\documentstyle[twoside]{koreport}
\title{\Huge 「さあ、ディベートを始めよう!」\\\vspace{10cm}\normalsize 慶應義塾大学SFC~~{\gt 開智会}~{\it RESEARCH~AND~DEBATE}\\{\gt ディベート・テキスト}\\(基礎編)}
\author{\begin{it}\underline{”Getting~Started~in~debate”}\end{it}\begin{small}(Lynn~Goodnight~著)\end{small}\\~~~~~\\\begin{small}(日本語版作成:1993・1995年度~開智会~\begin{it}RESEACH~AND~DEBATE\end{it}~執行部)\end{small}}
\date{1995 spring}
\markboth{開智会リサーチ&ディベート}{慶應義塾大学SFC}
\begin{document}
\maketitle

\begin{center}
\begin{Large}
\begin{gt}著者まえがき\end{gt}
\end{Large}
\end{center}
\begin{flushright}
\begin{small}Lynn~Goodnight\end{small}
\end{flushright}

この~\begin{it}”Getting~Started~in~Debate”\end{it}~\begin{gt}「さあ、ディベートを始めよう!」\end{gt}は、ディベートを全く知らない学生のための本であり、ディベートが教える技術(skills)はあらゆる分野に有用であるという哲学に基づいている。ディベートは、批判的思考(critical~thinking)、精神的勇気(courage)、構成能力(organization)、そしてリーダーシップ(leadership)と探求技法(investigation~skills)の育成を手助けする。この本は、ディベートを始めたばかりの人が、ある一つの見解をどのように案出したらよいのか、その見解に対する賛否の議論をどのように発展させたらよいのか、そして他人の主張を如何に予期するか、を知ることが出来るよう手助けするものである。

学生がディベートを通じて培うリサーチの技術は、大変使い道があるといえる。というのも、様々な情報源を学ぶときの実践的な経験がディベートから得られるからだ。この本は、リサーチを進めてゆく上で図書索引をどのように使うかといった案内を順を追って説明してゆく。例えば、政府文書をどのように見つけ、使うのかといった説明も含まれるし、現行法がどのように、そしてなぜ施行されているかを知れば、法改正に対する議論をし易くなるであろう。

また、この本は、実践的な活動(練習問題)をたくさんこなすことによって、段階的に学べる仕組みになっている。作業/テキストという体裁は、学生がディベートを学びながら実践的な活動に没頭できるようにするためである。”ディスカッションの為の質問(Questions~for~discussion)”は、重要な言葉や概念に馴染む為のものである。”課題(Activity)”はディベートの初心者が実際にディベートが出来るようにと、意図されて設けられている。第8章の終わりまでには、実際にディベートするためのディベートのルールと、特別な事柄についての十分なエビデンス、アイデアについての基本的な理解が得られているはずである。

\begin{large}
\begin{gt}\underline{本書のアウトライン}\end{gt}
\end{large}

\begin{itemize}
\item[~] \begin{gt}第1章\end{gt}では、ディベートとは何かを定義し、紹介する。ディベートを通じて習得してゆく、分析(analysis)、批判的な物の見方・聞き方(critical~thinking~and~listening)、開かれた精神(open~mindedness)、チームワーク(teamwork)といった数多くの重要な技術(lifeskills)が議論される。
\item[~] \begin{gt}第2章\end{gt}では、ディベートの基本5大要素が定義され、それらの説明がなされる。問題領域、論題(命題)、肯定側、否定側がそれで、もう一つは、ディベートのフローチャート(flow~sheeting)である。これにはディベートの簡単な流れが含まれている。
\item[~] \begin{gt}第3章\end{gt}では、様々なディベートのフォーマットとディベーターの責任についての大まかな説明がなされる。スタンダード・ディベート(標準ディベート)、クロス・エキザミネーション・ディベート(反対尋問ディベート)、リンカーン・ダグラスディベート(大統領ディベート)が紙幅が許す限り説明される。ディベートでの8つのスピーチ(後述)が、与えられたディベートでのスピーチとスピーチの間のディベーターの責任とともに、大まかに説明される。
\item[~] \begin{gt}第4章\end{gt}では、論題(命題)のいくつかのタイプに焦点を当てる。事実命題(a~proposition~of~fact)、価値命題(a~proposition~of~value)、政策命題(a~proposition~of~policy)の違いを学ぶことになる。
\item[~] \begin{gt}第5章\end{gt}では、リサーチの技術について議論される。何を調べ、どこに眼をつけ、どんなエヴィデンスが適切かをどのように決定し、見つけたエヴィデンスをどう活用するかに、ここでは焦点が当てられる。
\item[~] \begin{gt}第6章\end{gt}では、図書館を如何に活用するか、実践的に述べられる。図書館で手に入る情報源とそれらをどのように見つけ出すかを学ぶ。特別な文献の糸口となるたくさんの特殊な索引にここでは焦点が当てられる。
\item[~] \begin{gt}第7章\end{gt}は、肯定側の説明である。改革の必要性を立証するために、肯定側は何をしなければならないかを学ぶ。2つの立論の型と肯定側の見解を示すために、それらを如何に使うことができるかが述べられる。
\item[~] \begin{gt}第8章\end{gt}は、否定側の説明で、反論する方法がいくつか述べられる。否定側を支配するルールが大まかに述べられ、デメリット(disadvantage)の概念が説明される。
\end{itemize}
\tableofcontents
\chapter{はじめの一歩---Introduction---}
”ディベート”という言葉が話題になったとき、大多数の人たちは大統領ディベートのことを思い浮かべる。1960年のケネディ・ニクソンディベートを初めとして、ポリティカル・ディベートは、候補者が互いに”衝突”し、問題になっている点をダイレクトに論じることが出来る晴舞台だ。この本で学ぶように、このポリティカル・ディベートで使われるフォーマットは、候補者間の本当の衝突のための場として設定されていない。大抵のポリティカル・ディベートは、せいぜい、限定された既成の記者会見に過ぎず、その場では候補者よりはむしろ、あるパネラーによって問題や論点が選ばれる。この本で、アカデミックな環境におけるディベートに眼を向けてみよう。これにより、本当のディベートの性質を理解し、価値の高い重要な技術を向上させることが出来るであろう。この本を読み終えれば、読者の中にアカデミックなディベートに参加してみようとする人が出てくるかもしれない。この章を読んだ後には、次のようなディベート用語を理解しているはずである。:

\begin{center}
\begin{tabular}{ccc} \\
\begin{gt}肯定側(affirmative)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}否定側(negative)\end{gt} \\
\begin{gt}ディベート(debate)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}現状のシステム(present~system)\end{gt} \\
\begin{gt}エヴィデンス(evidence)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}証明、立証(proof)\end{gt} \\
\begin{gt}ジャッジ(judge)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}論題(proposition)\end{gt} \\
\begin{gt}論理的な推論(logical~reasoning)\end{gt} & &  \\
\end{tabular}
\end{center}
\section{ディベート---その定義(Debate---a~definition)}
ディベートは次のように定義される。\begin{gt}定められたルールに従い、対抗する2組の間で行われる議論または討論。\end{gt}\begin{bf}(a~discussion~or~argument~carried~on~between~two~matched~sides~according~to~fixed~rules)\end{bf}ディベートでは、ある与えられた論題に対して、肯定側・否定側に分かれ、論理的・理性的な議論がなされる。論題とは、最終的な解決をみていない、議論の余地を残したステートメントであり、かつ、納得のいく数の人々が、どちらかの側の主張を受け入れる可能性のあるステートメントである。ディベートはまた、個々人がある決定をするために使うこともある。例えば、ある学生は家庭科の授業を履修しようか技術科の授業にしようか、自分の頭の中でディベートしたりするだろう。その学生は、理に叶った推論とエヴィデンスに基づいて決定したいと思っているわけだ。

また、裁判所では、被告側と検察側が被告人の有罪・無罪を裁判官の前で、ディベートする。彼らは、証言者から得られた証拠(エヴィデンス)を示し、クロス・エキザミネーション(反対尋問)を通じてその証拠を反駁することによって、自らの主張を正当化する。立法機関においては、予算案が下院と上院に提出され、それからディベートされる。上院の歴史において、ディベートの技術はその歴史を非常によく表しているといえる。ヘンリー・クレイ上院議員、ダニエル・ウェブスター、ジョン・C・キャラハン、ロバート・M・ラフォレット、ロバート・A・タフトはリーダーシップを発揮し、この国にとって重要な問題を明確化するためにディベートの技術を使った。1957年に上院議会は上に挙げた人たちを、不朽の名声を持つ上院議員に指名したが、これは、彼らのディベーターとしての能力のためだ。だが、アカデミックなディベートとはどんなものであろうか?

アカデミックなディベートは、試合時間はおおよそ1時間。実際の時間の長さは、使われるフォーマットによって異なる(ディベートのフォーマットについては、第3章で詳説)。アカデミックなディベートでは、2つのチームが存在し、チームごとに2人のメンバーがいる。\begin{gt}肯定側\end{gt}は、現状のシステムは改革すべきであると主張する。現状のシステムとは、様々な事柄における現在の状態のことであり、具体的には、私たちが生活してゆく上での法律、条例、規則のこと(=政策)である。これに対し、\begin{gt}否定側\end{gt}は現状のシステムを保守する。現状のシステムがいくつかの問題を抱えているとはいえ、それらは大胆な変革(新しく法律、条例、規則を作ったりすること)がなくても解決され得る問題である、と主張するわけだ。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}いかに活用するか、その実例\end{gt}\begin{bf}---How~it~works---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

例えば、ディベートのテーマを学校の服装の規則にしてみよう。論題は次のようになる。
\begin{itemize}
\item \begin{gt}学校に適した服装は、個々の学生にゆだねるべきである。\end{gt}
\end{itemize}

肯定側ならば、「\begin{gt}現在の服装の規則(=現状のシステム)\end{gt}が、学校に何を着てゆこうか選ぶときの生徒の自由を如何に制限しているか」を示したいであろうし、学校の服装規則を証拠書類で立証することによってその主張を証明しようとするであろう。次に、「これらの規則によって、いかに生徒は学校に着て行きたいと思っている服を着ていくことが出来ないでいるか」を示し、それから、生徒の服装に関連している全ての規則の撤廃を提案するだろう。肯定側はまた、服装規則の撤廃には、デメリットがないことを示すであろう。もしも服装規則の撤廃にメリットがあれば、その概略を示したいと思うであろう。

否定側の役目は、現状のシステム(現在の服装規則)を守り抜くことにあるといえる。否定側ならば、現在の服装規則には何等悪いところはないと主張するであろうし、また「その規則は非常にリベラルであり、大多数の生徒は目下彼らが着たいと思い、かつ学校の規則を破らない服を着てきている」ということも示すかもしれない。否定側はまた、「生徒は服装規則を形成する規則づくりに参加しているのだ」と主張するかもしれない。更に、服装規則撤廃のデメリットも主張したいであろう。そのデメリットの一つとして「全ての生徒が最新の流行ファッションを追いかけていたいと思っているわけではない」ということも挙げるであろう。生徒の中には、流行が訪れるごとに新しい服を買う経済的余裕がない人もいる。学校の服装規則によって、これらの経済的余裕のない生徒に最新の流行ファッションを着なければならないというプレッシャーを与えずにすむという一つの理由が与えられる。服装規則の撤廃は、重要な一つの”支え”を葬り去ることになろう。数多くの青年達は、”No”と言うということは好いことなんだと学んでゆく青年期を通じて、自分達を救ってくれるそのような”支え”を必要をしているのである。

肯定側・否定側それぞれが、自分達の主張は正しいのだと他人を納得させるためには、学校の服装規則に賛成か反対かの主張がきちんと立論されなければならない。この証明は、論理的推論(logical~reasoning)と証拠資料(エヴィデンス)、あるいは、その2つが融合されたものである。論理的推論はある自分達特有の主張が、なぜ意味をなすのかを証明するものである。時には、大多数の人たちによって真であるとされた常識や事実を通して、ある主張がディベートの最中に皆が満足の行くように証明されることもある。

証明のより好ましい形態がエヴィデンス(証拠資料)である。エヴィデンスは主張の基礎を形作る為に使われる情報である。ある主張を立証する目的でエヴィデンスを探しているときには、立論しようとしている主張をサポートするために、多くの人に尊まれている権威者を探す。そのような人たちの言説は、通常、本、ニューズレター、新聞、雑誌、マスコミ、定期刊行物、インタビューのなかで見つけることができる。例えば、否定側が、学校の服装規則は不可欠かつ価値あるものだということを立論するするとすれば、否定側はエヴィデンスを提示しなければならない。この場合、学校の服装規則が議論されている記事の載っている教育ジャーナル(これは、教師や教育監督者によって書かれている)をリサーチすることになろう。また、10代の若者に的を絞った人気雑誌にもまた服装規則に関する記事が載っているし、新聞にも学生と服装規則を含む議論が過去にあったかどうかの情報が載っていることがある。如何にして情報源を見つけ、エヴィデンスの断片を選別し、そのエヴィデンスを如何に使える形に持ってゆくかは、第5章において詳細に述べられる。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item ディベートとは?
\item 命題を支持する側は何と呼ばれるか?
\item 命題に対し反駁し、反対する主張をする側は何と呼ばれるか?
\item なぜディベートにおいて肯定側・否定側は自分達の主張を支えるために証明を必要とするのか?
\item 証明には、2つの型がある。その2つの型を分かりやすく示し、それぞれの利点と欠点、あるいは、その両方を説明しなさい。
\end{enumerate}
\section{ジャッジ---judge---}
ディベートは、いずれもジャッジによって評価される。ジャッジは通常、理想的なディベートの基準にしたがってそのディベートを評価し、どちらが勝ちそちらが負けたかを決める1人または3人の人たちである。審査基準には、分析(analysis)、推論(reasoning)、エヴィデンス(evidence)、構成能力(organization)、反駁(refutation)、伝達・表現能力(delivary)が含まれている。ときには、そのディベートを聞いた聴衆やクラスメイトがジャッジ役を務めることもある。クラスルームでは良いディベートを行ったか、あるいは、そのディベートに”勝った”側に投票するよう学生に求められるかもしれない。

アメリカでの大統領ディベートや、その他の政策ディベートでは、投票人や普通のアメリカ市民がジャッジである。政策ディベートの後には、誰がディベートに”勝った”かを決定するために投票が行われる。マス・メディアは通常その政策ディベートを評価し、「誰がよいディベートを行ったか」を決める。これは、一般の聴衆の判定に影響を及ぼすことが多い。

\section{時間制限---timekeeping---}
ディベーターがスピーチする時間を守らせるために、タイム・キーパーが使われる。タイム・キーパーの役目は、スピーチする時間や作戦タイムがオーバーしないよう、ディベーターに知らせることであり、時間が示されたカードを使ってこの役目を遂行する。時間は、最後の1分まではあと何分かをコマ切れにした時間(8分、7分・・・1分など)でカウントされ、それからは30秒ごと(1分、30秒・・・終了)にカウントされる。割り振られた時間を使い終えたとき、ディベーターはその最後のセンテンスで終えることが許されるが、それ以上は許されない。タイムキーパーがいないときは、次の2つのどちらかの方法で時間を守らせることができる。そのひとつは、ジャッジがタイムキーパーの役目をする方法であり、もう一つは、肯定側・否定側それぞれが、自分達自身で時間を守る方法である。後者の方法は、他にとるべき手段がないときにのみ、とられるべきである。個々のスピーチをする時間の制限、準備時間(作戦タイム)、そしてディベーターの責任を支配しているルールについては、第3章において詳細に述べられる。

\section{なぜ、ディベートの技術を向上させるのか?---Why~develop~debate~skills?---}
ディベートは、学術活動以上のものがあり、それぞれの参加者にとって重要な技術と価値を向上させるものなのだ。あなたが法律家、政治家、ディベートによって生計を立てるスピーチの達人などになる必要はない。広く認められているように、ディベートの技術と価値が全て、ディベート独自のものではない。しかしディベートは、技術を磨き、価値を習得するためには、非常に重要な方法なのだ。人によっては、ディベートは、その技術や価値に触れる唯一の機会であるかもしれない。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートは、リーダーシップの芽を育てる\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~offers~preparation~for~leadership---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

良きリーダーは、目標を言明し、プランを作成し、その目標を達成するために実際に行動することができる。このためには、参加を促すよう他人を納得させ、権威ある地位の人には、目標は達成する価値のあるものであると立証する必要があるだろう。今の学校には、この能力を教える授業も活動もほとんど存在しない。現代社会が大いに必要としているのは、問題を分析し、変革に反対する人たちの合意を得ることが出来、自分以外の人たちを、実際にそのプランの実行に必要なステップを歩めるよう説得できる人、つまり、物事をはっきりとさせることのできる人たち(articulate~men~and~women)なのだ。これらの資質を身につけた学生は、高校・大学卒業後、ビジネスの世界や専門的分野、市民の事業においてリーダーシップを発揮する地位にまで昇ることが多い。

リーダーシップを発揮する地位に昇った多くの人々が在学中ディベーターであったし、その経験を今現在の地位に達するプロセスにおいて重要な要素であったことを彼らは認めている。概算して、約160人の上院・下院議員、州知事、連邦裁判所裁判官、閣僚、そのほかの指導者達が明かにしたところによると、その中の100人が高校や大学でディベートを経験したそうである。その100人全員が、ディベートの経験は彼らの仕事に役立っていると見ているし、90人は「大いに役立った(greatly~helpful)」、「非常に価値がある(invaluable)」と格付けしている。160人の中で、ディベートを経験しなかった60人のうち26人が、高校・大学でディベートを経験しなかったことを後悔している。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item ディベートにおいて、リーダーシップ能力を向上させるために何が助けとなるのか?
\item あなたの将来に備えた今の計画を考えてみて、ディベートはどのようにリーダーシップ能力を向上させるのか説明しなさい。
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}現在の問題を調査し集中的に分析するには、ディベートは不可欠である\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~provides~for~investigation~and~intensive~analysis~of~contemporary~problem---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

