社会学分析と政治改革をひとまとめにし、あらゆる社会科学が緊密一体に
結び付いているという考え\hspace*{0.25cm}方に則る。\\

▼冷戦の終焉(特に東欧での社会主義体制の崩壊)で、限界が露呈\\

\vspace*{1.1cm}
iii)\ {\large\mb 【構造主義】} \\

   …最初に言語学の記号論で提唱され、その後、人類学者のレヴィ=
ストロースが社会科学の中に取り\hspace*{0.6cm}入れていった。
(’60sに台頭)\\
・〈構造〉=\ 意識される事の無い\.{規}\.{範}\\
‐ex.)レヴィ=ストロースの親族理論\\

□《特長と弱点》\\
:-社会秩序が、自覚的な活動に先立つ規範の水準で維持され支えられている、
という新たな着眼。\\
:-コミュニケーションや文化について探求していくには、有用。\\
\hspace*{2.5cm}↓↑\\
…社会生活のもっと実践的な問題(経済や政治のような)には、あまり
応用性が無い。\\
…社会秩序の問題の解決というよりは、「単なる先送り」。\\

iv)\ {\large\mb 【「意味学派」】}\\
\hspace*{2.0cm}…〈ミクロの理論/主観主義的/「個人の主体性」への
アプローチ〉\\

‐ex.)\ (シュッツに始まる)現象学的社会学/(ガーフィンケルの)
エスノメソドロジー/ \\ 
\hspace*{1.8cm}(ミード以来の)象徴的相互作用論\\

△《出現の背景》\\
…’60s後半に、それ迄の支配的な社会学(特に、構造ー機能分析)の
弱みを補う、または、\\
\hspace*{0.7cm}それに異議を唱え対抗しよう、という動きの中
(パーソンズ批判の文脈)で登場。\\

□《共通する特徴・考え方》\\
‐‐個人の顔の見える相互行為や小集団を主要対象とし、個人の
主体性や人間性の回復を志向した理論を \hspace*{0.35cm}展開。そして、
「人間が社会的現実を構成するから、社会が存在」という考え方を採る。\\
…人間の相互作用に介在する「意味」の働きに注目
→人間が相互主観的・創造的に社会を構成していく\hspace*{0.3cm}過程・
メカニズムの解明を目指す。\\

◎《利点・意義》\\
‐機能優先の社会理論に対して、意味構成の理論を問いかけた。\\
‐「諸個人が相互作用を維持したり誘導する時の戦略を、詳細に記述する」
事には、大変成功した。\\

▽《欠点・弱み》\\
\underline{\.{一}\.{般}\.{的}\.{な}理論としては 、あまり成功せず}\\
〜社会現象の全体を分析しきるだけの、がっしりとした論理構成を欠いている。\\
\hspace*{1.5cm}(社会という大きな場面が、よく見えてこない→
制度・構造的視点の欠落)\\
〜単独で全ての社会学者を説得出来るだけの決定的な何かを持っているわけでは
無いので、やたら数が\hspace*{0.3cm}ある。\\


v)\ {\large\mb 【新たな潮流】}\\

〓’70s後半〜’80sにかけての、社会理論における「言語(意味)論的転換」
と呼ばれる大きな\hspace*{1.0cm}変化\\

※「意味学派」の問題提起を摂取しつつ、その欠点を受け限界を乗り越えるべく、
新たな社会理論づ\hspace*{0.8cm}くりを目指す試み。\\

‐ex.)・ルーマン…「意味学派」の伸張に対抗して、パーソンズのアイディアを
拡大発展させた。\\  \hspace*{11.5cm}(「社会システム論」)\\
\hspace*{1.2cm}・ハーバマス…複数の主体間での相互行為に、議論の出発点を
置いた。\\
\hspace*{1.2cm}・ギデンズ…「構造化理論」(人間は、社会によって創られ
つつ社会を創る、という視角を明確\hspace*{3.5cm}に打ち出す)\\


\vspace*{0.5cm}
{\Large\mb 3.[\ 社会学の理論の現況、そして今後\ ]}\\

◇現在の社会学の理論は、\.{群}\.{雄}\.{割}\.{拠}の様相を呈しており、
少し前の、「機能主義とその対抗理論」とい\hspace*{0.7cm}うように、
二〜三本の線に全体の流れを整理してしまう事は出来ない。\\

→ミニ・パラダイムないし特殊理論が乱立するカオス(アナーキー)的
状態\ =\ 混迷・多極化(?)\\                                     
\hspace*{0.5cm}(〜複雑な要素が絡まって出来ている社会を、
一面的な見方で捉えるのは無理であり危険〜)\\
\hspace*{5.0cm}↓↓\\   
‐同時に古典(デュルケムやウェーバー等 )も、決してその意義を失っては
いない。\\
‐色々なものが有る事が健全であり、そして、他の学問領域や
日常世界のパースぺクティヴが柔軟かつ\hspace*{0.15cm}
積極的に、取り入れられていく必要がある。\\

★社会学の存在意義 = 〈\ 日常生活に対する異化作用\ 〉\\
∴社会学は、世界を解釈する為の多様なパースぺクティヴを提示する事により、
生活世界を豊かにして\hspace*{0.3cm}いる。\\

{\large\mb 《参考文献》}\\

・今田 高俊「社会学の基礎」有斐閣(1995)\\
\hspace*{0.36cm}・厚東 洋輔「社会理論のフロンティア」東京大学出版会
(1993)\\
\hspace*{0.36cm}・石井 慎二「別冊宝島176〜社会学・入門〜」宝島社
(1993)\\
 \hspace*{0.36cm}・長田 攻一「社会学の要点整理」実務教育出版(1997)\\
\hspace*{0.36cm}・富永 健一「社会学講義」中公新書(1995)\\

\end{document}