研究計画書

山越峰一郎

11.29.1999

 

1,目的

 ポジティブ・アクションという、従来の平等政策とは異なるものがこの春の改正均等法の施行により導入された。まだ、これをめぐる難しい問題は生じていない。そこで、その前段階として日本の労働法制において「女性」「平等」がどう位置づけられていたのかを跡付け、今後の女性労働者の権利・地位が確保されるのかを検討する。

 

2,主な対象法令

改正均等法、旧均等法、勤労婦人福祉法

労働基準法、育児休業法、男女共同参画社会基本法

条約、勧告

 

3,何を明らかにするのか

労働法制等において「女性」はどのようなものとして認識されているか

労働法制等において「平等」はどのようなものとして認識されているか

(・「事実上」「現実には」「実際」等の言葉にも注目)

 

5,予想される結論

政府は、できるだけ権利は与えたくはない。しかし、内圧外圧があるため、それをかわせるだけのものを少しずつ小出しにしてきた(漸進主義)。

社会全体としては、ほとんどの企業が女子大学生を採用しないということはなくなってきている。しかし(女性の)働く権利が広く認められているとまでは言えない。

 

6,課題

最近の問題のため、入手できない資料がある。

既知の情報をいかにまとめあげるのか。

揚げ足取りにしない。

 

 

 

 

 


資料

労働法制における女性観(仮)

山越峰一郎

11.29.1999

 

ポジティブ・アクション:「それだけでは過去の差別の積み重ねにより生じている結果や事実上の差別を解消していくには不十分です。(略)消極的な禁止だけでこれを放置することは許されず、場合によっては逆に女性を優遇することも視野にいれて、組織的で広範な取り組みを進めていく必要があります。」[1]「女性差別は、偶然的・個別的・超歴史的に行われているものではない。したがって、「差別をしない」ということのみでは、女性差別を解消することはできない。」[2]

 

改正均等法

第20条       国は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇が確保されることを促進するため、事業主が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的とする次に揚げる措置を講じ、または講じようとする場合には、当該事業主に対し、相談その他の援助を行うことができる。

1         その雇用する女性労働者の配置その他雇用に関する状況の分析

2         前号の分析に基づき雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善するにあたって必要となる措置に関する計画の作成

3         前号の計画で定める措置の実施

4 前3号の措置を実施するために必要な体制の整備

 

労働省による指針

「女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分における募集または採用に当たって、当該募集または採用に係る情報の提供について女性に有利な取り扱いをすることその他男性と比較して女性に有利な取り扱いをすること」は均等法第9条により違法ではない。また、自主的なものなので調停の対象には含めない。

 

世論

総理府の委託調査[3]によると、

・男性の方が優遇されている:75.6%

・男性が優遇されている原因:慣習、仕事優先の考え、環境が不十分、など

・ポジティブ・アクション賛成[4]56.3%(分からない25.6%)

  (ポジティブ・アクションに反対する理由:「男女の平等は自然に達成される」が最多)

 

統計

女性雇用者数 1976年:1203万人、1986年:1584万人、1996年:2084万人

合計特殊出生率 1947年:4.5人、1957年:2.04人、1989年:1.57人(1.57ショック)

女性の平均初婚年齢 1975年:24.7歳、1997年26.6歳

労働基準法

第3条       使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならない。

第4条       使用者は、労働者が女子であることを理由として、賃金について男子と差別的取り扱いをしてはならない。

民法

90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事柄を目的とする法律行為は無効とす

 

判例

旧均等法下においても起こされた裁判は数件である。これは、日本では裁判を行うには非常に多くのエネルギーが必要なこともあるが、募集・採用等の男女平等が努力義務規定のみであったことも大きい。

東京地裁(1986年12月4日)は「男女別コース制」に関し、「募集、採用の機会について男女を差別することが民法90条にいう公の秩序に違反するか否かについて考えると、労働者の募集採用は労基法3条に定める労働条件ではないこと、雇用機会均等法においても募集及び採用については使用者の努力義務であるとされているにとどまること、従来労働者の採用に照らし、(略)」公の秩序に違反していない、とする。