一般の人たちは、現在深刻な問題の上辺の知識しか持っていない。ディベートに参加することによって、そのような問題を調査・分析する機会が得られるのは、ディベート解決しようとしているテーマがそのような問題を扱うことが多いからである。これから述べられるように、ディベーターは現在の問題に対して平均以上の知識を得ることが出来、それと同時に、将来遭遇するであろう問題を批判的に分析する技術を得ることが出来るのである。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートによって、分析的な反応が即座に出来るようになる\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~debelops~the~ability~to~make~prompt~analytical~response---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

現在の世の中は、非常に速いペースで動いている。問題や試みに対して適切に反応する時間も機会もないことが多い。すばやく意志疎通しなければならない今日の世の中において、法律家、企業の重役、その他個々の市民は、即座に分析的な反応することが求められる地位にあるといえるだろう。ディベートは、一人一人に、次のような行動を教授する。それは、1時間内で議論をし、それに応え、発言は対戦相手がスピーチをしている間か、スピーチ間に与えられた短い時間に準備しなければならない、というような行動である。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item どのようにディベートは、分析的精神の向上を手助けすることが出来るのか?
\item なぜ分析能力の向上は価値があるだろうか?
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートによって批判的に聴く姿勢が養われる\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~develops~critical~listening---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

人は、周りから自分達に向けて直接言われたことの多くに注意を払わない傾向がある。この理由として、ビジネスマン達が聴く技術を学ぶ講義へと目を向けたのが、多くのビジネスのためであったことが挙げられよう。ディベートで対戦相手がスピーチしている間にボーッとしていたら、それに対する返答は、効果の無い無力なものとなりがちである。このように、ディベーターは相手の話を集中して聴けるようになるし、相手の主張を正確にフロー・シート(メモをとるのに使われるもの:第2章を見よ)に書けるようになる。このようにしてディベーターは、時には、対戦相手が使った言葉などを使ったりもして、的を得た反応をすることが出来るし、また、相手の主張を自分の利益に結びつくように転換させることもできる。批判的傾聴能力は重要な技術であると広く一般に認められている。

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 次のPTAや学校の会議、あるいは市議会に目を向けなさい。そうしたら、話し手が相手の言ったことを聞いていない場面を識別しなさい。それが、その話し合いのプロセスにおいてどんな違いを生んだか?その人がより批判的に聞けていたとしたら、スピーチを聞いた側によって作られた主張は、後に、どのように変わったであろうか?
\item 同じ会議で、その話し合いのプロセスにおいて集中して聞かなかったが為に、駄目になってしまった主張や言説を明確に述べなさい。
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートは、精神的な勇気を向上させる\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~develops~courage---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

学生達が精神的勇気を向上させるのを、ディベートは手助けする。それは、学生がリサーチをし、立場を分かりやすく示し、そして、その立場を強力な反対意見から守り抜くことをディベートは求めるからである。ディベートの技術に富んだ相手は、あなたが欠点がないと考える主張に、たやすく欠点を見つけるであろう。そうなったら、あなたはすぐにパニックに陥り、あとずさりし、その論点を避けるであろう。しかし、ディベーターとしては、ただ諦めていてはならない。ディベーターとしての立場が、自分の立場を守ることを要求してくるのだ。ディベーターならば、自分自身を正し、その論点に集中し、自分達の考えをまとめ、効果的に反応することが出来るようになる。時間をかけて練習すると、大抵のディベーターは自分の頭で考え、自分の立場を守ることが出来ると確信するようになる。また、対戦相手の多くが、決して勝てない相手ではなく、ディベートするに足らぬ(undebatable)相手であるとわかる。こうしたプロセスが学生に自信をつけさせ、緊張してもちゃんと頭を働かせることが出来る能力を身につけさせるのである。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートによって効果的なスピーチの作成とその伝達・表現に自信がつく\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~encourages~effective~speech~and~delivery---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

ディベートのスピーチの作成とその伝達・表現は、どれだけ効果的に主張できるかを決定する要素の一つであるから、ディベーターは、最高のパブリック・スピーキングの原則に則って、手持ちの資料を選び、アレンジし、発表しようという気持ちになる。実際のディベートでは、原稿なしで発言することに箔がつくから、ディベーターには自分の頭で考えるように要求される。典型的にいって、ディベーターは多くの聴衆(1人または数人のジャッジ、クラスメイト、集会に集まった人々、さらには、テレビやラジオの前の人々)の前で発言するであろう。これらの状況の一つ一つが新しい挑戦を学生に与える。ジャッジ、オーディエンスなど話す状況の違いに応じて即座に適応することによって、思考とスピーチにおける柔軟性と器用さが向上するのだ。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートによって系統的構成能力が身につく\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~teaches~organization---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

ディベーターは、あとで理解しやすく忘れないようにするために、ある枠組みにそれぞれの議論を当てはめることが出来るようになる。ディベートでは、こちらが主張しない事柄を、ジャッジと対戦相手が当然の事柄だとみなすようなことはない。もし、系統的にまとめられておらず、主張が理解し難いものであるならば、ジャッジは困惑するであろうし、対戦相手はここぞとばかりにそれを不当に利用してくるだろう。スピーチがまとまりの無い、混乱したものであるときは、誰もその主張を正しい主張だとは思わないであろう。ディベートにおいては、明確なこと、納得のいくものであることを必要とされるが故に、ディベーターは系統的構成能力と表現能力における高い技術を強く要求されるのだ。この技術はまた、レポートの作成、試験勉強、学校の方針の変化についての議論などにおいて、個人的にも社会的にも、学生が向上してゆくことを手助けすることが出来るのだ。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item なぜ、聴衆を説得するときにスピーチの表現能力が重要なのか?
\item 余りにもまとまりの無いスピーチは、聴衆にどのような影響を与えるか?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activities---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 学生組織、学校の委員会、市議会の集まりに目を向けなさい。それから、下手な文章・発話であるスピーチを識別し、そのスピーチのどこが悪いのか、そして、どのような影響を聴衆に与えているか説明しなさい。
\item 良くまとまったスピーチとそうでないスピーチを識別しなさい。その構成の長所と短所の概略を述べなさい。より効果的で説得力のあるアピールの為には、それぞれ、なにをすべきか?
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートによって批判的思考が身につく\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~teaches~critical~thinking---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

ディベーターが知る必要があるのは、どうして特異なアプローチ、構成のメソッド、プレゼンテーションのスタイルをとるのか、である。ディベーターは、図書館、通信、ほかの情報源からの最も良いエヴィデンスを探さなければならない(後に第6章で述べられる)。ディベーターは、使用するエヴィデンスについて考え、自分達の主張に何が役立つのかを明確に理解しなくてはならない。それぞれの主張の結果について考え、その価値を評価しなければならない。ディベートにとってそのテーマに必要なものは何であろうか?リサーチによって集められた資料の内に秘められたその強さと弱さは何か?ディベートの際に、最も強いと思われるエヴィデンスに基づいた分析方法とは?対戦相手は何を主張するつもりなのか?ジャッジの人たちは、反対側の主張にどのように反応するつもりなのであろうか?これらの質問に答えてゆくうちに向上する批判的思考は、生活においても価値が高いと証明されている技術なのである。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートによって開かれた心が身につく\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~teaches~open-mindedness---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

私たちが、ある主義主張を発展させようとしているとき、その話題において、開かれた心のままでいることは難しい。私たちの個人的な偏見が盲点を作り、他者の立場の背後にある理由を見ることが出来なくなることが、非常に多いのだ。その結果、他の人たちが私たちと反対の立場に立って言おうとしていることを予期できなくなるかもしれない。しかし、ディベートでは、対戦相手が主張する可能性がある事柄を考慮に入れなければならない。対戦相手の立場に立った理由とは何か?その立場を支持するエヴィデンスは何か?そのエヴィデンスの質は如何?その推論は意味をなすものか?私たちは自分達の立場を確立し支持するために、これらの質問に対する答を用いれば、大抵のどんな話題にも、それぞれの立場を支持するに足る充分な理由を見つけることが出来る。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item なぜ批判的思考は重要なのか?批判的に考えることが出来る人はそうでない人以上にどんな利点を持っているか?
\item 開かれた心を持たずに議論してゆくとどんな結果が生まれるか?
\item ある問題に開かれた心を持つことは、あなたが立論する際にどのような助けとなるか?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item ニュースでの重要な問題を使って、賛成論・反対論を大まかに述べなさい。それから、どちらの立場が個人的に気に入ったかを明確にしなさい。そこに、気に入ったという気分以上の理由がありますか?もしそうであるなら、賛成論と反対論を同等に扱いなさい。
\item Activity~1.~で選んだ問題に関する記事や新聞の切り抜きを5つ集めなさい。それぞれの記事が”開かれた心”を持って書かれているか見極めなさい。その記事の中で見つけた偏見を識別しなさい。これらの記事は、その問題に対して賛成・反対のリサーチ資料、あるいは、エヴィデンスは充分か?また、その理由を述べなさい?
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ディベートは協力とチームワークを強くする\end{gt}\\\begin{bf}---Debate~enhances~cooperation~and~teamwork---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

まず第一に、ディベートはチームワークを必要とする。それぞれのチームの2人のメンバーはともに行動しなければならない。肯定側は、立論を構成する議論をリサーチし、理解しなければならない。ともに行動しないと、否定側は、自分達自身が矛盾する危険を冒す。否定側がまず始めにしなければならないのは、肯定側が述べたような問題は存在せず、重要でないことを主張することである。次に否定側は、肯定側が述べた問題を改革すれば、”害”があると主張する。このように双方の主張は互いに矛盾しているが、双方が同時に真であることは有り得ないのだ。肯定・否定両方の主張を証明するエヴィデンスがあるかもしれないが、否定側としては、同じディベートで両方の議論を使いたくないであろう。否定側の2人のディベーターは、どんな主張が通るか決めるために、お互いに意志疎通をしなければならない。

協力は肯定側・否定側にかかわらず、通用する。多くの場合、1つのチームが調べるよりもより多くの有用なリサーチ資料が存在する。ディベートでは、皆、否定側に関するリサーチもともに行う。クラスルームでもこれは同じで、リサーチの宿題は分割し、割り振って行うことが出来る。他人とうまく行動することが出来る能力は生活する上で価値ある技術だ。私たちが他人と協力しともに作業するとき、多くの問題に妥協点を見いださなければならない場合が多いものだ。何人かで一緒に作業することによって、一人で見つけるよりも多くの利点を持つ解決が導かれることもあるのだ。

\chapter{ディベートの仕組み---The~Mechanics~of~Debate---}
はじめてスポーツに参加するとき、そのゲームが進行の遅い、難しいものであることを感じることがある。専門用語は見知らぬものが多いし、ルールは新しく、その範囲は余り知られていないことが多い。しかし、そのゲームとそのルールの背後にある概念に精通してからは、そのスポーツが易しくかつ楽しめるものであることがわかることがしばしばである。ある意味では、ディベートもまたゲームであり、最初は難しいが練習によって易しくなる。この章では、ディベートの基本を紹介しようと思う。この基本を理解してからは、章を追うごとに、議論をプランニングし、準備し、発表するときに、それらを結び付けて使えるようになれるだろう。そうするために、次の用語を理解する必要がある。:

\begin{center}
\begin{tabular}{ccc}
\begin{gt}立証責任(burden~of~proof)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}一見明白な(prima~facie)\end{gt} \\
\begin{gt}立論(constructive)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}問題領域(problem~area)\end{gt} \\
\begin{gt}流れ図(flow~sheet)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}反駁、反証(rebuttal)\end{gt} \\
\begin{gt}仮定(presumption)\end{gt} & ~~~~~~~~~~ & \begin{gt}論題充当性(topicality)\end{gt} \\
\end{tabular}
\end{center}

ディベートは多くの異なった部分から成り立っている。それらの部分には専門用語、概念、手順が含まれている。ディベーターはこれら各要素を知り、理解しなければならない。この章では、まず始めに、問題領域、論題(命題)、肯定側、否定側、流れ図(flow~sheeting)に目を向ける。これらは、ディベートの基本的な要素である。
\section{問題領域---The~Problem~Area---}
論題を定義する前に、\begin{gt}問題領域\end{gt}という用語を理解する必要がある。問題領域とは、社会やある集団にとってある重要な関心事についての一般的な問題のことである。問題領域が、水質汚濁、貧困、国防、医療となることもあるだろう。これらの問題領域はそれぞれ、適切なディスカッションやディベートをするには、あまりに広範で曖昧すぎる。その問題領域から私たちは、関心の集中する問題を必要とする。医療の領域では、その問題は「十分な医療は保証されるべきか?」となることもあろう。しかし、まだ広範な領域を扱っている。「誰に医療は与えられるべきなのか?」、「どのような医療があたえられるべきなのか?」、そして「死に至る病気に対しての医療は誰にでも与えられるべきなのか?」というように、より明確な質問として綴られるであろう。ディベートでは、問題は論題の形をとる。\begin{gt}”論題:連邦政府は、死に至る病を持つ人々に、医療を保証すべきである。”\end{gt}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item あなたの周りにおいて、学校や地域社会で関心のある問題に目を向けなさい。そこで、1つの問題を明確にしなさい。質問の形をとった問題を作りなさい。それは、焦点を絞る必要がある問題か?なぜそれらの問題領域はディベートにとって興味あるものなのか?その問題のリサーチは可能か?
\item 国内問題、国際問題で問題領域を明確にすることによって、Activity~1.~をもう一度試みなさい。
\end{enumerate}

\section{論題(命題)---Proposition---}
大抵のディベートの論題は、明確で重要な選択を示す。論題の役目は、ディスカッションやディベートのために焦点を絞ることである。命題の3つの型(事実命題、価値命題、政策命題)は第4章で議論される。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}---論題の特徴~\begin{bf}(Characteristics~of~a~Proposition)\end{bf}---\end{gt}
\end{large}
\end{center}
論題はある決まった特徴を持たなければならない。その特徴には、\begin{gt}重要性\end{gt}\begin{bf}(significance)\end{bf}、\begin{gt}議論充当性\end{gt}\begin{bf}(controversy)\end{bf}、\begin{gt}単一領域\end{gt}\begin{bf}(a~single~area)\end{bf}、\begin{gt}ディベートできること\end{gt}\begin{bf}(debatability)\end{bf}、\begin{gt}永続性\end{gt}\begin{bf}(durability)\end{bf}が含まれる。

\begin{description}
\item[重要性(significance)] ディベートされる問題は重要なものであるべきであり、国内外を問わず、大多数の人々に影響を及ぼすものでなければならない。働くことのできる全てのアメリカ国民に、どのようにして職を与えるかという問題は、その問題がほとんどのアメリカ人に影響を及ぼすが故に、重要性を持った論題の一つであろう。インフレーション、医療へのアクセス、毒物の廃棄、汚染、国防、世界的飢餓、原子核兵器の増大などは重要な問題領域であり、ディベートの問題の候補となり得るものであろう。しかし、市民税、郡の刑務所、州発行宝くじ、銃に関する法律は普通、ディベートの論題には適していない。限られた数の人にしか影響がないという点で重要性を欠いているのだ。だが、そのような問題領域が\.決\.し\.て\.デ\.ィ\.ベ\.ー\.ト\.に\.適\.し\.て\.い\.な\.いということを意味するのではない。状況によっては、視野の限られた問題をディベートすることを求められるときがあるかもしれない。これは、\begin{gt}オーディエンス・ディベート\end{gt}の場合、よくあることだ。オーディエンス・ディベートとは、まったくディベートの知識がない人たちを前にして行うディベートのことである。通常、ある限られた問題領域が選ばれるのは、それが、ある特定のオーディエンスにとって重要で、より大きなインパクトを持つ可能性があるからである。
\end{description}
\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 視野が通常より限られた論題をディベートすることが適しているときはあるのか?また、その理由を述べよ。
\item あなたの学校の生徒団体にとって重要であると思われる問題領域を3つ挙げ、名前をつけなさい。あなたの学校に関係のない人々にとっても、それらは重要性を持っているか?
\end{enumerate}

\begin{description}
\item[議論充当性(controversy)] 論題は、それが議論充当性をもつ(議論の余地がある)場合にのみディベートができる。つまり、その論題に関して、意見の対立か利害の対立がなければならない。多くの場合、事実命題では議論も論戦もない。それゆえディベートにもならない。例えば、「アメリカの憲法は政教分離をうたっている」という論題は、議論ができない。実証することができる明白な事実だからだ。しかし、「ケネディ大統領はたった一人の暗殺者に殺された。」という論題は事実命題である。議論の余地を多く残しているからだ。
\end{description}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 上に例として挙げた2つの命題において、なぜ一方はディベートでき、もう一方はできないのか?
\end{enumerate}

\begin{description}
\item[単一概念(a~single~idea)] ディベートの論題には、ただ一つの概念・見解が含まれているべきである。効果的に準備し議論するためには、ディベーターは一つの問題領域に焦点を絞ることができなければならない。\begin{gt}論題:”アメリカ合衆国は対外エネルギー依存体質を改め、大気や水をきれいにするために働きかけを行うべきである。”\end{gt}には、2つの議論のテーマが示されている。一つは、エネルギー独立問題であり、もう一つは、汚染対策である。同じ試合で両方のテーマをディベートしようとすると、あまり発展性のない議論になり、多大な混乱を生んでしまう。別個の論題としてディベートされるべきである。
\end{description}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 上で例として挙げられた命題は2つの概念を含んでいる。それを、それぞれが一つの概念をもつ2つの論題に書き直しなさい。
\end{enumerate}

\begin{description}
\item[ディベートできること(debatability)] 論題はできる限り公平に作られるべきである。そのディベートに色をつけてしまうような感情的な言葉は、避けられるべきだ。感情的な言葉を使ってしまうと、肯定側か否定側に不公平な利点を与えてしまう。例えば、\begin{gt}「冷酷で危険な犯罪者には、矯正プログラムが確立されるべきだ。」\end{gt}という論題は、否定側に偏向して述べられている。なぜなら、矯正が、不可能ではないにしても困難であるということをほのめかしているからだ。\\論題は、肯定側にも否定側にも偏らぬように作られるべきである。例えば、\begin{gt}「全てのアメリカ国民は、飲料水をきれいにする権利を持っている。」\end{gt}という論題は、否定側に重荷が置かれている。アメリカ国民は飲料水をきれいにする\begin{gt}\.権\.利\end{gt}を持っていないことを主張するのは、否定側には割が合わない。よりディベータブルな論題は、\begin{gt}”論題:連邦政府は、アメリカ合衆国において、飲料水の質を守る包括的な政策を確立すべきである。”\end{gt}となろう。この言葉遣いは、肯定側にも否定側にもよりよい問題のバランスと議論を与える。
\end{description}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item なぜ、論題がディベータブルであることが重要なのか?
\item 上で例として挙げた2つの論題において、なぜはじめに作られた論題はディベータブルではないのか、それぞれ説明しなさい。
\item 例で挙げた矯正プログラムに関する論題において、それをディベート出来るようにするにはどのように書き直せばいいか?
\end{enumerate}

\begin{description}
\item[永続性(durability)] 取り上げようとしている問題は、ディベートを行っている間にも存在し続けるであろうか?例えば、\begin{gt}”論題:学生は、講義がない間はキャンパスを離れることを許されるべきである。”\end{gt}という論題は、学校の管理者側が現在その提案を履行しようと考えているとすれば、ディベートにとってはきわどいテーマであろう。なぜなら、今学期中に学校管理者側がその提案を受け入れるかどうかをディベートすることに、肯定側の存在価値がほとんどなくなってしまうからだ。論題は興味あるものであるべきだが、きわめて近い将来にはその受け入れの見込みのないものでなければならない。
\end{description}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item \begin{gt}論題\end{gt}の5つの特徴はなにか?
\item 永続性は、なぜ論題に不可欠な特徴なのか?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 下に挙げる論題はそれぞれ誤りを含んでいる。5つの論題の特徴のうちどれを満たしていないのか見極めなさい。また、その理由を説明しなさい。

