現代社会思想を学ぶ

(Learning the Base of Modern Social Philosophy)

主題と目標

「社会思想」という言葉は、あまり耳馴染みがない。というのも、古代ギリシアいらいの伝統を持つ政治思想にくらべ、分野そのものが新しいからである。
近代以前の思想の対象は、もっぱら国家の運営たる政治であった。しかし近代社会においては、政治に参加する人間の層が下方に広がったことと、伝統的な共同体が崩壊して新しい社会秩序を探らなければならなくなったことなどにより、それまで思想の対象外だった「社会」を相手にする動きが顕著になってくる。たとえば、政治は経済によって変動するとみなした「社会主義」などは、それまでの政治思想にない発想であった。19世紀から20世紀には、こうした「社会」をあつかう思想、たとえば大衆社会論、管理社会論、産業社会論、精神分析、構造主義、ポストモダン論などが続々と現れてくるようになる。これらは、現代の社会理論一般や社会学の基礎となる思想となって、現在の思潮にも影響を及ぼしているものが少なくない。
本研究会では、おもにこうした近代以降の社会思想のうち、すでにあるていど評価の確定した名著を読み、関連して行われる講義を受けることによって、社会や人間にたいする視点を磨くことを目標とする。関連講義で文献と当該分野の解説を行うので、受講者に格段の予備知識は必ずしも要求しないが、あるていど主体的に学ぶ姿勢は期待したい。

予定

学生による報告内容を公開中

4/27 ハーバーマス『公共性の構造転換』(鈴木康則)
5/11 ハーバーマス『公共性の構造転換』(茅明子)
5/18 セネット『公共性の喪失』
5/25 アレント『人間の条件』(森薫香)
6/1 ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』(渡邉大輔)
6/8 ロールズ『正義論』(小野華子)
6/15 ルーマン『権力』(山本武秀)
6/22 アンダーソン『想像の共同体』
6/29 フーコー『狂気の歴史』(相澤 真一)