最も有名な芝信金事件では、年功的な昇格格差の差別と差額賃金の支払いを認めている(東京地裁 1996年11月27日)。しかし、就業規則を基に昇格請求権を肯定したことには疑問も出ている。

 

学説

ポジティブ・アクションに関しては、「学説上も、これについての関心はあまり強くな」[5]く、また、基本的にアメリカの判例・学説によっている。

「(性差を設ける規定は)重要な政府利益と事実上の実質的な合理的関連性を要求する中間的な審査基準を適用すべきだとの見解が有力である」[6]。また、日本において議論が出始めるのは女子差別撤廃条約の批准が問題となったことも大きい。

「わが国は適切な判例が見られないこと、学説がアメリカにおける判例・学説の同行に大きな影響を受けている」[7]。アメリカ連邦最高裁では1976年に「性差別問題には中間的審査基準、すなわち立法目的が重要であり、かつその目的と目的を達成する手段との間に実質的関連性がなければならないとする基準が適用されるという判断が確立した」[8]。82年にはミシシッピー州立女子大学看護学部への入学を女性に限る大学の方針を違憲としている。理由としては、看護の分野において女性へのアファーマティブ・アクションは必要なくむしろステレオ・タイプを永続化させること、男性の聴講も認めているので目的と手段に関連性がないことなどが挙げられている。96年には軍事学校の入学者を男子に限るというのは、目的と手段(女性を個人の相違を無視して分類・排除するという手段)に実質的関連性はなく違憲であるとしている。

 

 

3つの均等法をめぐる議論

 

勤労婦人福祉法(1972年)

第1条       この法律は、勤労婦人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、勤労婦人について、職業指導の充実、職業訓練の奨励、職業生活と育児、家事その他の家庭生活との調和促進、福祉施設の設置等の措置を推進し、もつて勤労婦人の福祉の増進と地位の向上を図る事を目的とする。

第2条       勤労婦人は、次代をになう者の生育について重大な役割を有するとともに、経済及び社会の発展に寄与する者である事にかんがみ、勤労婦人が職業生活と家庭生活との調和を図り、及び母性を尊重されつつその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができるように配慮されるものとする。

第3条       勤労婦人は、勤労に従事する者としての自覚をもち、みずからすすんで、その能力を開発し、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。

 

「近年、婦人の職場進出は著しく、雇用者総数の三分の一、約一千百万人に達し、特に、既婚婦人がその過半数を占めるに至っており、今後とも勤労婦人の経済および社会に果たす役割は大きくなるとともに、婦人の生涯における職業生活の意義もますます高まるものと思われます。/これら勤労婦人が職業生活と家庭生活との調和をはかるとともに、その能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができるようにすることは、勤労婦人自身のためばかりでなく、国家・社会にとりましても大変重要であると存じます。」(塚原俊郎労働大臣、衆院社労委)

「しかも、婦人はわれわれと違って家庭を守らなければいけない。」(塚原俊郎労働大臣、衆院社労委)

「若年労働力不足に対応するため、労働力対策として、中高年婦人の有効活用をはかる。そのため、『勤労婦人福祉法』の制定が急務である。」(自民党、勤労婦人福祉対策5か年計画)

「その反面、そうした婦人の職業進出に伴って、家庭におけるところの婦人の責任と言うといささか語弊がありますけれども、婦人の役割というものがどうもおろそかになりはしないか、そうした両面から、これを調和させる事によってさらにより良い婦人の職場を拡大」(西田八郎衆院議員、衆院社労委)

「いまから十年ほど前にアメリカで公民権法でございますか、これができまして、雇用の上で男女の差別をしてはいけないという連邦の法律ができました。それに基づきまして州法が次々と改正されていきまして、かなりの婦人の保護というものは何といいますか、撤廃と申しますか、つまり裁判で違法とされて州法が改められてくるという傾向等があったようでございます。」(高橋展子労働省婦人少年局長、参院社労委)