\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}徴兵制は地元の高校で登記するよう回復すべきだ。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、アメリカの空港が安全になるよう包括的な安全策のガイドラインを確立すべきだ。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、現予算案で社会福祉実施計画を増やすべきだ。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}市、地方公共団体は駐車違反過料の収集を改善するよう実施計画を確立すべきだ。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}小学校への入学者は増加している。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}新鮮な野菜の価格は、その栽培期によって変動する。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、国民に対し平等に徴税するよう租税体系を再設計すべきであり、その税金の重要部分を教育構造の改善に使うべきだ。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、全てのアメリカ人に医療を施すよう包括的な実施計画を確立すべきだ。\end{gt}
\end{itemize}

\item Activity~1~の論題で誤りを見極めた後、それらを正しい論題に書き換えなさい。

\item ディベートしたら面白いだろうと思う論題を3つ書きなさい。それらには、学校政策、地方政策、州条例、国家の問題を含むことが有り得るが、3つの論題のうちの一つが、論題の5つの特徴をどのように満たしているか説明しなさい。
\end{enumerate}
\section{肯定側---Affirmative---}
肯定側の仕事は、改革(=論題)を受け入れるよう主張することである。忘れてはならないのは、論題は現状のシステムの変革を求めているということだ。ディベートによる解決は、普通、多くの解釈の余地を残している。\begin{gt}”論題:連邦政府は、アメリカ合衆国の対外エネルギー依存を大幅に低下させるよう包括的な実施計画を確立すべきである。”\end{gt}というテーマでは、石炭の露天採鉱、石油輸入、原子力、太陽エネルギー、アラスカ・パイプラインなどが、可能な解釈として含まれるであろう。これらのテーマならば、どれでもディベートに適したテーマであろう。肯定側は、論題のどの立論を議論したいかを自分達で決めるが、これは\begin{gt}肯定側立論(the~Affirmative~case)\end{gt}と呼ばれる。肯定側立論とは、ディベートの始めから終わりまで、肯定側によって展開する形勢(position)のことをいう。肯定側立論の枠組みには、変革、プラン、そのプランのメリット、の正当化が含まれ、また、多くの方法(第7章を見よ)によって構成される。この\begin{gt}”立論(case)”\end{gt}という用語がときどき混乱するのは、ディベートでは、この”立論(case)”を基本的に2つの意味に分けることが出来るからである。それは、まず~~\begin{gt}(1)~変革の正当化(立論面---\begin{bf}case~side\end{bf}---と呼ばれる)\end{gt}であり、もう一つは~~\begin{gt}(2)~その変革の実行・履行(プラン面---\begin{bf}plan~side\end{bf}---と呼ばれる)\end{gt}である。肯定側立論の構造の型とその責任と義務は第7章で詳しく議論する。

\begin{small}
(訳者注:以上のように\begin{bf}”case”\end{bf}という単語は、日本語に訳すのが非常にむずかしい。よって、以下、誤解がない限りにおいて、上記の2つの意味を含めて~case~の訳語を\begin{gt}「立論」\end{gt}とします。ちなみに、松本道弘氏は\begin{gt}「構築された議論」\end{gt}と訳していますが、\begin{gt}「立論」\end{gt}という訳語には、この意味も含まれていると理解してください。また、~Comparative~Advantage~Case~を\begin{gt}比較利点\.議\.論\end{gt}と訳すように、ディベート全体に対して~case~という単語を用いているときには、その訳語を\begin{gt}「議論」\end{gt}とします。その他、単に「場合、状態」の意味で使われているのが明白なときには、そのように訳します。)
\end{small}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 肯定側は、論題に対して賛成するのですか、それとも反対するのですか?
\item 肯定側が選択してディベートし、それを展開するる議論はどんな名称で知られているか?
\item 肯定側立論の構造の3つの構成要素はなにか?
\end{enumerate}
\section{仮定、推定---Presumption---}
\begin{gt}仮定、推定~---~Presumption~---~\end{gt}(訳注:以下\begin{gt}プリザンプション\end{gt}と表記)は、事実上現在とられている政策は基本的に存在し続ける(と仮定する)、という意味である。感覚的に言うならば、現政策を導いている価値観は存在し続けるだろうし、現在”真”であると受け止められているものはこれからも”真”であるとされ続けるであろう、ということだ。このことを鑑みた場合、常に変革を主張する肯定側は、\begin{gt}変革は不可欠だと立証する\end{gt}義務を負わされることになる。通常、プリザンプションが否定側に有利に働くのは、否定側はふつう、現状は充分適切であり大きな変革の必要性はないと主張すれば良いからである。プリザンプションの例はアメリカの裁判制度に見いだすことが出来る。そこでは、有罪だと立証されるまで被告人は無罪であると仮定、推定される。

かつて、特定人種学校(人種差別をしている学校)が合法であったことがあったが、当時、それが現状だったわけである。現状のシステムはうまく機能していると多くの人々が考え、仮定・推定していた。しかし、価値観、状況、政治の変化によって、変革しようという空気が生まれ、当時の”現状のシステム”は問題にされ、ディベートされた。その後、アメリカ連邦裁判所は人種差別は憲法違反であると判決を下し、その撤廃の命令が下された。価値観、状況、政治は今、調和実施計画の空気を作り上げている。それらの変化によって、現在、ある調和の時期を迎え、調和を推進し拡大するための資金と計画ができつつある。

ディベートでは、肯定側は、現状を変革する理由は存在することを立証しなければならない。その立証が不十分な時には、否定側がディベートに勝利する。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item プリザンプションを手にしてディベートを始めるのは、肯定側、否定側どちらか?その理由は?
\item アメリカ合衆国の刑法で、なぜプリザンプションは重要な要素なのか?政治やディベートのような法律の領域ではない分野においてその意味するところは何か?
\end{enumerate}
\section{立証責任---Burden~of~proof---}
肯定側は、論題を受け入れるのに充分な理由を提供しなければならない。これを、\begin{gt}立証責任(burden~of~proof)\end{gt}と呼ぶ。これは常に肯定側にある。法廷では、被告人が罪を犯したという充分な疑惑を背景にしてこれを立証する検察側の責任が、それにあたる。ディベートの試合においては、肯定側が検察側の役割を負い、変革は不可欠であることを立証しなければならない。肯定側がもしも変革の必要性を充分に正当化しなかった場合は、立証責任を満たしていないといえる。

否定側は自分達の主張を立証しなければならないが、論題の受け入れを立証しようとする立場は、絶対に取らない。たとえ否定側が現状の変革の必要性を主張したとしても、否定側なら、ディベートの論題で示唆されている特定の変革を支持する主張は決してしないだろう。もしそれをしてしまったら、ディベートでなくなってしまうであろう。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item ディベートにおいて、立証責任を課されるのはどちら側か?その理由は?
\item もしも法廷で立証責任が検察官によってなされなかったとしたら、被告人は無実であるとされてしまうであろう。ディベートで立証責任がなされなかったら、どんな結果になるか?
\end{enumerate}
\section{一見明白な議論---The~Prima-facie~case---}
\begin{gt}一見明白な\begin{bf}---Prima~Facie---\end{bf}~(プライマ・フェーシー)\end{gt}とは、”額面どうりに”とか”一見したところ”という意味のフランス語である。ディベートで肯定側は、一見したところ完全に明白な~(\begin{it}complete\end{it}~”at~first~sight”)~立論を提示しなければならない。なぜならば、「肯定側がプライマ・フェーシーな立論(反論されるまでは、正しいと推定される議論)を示すことによってのみ、プリザンプションを克服することが出来、そして立証責任を果たすことが出来る」という仮定のもとでディベートは行われるからだ。よって肯定側は、正当化を行い、プランを描き、メリットを列挙する以上のことをしなければならないし、量的にも質的にも、変革の必要性を説くための充分なエヴィデンスを揃え分析を行って立論しなければならない。ジャッジの人たちが好意的な決定を下そうと強く思うように、立論は形作られなければならないとも言えよう。立論が他に並ぶものがないほど強ければ、否定側によって弱められることも拒絶させられることもない。

プライマ・フェーシーな立論は論題から直に得られるものであり、論題を受け入れる十分かつ充分な理由を与えてくれる。ディベートでは、プライマ・フェーシーな立論は、反駁されることなしに論題をサポートするために要求される、最低限の主張である。肯定側はプライマ・フェーシーな立論を確立しない限り、ディベートには勝てない。技術的な問題として、もしも肯定側がプライマ・フェーシーな立論を確立しなければ、否定側は肯定側の議論に答える必要がないのだ。しかし、大抵の否定側は、普通の人にはプライマ・フェーシーな立論と映る主張にも反駁を加えるだろう。肯定側がプライマ・フェーシーな立論を発展させるために取り組む特殊なアプローチは、第7章で発展的に学ぶ。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item プライマ・フェーシーの意味を述べよ。
\item プライマ・フェーシーな議論を示すために、肯定側は何をしなければならないか?
\item もしも肯定側がプライマ・フェーシーな立論を示さない場合、どんなことが起こるか?
\end{enumerate}
\section{否定側---negative---}
否定側は、肯定側の議論を攻撃し、崩すことによって肯定側に応ずる。これを、\begin{gt}反駁、反論\begin{bf}(refutation)\end{bf}\end{gt}と呼ぶ。ここで忘れてならないのは、試合においては、肯定側がディベートするための土俵を選ぶということである。その結果、肯定側は多くの立論材料を前もって準備できるから、試合を行うたびに同じ議論を主張し、通常そうすることによって、自分達の立論を守る経験を多く積んでゆくのである。一方、否定側は、多くの異なった立論に対して反駁する立場に置かれることに気付くであろう。4回ディベートの試合をすれば、その4回の試合で異なった一つ一つの立論に反駁しなければならない可能性もあるのだ。例えば、エネルギー問題がテーマの時は、第1試合目は採鉱について、第2試合は石油輸入について、第3試合は原子力、第4試合は太陽エネルギーのテーマのディベートで反駁しなければならないこともあろう。そのそれぞれの論題には、さまざまな肯定側立論に反駁するための多くの一般的な論点があるのが普通であり、否定側はそれらを使えるように準備しておく。しかし、否定側にはまた、それぞれの立論における特定の議論の予測を試みなければならないし、特定の反駁の準備が不可欠である。ディベートの試合では、否定側は、肯定側が示した立論に対して適切な否定側立論を、素早く考え、速攻で作り、実行できるようにならなければならない。

否定側は、一般的に、次の3つの領域で肯定側の立論に反論・反駁する。

まず第一に、肯定側の主張する\begin{gt}”害~\begin{bf}(harm)\end{bf}~”\end{gt}は存在しないと主張すること。肯定側が主張する”害”とは、現状のシステムにその原因を持つ望ましくないインパクトのことであるが、この”害”は、「ニーズが受け入れらていない」、「被害を被っている」、または、「活気の喪失が生まれている」ところに存在している。否定側は、肯定側の”害”解消法に喰ってかかるか、あるいは、肯定側の示した”害”は単なる仮定であるということを指摘することによって、その”害”を否定することが出来る。そうすることにより、肯定側が示すのは”害”と考えるべきではないと主張するのだ。

第二に、論題を受け入れることでは、肯定側の示す”害”を解決できない(満たさない)、と主張すること。言い替えれば、現状のシステムでもその問題を解決できると否定側は主張するのである。具体的には、現状においてその問題を解決しようとする実施計画が最近採用された、あるいは、最近の状況の変化は肯定側の示す”害”とは無関係で、将来、その問題は解決されるであろうと、主張することだ。要点をズバリ言うと、否定側が肯定側の\begin{gt}内因性~\begin{bf}---inherency---\end{bf}~(変革の正当化)\end{gt}に喰いつくことである。

最後の一つは、肯定側のプランへの攻撃である。これは、そのプランには抜け道がある(落ち度がある)と指摘することによってなされるが、そのプランに影響を与える可能性がある外性要因に無配慮である、あるいは、そのプラン自体があやまりである、と指摘することによっても攻撃できる。また、否定側は、そのプランは肯定側が示したニードを満たしていないことを示すだろうし、そのプランを採用すれば結果的に悪影響、つまり、デメリットがメリットを上回ることになる、と主張するだろう。

否定側がディベートに勝つには、上に挙げたうちで一つでも主張できればよい。(「害」--harm--、「内因性」--inherency--、「プラン充当性」--plan~meet~need--、「デメリット」--disadvantages--のどれかを攻撃し、崩せば良い。)否定側のアプローチと戦略は、第8章において、より詳細に議論される。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 否定側が肯定側立論に反駁する、3つの一般的な領域とは何か?
\item 否定側は、肯定側が示す”害”が存在しないことをどのように主張するのか?
\item 一般的に言って、肯定側の内因性に喰いつくとはどういう意味か?
\item 肯定側のプランに喰いつく為の否定側の議論の型はどんなものか?それぞれ定義しなさい。
\end{enumerate}
\section{流れの掴み方---How~to~take~a~flow---}
反駁と反論の最も基本的な戦法は、試合中に話された内容を知り、忘れないことである。驚くべきことに、多くのディベーターは対戦相手の話したことを注意して聞かず、その結果、立論の多くの微妙な区別を聞き逃し、対戦相手の議論を間違って解釈することが多いのだ。よって、その第一段階としてメモの取り方を向上させることが重要だ。これが出来れば、ディベーターが議論を聞き、あとでジャッジに正確にそれを伝えることが出来ると保証する。

\begin{gt}”フロー・チャート~\begin{bf}---Flow~sheeting---\end{bf}”\end{gt}という用語は、ディベートの最中にメモを取るプロセスであると多くのディベーターが述べる。その目的は、ディベートの流れを追い、試合に含まれるディベーターが用いた全ての重要な主張を正確に記録することである。メモは2つの大きな紙に取られるのが典型的である。多くのディベーターが使うのは、大きいサイズのパッド(はぎ取り式のノート)かあらかじめ印刷されたフロー・シートである(アメリカでは市販されている)。大抵のディベーターは時間前ににパッドを区分けして、1回のスピーチに対し1つのセクションを当てる。\begin{small}(訳者注:巻末に実際のフロー・シートを付録としてあります。)\end{small}

重要なのは、ディベートの試合中に話された内容を正確に記録することであり、如何に素早く\begin{gt}記録した情報を簡略な形式~\begin{bf}(abbreviation~systems)\end{bf}~にすることができるか\end{gt}、その技術の習得である。ディベート中に聞いた多くの言葉を自分なりにある象徴的な言葉にするべきだ。例えば、”増大する”という言葉は、”増大”または”up”にすることができるだろうし、”減少する”という言葉は、”減少”または”down”と書けるであろう。これは、人によって異なるが、ある種の方法なしには効果的に行うことは出来ないであろう。単に”T”と書く方が”topicality”と綴るよりも時間が短くてすむわけであり、このような技術の向上は授業でノートを取るときにも役立つであろう。必要以上の長い単語が使われているなら、あとで意味がわかる程度で、一つか二つの簡単な言葉にすべきである。英単語の場合、その例として、”professional”は、”profess”または”prfssnl”のように、母音を省いた形にすることもできる。

