『客分と国民のあいだ』の中で牧原氏は、客分状態から国民がつくられていった過程について検証している。「タトヒ日本が赤髯の属国になっても、ヘイヘイハイハイと頭を下げるに相違なく、実に胸糞の悪るき卑屈野郎」である客分が、近代国民国家の一員として戦争で死ぬことも厭わないであろう国民になる「あいだ」には大きな飛躍があった。国民国家が作られるのと時を同じくして自動的に国民になるのではない。これまでも、「学校」や「日本語」「天皇制」など民衆を国民化する装置は色々研究されてきた。それらを国民化への「正規ルート」とすれば、牧原氏が著したものは「変則回路」であった。