「今後、我が国は労働力不足の進展に伴い、単に補助労働力としてのみならず専門職としても女子労働力に対する期待が高まりつつある上に、女子の就業の機会を増大せしめる意味においても、また女子の社会的地位及び体位が向上している事に鑑みても、女子の時間外労働の制限を緩和することを検討すべきである。」(「労働基準法に関する意見」東京商工会議所、1970年)

「この育児休業が同法案の目玉である」(朝日新聞、1972年4月4日)

「二十代の若い女性が中心になっている日本のリブでは、これまで“働く”ことをどうとらえるかが欠けており、働く同性に対する批判だけがたくさんあった。」(朝日新聞、1972年5月10日)

「育児休暇が国全体として高くつくかどうか、長い目で見なくてはわからない。それもただGNPの伸びだけでなく、次の世代にどんな子供が育つか、国民の数が減るかどうかというマクロの問題から、家庭での個人の幸せ感まで含めたバランスシートが必要だ。この制度を認めている国では、少なくとも女性の働き方の多様性には役立っている。」(日本経済新聞、1972年4月7日)

「一言で言えば、婦人の地位は今日なお社会の各面で相対的に低い。(略)ただ、働く婦人の立場を楽にする客観的条件は確かに開けつつある。」(日本経済新聞、1972年4月10日)

「何しろ正社員という身分は、近ごろ女性にはさっぱり人気がない。」(日本経済新聞、1972年5月12日)

 

(旧)雇用機会均等法(1985年)

第1条       この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会および待遇が確保されることを促進するとともに、女子労働者について、職業能力の開発および向上、再就職の援助ならびに職業生活と家庭生活との調和を図る等の措置を推進し、もつて女子労働者の福祉の増進と地位の向上を図ることを目的とする。

第2条       女子労働者は経済および社会の発展に寄与するものであり、かつ、家庭の一員として次代を担うものの生育について重要な役割を有するものであることにかんがみ、この法律の規定による女子労働者の福祉の増進は、女子労働者が母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営み、および職業生活と家庭生活との調和を図ることができるようにすることをその本旨とする。

第3条       女子労働者は、労働に従事する者としての自覚の下に、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、これを職業生活において発揮するように努めなければならない。

第7条 事業主は、労働者の募集および採用について、女子に対して男子と均等な機会を与えるように努めなければならない。

 

「近年、我が国における女子労働社は着実に増加し、約千五百万人と全労働者の三分の一を超え、また、あらゆる産業、職場に進出し、我が国の経済、社会の発展は今や女子労働者を抜きにしては考えられなくなってきております。(略)先進国の一員として、早期に関係国内法を整備し、条約の批准に備えることが要請されております。」(坂本三十次労働大臣、衆院本会議)

「均等な機会及び待遇の確保を図ることは、やはり女子労働者の福祉であるとも理解しております。(略)私は、天の半分は婦人が支えている、また、よき妻であると同時によき母親であってくれというのが私の念願であります。」(中曽根康弘首相、衆院本会議)

「まあ総じて申し上げれば、そこに山があるから一緒に登ろうではありませんか。まず、歴史的な一歩をスタートしましょう。そして、スローバットステディーでやっていきましょう。」(坂本三十次労働大臣、衆院本会議)

「民主党においても共和党においても家庭の回復が選挙スローガンとして掲げられていることも注目すべきであります。アメリカでは、平等の推進を男性に敵対した女性運動という形をとって進める時代は終わり、男女ともそれぞれのよさを再認識して新しい家庭を創造することとあわせて行うという第二期に突入していると言われております。」(愛知和男衆院議員、衆院本会議)