”X”はエヴィデンスを示すときに使うとよい。そして最後に、記録した内容を、線でもって、主張とその返答を結び付ける。これこそが、”フロー・チャート”の名の由来である。多くの人は、それぞれの側を別の色で抑えている。例えば、否定側は赤色、肯定側は青色というように。時間と練習を重ねることによって正確に流れを追うことが出来るようになるが、優秀なディベーターはその効果を非常に価値のあるものだということを充分わきまえている。

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item メモを取るときに使うことのできそうな省略型と象徴語の一覧をつくってみなさい。
\item 授業や、夜のニュース、ラジオを聞きながら、それらの言葉を使う練習をしてみなさい。
\end{enumerate}
\chapter{ディベートのフォーマットとディベーターの責任---Debate~Formats~and~Speaker~Responsibilities---}
インディー500だろうと、オリンピックのアイスホッケーの決勝戦であろうと、スーパー・ボールであろうと、勝利チームはルールを正確に知っているし、出場チームの全てのプランを如何に取り入れていくかを知っている。構成力、プランニング、チームワークは優勝には絶対不可欠なものだ。別の活動のように、ディベートの成否は、それぞれのチームのメンバーがディベートに特有な責任をもって、各自の立場で役割を果たすこと如何にかかっている。スビーチの順序、長さ、義務はディベートが始まる前に決められている。この章ではディベーターの責任とディベートのフォーマットに眼を向けてみよう。この章を読めば、次の用語は理解できているはずである。:

\begin{center}
\begin{gt}立論(constructive~speech)\end{gt}

\begin{gt}準備時間(preparation~time)\end{gt}

\begin{gt}反対尋問ディベート(cross-examination~debate)\end{gt}

\begin{gt}反駁スピーチ(rebuttal~speech)\end{gt}

\begin{gt}大統領ディベート(Lincoln-Douglas~debate)\end{gt}

\begin{gt}ディベーターの責任(speaker~responsibilities)\end{gt}

\begin{gt}標準ディベート(standard~debate)\end{gt}

\end{center}
\section{ディベートのフォーマット---Debate~Format---}
アカデミックなディベートで人気のあるのは、次の3つのフォーマットである。まず第一に、伝統的かつ標準的ディベートのフォーマット。これは、ディベートの初心者に最も多く使われるフォーマットである。第二に、クロス・エキザミネーション・ディベート(反対尋問ディベート)のフォーマット。これは、高校や大学のディベート・トーナメントで最もよく使われる。第三に、リンカーン・ダグラスディベート(大統領ディベート)のフォーマット。これは、このフォーマットを使った2人の有名なディベーターであるエイブラハム・リンカーンとスティーブン・ダグラスに敬意を表して名付けられた、2人で行うディベートのフォーマットである。
\begin{description}
\item[標準ディベートのフォーマット(Standard~Debate~Format)] このディベートのフォーマットは、だいたい1970年代の中頃まで高校や大学でよく使われた。このフォーマットは、\begin{gt}立論\end{gt}と\begin{gt}反駁\end{gt}という2つの型のスピーチで構成されている。立論は、時間にして8分から10分かけて、主要な論点を示す。反駁は、時間は4分から5分で、立論に続いてなされ、主要な論点を反駁し展開するために行われる。\\70年代に反対尋問ディベートが人気を獲得し始め、ディベート・トーナメントでは徐々に標準ディベートに取って代わっていった。標準ディベートのフォーマットは、今日でも、初心者のためのディベート・トーナメントに多く使われている。このフォーマットを使うことによって、ディベートの基本を学んでゆく。ひとたびディベートの基本的な技術をマスターしてしまえば、反対尋問ディベートの技術も学べるし、試合にも参加できるようになる。
\begin{center}
\begin{gt}\underline{標準的ディベートのフォーマット}\end{gt}
\end{center}
\begin{center}
\begin{tabular}{ccc}
& \underline{高校} & \underline{大学} \\
第一肯定側立論~~~~~~ & ~~~~8分~~~~ & ~~~~10分~~~~ \\
第一否定側立論~~~~~~ & ~~~~8分~~~~ & ~~~~10分~~~~ \\
第二肯定側立論~~~~~~ & ~~~~8分~~~~ & ~~~~10分~~~~ \\
第二否定側立論~~~~~~ & ~~~~8分~~~~ & ~~~~10分~~~~ \\
否定側第一反駁~~~~~~ & ~~~~4分~~~~ & ~~~~5分~~~~ \\
肯定側第一反駁~~~~~~ & ~~~~4分~~~~ & ~~~~5分~~~~ \\
否定側第二反駁~~~~~~ & ~~~~4分~~~~ & ~~~~5分~~~~ \\
肯定側第二反駁~~~~~~ & ~~~~4分~~~~ & ~~~~5分~~~~ \\
\end{tabular}
\end{center}
\end{description}
\begin{description}
\item[反対尋問ディベートのフォーマット(Cross-Examination~Debate~Format)] \begin{gt}反対尋問ディベート\end{gt}は1930年代に初めて登場した。よく考えられ、検討され、発明的であり、創造的である反対尋問ディベートは、1970年代までに、好まれるディベートのフォーマットとなった。このディベートは、それぞれの立論のあとに尋問の時間(反対尋問)を加えれば、標準ディベートに似ている。反対尋問は、対戦する2チーム間に、直に衝突する機会を与える。
\end{description}
\begin{center}
\begin{gt}\underline{反対尋問ディベートのフォーマット}\end{gt}
\end{center}
\begin{center}
\begin{tabular}{ccc}
& \underline{高校} & \underline{大学} \\
肯定側第一立論 ~~~~~~ & ~~~~~~ 8分 ~~~~~~ & ~~~~ 10分 \\
否定側第一尋問 ~~~~~~ & ~~~~~~ 3分 ~~~~~~ & ~~~~ 3分 \\
否定側第一立論 ~~~~~~ & ~~~~~~ 8分 ~~~~~~ & ~~~~ 10分 \\
肯定側第一尋問 ~~~~~~ & ~~~~~~ 3分 ~~~~~~ & ~~~~ 3分 \\
肯定側第二立論 ~~~~~~ & ~~~~~~ 8分 ~~~~~~ & ~~~~ 10分 \\
否定側第二尋問 ~~~~~~ & ~~~~~~ 3分 ~~~~~~ & ~~~~ 3分 \\
否定側第二立論 ~~~~~~ & ~~~~~~ 8分 ~~~~~~ & ~~~~ 10分 \\
肯定側第二尋問 ~~~~~~ & ~~~~~~ 3分 ~~~~~~ & ~~~~ 3分 \\
否定側第一反駁 ~~~~~~ & ~~~~~~ 4分 ~~~~~~ & ~~~~ 5分 \\
肯定側第一反駁 ~~~~~~ & ~~~~~~ 4分 ~~~~~~ & ~~~~ 5分 \\
否定側第二反駁 ~~~~~~ & ~~~~~~ 4分 ~~~~~~ & ~~~~ 5分 \\
肯定側第二反駁 ~~~~~~ & ~~~~~~ 4分 ~~~~~~ & ~~~~ 5分 \\
\end{tabular}
\end{center}
\begin{description}
\item[大統領ディベート(Lincoln-Douglas~Debate~Format)] \begin{gt}大統領ディベート\end{gt}では、標準ディベートと反対尋問ディベートでは参加者が4人である代わりに、たった2人(それぞれの側に1人)で行われ、また、政策命題の代わりに、価値命題が使われる。このディベートの目的は、エヴィデンスではなく分析を強調することによって聴衆を説得することである。全国弁論術連盟(National~Forensics~League)は、国民的行事として、大統領ディベートを確立した。\\スピーチや反対尋問のためにそれぞれの側に割り当てられる総スピーチ時間は同じだが、個々のスピーチ時間は同じではない(下記のフォーマットの例を参照)。肯定側は否定側に比べ立論時間が少ないが、それは、否定側に、肯定側が示した特定の議論に応え、最初のスピーチですぐに発言する義務を与えずに、否定側のエヴィデンス資料と問題点を付加させるためだ。肯定側が持つ時間は同じだがその割り当てられ方が違う。付言すれば、肯定側は3回スピーチするが、否定側はたったの2回である。トータルに見たディベートの時間に対して論題への反対尋問の時間が多いという事実は、反対尋問の技術がディベートの勝敗により重要であることを意味している。大統領ディベートで使われるフォーマットに必要な総時間は、標準ディベートや反対尋問ディベートで要求される時間の半分であることに気づくだろう。
\end{description}

\begin{center}
\begin{gt}\underline{大統領ディベートのフォーマット}\end{gt}
\end{center}
\begin{center}
\begin{tabular}{cc}
肯定側立論 ~~~~~ & ~~~~~ 6分 \\
否定側尋問 ~~~~~ & ~~~~~ 3分 \\
否定側立論 ~~~~~ & ~~~~~ 7分 \\
肯定側尋問 ~~~~~ & ~~~~~ 3分 \\
肯定側第一反駁 ~~~~~ & ~~~~~ 4分 \\
否定側反駁 ~~~~~ & ~~~~~ 6分 \\
肯定側第二反駁 ~~~~~ & ~~~~~ 3分 \\
\end{tabular}
\end{center}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 標準ディベート、反対尋問ディベート、大統領ディベートの違いを述べよ。
\item 反対尋問ディベートを用いるメリットは何だと、あなたは思いますか?
\end{enumerate}
\section{準備時間---Preparation~Time---}
ある程度、ディベートは\begin{gt}即効でスピーチする行為\end{gt}で成り立つ。全てのスピーチがディベートが始まる前(第一肯定側立論を除いて)に書かれているわけではない。聴衆に感銘を与えるディベーターになるためには、演台に立つ前に、幾ばくかの時間で話す材料を組み立て、まとめなければならない。スピーチとスピーチの間に準備のために使われる時間は、\begin{gt}準備時間(prep~time)\end{gt}と言われる。試合で無制限に時間が与えられるのは理不尽であるから、試合ごとにその主催者が時間制限を設ける。準備時間には3つの型があるが、それをここで議論しよう。
\begin{description}
\item[1分(2分)ルール] このルールは個々のディベーターに適用される。1回のスピーチの準備に1分(2分)個々のディベーターに与える。準備とは、最終稿を簡単に書留め、エヴィデンスなどをまとめ、演壇に向かうことを意味する。例えば、肯定側が第一立論を終え着席したとき、否定側の第一立論のための準備時間は始まり、それから1分(2分)で否定側立論の準備が完了していなければならない。その時間をオーバーしてしまったら、その分だけ立論時間は減ってしまう。
\item[8分ルール] このルールは、ディベートの試合で最も良く使われる。このルールは、肯定側・否定側それぞれの\begin{gt}チーム\end{gt}に適用される。その試合で、8分の準備時間を好きなように使うことができる。スピーチした人が座ってから次のディベーターがスピーチし始めるまでが準備時間として計算される。経過時間はタイムキーパーが(いないときは、ジャッジが)記録し、それぞれの経過時間を教える。例えば、否定側が第一立論の前に4分使ったら、第二立論の前には1分、第一反駁の前には1分、第二反駁の前には2分というようになる。肯定側が反駁スピーチの前に準備時間を使い果たしたいと思うのは、重要なスピーチは入念にプランニングしておくことができるからだ。一方のチームが8分をフルに使ってしまったら、オーバーした分の準備時間はその後のスピーチ時間から引かれる。使わずに余った準備時間は、別の試合の為にとっておくことはできない。その時間は単なるロスト・タイムである。\\このルールには、5分ルールと10分ルールという2つのバリエーションがある。手順はまったく同じで、その長さが短かったり長かったりするだけだ。採用される時間は、試合の主催者の自由裁量に委ねられる。
\item[大統領ディベート] 大統領ディベートでは、そのディベートの試合中、それぞれのディベーターに全部で3分の準備時間を使うことが許される。これは、8分ルールと同じルールである。
\end{description}
\section{スピーチ担当者の義務と責任---Speaker~duties~and~responsibilities---}
ディベートを学ぶ際に重要な第一段階は、スピーチを担当するディベーターの義務と責任をよく理解してゆくことである。それは、ディベートの試合とルールの青写真(原図)である。立論のスピーチが行われている間に、いくつかの主張が示され、発展し、批評される。このあとに、半分の時間の反駁スピーチが続く。これらのスピーチの目的は、主張を展開し、肯定側・否定側の立場を手短に述べることである。

ディベートは肯定側第一立論から始まる。肯定側のディベーターは改革の支持を訴え、それに続いて、否定側第一立論は肯定側が示した主張(論旨)に反駁する。肯定側第二立論は肯定側の立論を再構築する(より発展させる)ことを試みる。否定側第二立論は肯定側のプラン(肯定側が示した解決法)に異議を持ちかける。

ディベーターの立場は、反駁でいくぶん変わってくる。反駁は、否定側第一反駁で始まり、肯定側第二立論が終わった時点でスピーチの順序が入れ替わる。否定側第一反駁は、肯定側が第二立論で再構築した返答に対して反論する。肯定側で最初の反駁を担当する人は、否定側の全ての主張(否定側が第二立論で主張した論点と反駁で拡張された論点)に応えなければならず、時間にして否定側のスピーチ時間とほぼ同じである。この肯定側第一反駁は、ディベートの試合全体を通じて、最も難しいスピーチであると多くの人は見ている。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{スピーチの順序~と~スピーチ担当者の責任}\end{gt}
\end{large}
\end{center}
\begin{center}
\begin{tabular}{|ll|} \hline
\begin{gt}\underline{スピーチの順序}\end{gt} & ~~~~~~~~~~~~\begin{gt}\underline{スピーチ担当者が果たすべき内容}\end{gt} \\ \hline
肯定側第一立論 & ~~~~~ 変革する理由・哲学・メリットと \\
 & ~~~~~その解決法(プラン)の提示 \\
否定側第一立論 & ~~~~~ 肯定側の用語の定義・*論題充当性(トピカリティー)の攻撃、 \\
 & ~~~~~肯定側の哲学・メリットに反論 \\
肯定側第二立論 & ~~~~~ 立論の再構築、否定側の主な主張への反論、 \\
 & ~~~~~立論の拡張的維持 \\
否定側第二立論 & ~~~~~ 肯定側のプランへ異議 \\
 & ~~~~~(実行可能性・問題解決性・デメリット)を提示 \\
否定側第一反駁 & ~~~~~ 肯定側第二立論の反駁・拡張・発展 \\
 & \\
肯定側第一反駁 & ~~~~~ 否定側の全ての主張(否定側第二立論、第一反駁)に返答 \\
 & \\
否定側第二反駁 & ~~~~~ 否定側立論・プランを拡張。この選択は重要。 \\
 & ~~~~~ここでの主張が勝敗を決めるとされる \\
肯定側第二反駁 & ~~~~~ 否定側第二反駁で拡張された異議に返答、 \\
 & ~~~~~肯定側立論の再々構築 \\
\hline
\end{tabular}
\end{center}
\begin{small}(訳者注:\begin{gt}論題充当性(トピカリティー)\end{gt}=肯定側が論題の語句をきちんと支持しているかどうかということ。この論点(issue)を落とすと、それだけで肯定側は負けとなる。)\end{small}

最後の2つの反駁スピーチに最終的な立場が集約されている。否定側第二反駁では、展開された反論はいくつかの重要なものに限られなければならない。なぜなら、全てを主張し、展開する時間はないから、選択が必要なのだ。肯定側第二反駁でスピーチを担当する人は、否定側第二反駁で展開された反論に応え、肯定側の立論を再構築する義務を持つ。

\begin{bf}--- Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 立論スピーチとは何か?
\item 反駁スピーチとは何か?
\end{enumerate}
\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}肯定側第一立論\end{gt}\begin{bf}---First~Affirmative~Constructive~Speech---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}肯定側第一立論\end{gt}には、全てが含まれるのが普通である。哲学、プラン、メリットが含まれるわけだ。このように、肯定側が示す変革の理由が全てディベートの最初にセット・アップされる。これによって、議論がより発展し、問題点の明確な定義がなされ、肯定側・否定側双方に議論を分析し、展開する機会が与えられる。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--:] \begin{gt}論題に対して最も実現可能性のある強力な立論を示し、自分達を強力に守られた立場に置く\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと:}\end{gt}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}肯定側の視点を要約した、簡潔で愛想のよい前置きを行う。\end{gt}
\item \begin{gt}論題に対する解決法を述べる。\end{gt}
\item \begin{gt}カギとなる用語の定義をする。\end{gt}
\item \begin{gt}変革に対する肯定側からの正当化を行う。(それぞれの立論の型に応じた正当化の仕方は第7章を参照。)\end{gt}
\item \begin{gt}問題を解決するプランを示す。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側のプランのメリットを示す。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側の立論の簡潔な要約をする。\end{gt}
\end{enumerate}

上の\( 4,5,6 \)の順序は、議論される肯定側立論の型によって決まる。(損失回避ケース--need~case--では\( 4,5,6 \)の順序であろうし、比較利点議論--comparative~advantage~case--では\( 5,6,4 \)の順序になるだろう。第7章参照。)

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{肯定側第一立論の概略}\end{gt}
\end{large}
\end{center}
\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}前置き(Introduction)\end{gt}
\item \begin{gt}論題に対する解決法を述べる(Statement~of~the~resolution)\end{gt}
\item \begin{gt}用語の定義(Definition~of~terms)~~\begin{small}*ときにはプランによってこれらの用語は定義される\end{small}\end{gt}
\item \begin{gt}内因性(Inherency)\end{gt}
\item \begin{gt}重要性(Significance)\end{gt}
\item \begin{gt}プランの提示(Presentation~of~the~plan)\end{gt}
\item \begin{gt}問題解決性(Solvency~of~rhe~plan)\end{gt}
\item \begin{gt}(コンパラティヴ・アドバンテージ・ケース--比較利点議論--の場合)プランのメリットを説明(Advantages~of~the~plan)~~\begin{small}*ニード・ケース--損失回避議論--の場合は、これは付け足しである。\end{small}\end{gt}
\end{enumerate}
\end{enumerate}
\end{enumerate}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 肯定側第一立論はどんな部分から成り立っているか述べよ。
\item 肯定側第一立論の背後にある戦略とは何か?
\item 肯定側第一立論では、何が重要か?
\end{enumerate}

