小熊研究会有志春休み勉強会第3

総合政策学部3 石野純也

 

ピエール・ブルデュー −「構造、ハビトゥス、実践」を中心に―

 

l         ブルデューの実践の理論が対峙するもの

1.    客観主義(構造主義)を超える

構造実在論二に陥ってしまう(つまり、あらかじめ歴史を超越した構造が存在すると考えること。唯一の真理の様なものを想定してしまっている)

2.    主観主義(社会現象学)を超える

社会的世界の説明力を全く欠く(つまり、社会と言うもの如何なる物かが解明できない)

 

英語文献 107

"it hypostatizes these relations by treating them as realities already constituted outside of the history of the group - without falling back into subjectivism, which is quite incapable of giving an account of the necessity of the social world"

 

別の観点からの批判としては邦訳の『実践感覚』(みすず書房、1988)の71項「客観主義が科学の対象に対する学問関係を普遍化するのと同じく、主観主義は学問的言説の主体が自己自身を主体として構成する経験を普遍化する」が適切であろう。

 

l   ハビトゥスとは

「ハビトゥスとは、持続性をもち移調が可能な心的諸傾向のシステムであり、構造化する構造として、つまり実践と表象の産出・組織の原理として機能する素性をもった構造化された構造である。」(83項)

英語文献 108 "The conditionings associated with … function as structuring structure"

「まさしくハビトゥスとは、歴史的・社会的に状況づけられたハビトゥス生産の諸条件を限界としてもつ生産物――思考、知覚、表現、行為――を、(制御を受けながらも)全く自由に生み出す無限の能力なのだからハビトゥスが保証する自由、条件づけられ、かつ条件づきの自由は、初期条件づけの機械的な単なる再生産からも、予見できない新奇なものの想像からも、等しくかけ離れたものである。」(87項)

英語文献 110 "Because the habitus is an infinite … the original conditioning."

要約すると、、、

・諸個人に内在化されている

・実践を産み出すものである

・単なる再生産(同じ物を繰り返し生産する) 産み出された実践 全く新奇なもの

 

客観的ポテンシャリティーとの関係で定義される(84項)

1.    完全な情報(統計的確率)を知っているわけではない(ある意味主観的なものである)

2.    持続的に教化された心的傾向

                 

「一時的諸経験に法外な重みを与える」(85項)

 

l   実践感覚

「スポーツ用語で『ゲーム感覚』と呼ばれるもの」(105項)

                     

「ゲーム感覚はゲーム経験の産物であり、したがってゲーム空間の客観的諸構造の産物であって、、、、」(105106項)

 

l   構造化された構造とは?

「実践は、ハビトゥスを構成する認知・動機づけ構造が現在定義している通りの状況の中に客観的ポテンシャリティの資格で記入されている諸要請に合うように自らを調整し、その一方では、実践の産出原理が過去に生産された場である諸条件に内在する規則性を再生産する傾向を持っているため、実践はそれを惹き起こしたかのようにも見える現在の条件からも、実践生産の持続的な原理であるハビトゥスを生産した過去の条件からも演繹されることはない。」(89項)

 

図式化すると

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(注)便宜上、簡略化して表現したがこの様な図式かが必ずしも適切であるとは限らない

 

l   階級(class)− 同じようなハビトゥスを有した諸個人の集団

    ただし、その諸個人が全く同じ行動をするとは限らない

                        

               均質性の中の多様性(96項)

英語文献P114 "the singular habitus of members of the same class are united in a relationship of homology, that is of diversity within homogeneity reflecting the diversity within homogeneity characteristic of their social conditions of production."

 

l   象徴資本

「象徴資本がひとつの信用、ただし最も広い意味で、つまり一種の先行投資、手形割引、債権などとしての信用であり、それが、ただ集団の信じ込みさえあれば物的・象徴的な保証の最大限を集団に与える人たちに附与される信用だということを知っていれば、象徴資本の誇示(経済面ではこれはきわめて高くつく)が、資本が資本へと向かうように(多分、普遍的にそう)させるメカニズムのひとつだ、ということが分かる。」(198項)

・貨幣に還元されるような所謂資本とは違う

・集団が信じ込んでいることが必要である

ex. 「言語資本」(『再生産』より)

「制度の中に客観化する」→「永続性と累積性を保証する」(216項)

ex学歴などの資格

 

参考文献

ピエール・ブルデュー 今村仁司・港道隆 『実践感覚T』(みすず書房、1988

ピエール・ブルデュー&ジャン=クロード・パスロン 宮島喬 『再生産』(藤原書店、1991

ピエール・ブルデュー 『ピエール・ブルデュー』(藤原書店、1990

Pierre Bourdieu 'Structures, Habitus, Practices'  Editted by Anthony Elliott "Contemporary social theory"(Blackwell Publishers 1999)