「私は個人的には女性を尊敬する一人でありまして、特に私ども、ここにいらっしゃる議員の先生方は大体ほとんど同じような経験を持っていらっしゃると思いますが、例えば選挙に当選をするとなりますと、奥さんの力はまことに大きいわけですし、また女性票も大事でございます。そういう点で、私も選挙をやるようになりましてから女性に対する尊敬の念を殊さら深めたわけでございます。しかし、それだけではなくて、家庭における女性の役割、これも極めて大きなものがあります。」(愛知和男衆院議員、衆院社労委)

「無視するというよりもこれを活用いたしまして、そして家庭を守りながらあるいは子供の教育もよく考えながら、女性の自覚と決断によって社会的な分野でも働くということは私は結構なことではなかろうか(略)人的資源でありますから、女性の能力を正しく活用するということはお国のためにとっても大切なことである」(坂本三十次労働大臣、衆院社労委)

「婦人差別撤廃条約の趣旨に照らせば、女子に対する特別の保護規定は、妊娠、出産に直接関わる保護規定を除き、究極的には廃止すべきであると考えられております。」(中曽根康弘首相、参院本会議)

「雇用における男女平等を実現するためには、当然母性保護規定を除いて女子保護規定は撤廃すべきである。保護規定を残すことは逆差別ではないか。」(「婦人少年問題審議会の建議に対する所感」日本経営者団体連盟、1984年)

「男女の別は本来的なもので、それに応じて一般的には多くの点で違いがある。この点に沿った役割、就業形態を直ちに“男女差別”というのは間違いである。いわゆる男女差別問題は、歴史の流れの中で社会的習慣的につくり出されてきた面が多く、(略)早急な法律の規定によって解決できる性格のものではない。(略)それを法律によって規定するのは、企業のダイナミズム、ひいては自由企業体制の根幹にもふれる重要問題である。むしろ、ここで必要なことは、女性自身が勤労意欲を高め、それによって企業が職業についての男女のセグリゲーション(分離)をなくせるような状況を自らつくってゆくことである。(略)そうした意識を高めることなく、制度のみが先行したとしても女性の地位向上は困難である。」(「『男女雇用平等法』(仮称)に対する考え方」経済同友会、1984年)

「女子労働者が男子基幹労働者と同じような長期継続雇用を望むならば、それを阻害する制度要因は徐々に減少するとみられる。ところが、ほとんどの企業では女子年齢別労働力率は今後ともM字型を描くと予測しているので、長期継続雇用型の女子労働者数はそれほど増加しないとみている。」(「10年後の雇用労働に関する経営者の予測」東京商工会議所、1982年)

「保護をともなってはじめて男女の実質的平等が実現されるという考え方が強い(略)一般的な生活水準・労働条件のちがいが重要な意味を持っている」(片岡昇『働く婦人の権利』、1976年)

「一定数ないし従業員の一定比率の婦人労働者を採用せよという方法は(略)男女平等原理に福祉視点をからめることになって、かえって平等原理への浸透を阻害する」(沼田稲次郎「婦人労働論」〜『労働法律旬報』1978年)

 

改正雇用機会均等法(1997年)

第1条       この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保を図る、女性労働者の就業に関して妊娠中および出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。

第2条       1 この法律においては、女性労働者が性別により差別されることなく、かつ、母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本理念とする。

 

「男女雇用機会均等法が施行されて十年が経過いたしました。この間、女性の雇用者数の大幅な増加、勤続年数の伸び、職域の拡大が見られ、女性の就業に関する国民一般の意識や企業の取り組みも大きく変化いたしております。(略)働く女性が性により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備するとともに、働きながら安心して子供を産む事のできる環境をつくることは、働く女性のためだけでなく、少子・高齢化の一層の進展の中で、今後、引き続き我が国経済社会の活力を維持していくためにも、極めて重要な課題であります。」(岡野裕労働大臣、衆院本会議)

「ポジティブアクションというポジティブは、義務だからしょうがない、受け身でやるというものではなくて、みずから積極的に自主的にということでポジティブアクションということに相なっておりますので、義務とするのはポジティブアクションと違うのではないかな、こう思っております。」(岡野裕労働大臣、衆院本会議)