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}否定側第一立論\end{gt}\begin{bf}---First~Negative~Constructive~Speech---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}否定側第一立論\end{gt}では、肯定側第一立論に直に反応する。この時点で、肯定側の用語の定義、問題領域の選択に賛成するか否か、否定側は決めなければならない。つまり、肯定側の立論のどこに反論する立場をとるのか、を決めなければならない重要な局面なのである。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--:] \begin{gt}現状の多面性を主張し、肯定側から守るべき城を取り去り、そして、肯定側第一立論で示された議論を乗り越えるようなディベートを展開する。\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと:}\end{gt}

\begin{enumerate}
\item \begin{gt}このディベートでの、否定側の哲学を簡潔に紹介し、説明する。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側の議論を分析するために、否定側から肯定側の議論の整理を行う。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側の用語の定義を攻撃する。これには、大抵、説明とエヴィデンスの両方が要求される。だが、説明のみで行うことも可能である。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側の論題充当性(トピカリティー)を攻撃する。これは、肯定側の主張する特定の領域への攻撃である。例えば、エイズ(AIDS)に関する児童への学校教育を肯定側が主張したとしよう。その論題、”論題:連邦政府は、アメリカ合衆国の小中学校に対し、(エイズについての)最低教育基準を確立すべきである。”における肯定側の根拠を、論題充当性の面から、つまり、「エイズについて学校で教育するということは、最低教育基準を設けるというような視点(あるいは関心)で収まるものなのか?」というように攻撃するのだ。この論点なら、充分ディベートになり得る。\end{gt}
\item \begin{gt}目標\begin{bf}(goals)\end{bf}を満たすときの、否定側からの目的と効率性を要約することによって、現状のシステムを保守する。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側は現状の変革に対する充分な正当化を行っていないことを主張する。\end{gt}
\item \begin{gt}このディベートでの、否定側の立場を簡潔にまとめる。\end{gt}
\end{enumerate}

否定側第一立論で上にあげた7つの段階全てを踏む必要はないが、否定側の戦略が肯定側の用語の定義と論題充当性を攻撃することにあるなら、それらは、第一立論で行うべきである。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{否定側第一立論の概略}\end{gt}
\end{large}
\end{center}

\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}否定側の哲学を紹介し言明する。ディベートで展開される肯定側の主張の特定の領域に関する否定側の立場と、この立論のあとで論点となる可能性のある否定側の議論を構成し、言明する。\end{gt}
\item \begin{gt}用語を定義する。肯定側の定義に反対する場合は、これに時間と論述の場所を割く。肯定側に賛成しないことで議論は発展するのであって、否定側の立場を支持するカウンター・エヴィデンスと権威者の意見の存在は不可欠である。その定義が、肯定側に如何に影響を与えるかが示されねばならない。\end{gt}
\item \begin{gt}論題充当性を示す。肯定側の論題充当性を攻撃する場合は、この議論に時間と論述の場所を割く。なぜ肯定側の立論がその問題の解決の範囲内にないのか、を慎重に説明することに注意が払われなければならない。\end{gt}
\item \begin{gt}反駁の一つ一つを構成する。次の枠組みは、その構成に役立つであろう。\end{gt}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}肯定側が使った用語を用いて、反駁されるべき肯定側の論点を示す。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側と比較して自分達の立場を述べる。\end{gt}
\item \begin{gt}否定側の論点のためのエヴィデンスを示す。\end{gt}
\item \begin{gt}自分達の論点が肯定側の立論にどのようなダメージを与えるかを考えながら、肯定側に立論にインパクトを与えるよう説明する。\end{gt}
\item \begin{gt}もう一度、自分達の立場を述べる。\end{gt}
\end{enumerate}
\item \begin{gt}否定側の哲学を述べ、肯定側の立論の全てにインパクトを与える否定側の論点を要約することによって、否定側の立場を強力にアピールする。\end{gt}
\end{enumerate}
\end{enumerate}
\end{enumerate}

否定側の主張を構成し、それを分かりやすくすることは、重要なことである。もしも議論が肯定側と識別し難いものである場合は、後々ディベートに負けてしまうだろう。自分達の主張の構成を分かりやすくするためには、番号付けをしたり、アルファベットを使うのがよい。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 第一否定側立論の戦略とは何か?
\item この立論で取り上げられるべき否定側の論点は何か?
\end{enumerate}

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}肯定側第二立論\end{gt}\begin{bf}---Second~Affirmative~Constructive~Speech---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}肯定側第二立論\end{gt}には、3つの主要な目的がある。:(1)~ディベートでの肯定側の立場を立て直すこと。~(2)~否定側第一立論で述べられた主な主張に反駁すること。~(3)~肯定側の議論を展開し、まだ残っている肯定側の立論資料をすべて示すこと。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--] \begin{gt}肯定側の立証責任を保守し、自分達の立場を守り抜き、議論の範囲を狭めること。\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと}\end{gt}

\begin{enumerate}
\item \begin{gt}簡単な前置きを行う。\end{gt}
\item \begin{gt}必要なら、肯定側の用語と論題充当性の定義を再構築することによって、肯定側の立論は、その論題を正当化しているのだと立証する。\end{gt}
\item \begin{gt}変革に対する肯定側の正当化を立て直す。\end{gt}
\item \begin{gt}”害”は実際に存在し、しかも深刻であり、何も手を打たなければ将来ますます悪くなる可能性があることを証明する。\end{gt}
\item \begin{gt}その”害”は現状のシステムにその原因を持っていることを論証するか、あるいは、肯定側のもたらすメリットは肯定側のプラン独自のものであることを明示する。\end{gt}
\item \begin{gt}これまでに攻撃されなかった肯定側の議論を、再び持ち出す。\end{gt}
\item \begin{gt}簡潔な要約を行う。\end{gt}
\end{enumerate}

第二立論でスピーチを担当するディベーターは、否定側第一立論で否定側が持ち出したすべての議論に反駁する準備をしておくべきである。可能な場合は、否定側の議論を肯定側の立論の枠組みの中に取り入れてスピーチするべきである。また、肯定側が示すメリットを加えることもあろう。しかし、これは肯定側の立論を守ることを犠牲にしてまで行うべきことではない。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{肯定側第二立論の概略}\end{gt}
\end{large}
\end{center}

\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}これまでのディベートを概観し、肯定側の立論と否定側の哲学の関係を示す。\end{gt}
\item \begin{gt}必要ならば、用語と論題充当性の定義を守る。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側の示す内因性を立て直して、否定側の反論に答える。\end{gt}
\item \begin{gt}否定側のすべてのエヴィデンスに攻撃を加える。出来れば、肯定側の哲学を使って現状のシステムを保守しようとしている否定側の哲学と議論に反駁する。\end{gt}
\item \begin{gt}否定側が取り上げなかった論点と、肯定側がこれまで示してきた主張を強調し、要約する。\end{gt}
\end{enumerate}
\end{enumerate}
\end{enumerate}

肯定側第二立論を担当するディベーターが、もしも新たなメリットを紹介するとしたら、それは前置きのすぐあとか、あるいは、否定側の攻撃のすべてに答えてから最終的に要約をする前に紹介するのがよいであろう。第二立論でメリットを付け加えることは有効ではあるが、否定側が挙げた論点に充分に答えることを犠牲にしてまで行うことでは、決してない。充分に応えることが出来なかったために内因性を失ってしまうようでは、付け加えたメリットで試合に勝つことにほとんど価値がなくなってしまう。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 肯定側第二立論の3つの目的を述べよ。
\item 肯定側第二立論の戦略とは何か?
\item 肯定側第二立論で新たなメリットを付け加えるべきか?その場合、スピーチではどこでなされるべきか?
\end{enumerate}

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}否定側第二立論\end{gt}\begin{bf}---Second~Negative~Constructive~Speech---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

伝統的に、\begin{gt}否定側第二立論\end{gt}では肯定側のプランを扱う。立論(変革の正当化)についての新しい議論の展開が必要なときもあろう。しかしこれは、非常に稀なときのみに行われるべきだ。否定側第二立論の主要な目的は次の3つの問題を扱うことである:(1)~プランの実行可能性、(2)~プランの問題解決性、(3)~プランのデメリット、この3つである。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--:] \begin{gt}肯定側のプランの受け入れに対して、プランの実行可能性、問題解決性、デメリットの概略を示す。\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと:}\end{gt}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt} このスピーチで否定側が言おうとしていることはなにか、そのアウトラインを示して前置きを行う。これが重要なのは、このスピーチの枠組みによって、肯定側の立論の枠組みから離すことが出来るからだ。肯定側のプランの反対意見に聴衆が賛同するように、その方向を定めるべきである。\end{gt}
\item \begin{gt} なぜ肯定側が実行しようとしていることは実現不可能であり、実際的でないかを示す。これには、3つないし4つの別々の議論が含まれるだろう。\end{gt}
\item \begin{gt} 肯定側のプランが、なぜ、立論で主張された現状のシステムの問題を解決することが出来ないのか、示す。\end{gt}
\item \begin{gt} 肯定側のプランのデメリットを詳細に述べる。これには、プランによって生ずる5つか6つの特定の有害な面と同数だけ論点が含まれるだろう。6つのあまり発展性のないデメリットよりも、議論を展開させる2つか3つのデメリットを示した方がよい。このデメリットは、それを支持するエヴィデンスとともに提示すべきである。\end{gt}
\item \begin{gt} 最も簡単な結果を示す。ここでは、(否定側第二立論でまとめておいた)メリットと、ここで提示したデメリットの対比をし、肯定側が提案したメリットの影響よりもデメリットの影響の方が大きいことを例証するのがよい。\end{gt}
\end{enumerate}

議論の\begin{gt}展開\end{gt}あるいは\begin{gt}存続\end{gt}は、否定側第一反駁でスピーチを担当するディベーターの手に委ねられるべきだが、否定側第二立論は否定側にとって、まず最初の地固めであると常に心得ておかねばならない。なぜなら、すぐそのあとに否定側第一反駁が続くからだ。問題解決性と実行可能性の議論は、ある場合には、説明を加えることによって立証した方がよいであろう。しかし、このふたつの議論は大抵、ロジックの議論である。それとは反対に、デメリットの議論にはエヴィデンスが必要とされる。デメリットの議論の展開には、肯定側が害や哲学、メリットを主張するときと同じくらいに、慎重さが要求される。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{否定側第二立論の概略}\end{gt}
\end{large}
\end{center}

\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}第一立論で示した否定側の哲学を引き合いに出しながら、前置きを行う。これには、否定側が主張しようとしていることの簡潔なアウトラインも含めるべきである。\end{gt}
\item \begin{gt}実行可能性への攻撃。肯定側特有の\underline{要素}、すなわちプランの実行可能性への攻撃が、ここで行われる。例えば、肯定側がプランの実行に5000ドルの予算を必要とし、その財源をタバコ税に求めた場合、否定側はタバコ税では充分に財源を確保できないと主張する。\end{gt}
\item \begin{gt}問題解決性への攻撃。肯定側のプランでは必要性を満たすことが出来ない、あるいは、主張するメリットの達成は不可能である、という例証をここで行うべきである。\end{gt}
\item \begin{gt}デメリットを示す。「肯定側のプランが、万が一、必要性を満たしメリットを達成したとしても、そのプランによるメリットを相殺するようなデメリットが生まれる。」このことを論証するために、肯定側の全てのあらゆる議論に攻撃を加え、発展させる。デメリットの例としては、失業、軍事費の支出による財源の低下、(農作物の輸出を制限するような)第三諸国の飢餓、(より多くのエネルギーを確保するための石炭採掘による)汚染問題、などが含まれるであろう。デメリットを展開するときに重要なのは、肯定側のプランに対するデメリットの一般的重要性と独自性を分かりやすく説明することだ。これらのデメリットは、なぜ肯定側のプランによるものであって、現状のシステムにその原因はないのかを示す必要がある。\end{gt}
\end{enumerate}
\end{enumerate}
\end{enumerate}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 否定側第二立論の最も大事な焦点は何か?
\item 否定側第二立論では、どんな戦略がとられるべきか?
\item 問題解決性と実行可能性の議論は、通常、どちら側の議論か?
\end{enumerate}

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}否定側第一反駁\end{gt}\begin{bf}---First~Negative~Rebuttal~Speech--\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}否定側第一反駁\end{gt}は、最初の反駁スピーチであり、否定側第二立論のすぐ後に行われる。否定側第二立論と第一反駁は、\begin{gt}否定側にとって\.や\.っ\.か\.い\.なもの\begin{bf}(negative~block)\end{bf}\end{gt}であるとよく言われるが、注意深く構成すれば、肯定側立論に重要なインパクトを与えることができる。否定側第一反駁で反駁を担当するディベーターは、肯定側第二立論で示された立論に対して反駁し、それを拡張し発展させたいと思うであろう。なぜなら、このスピーチは時間にして第一立論の半分だが、これからどの議論を存続させるか入念に選択する必要がこのスピーチ担当者にあるからだ。肯定側第二立論で初めて肯定側が取り上げた議論は無視してはならない。肯定側第二立論の論点に初めて応えるには、第一反駁では遅すぎると、多くのジャッジが考えているからだ。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--] \begin{gt}否定側立論で示した攻撃を、さらに加える。\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと:}\end{gt}

\begin{enumerate}
\item \begin{gt}用語を定義する。否定側がその定義を充分に守りきれるかどうか決める。もしも、守りきれる場合はこの議論をしなくても良い。そうでない場合は、なぜ肯定側の用語の定義がまだ受け入れられていないのか説明する。\end{gt}
\item \begin{gt}否定側第一立論で論題充当性を問題にしたら、肯定側がその議論に充分応えてきたか判断する。もしも、否定側が肯定側立論は論題充当的でないとまだ感じるようなら、肯定側第二立論に反駁し、なぜ肯定側立論が論題充当的でないのか説明を加える。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側の反論に反駁しながら、否定側の最初のスピーチで立論し残した個所に戻ってみる。ここで心得ておかなければならないのは、すべての論点に戻って議論する時間などないということだ。慎重に論点を選び、それを発展させ、なぜこのディベートにおいてその立論の議論が最も重要なのかを説明する。\end{gt}
\item \begin{gt}肯定側による変革の正当化にもう一度目をやる。\end{gt}
\item \begin{gt}この否定側反駁の要約を行う。\end{gt}
\end{enumerate}

否定側第一反駁の結果、肯定側立論(変革の正当化)に関する否定側の立場が、今述べたばかりであるプランへの反論と関連づけられていなければならない。ここで役に立つのは、「万が一」という言葉で議論を展開することだ。例えばこうする。「必要性は存在しない。しかし、\begin{gt}万が一\end{gt}存在したとしても、そのプランは必要性を満たさないし、そのプランを拒否してしまうようなデメリットを生んでしまうだろう。」この否定側第一反駁によって、否定側の立場が完全にまとまったものとなる。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 否定側第二立論と第一反駁は、何という呼び名で知られているか?
\item なぜ、否定側第一反駁で反駁を担当するディベーターは肯定側第二立論で示された議論を無視してはならないのか?
\end{enumerate}

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}肯定側第一反駁\end{gt}\begin{bf}---First~Affirmative~Rebuttal~Speech---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}肯定側第一反駁\end{gt}はディベートにおいて最も難しいスピーチの一つである。その理由は、ここで反駁を担当するディベーターは否定側の2つのスピーチ(第二立論、第一反駁)に応えなければならず、そのために押さえなければならない範囲が広くなるからである。4分か5分のスピーチ(フォーマットによる)で、連続して行われた12分から15分の否定側の議論に応えなければならない。このスピーチの難しさは、系統的にうまくまとめ、より簡潔な言葉を使うことによって、優しくすることも出来ることにある。ここで反駁を担当するディベーターは、否定側第二立論で提示された新たなエヴィデンス資料の全てに応える義務を負う。多くの場合、この議論は肯定側のプランを扱っているが、否定側第一反駁で示された最も重要な議論にも時間を残しておくことも忘れてはならない。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--:] \begin{gt}立証責任を満たすという肯定側の戦略をより深め、肯定側のプランの正当性を立証し、正当化とプランの両面においてディベートの範囲を狭める。\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと:}\end{gt}

\begin{enumerate}
\item \begin{gt} プランへの否定側の反論に反駁する。出来るだけ多くの議論を統合・整理することに努める。否定側の議論で抜け落ちていた関連性とともに、推論における誤りを指摘する。可能ならば、否定側のデメリットは如何にして肯定側にとって本当はメリットであるかということを示すよう努める。\end{gt}
\item \begin{gt} 攻撃された主な論点において、それを建て直すために、慎重に論点を選んで肯定側の立論に立ち帰る。いくつかの問題点に関して肯定側の主張に焦点を当てることによって、ディベートの範囲を狭めてみる。なぜそれらが重要な問題点なのかを説明する。\end{gt}
\item \begin{gt} 否定側第一反駁の議論を出来るだけ統合・整理する。\end{gt}
\item \begin{gt} 肯定側の立論の\.強\.さを強調して、簡単な要約を行う。\end{gt}
\end{enumerate}

