テクニカル・ライティングのまとめ
1、 基本コンセプト
- 論文の基本
- 論文執筆という行為→問いを設定し、分析し、回答を出すこと
- 分析を科学的に→思考や主張を誰にでも共有できるかたちで出すこと
- オリジナリティのあるのが論文、調査報告(レポート)は別
- やってはいけないこと
- 問いがない→対象設定が不明確(「環境問題について」など)
- 分析がない、答えがない→調べたことをただ書いている、請け売りで自分で考えていない
- 科学的でない→自分の信念を論拠なしにひたすら主張する
2、 テーマ設定
- 「自己の意欲と実現可能性の接点」
- 自分の能力で研究可能なテーマを、できるだけ具体的に、限定して設定
- 問いを具体化するのがテーマ
(「環境問題」→「××市のごみ収集条例制定過程における市民団体の役割について」)
- やってはいけないこと
- 抽象的ないし広大すぎる(「アジアについて」など、自分の頭で考えていない)
- 実現不可能(研究資料がないなど)
3、 方法
- 誰にでも共有できる科学的方法→自然科学の方法を真似る
- 数量化
- 定式化(数量化や数式の代用)
- 概念定義(定式化の前提)
- 比較(実験の代用)
- できれば政治学/経済学/社会学など先行研究分野の方法を借りること
- 総合調査、ケーススタディ、歴史研究、文献調査、実地調査などのアプローチ
4、 仮説と計画
- 実行の「地図」としての仮説(特に作業仮説)と計画
- 問い→作業仮説→計画→調査実行→修正した作業仮説→修正計画→調査実行というフィードバック
- プランと実行のくりかえしで、自分の問いと思考を具体的に把握してゆく
5、 調査
- 文献調査と実地調査(「社会調査」「フィールドワーク」)
- 中心になる該当テーマの「よい本」を一冊入手し、それを使い倒す→該当テーマの概要がわかる
- 「よい本」の書誌から芋づるで本を探す、反論本も入手→該当研究分野の基本がわかる
- 専門図書館を利用して探す、まず図書館の棚の前に立ってみる(「東京ブックマップ」など利用)
- 「文献カード」「読書カード」を作る
6、叙述
- 論文執筆の目的を明確に把握し、基本枠組みをつくる
- 問いと仮説(作業仮説でなく立証ないし反証する仮説)を宣言する→自分のやりたいことを宣言
- 対象を設定(具体的に、「なぜこの対象なのか」→自己の問いに最も適当な対象)
- 使用する基本概念を設定(「健全」「個性」「活性化」「民主化」、一つか二つのキー概念
- 方法を設定(学問分野/先行研究→自己の研究の位置確認、「なぜこの方法なのか」)
- 「仮説を立証してゆく」叙述、「仮説(俗説)を反証してゆく」叙述
7、構成
- 「問い(序論)→分析(本論)→回答(結論)」、「起承転結」「序破急」などではない
- 序論で「問い」「仮説」「対象」「基本概念」「方法」などの舞台設定をやる
- 本論は立てた問いにしたがい、仮説を立証してゆく
- 結論は本論の分析をふまえて、序論の問いに回答を出す
- 執筆前に構成表をつくり、すべてが「問い」に関係しているか自分で検証すること
8、文章
- 問いに科学的に答えるのが論文の文章→名文である必要なし
- 問いに関係のないことを書かない、自分でわからない(設定できていない)言葉は使わない
- それぞれの章、節、段落、文はそれぞれ一つの任務を負って存在→問いに関係のないものは不要
- 「区切れない」「タイトルがつかない」は考えなおす
- はじめは思いつくままに書いて、あとから構成しなおして削ってもよい
- 調査した事の三分の二は書かれない→注か次の研究へ
9、注
- 注の役割
- 典拠を示す
- 流れを整える
- 具体的な使用方法
- 典拠
- 補強文献
- 参照
- 主張の拡大
- 主張訂正
- 依拠
- など
- 基本ルールは各参考書参照(目的が達成できれば細かい様式はかまわない)
10、要約と表題
- 役割
- 内容を的確に示す
- 中味を読む気にさせる
- 要約は目的(対象読者)によって変えてもよい
- 構成をそのまま要約(構成がしっかりしていればすぐできる)
- メッセージを前面に出し、中味を読む気にさせる
- 「問い」を論文表題にし、各章/各節の任務を題名にすればとりあえずよい→問いと構成がしっかりしていればすぐ付けられる、目次にする
- 「主題:副題」を「テーマ:対象」(「やりたいこと:やれたこと」)ないし「具体的テーマ:目的」にする方法→問いと対象設定の理由が自分でわかっていればできる
11、最終チェック
- 「問いがあり、それに見合った対象や方法が設定され、本論の分析がそれに沿って行われ、分析をふまえて結論の回答が出されているか」
- 「問いを立て、自分の能力の範囲でもっとも適切なテーマを設定し、他人に共有できるかたちで回答やメッセージを発すること」
「自分の疑問に結びついたテーマを見つけ、その作業のなかで自分の考えを見つめなおし、かたちにしてゆくこと」