「同時に、ポジティブアクション、これは立派なことだと表彰をするというようなことで、今度はエンヤコラということで前から引っ張るというような(略)」(岡野裕労働大臣、参院本会議)

「ポジティブアクションの定義は、ポジティブアクションは簡単に言うとポジティブアクションで(略)そういう意味合いで、ポジティブアクションはほかにも、中小企業あたりで労働者諸君をより多く採用する、そのために省力化装置を設けるというようなのも、いわば積極的に雇用者をふやそうという意味でのポジティブアクションに当たるのだ。」(岡野裕労働大臣、衆院社労委)

「このごろは、機会均等法ができたおかげかどうかわかりませんが、どうも大みそかと言われておるようでございまして、カウントダウンという形で、二十九、三十、三十一は当たり前、その後はないというふうな。やはり法律というようなものが、徐々にではありますが、この十年間で社会というものを大きく変えたという認識も私は持っております。」(吉田治衆院議員、35歳、衆院社労委)

「おばあさんは川へ洗濯にというような、物語の中でもやはり洗濯、つまり家庭におばあちゃんはとどまるのだな、(略)あるいは古事記だとか日本書紀を考えましても、(略)アマテラスオオミカミは機織りを家でやっていた(略)もう、二、三千年前の話からそういった差ができている中で我々の民族というのは今日に至ったというようなことからも、我々が男女雇用の面において均等扱いをしようというのは、私は革命的な大仕事」(岡野裕労働大臣、衆院社労委)

「私は、本当にあらゆる点において男女の差というものがなくなる世の中になればいいなと思っております。(略)ただ一点、女房が政治家になりたいと言ったら、私は反対したいなというふうにだけ思っております。」(西田猛衆院議員、衆院社労委)

「男女雇用均等法というものの精神は、女性であるがゆえの差別というものをやめようということででき上がっている案であります。したがいまして、女性であるがゆえに深夜業を今お話をしたような規定以外の理由をもって断るというわけにはまいらない、これが均等だということであると存じます。」(岡野裕労働大臣、衆院社労委)

「たとえば日経連であるとか経済同友会であるとか、あるいは日本自動車工業会であるとか、あるいは日本鉄鋼連盟であるとか、どちらかというと産業団体が中心であったと私は聞いております。」(武藤嘉文総務庁長官、衆院予算委)

「ポジティブアクションにつきましては、企業が法に基づきまして対応する以上に、女性の能力発揮を促進し、その活用を図る積極的な施策と私ども理解しているところでございますが、法を超えましてさまざまに対応することにつきましては、やはり企業各社の状況、さまざまあると思います。あくまでも自主的に取り組む性質のものであろうと思います。」(荒川春日経連労務法制部長、衆院社労委)

「私どもは、婦人少年審議会やあるいは中基審、中央労働基準審議会の議論において、ぜひとも男女共通の時間外規制というものを、空白期間の間に十分議論ができるわけでありますから」(鷲尾悦也連合事務局長、衆院社労委)

「新たな法規制ということについては、私どもは反対しているところでございます。」(荒川春日経連労務法制部長、衆院社労委)

「いつまでたっても、女性だというだけで何か安全地帯に逃げ込んでいくというふうな事柄が一部まだ日本の女性の皆さん方の中に、意識といいましょうか認識にも、率直に申し上げましてまだ色濃く残っているわけでありますので、私は、今回のこの法の改正というのは、そういう意味で女性の甘えも取り払ういいチャンスじゃないかなというふうに考えております。」(河合克行衆院議員、衆院社労委)

「能力如何によっては上級職としても女性の能力を活用すると考えている企業でも、現実にはそれほど女性を管理職に登用はしていない。」(「女性の能力活用に関する調査 結果」東京商工会議所、1989年)

「子供の人格形成期における母親の役割については論をまたないところであるが、適用範囲を父親にまで拡大することは、社会慣行など現実面に照らして慎重な検討を加える必要がある。」(「育児休業問題に関する見解」日本経営者団体連盟、1990年)