多くの範囲が取り上げられなければならないし、時間制限内で収まるように迅速にカバーしなければならないが、ディベートにインパクトを与えるような返答は完全になされなければならない。5分の反駁スピーチ時間では、プラン攻撃の反駁に3分、立論の建て直しに2分かけるとしばしば言われる。4分の反駁スピーチでは、2分から2分半がプランの攻撃の反駁に費やされ、残りを立論の建て直しに使うと言われる。だが結局は、与えられた時間内で如何に効率よく時間配分を行うか、自分自身で決定しなければならない。時間に注意しながら、賢明に割り振り、スピーチしながら言葉の一つ一つに考慮することを忘れてはならない。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 肯定側第一反駁は、なぜディベートの中でも最も難しいスピーチとされるのか?
\item 肯定側第一反駁の戦略は、どんなものであるべきか?
\item 5分の反駁スピーチでは、立論とプランの議論にどれくらいづつ時間をかけるべきか?
\item ここでのスピーチ担当者は、どのようにしてディベートの範囲を狭めるべきか?
\end{enumerate}

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}否定側第二反駁\end{gt}\begin{bf}---Second~Negative~Rebuttal~Speech---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

このスピーチはディベートの試合でスピーチする最後の機会であるから、否定側は展開する議論を慎重に選ばなければならない。否定側の2人は一緒に行動して、投票の分かれ目になっている論点--voting~issues--(肯定側と否定側のどちらに投票するか、その決定理由)は何なのかを判断しなければならない。否定側第二反駁が終わった時点で、ジャッジの人たちが、「この反駁で示された議論が試合を通じて最も重要な議論であった」と見てくれるよう、否定側はスピーチしたいと思うだろう。だが、時間は短いし、取り上げられるべき範囲は広い。反駁時間を5分と仮定した場合、立論に関する議論に2分、プランに関する議論に3分費やすのが、従うべき最も良い原則とされる。なぜなら、プランに関する議論はディベートでは最後の方に行われるから、その議論には、それを取り上げ展開する時間が最も長くなるからである。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--] \begin{gt}否定側が目をつけた議論の主張が、投票の際の論点になるよう確認し、デメリットの重要性が、肯定側のメリットや問題解決性に優ることを論証する。\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと:}\end{gt}

\begin{enumerate}
\item \begin{gt} 簡単な前置きをし、このスピーチの方向性を明示する。\end{gt}
\item \begin{gt} 妥当なら、論題充当性と用語の定義を簡潔に再構築する。\end{gt}
\item \begin{gt} 投票の際の理由となる主要な議論を再構築し、否定側からそれらを展開する。\end{gt}
\item \begin{gt} 肯定側の返答に反駁し、肯定側が取り上げなかった論点を指摘しながら、プランの反論とデメリットを繰り返す。しかし、全ての否定側の主張を繰り返す時間的余裕はないから、否定側にとって最も重要であるデメリットを慎重に選択し、必要ならば、残りを捨象して、主張の繰り返しを行う。\end{gt}
\item \begin{gt} 論題に反対票を投ずるよう求めながら、否定側の立場を要約する。\end{gt}
\end{enumerate}

忘れてはならないのは、否定側第二反駁でスピーチを担当するディベーターは、否定側の立場に関する最後の言葉を述べるということだ。否定側2人の間のコミュニケーションは不可欠である。おそらく、一方のディベーターが述べた論点よりも、もう一方のディベーターが述べた論点の方が投票の決定理由になることもあるだろう。と同時に、その逆の場合も有り得る。否定側第二反駁で反駁を担当するディベーターが立論とプランのどちらを押さえるかは、その人個人にかかっている。ディベーターの中には、個々の試合に応じて決定を下し、投票上最も重要な論点で否定側第二反駁を締めくくるディベーターもいるが、その論点は”立論”にある試合もあるし、”プラン”にある試合もある。また、最初に立論を押さえ最後にプランの攻撃を加えるディベーターもいるが、これは、否定側の守りの立場であると考えられよう。もしも、必要十分な時間があると考えられるなら、投票上最も重要な論点の指摘で終わるよりも、その論点の反駁から始めようとするだろう。それから、最後まできて何かが抜け落ちているとしても、それは投票上重要な論点に比べれば取るに足らないものである。否定側は、それらの論点の全てにおいて優ることによってその試合に勝つことが出来るのであるから、勝利の鍵は、思考、連携、系統的な構成にある。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 投票上重要な論点(voting~issues)の意味を述べよ。
\item 5分間の反駁スピーチで、立論とプランに充てられるのに好ましい時間はどのくらいか?また、その理由は?
\item 否定側第二反駁の戦略は如何にあるべきか?
\end{enumerate}

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}肯定側第二反駁\end{gt}\begin{bf}---Second~Affirmative~Rebuttal~Speech---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

最後の否定側の反駁に続いて、\begin{gt}肯定側第二反駁\end{gt}が行われる。試合では、この主張が結びとなる。ほかの全ての反駁と同様、このスピーチは新しい論点(new~arguments)を含んではならない。新しい論点とは、ディベートで最初に取り上げられた一連の推論と強調のことである。

\begin{description}
\item[Strategy--戦略--] \begin{gt}ディベート全体を見通して、ディベートでの肯定側の基本的な戦略を押し進める。\end{gt}
\end{description}

\begin{gt}\underline{やるべきこと:}\end{gt}

\begin{enumerate}
\item \begin{gt}簡単な前置きとこのスピーチの方向性を示す。\end{gt}
\item \begin{gt}プランへの反駁に対してその返答を展開する。主要なデメリットには細心の注意を払い、否定側の反駁で取り上げられなかった点を指摘する。可能な場合は、否定側の議論をまとめる。\end{gt}
\item \begin{gt}スピーチの中心に肯定側立論が頼っている3つか4つの主要な論点を持ってくる。それらが否定側が確認した主張と異なっている場合は、その理由を説明する。\end{gt}
\item \begin{gt}基本的な肯定側の分析を繰り返し、肯定側への支持を求める。\end{gt}
\end{enumerate}

肯定側第二反駁で反駁を担当するディベーターは独特の立場にある。ジャッジためにそのディベートをまとめる最後の機会を持つからだ。これまでの議論が混乱したまとまりのない議論となってしまっている場合は、それらをまとめる最後の機会である。このスピーチで反駁を担当するディベーターがやらなければならないのは、そのディベートの試合の一連の流れにおいて、自分達の主張が如何なる意味を持っていたのかを説明することである。例えば、自分達のメリットと問題解決性は、なぜ否定側が主張したデメリットよりも優っているかを論証することが挙げられよう。ディベーターは正直であるべきであって、この試合で提示されなかった論点を意図的に示したりしてはならない。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 反駁スピーチでニュー・アーギュメントを持ち出すことは可能か?
\item このスピーチで反駁を担当するディベーターは、どのようにしてこの最後のスピーチでディベートの範囲を狭めるよう努めるべきか?
\end{enumerate}
\chapter{論題の検証---An~Examination~of~Proposition---}
一般的に言って、ディベートで選ばれるテーマは、立法府や裁判所のような「現実の世の中」の問題を解決する場所において交わされる議論のテーマと似ている。このパラレルな関係を示すよい例が1973年に起こった。その当時のカレッジ・ディベートのテーマはエネルギーの有用性に関するものであったが、ディベーターがその年のディベート・トーナメントに参加しているときに、OPECがアメリカ合衆国に対する石油輸出の停止に向けて動き始めた。学生ディベーター達は、重要かつタイムリーな政治問題についての強さと弱さにかなり精通している立場にあると知ったわけである。なぜなら、ディベーターは、それら問題について双方の側から議論していたが故に、国の政治を分析する必要があったからである。その結果、ディベーターはその問題に精通した国民となった。この章を読んだあとには、次に示す用語を理解しているべきである。:

\begin{center}
\begin{tabular}{cc}
 & \\
\begin{gt}問題領域(Problem~Area)\end{gt} & \begin{gt}政策命題(Proposition~of~Policy)\end{gt} \\
\begin{gt}事実命題(Proposition~of~Fact)\end{gt} & \begin{gt}価値命題(Proposition~of~Value)\end{gt} \\
 & \\
\end{tabular}
\end{center}

この章では、論題はどのような形をとるかに注目し、ディベートにとって有用な論題の型に目を向けることになるだろう。最終的には、なぜ論題の形で綴られるのか、ディベートでは聴衆はどんな役割を果たすのか、が分かるであろう。

\section{問題領域---The~Problem~Area---}
\begin{gt}問題領域\end{gt}とは社会や集団が関心を持つ一般的なテーマである。例によって、問題領域は今問題になっている多くの問題を包括するほど範囲は広い。例えば、水質汚濁が問題領域とされた場合、水質浄化、適切な農業実習、殺虫剤の使用は、その問題領域の範囲内で議論することのできる特定の問題群である。

問題領域を狭めてゆくためには、現状のシステムの目標のアウトラインを示すことから始める。それから、その目標に到達するために何がなされるべきか、現状のシステムはうまく機能していたかを自問し、現状のシステムが目標に向けてうまく機能していなかった点を見つけだし、その失敗の原因を究明するために分析を行う。論題になるかどうかを見極めるときに、次に示す質問は役に立つだろう。:

\begin{enumerate}
\item その問題領域の範囲内に、実現を望むが未だ満たされていない目標はあるか?
\item その目標に向けて、今までにどれだけ進歩があったか?
\item なぜその目標は達成されなかったのか?その障害となったものはなにか?
\item その障害の克服には、どんな解決法を実行することができたであろうか?
\item 比較してみた場合、目標の達成に向けてとられてきた解決法のどれが最も効果的であったか?
\end{enumerate}

上に挙げた5つの質問に答えることによって、問題領域の強さと弱さを定めることが出来るようになるだろうし、プランの見取り図を描く一助となり、どこをリサーチする必要があるのかを決めることが出来るだろう。最後には、実際に意見を発表しなければならないと決意するいくつかの論点に眼をつけることが出来るようになる。

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item あなたが興味を持つ問題領域を選び出しなさい。上に挙げた質問を用いることによって、その問題領域の強さと弱さを分析しなさい。それは、ディベートにとって有用か?
\end{enumerate}
\section{論題(命題)---Propositions---}
ある\begin{gt}解決\end{gt}が論題(命題)であって、考える余地が与えられており、それには、説明、論議、証明が要求される。論題を議論することによって得られる解決のなかでも、取るに足らない解決は議論されないだろうし、余りにも曖昧な言葉で綴られているものは意見が噛み合わなくなるから、誰も論議したいと思わないだろう。ディベートの論題は明快で重要な選択が示されるべきである。実行可能な曖昧でない解決を伴った重要な問題が存在すべきである。

論題によって、一般的なディスカッションの領域が狭められ、スタート地点とゴール地点が得られる。例えば、水質汚濁の全ての面を検証する代わりに、注意を向ける価値のある水質汚濁問題のある特定の面に、論題は直接関心を寄せるわけだ。それはまた、解決の一手段でもあり、その手段によって、眼をつけた問題に解決をもたらす。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}論題の選択\end{gt}\begin{bf}---Choosing~a~Proposotion---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

高校のディベートでは、毎年、全国的なディベートのテーマが選ばれ、そのテーマは、その一年の間アカデミックな場でディベートされる。まず第一に、National~University~Extension~Association's~Committee~on~Discussion~and~Debate~(ディスカッションとディベートについての全国大学公開協会の委員会)が、いくつかテーマを選び、それから、学校で弁論術を教えている先生と何人かの生徒に投票用紙を郵送する。その優先的に行われた投票を集計し、委員会はその集計結果を発表する。最近数年間の高校のテーマから明かに示されているのは、その多様で視野の広い論点だ。これまでの選挙の結果を以下に示す。:

\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国にある全ての私立の小・中学校への公的財政援助は、連邦政府からの援助を除外して行われるべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ正副大統領の選挙方法は、大幅に変革すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}刑法改革の包括的実施計画はアメリカ合衆国全土で採用すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府はアメリカ合衆国全国民に対し、総合医療を保証すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国の対外エネルギー依存率を大幅に減少させるために、連邦政府は包括的な実施計画を確立すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国は、他国への武器輸出をかなりの程度、縮小すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、働くことが出来るにもかかわらず貧しい生活をしている全てのアメリカ合衆国国民に職を与えるべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、アメリカ合衆国における水質の保護のために、全国的な総合政策を確立すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、アメリカ合衆国における包括的長期農業政策を実施すべきである。\end{gt}
\end{itemize}

大学レベルでは、別のテーマ選考委員会が投票の集計を責任を持って行うが、その投票は全国ディベート・トーナメント~(National~Debate~Tournament)~に属しているそれぞれのディベート・プログラムによって、その年ごと行われる。多くの大学は、その一年間、アカデミックな場で一つのテーマでディベートする。

ひとたび論題が選考されるようになれば、その分析の過程でその論題の解決法に焦点が当てられる。上で挙げた論題の一つ一つが、国際問題や国内問題を扱っていることに気づくであろう。これらの論題は全て、多くの特徴を共有している。

まず第一に、論題は、肯定側が現状のシステムの変革を提案する側にくるように、綴られる。否定側は、論題に対して反対の主張をし、常に現状のシステムを守る立場に置かれる。ディベーターは、決して次のような質問をディベートしてはならない。その質問とは、肯定側を現状のシステムを保守する立場に置くような質問である。(つまり、逆の立場にディベートをもってゆくような質問をしてはならない。)例えば、\begin{gt}”論題:アメリカ合衆国は、他国への武器輸出を大幅に縮小すべきではない。”\end{gt}は、こう変えるべきである。\begin{gt}”論題:アメリカ合衆国は、他国への武器輸出を大幅に縮小すべきである。”\end{gt}

第二に、テーマの一つ一つが現状のシステムの\begin{gt}たった一つ\end{gt}の変革を訴えるということである。肯定側は政策の変革をたった一つ主張するよう求められ、否定側は、現状のシステムのたった一つの要素を保守するよう求められる。”論題:アメリカ国議会は全ての私立の小・中学校に対して財政援助を行い、加えて、連邦政府はアメリカの小・中学校のために最低教育基準を確立すべきである。”という論題は、興味をひくものだが、しかし、そのような論題は2つの別の論題に分割すべきで、それぞれのテーマは次のように使う。:

\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ国議会は全ての私立の小・中学校に財政援助を行うべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、アメリカの小・中学校のために最低教育基準を確立すべきである。\end{gt}
\end{itemize}

しかし、肯定側はある一つの解決に対して、”害”はいくつ主張してもかまわない。例えば、教育というテーマのもとで、肯定側が2つの問題(「高校の中退率」と「十分な職業訓練授業の欠如」)を提出しようと決意したとしよう。それらの問題に対する論題は分離すべきだが、小・中学校教育がテーマのときには、そのどちらも取り上げられないだろう。

最後に、第三に、論題は偏見の影響を受けないように綴られ、聴衆とディベーターの双方に明快な言葉であることだ。総合医療問題を扱うテーマが、もしも「耐え難いほど重く、無力な総合医療の・・・」と綴られるならば、それは不適当な論題である。また、否定側は、「総合医療」というような\.お\.き\.ま\.りの用語が論題に含まれている場合は、肯定側の解釈をかなりの程度、呑むことになろう。

よって、一般的にいって、テーマはある制限内に収まるものだ。その制限とは:(1)~肯定側が、常に、現状のシステムの変革を主張する立場に置かれること。;(2)~現状のシステムにおけるたった一つの変革が提案されること。;(3)~そのテーマは、偏見のなく綴られていること。・・・・・・である。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 論題は、肯定側が論題をどうするように綴られるのか?
\item 肯定側が、現状のシステムを保守するよう要求されることはあるか?
\item 論題には、いくつの概念が含まれるか?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 以下に示す論題は、いずれも論題となるための制限(論題を成立させる特徴)を満たしていない。その理由を述べよ。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}学校は、期末試験を削除する基準を確立すべきであり、また卒業のための適正テストを要求すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}徴兵制は国防を確約するために、必要性を持たない。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}裁判官は一般市民である陪審員以上に、刑を与える権限を持っている。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、全てのアメリカ国民に対して年金を与え、医療を保証すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、職を求めている、何の技術を持たず無学歴の人たちに職を保証すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}学校は卒業生の将来の職に責任を持つべきではない。\end{gt}
\end{itemize}
\end{enumerate}
\section{論題の型---Types~of~Propositions---}
論題には、3つの型がある。それは、\begin{gt}事実命題\end{gt}\begin{bf}(Proposition~of~\begin{it}Fact\end{it})\end{bf}、\begin{gt}価値命題\end{gt}\begin{bf}(Proposition~of~\begin{it}Value\end{it})\end{bf}、\begin{gt}政策命題\end{gt}\begin{bf}(Proposition~of~\begin{it}Policy\end{it})\end{bf}の3つである。その一つ一つに、独自の支持、説明、展開、証明が要求される。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}事実命題\end{gt}\begin{bf}---Proposition~of~Fact---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}事実命題\end{gt}は、ある存在する事柄について、それに反対するステートメントである。ある既成事実に対して、定説以外の別の解釈も可能な状況もある、と主張するのだ。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった五感から直に体験することが出来る、ある物体や出来事が事実命題の候補である。「人参はオレンジ色の栄養価の高い野菜である。」は、実際に存在する物体についての事実の記述である。この既成事実に対して違った解釈を五感から得られるとすれば、「野菜は栄養価が高い」という点からの記述が一般的であろうが、しかし、この記述の真実は科学的に決定されるが為に、まだ事実命題である。

一般的に、事実命題は論題の3つのタイプの中で最もシンプルで議論充当性を満たし難いと考えられているが、これは議論が出来ないということを意味するのではない。事実に関する論題をめぐっての見解の不一致は存在する。例を挙げれば、刑事裁判はすべて、少なくとも議論可能な事実命題の一つだ。検察側は被告人は罪を犯していると主張し、それに弁護側が異議を唱える。要するに、裁判の間は検察側の事実命題がディベートされるわけである。事実命題が価値命題と政策命題に比べてあまり議論が発展しないのは、事実命題はたいてい別の事実を参照することによって、客観的に実証することが出来るからだ。その事件に関係する事実に眼を向けることによって、法廷において、訴訟に関与しているか否かを決定することが出来る。

事実の関する記述は、現在についてと同様に、過去のことについての記述であることもある。新聞の記事も、歴史からの物語も事実命題となる資格がある。事実に関する記述は、ある事実の証言以外にも、ある人物によって主張された記述であることもある。しかし、その記述は客観的かつ実証的でなければならないから、ある事実(それが存在するか否か)の立証化では、その信憑性やその主張をした人の経験に頼りきりにならない。最低限、実証の方法の独立を必要とする。

事実命題がディベートの大会で使用されていないのに対して、アカデミックな場、例えば、社会学習や、英語、哲学、政治、市民活動、経済学の授業などにおいて、事実命題は価値がある命題である。クラブ活動やサークル活動もまた、他の2つの論題よりもより頻繁に使うと考えている。一般的に、それらの組織は、彼らの興味範囲、構成員や社会全体の関心事を選ぶであろう。事実命題は、ほかの2つの論題に比べて視野を狭める傾向がある。だから、聴衆を前にしてディベートするには、かなりうまくいく論題なのである。

事実命題に本来備わっている論点は比較的少ないが、学生は次の3点を決定する必要がある。(1)~何が起こったか、(2)~その出来事を実証するためには、どんな情報が要求されるか、(3)~どんな情報が使用可能か、この3点である。これらの論点を考察することによって、結果的に事実命題を正確に分析することになる。以下にいくつか示すのは、事実命題の例である。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}テレビは犯罪率の増加の一役を担っている。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカの子供の半分以上が、現在、片親の家庭で育っている。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}高校における職業訓練の授業は、高校中退率を減少させている。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}子供が保育園(就園前の施設)に通うのは、社会的に幼稚園に通うための良い準備となっている。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}期末試験免除の選択権は、生徒の平均成績を上げている。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}教会系学校への国の介入は、憲法に違反している。\end{gt}
\end{itemize}

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 事実命題と何か?
\item 時間は事実命題とどんな関係があるか?
\item 事実命題を取り巻く論点には、どんなものがあるか?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}

\begin{enumerate}
\item 次に示す論題は、事実命題とされてきた。本当に事実命題であるのもあるが、中にはそうでないものもある。事実命題でないものを挙げ、それぞれ、事実命題に書き直しなさい。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}財政赤字は解消されるべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、アメリカ合衆国のエネルギー独立を達成するために包括的なエネルギー政策を確立すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}大学での学歴は、高校での学歴よりも、個々人をより職業に適した人材にする。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}新鮮な野菜の価格は、その栽培期によって変動する。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}2年間保育園(就園前の施設)に通った子供は、通わなかった子供に比べて、幼稚園への良い準備ができている。\end{gt}
\end{itemize}
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}価値命題\end{gt}\begin{bf}---Propositions~of~Value---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}価値命題\end{gt}は、ある人物、場所、事柄、概念、出来事の質(qualities)についての判断を表している。価値についての記述は意見や態度に関わっている。”アメリカの子供の半分以上が、現在、片親の家庭で育っている。”と言うときは事実即した言説であるが、”片親と暮らしている子供は、そうでない子供に比べて貧しい。”と言ったときは、その家庭環境の質についてある意見を述べているわけである。つまり、価値判断を加えているわけだ。

ある与えられた状況について事実を知っているのはすばらしいことだが、それはある状況にどれだけの人々が反応するか決定する価値である。事実は、私たちの言う時期が早ければ早いほど、真と偽の両面を持つが、事実の真偽は立証することが出来る。しかし価値は真も偽もない。せいぜい、ある特定の価値を持っていることの立証化が可能なのであって、その価値を持つべきか否かを立証することは出来ない。「フットボールは退屈だ」とある人が言えば、それはその人のフットボールへの態度について言っているのであって、フットボールそのものへの発言ではない。他の人には、「フットボールは最もエキサイティングなスポーツだ」と言うこともあろう。価値の立証化は不可能であるのにもかかわらず、価値が重要なのは、私たちが価値を持つことが出来、そして、あらゆることについて\.ひ\.い\.き\.目を持つことが許されているからだ。

価値命題は判断の言明であり、ある特定の事柄それ自体よりもむしろ、その事柄の質を問題にする。判断は、事実や出来事についての意見や態度を表現するが故に、重要である。好きか嫌いか、善いか悪いか、行動に移すべきか否か、もし行動するならどんな行動をとるべきなのか、などの見解を表現するわけである。次に示すのは、価値命題の例である。:
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国の防衛予算は、国家の安全を充分に保証している。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}高校3年間の英語教育は、基礎教育として充分である。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}モダン・アートは芸術的技術と独創性を欠いている。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}ボランティア活動は、個々人の性格を強化する。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}充分な医療は、権利であって、特権ではない。\end{gt}
\end{itemize}

ある問題が重要であり、実害があると判断したとき、人は価値判断をしている。あるプランが、結果的にメリットあるいはデメリットを持つ可能性があると言えば、価値判断が行われている。突き詰めて見た場合、政策の変更において行動を推奨し、採用されるべき政府の行動とそうでない行動の形式を明言することは、価値判断を行うことである。ディベートにおいて説得力のあるアピールはすべて、聴衆に支持される価値を必ず引き出している。ディベートの試合に勝つには、”価値の本質”を理解することによって、強化することが必要だ。ここで言う価値の本質とは、スピーチを行っているときに、その価値を如何にこちら側が出した論点への道しるべとなるように機能させるか、そして、聴衆が如何にこちら側の価値を使ってくれるか、ということに他ならない。

多くの重要な価値がある間は、完全に確立された価値は存在しない。相対する価値が衝突するとき、価値のプライオリティーは確立されねばならない。その価値の衝突の良い例は、自動車へのエア・バッグの義務づけをめぐる公開の論争において最近見られた。すべての自動車にエア・バッグを装着すれば、多くの人命を救うであろうという事実に疑問を抱いた人はほとんどいなかったが、政府は自動車の生産者側にエア・バッグの装着を要求しないことを決めた。なぜなら、オプションとしてのエア・バッグを買うか否かの選択は、政府よりはむしろ、市民にあると思われたからだ。この例では、選択の自由という価値が、生命という価値よりも重要だと評価されたのである。これと反対の例として、シートベルトの例がある。最近数年間で、多くの州が、フロント・シートには必ずシートベルトを装着することを義務づけし始めている。この場合、生命という価値が選択の自由という価値よりも重要であると判断されたわけだ。

多くの人が、価値命題をめぐるディベートを楽しんでいる。テレビのトーク番組を見る人は、きっと、価値命題についてのディベートを見ていると思っているだろう。「あのチームは、いいチームだ。」とか、「ロック・ビデオはモラルの退廃だ。」というような判断を個人的に反映させて見ているから、面白みを感じるのである。価値判断を正当化することは不可能であるにしても、価値命題に基づくディベートの目的は、興味を生み、観点を明確にすることにあるのであって、結論を導き出すことにあるのではない。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 価値命題とはなにか?
\item 価値命題の真偽を正当化することは出来るか?その理由を述べよ。
\item 価値命題は何に関しての言明か?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item これから述べる論題は価値命題であるとされてきた。しかし、それらのすべてが価値命題の基準を充たしているわけではない。価値命題ではない論題を識別し、それを価値命題に書き直しなさい。もし、価値命題にすることが出来ないと思うのなら、その理由を説明しなさい。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}2年間の数学教育は、幅の広い教育にとって不可欠である。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}ケネディ大統領は一人の暗殺者によって殺された。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}職を望むすべてのアメリカ国民に、職を保証すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}学校はそれぞれ、生徒のために、学校に喫煙場所を設けるべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}すべてのアメリカ人には、家と最低限の食料を得る資格がある。\end{gt}
\end{itemize}
\end{enumerate}
\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}政策命題\end{gt}\begin{bf}---Propositions~of~Policy---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

\begin{gt}政策命題\end{gt}は、採用されると考えられている一連の行動についての言明である。採用される場合は、現在または将来の政府、私的な機関の決定を導くよう意図されている。例えば、会社において、社の政策は雇用関係を統率する。学区では、学校の建物が外部の集団によって、いかに使われるかを統率する政策が決められるであろう。郡、州、連邦の立法担当者は政府の監督機関が執行したいと考えている政策を、議会で通す。

私たちが気に留めるにつれて、ある命題は一考に値する言明となる。政策命題は、行動あるいは決定を求めるのであるから、出来事やものを観察することによって証明される題材でもないし、その政策に従い法の力によって強制されるすべての人々の合意によって証明されるのではないという点で、事実命題や価値命題と異なる。なぜなら、政策は、その政策の影響を受ける人々の合意によって、究極的には、作られ維持されるのであり、正当なプロセスを経た変革に従うと考えられているからである。普通、政策は交渉の余地を残したものであると考えられている。大まかにいえば、政策についての言明はすべて、政策命題といえるだろう。しかしながら、ディベートにおいては、考慮するに値する政策の論題に焦点が当てられる。つまり、それは、私たちが受け入れを求めている命題であるといえよう。

政策命題には、一般的に、3つのカテゴリーが存在する。

まず第一に、政策がない場合における、決定や行動を導くための新しい政策の提案である。これは、すべての政策にとってのスタート地点である。前に出てきた”制服の規制問題”を思い出してみよう。1950年代や60年代の初めには、生徒達はかなりフォーマルな服装をしていた。60年代に、ヒッピー・ルックとして知られている長髪の青年やミニ・スカートが出現したとき、学校の管理者側は、生徒達が学校にとって適切な服装をしているか否かを恣意的に決定することが出来ず、その問題を家庭に回した。そのような混乱した状況に秩序を設けるために、管理者側と学生団体(場合によっては、父兄)が一緒に動いて制服の規則を作り上げ、生徒側に規則違反が見られたときは、学校の管理者側がその生徒を家に送り返した。これらの一連の新しい政策は、それ以前に何もなかったところに置かれたわけである。

第二に、現在存在しているが、ある理由によりもはや満足のいくものでなくなった政策を変更するための、修正案の提出である。当初の状況が大きく変わって、その政策が時代遅れになってしまうことがある。修正された政策の良い例が、州内高速道路のスピード制限の格下げである。1973年のオイル・ショックのとき、石油の国内消費を減らすために、時速70マイルから55マイルにされた。オイル・ショックが治まるにつれて、州の中にはこの政策を再び変えることを考え始めた州もある。将来は、スピード制限は再び時速70マイルに格上げされることだろう。

第三に、現状の政策の廃止の提案である。かつては、すべての高校で、ラテン語は必修であったが、いまは、いくつかの大学でのみ、この政策は維持されている。ある時点で、教育の権威者たちは、英語以外の言語の学習は必要であるとする政策を断念する決定を下したのである。また産業界ではかつて、65歳定年制を強制していたが、今では、(いくつかの例外はあるものの)求められた仕事を出来る年齢まで、労働者はその職場に留まることが出来る。強制的な政策を、退職や早期退職の推奨のプログラムに置き換えてきたわけである。

ディベートの試合の最中は、両チームとも論題に対する賛否の議論を公平なるジャッジに向けて行うわけだが、ジャッジはその論題を受け入れるのか拒否するか最終決定する責任を負っている。判断基準は、ディベートの試合の中で示された議論の善し悪しに基づいて行われる。ディベーターに期待されているのは、試合の中で結論に至ることではなく、ジャッジに対して彼らの立論を示すことである。次に示すのは、政策命題のいくつかの例である。:
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国は、すべての国民に最低年収を保証すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、小・中学校教師の資格に国家基準を設けるべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、消費財に安全保証を与え、強制すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}陪審制度は廃止すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国は、エネルギー備蓄に関する包括的実施計画を採用すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、失業率を低下させるプログラムを実行すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、アメリカ合衆国の空輸システムの質を守るために、包括的な国家政策を確立すべきである。\end{gt}
\end{itemize}

これらの論題はそれぞれ、意図した問題領域内での決定を統率するために、規則(rule)、規定(regulation)、法律(law)~を提出している。これらの論題は\.あ\.り\.ふ\.れ\.たものだが、権力をもつ機関(”連邦政府”、”アメリカ合衆国”など)と専門分野における行動(”プログラムを実施する”、”包括的政策を確立する”など)について述べられているところに特徴があるといえよう。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}政策命題\end{gt}とはなにか?
\item 政策命題は、事実命題や価値命題とどのように違うのか?
\item 政策命題の3つのカテゴリーとは何か、述べなさい。
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 次に示す論題は、政策命題とされてきた論題である。この中で、政策命題ではない論題を識別し、政策命題に書き直しなさい。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、NASA宇宙計画における安全を保証するアウトラインを確立すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}ロス・アンジェルスの地域別条例は、大幅に変革すべきではない。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}適切な食料の不足は、健康にとって害がある。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}軍事費の支出の増加は、社会政策には有害である。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、行方不明の子供たちの身元を確認し、親元へ戻すためのコンピューター・ネットワークを設立すべきだ。\end{gt}
\end{itemize}
\item 次に示す3つの論題を見て、その中の一つを選び、以下の質問に答えなさい。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、シートベルトを義務づける法律を確立すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、陸軍の徴兵制を再制定すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、歳老いたアメリカ国民を扶養する計画を確立すべきである。\end{gt}
\end{itemize}
\begin{enumerate}
\item 論題はディベータブルか?~理由も述べよ。
\item 論題は、議論充当性を持っているか?~理由も述べよ。
\item 論題は、単一領域を扱っているか?~理由も述べよ。
\item この問題の一般的な経緯(歴史)を述べなさい。
\item この問題に関係する法律、規定、規則は存在するか?~それらは、強化する必要があるか?~それらは不適切か?~充分か?~それぞれ理由を述べなさい。
\item この問題に対して、どのような解決が考えられ得るか?
\item 肯定側が開拓すべき基本的な領域はどこか?
\end{enumerate}
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}論題で使う言葉について\end{gt}\begin{bf}---The~Wording~of~a~Proposition---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

分析という目的にとって、ディベートの論題で使う言葉は、それぞれきちんと定義する必要がある。1986年から87年にかけて高校で行われたディベートの論題を検証してみたいと思う。\begin{gt}”論題:連邦政府は、アメリカ合衆国における長期的な農業政策を、包括的に実施すべきである。”\end{gt}という論題では、重要な用語を識別し、それらを定義することによって、分析を始める。この論題では、鍵となる用語は、
\begin{description}
\item[連邦政府] ---誰が変革を扇動するべきかを確認している。
\item[実施する] ---政策の実行の方向性を確認している。
\item[包括的な] ---政策の性質を限定している。
\item[長期的] ---政策の性質を限定している。
\item[農業] ---論題が望む対象を示している。
\item[政策] ---論題が望む対象を示している。
\end{description}

きちんとした言葉遣いで書かれた論題は、誰が行動し、何をなすべきかが、はっきりと確認できる。ときに、言葉遣いが曖昧なこともあるが、その訂正にはいくつかの有用な情報源がある。

まず初めに、辞書、教科書、百科事典を参照することである。これらは、一般的な用法についてのヒント、つまり、特定の専門分野における用語の定義がなされているから、チェックした方がよい。特に、テーマが法律や社会政策の分野にあるときは、特有の術語が多いから大いに役立つであろう。また、これは、公的分野、政治、経済、歴史の領域でも同じである。リサーチを進めてゆくに従って、その分野の専門家が術語をどのように使っているかをメモしたいと思うようになるだろう。

たいていの論題には、価値を含む用語が含まれているものである。先の農業分野では、「包括的」という言葉が、それに当たる。他の論題で見られるものに、「公正な」「新しい」「重要な」「最も」「制御する」「排他的な」「保証する」「利益を生む」などがある。これらの用語がなぜ価値を含むのかといえば、その意味が決まっておらず、曖昧であるが故に、その解釈に従うからである。問題の解決に至る前に、聴衆が、使われる単語を自分なりに納得させてしまう。\begin{gt}”論題:アメリカ合衆国は、貿易政策を大幅に変革するべきである。”\end{gt}という論題でディベートされるときは、「大幅に変革する」とはどういうことかを完全に理解しなければならない。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 論題を分析するとき、まず初めにしなければならないことはなにか?
\item 用語の定義を調べるときはまず辞書を調べるが、その言葉がどのように使われているかを調べるには、他にどんなところを調べれば良いか?
\item \begin{gt}”価値を含む言葉”\end{gt}とは何か?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 辞書の他に、用語の定義が載っている文献を図書館で調べ、そのリストを作りなさい。
\item 次に述べる論題を使って、論題の用語の確認と定義をしなさい。辞書だけでなく一般書も必ずチェックしなさい。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国は、エネルギー備蓄に関する包括的な計画を採用すべきである。\end{gt}
\end{itemize}
\end{enumerate}

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}聴衆\end{gt}\begin{bf}---The~Audience---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

次に考えなければならないのは、ディベートにおける\begin{gt}聴衆\end{gt}である。話した内容、テーマに即して集めた情報は、話しかける聴衆によって、ある程度、影響される。見定めておかねばならないのは、目の前の聴衆がどんな論点に最も興味を持つのか、である。先に挙げた農業問題を例にとってみよう。聴衆が農家の人たちの場合は、「農家の存続問題など大きな害はない」と直に主張したくはないだろうし、「農家の”ただ乗り”の時代は終わった」とも主張したくないだろう。「価格保護制度は廃止すべきだ」と主張すれば、聴衆はそのような議論を聞きたくもないだろう。

聴衆を分析することによって、自分達の主張を支持してくれる集団を勝ち取ることができる論点を選ぶことができる。議論することができる論点をザッと見て、聴衆のことも考えて、それから何を議論し、どのように議論してゆくかを決定するべきである。