「(経営者に対して)今後、人材の確保に有効と思われる手段を選んでください。」「外国人の雇用:6%、女性の雇用:37%、高齢者の雇用:22%、中途採用の拡大:61%、社員が働きやすい環境作り:30%、賃金体系の見直し:32%」(「「女性の働き方に関するアンケート調査(経営者、人事部長、社員)」結果」経団連、1995年)

「(経営者に対して)将来の企業経営を考えて、日本の子供の数が減っていくことに危機感を感じますか。」「感じる:77%」(同上)

「(経営者に対して)採用や昇進時において、性別を問わず公正に処遇するなら、女性の比率は今より高まると思いますか。」「思う:62%」(同上)

「女性比率の向上は処遇の公平さよりも子供の減少、高齢化社会の到来により、労働人口確保のために、これから必然的に高くなるのではないか。(製造業)」(同上)

「ご令嬢が企業で、優秀な男性と同等にバリバリ働きたいと望んだら、どう思われますか。」「望ましく思う:67%」「ご令嬢が結婚・出産後もキャリアを継続したいと望んだら、どう思われますか。」「望ましく思う:43%」(同上)

「(人事部長に対して)アファーマティブ・アクション(女性を社内で一定割合優先的に処遇すること)は必要と思いますか。」「あまり思わない・思わない:69%」(同上)

「経営者のうち、男女間に仕事の内容・昇進の度合いの面で格差があることを問題視する人は40%であるのに対し、残り60%の人は特に問題意識を持ってはいない。人事部長の3/4は、「女性のプロ意識の低さ」を女性社員の一層の活用のための障害としてあげている。」(「社会が変わる、会社も変わろう、男女の働き方を変えていこう」経団連、1995年)

「新聞の夕刊に“女性の社会進出”に関連する記事が目立ちはじめたのはいつ頃からだったろうか。(ほとんどのメンバーは読み飛ばしていたようだ。)経済誌のみならず、様々なメディアに“女性の……”という話題が頻繁に載りだしている。どのメディアの論調を見ても、どうも多くの女性たちは不幸であるらしい。」(「男と女のいい関係 建前と本音の間で揺れる中堅サラリーマンからのメッセージ」経済同友会、1994年)

 

 

 

 

 

 

 

 

主要参考文献・資料

 

『官報 号外』

姫岡とし子「労働者のジェンダー化 ―日独における女性保護規定―」〜『思想』1999年4月号

石山文彦「「逆差別論争」と平等の概念」〜井上達夫ほか『人間的秩序』木鐸社 1987年

横田耕一「平等原理の現代的展開」〜現代憲法学研究会(編)『現代国家と憲法の原理』有斐閣 1983年

「「差別の論理」とその批判 ―「差異」は「差別」の根拠ではない―」〜江原由美子『女性解放という思想』勁草書房 1985年

アマルティア・セン「社会的コミットメントとしての個人の自由」〜『みすず』1991年1月号

 

 

 



[1] 秦雅子「改正男女雇用機会均等法をどう活用するか」〜『労働法律旬報』1999年4月10日号

[2] 横田耕一「ポジティブ・アクションと女性行政」〜『法学セミナー』1999年1月号

[3] 1995年、野村総研、20歳以上の男女3459人に面接調査

[4] 設問は、「歴史的に形作られてきた男女の不平等を是正するため、女性があまり進出していない分野では、一時的に女性の優先枠をもうけたり女性の進出を促す計画を策定するなど特別な措置を講じて、男女の実質的な機会の均等を確保するべきである」に対する賛否となっている。

[5] 戸松秀典「性における平等」〜『ジュリスト』1987年5月3日号

[6] 長谷部恭男『憲法』新世社 1996年

[7] 大沢秀介「性差別とアファーマティブ・アクション」〜『法学教室』1997年3月号

[8] 同論文