例えば、「農家の存続問題はさほど大きな害はない」という論題を保守しなければならない場合は、農家の人たちという\.聴\.衆をそのような結論に\begin{gt}導いて\end{gt}ゆかなければならない。では、どうすればいいのか?~まず、農家の数に対する破産した農家の数を示した統計を示す。次に、その数字を他の職種の数と比べる。第三段階として、有効な農家救済計画---国、州、郡、それぞれに---の概略を示す。最後に、破産した後、農家にどのようなことが起こるのか図示する。

農家の人たちは、そんなことを聞きたくもないと思うだろうが、このアプローチによって、農家の人たちを無関心でいられなくすることができる。アカデミックなディベートでは、聴衆を説得することを目的としているから、政策は結果的に最大多数の人々にとって最大の幸福をもたらすことを示す。よって、特定の集団にとって利益となる政策を示す必要はまったくないのだ。

ディベートの試合で必要なのは、聴衆がいかに受け入れるかである。問題領域に関する分析を加えて、情報を明快に伝達し、マナーを守る。これは不可欠だ。論点は興味を引き、かつ、慎重に選ばれたものでなければならない。ディベーターは、説得の義務を課された、最初の、最良の導唱者なのだから。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 論点の選択と提示方法を決定するときに、なぜ、聴衆を分析することが重要なのか?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activity---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 次に示す論題を使って、論題を頑なに支持する聴衆、反対する聴衆を、5つ挙げなさい。その理由も説明しなさい。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}アメリカ合衆国は、貿易政策を大幅に変革すべきである。\end{gt}
\end{itemize}
\end{enumerate}
\chapter{リサーチ技術の向上---Developing~Research~Skills---}
ディベートの準備は、試験の準備と比較できる。というのも、試験自体はたったの1時間で終わるのに、試験対策のための勉強には数日ないしは数週間かかるからだ。それでは、なぜディベートの準備にそんなに多くの時間が必要なのだろうか?~それは、\begin{gt}「リサーチ」\end{gt}の為である。ディベートに使う論点を支えるエヴィデンス資料を集めるためには、リサーチしなければならない。ディベート・トーナメントでは、たった一つの論点を支えるために、ある特定のエヴィデンスのリサーチに数日かけることも、ディベーターにとっては決して珍しいことではない。その論点自体は、実際のディベートのスピーチの中では、たった30秒しかかからないかもしれないのに、である。リサーチを始める際に、次のキー・タームを理解しておく必要がある。:

\begin{center}
\begin{tabular}{cc}
\begin{gt}立論作戦書\end{gt}\begin{bf}(brief)\end{bf} & \begin{gt}索引(及び、案内)\end{gt}\begin{bf}(indexes~or~guides)\end{bf} \\
\begin{gt}カード・カタログ\end{gt}\begin{bf}(card~catalog)\end{bf} & \begin{gt}鍵となる言葉\end{gt}\begin{bf}(key~terms)\end{bf} \\
\begin{gt}証拠資料\end{gt}\begin{bf}(evidence)\end{bf} & \begin{gt}リサーチ\end{gt}\begin{bf}(research)\end{bf} \\
\begin{gt}エヴィデンス・カード\end{gt}\begin{bf}(evidence~card)\end{bf} & \\
\end{tabular}
\end{center}

ディベーターは、論点が持っているその潜在的な力を引き出すような情報を欲しがっている。有用な形式に当てはめたとき、この情報は、\begin{gt}エヴィデンス(証拠資料)\end{gt}として参照されるようになる。議論とは、既知なものから未知なものへと---証拠資料から結論へと---推論してゆく過程なのだ。それに、議論自体が、それを有効なものとして受け入れられるように証拠資料を必要としている。なぜなら、ディベートがすべて多くの論点を含んでいる、というのが理由のひとつ。それに、ディベーターは何度もディベートに参加し、ひとつのテーマをいかにも\.頭\.が\.良\.さ\.そ\.う\.に扱うために、かなりの量のエヴィデンスを必要としている、という理由が挙げられよう。エヴィデンスを充分に集めれば、そのテーマの領域における様々な論点を完全に理解することが可能となるだろう。逆に、そのような理解がなされなければ、集めたエヴィデンスを採用するのは、ディベーターにとって困難を極めることとなろう。全国大学ディベート・トーナメントでは、勝ち進んでゆくディベーターのほとんどが、そのテーマを完全に理解してエヴィデンスを使っており、また、彼らの主張を支える最高のエヴィデンスを使っている。
\section{証拠資料の探索---Seasrching~for~Evidence---}
リサーチが目標としているのは、可能な限りのレヴェルの高さを持ったエヴィデンスを手に入れることにある。エヴィデンスにとって重要なのは、その”質”であって”量”ではない。的を得た良質のエヴィデンスの1つは、ありふれた10のエヴィデンス以上にその論点を支えるであろう。良質のエヴィデンスを手に入れるためには、リサーチのプランを実行しなければならない。行き当たりばったりに本を読んだり、ひとつの分野から別の分野へと動き回って、エヴィデンスを作り出したりしても、ひとつの論点を支える質の充分なエヴィデンスは見つけ出すことが出来ないのが常である。ディベーターは、リサーチのプランに従って行動しなければならないのだ。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}リサーチ・プランの青写真\end{gt}\begin{bf}---Blueprint~Plan~of~Research---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

何事にも、初めが肝心である。リサーチの第一段階は、\begin{gt}ブレーン・ストーミング\end{gt}\begin{bf}(brain~storming)\end{bf}---自由に思い付いたことを出し合う議論(法)---である。ブレーン・ストーミングは、論題に関係があると思われるアイデアを自分の頭で(brain~で)探す、その過程のことであるが、この段階では、個人や集団の偏見が存在している可能性がある。ふつう、その場にいる人が多ければ多いほど、出てくるアイデアは多い。まずは、出てきたアイデアを全て書き留めてリストを作ってみよう。このリストは、次の段階---図書館詮索---に進む時になって、役立つだろう。

図書館の書籍への案内となるのが、\begin{gt}カード・カタログ\end{gt}である。これには、著者、書名、題材によって、図書館にある全ての本がリストアップされている。今、あなたが題材によって本を探しているとしよう。例えば、1987年から88年にかけて高校のディベートのテーマであった、\begin{gt}”論題:連邦政府は、アメリカ合衆国において包括的な長期農業政策を実施すべきである。”\end{gt}をリサーチしているとしよう。まず最初に見なければならないカード・カタログは、\begin{gt}「農業」\end{gt}の項目である。次に、穀物、作物、食料、農場、小麦、トウモロコシ、といったような特定の農業分野を参照する。自分が作った領域のリストを探しながら、それに付随する領域をカード・カタログで相互参照~(cross-reference)~する。新しい領域を発見するにつれて、鍵となる言葉~(key~terms)~のリストを持たなければならなくなる。記憶力に頼ってはいけない。ひとたび、カード・カタログから予備の図書目録が完成すれば、ほかの一般的な情報源を参照し、詮索したくなる。心しておかねばならないのは、テーマに関する新しい領域を発見するにつれて自分の図書目録を最新のものとするために、カード・カタログに戻るのだ、ということである。

\begin{flushleft}
\begin{gt}\underline{参照する書籍について}\end{gt}
\end{flushleft}

テーマに関する一般的な情報にとって、次に挙げる書籍は役に立つであろう。
\begin{itemize}
\item 百科事典---encyclopedias---
\item ---almanacs---
\item 年鑑---year~book---
\item 参考文献目録---reference~guides---
\end{itemize}
これらの情報源は、エヴィデンスを作るのではなく、その背景を与えてくれるものであり、後になってより専門的な情報源をあたるときに、役立つであろう。またこれらには、定期的に発行される刊行物に出てくる雑誌記事の題材を、著者、書名を五十音順に並べたリストが載っている。

\begin{flushleft}
\begin{gt}\underline{目録}\end{gt}
\end{flushleft}

ディベートされるテーマでは、入手可能な様々な専門的な目録を出来るだけ調べてみたいと思うものだ。大抵の図書館には、目録のリストが備えてあるが、それに全ての出版社が載っているわけではない。たとえ図書館に出版社が載っていなくても、その目録には、きっと信頼できる記事が網羅されているはずだ。いずれは、別の図書館で次に挙げるような目録を使う機会もあるだろう。

\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}
\begin{small}
(\begin{gt}訳者注\end{gt}:これから示す目録は原本(”\begin{it}Getting~Started~in~Debate\end{it}”)に載っているものであり、とりあえず私たちには関係がないかもしれませんが、一応挙げておきます。)
\begin{itemize}
\item \begin{it}Bibliographical~Index.\end{it}---目録の目録。
\item \begin{it}Education~Index.\end{it}---教育に関する記事や出版のリスト。
\item \begin{it}Resources~in~Education.\end{it}---同上。
\item \begin{it}Current~Index~to~Journals~in~Education.\end{it}---同上。
\item \begin{it}Books~in~Print.\end{it}---題材、著者、書名による著作の年次リスト。
\item \begin{it}Forthcoming~Books.\end{it}---5カ月先までに出版予定のある全ての本が載っている隔週誌。
\item \begin{it}International~Index~to~Periodicals.\end{it}---著者、書名、題材による雑誌記事をアルファベット順に載せたリスト。
\item \begin{it}Economic~Index.\end{it}
\item \begin{it}Cathoric~Periodicals~Index.\end{it}
\item \begin{it}Social~Sciences~and~Humanities~Index.\end{it}
\item \begin{it}The~Bulletin~of~the~Public~Affairs~Information~Service.\end{it}
\item \begin{it}Book~Review~Digest.\end{it}---主要情報の批判記事を見つけるには最適。
\item \begin{it}Book~Review~Index.\end{it}---批判記事を参照するには最適な情報源。
\item \begin{it}Cumulative~Book~Index.\end{it}
\item \begin{it}United~States~Government~Printing~Office:Monthly~Pubulications~Catalog.\end{it}---見出しによって全ての政府発行物を載せている参考文献。
\item \begin{it}United~States~Government~Printing~Office:Congressional~Information~Service~Index.\end{it}---1970年以来の立法機関から出版された書物に注釈をつけて載せている。
\item \begin{it}United~Nations~Document~Index.\end{it}---たいへん有用だが、しばしば見落とされる。
\item \begin{it}Index~to~Legal~Priodicals.\end{it}
\item \begin{it}Foreign~Affairs~Bibliography.\end{it}
\item \begin{it}Biography~Index.\end{it}
\item \begin{it}Current~Biography.\end{it}
\item \begin{it}Who's~Who~in~America.\end{it}---著者の肩書きを確証するために基準となる情報源。Who's~Who~books~として幾つか区分されてもいる。
\item \begin{it}The~Congressional~Quarterly~of~the~Bulletin~of~the~Public~Affairs~Information~Service.\end{it}
\item \begin{it}Vertical~File~Index.\end{it}---最近興味を持たれているテーマに関して定期刊行物や新聞で主張された記事を集めたリスト。
\end{itemize}
\end{small}
\begin{center}
--------------------------------------------------------------------------------
\end{center}

リサーチを始めるときに、次に述べることは頭に止めておく必要がある。それは、どの索引も目録も、極めて広範で多様な見出しをもとにまとめられているが故に、とにかく、それらを使うときには、自分で考えなければならない(Use~your~imagination)ということだ。それに、キー・タームのリストも、自分なりによく練られたものでなければならない。そのリストを一目見れば、リサーチする記事や書物がわかるキー・タームでまとめられてこそ、自分のリストといえる。次の論題を見て、はっきりと頭に浮かんだキー・タームには、どんなものがあるだろうか?
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、貧困状態にある全ての就労可能なアメリカ国民に、職を与えるべきである。\end{gt}
\end{itemize}
\begin{center}
\begin{tabular}{lcl}
\begin{gt}貧困\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}保証された年収\end{gt} \\
\begin{gt}公共の福祉\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}職業訓練\end{gt} \\
\begin{gt}公的補助\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}保育施設\end{gt} \\
\begin{gt}失業補償\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}生活水準\end{gt} \\
\end{tabular}
\end{center}

この論題のテーマをもう一度見てみよう。上に挙げたキー・タームの背後に、例えば「貧困」というテーマを扱うときに考慮しなければならない別の領域や案はどんなものだろうか。
\begin{center}
\begin{tabular}{lcl}
\begin{gt}健康管理\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}医療扶助制度\end{gt} \\
\begin{gt}社会政策\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}空腹\end{gt} \\
\begin{gt}社会事業\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}インフレーション\end{gt} \\
\begin{gt}犯罪\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}生産力・生産性\end{gt} \\
\begin{gt}退職\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}科学技術\end{gt} \\
\begin{gt}住宅問題\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}保護(貿易)政策\end{gt} \\
\begin{gt}職業指導教育\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}移民問題\end{gt} \\
\begin{gt}暴動\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}ストレス\end{gt} \\
\begin{gt}医療健康保険制度\end{gt} & ~~~~~~ & \begin{gt}軍事支出\end{gt}
\end{tabular}
\end{center}
上に挙げた単語はどれも、貧困という問題に関係がある。例えば、本人の意志と違って職がないという人は、不幸せであろうし、ストレスも溜まり、その結果として”暴動”を起こすかもしれない。また、”科学技術”の進歩は現在の職種やその数に影響を及ぼすであろう。政策にその原因を持つにせよ持たないにせよ、”インフレーション”に対する連邦政府の立場は、アメリカ国民のかなりの数の単純労働者に、限定的な影響を与えることだろう。「頭を使え。(Use~your~brain.)」と書いたことを忘れないように!~一見明白な物事の、その背後を考えなければならないのだ。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item \begin{gt}カード・カタログ\end{gt}とは、何か。
\item 資料の背景を調べるときに参照する本の4つの種類を挙げなさい。
\item \begin{gt}ブレイン・ストーミング\end{gt}の意味を説明しなさい。
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activities---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 下に挙げる論題を使って、キー・タームのリストを作りなさい。(”Ues~your~brain.”を忘れないように。)なお、文中に出てきた単語だけでは駄目である。
\begin{itemize}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、均衡予算に則って行動すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}連邦政府は、大気・水質保全のための包括的な国家政策を確立すべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}学校政策の発展には、学生の意見は大幅に取り入れられるべきである。\end{gt}
\item[論題:] \begin{gt}学習の達成基準には、履修外の活動も取り入れるべきである。\end{gt}
\end{itemize}
\item \begin{bf}Activity~1.\end{bf}~の論題のひとつを使って、次の作業を行いなさい。
\begin{enumerate}
\item その論題に関係した、興味のある本のリストを作りなさい。
\item ある目録をひとつ使って、その論題に関係のある雑誌や本の自作の目録を作りなさい。
\end{enumerate}
\end{enumerate}
\section{良質の証拠資料とは---High~Quality~Evidence---}
どんなエヴィデンスがベストであるか決めるのは、容易なことではない。エヴィデンスが求めているのは、聴衆やジャッジの同意を得ることにあるからだ。\begin{gt}「議論が有効であることを聴衆に決断させるには、何を取り上げればよいか?」\end{gt}これは、基本的な質問である。彼らが既に”真”だと感じていることを支持するエヴィデンスをわざわざ取り上げる必要はないが、最高のエヴィデンスでさえも、既に断固とした意見を持つ聴衆の心を変える原因とはならないのだ。中には健全なエヴィデンスを求めている聴衆もいるが、一方で、活字となって現れたことを全て信じてしまうような聴衆もいる。

ディベートで使うエヴィデンスの基準を検証するとき、まず一般的に標準とされるレベルで見てみるのがベストだ。ディベートを聞く評者やエヴィデンスを探すディベーターは、次の2つの質問に答えることから始める。:(1)~エヴィデンスの\begin{gt}外部・対外的\end{gt}\begin{bf}(external)\end{bf}な質についての評価---そのエヴィデンスの\begin{gt}「情報源」\end{gt}---は信頼されているか?~(2)~エヴィデンスの\begin{gt}内部・対内的\end{gt}な質についての評価---エヴィデンスの\begin{gt}「真偽」\end{gt}---はどうか?

\begin{center}
\begin{Large}
\begin{gt}対外的な批評\end{gt}\begin{bf}---External~Criticism---\end{bf}
\end{Large}
\end{center}

対外的な批評(情報源の質)の質問は2つの領域に分けることが出来るだろう。:\begin{gt}(1)~その資料を出している出版者の権威と~(2)~資料の著者の優秀さ、\end{gt}この2つである。基準の幾つかは、出版者の質と著者の資格が使われるべきである。

\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{出版者の質は充分か?}\end{gt}
\end{large}
\end{flushleft}

出版社は、リサーチする分野において、尊敬され、偏見がなく、権威を持っているべきである。例えば、ある雑誌が最近起きた事件について報道し、意見を述べている場合、その事件を信頼されるような報告をしているか?、あるいは、一方的に編集してバイアス(偏見)のかかった解釈をしていないか?

\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{エヴィデンスの「種類」は?}\end{gt}
\end{large}
\end{flushleft}

この質問は、まったくもって複雑である。例えば、肯定側・否定側は双方とも大統領の演説で大統領が言ったか言わなかったかで、意見を異にする。その論争の結果わかるのは、一方は実際の演説の前に発表された原稿のコピーを利用してそれを情報源とし、他方は実際に行われた演説をそのまま使って情報源としている、その違いである。また別のチームは、学者が著した本と違った事を、ある権威者がテレビ・ディスカッションで言っているのを見つけてくるかもしれない。

\begin{gt}「エヴィデンスの種類が恒久的であればあるほど、その情報は信用できる」\end{gt}というのが、情報源の種類に関する一般的なきまりである。権威者は、ほんの一時的なテレビでの発言よりも遥かに長い間利用される専門書に、より神経を使うものだ。大統領が予備原稿の一字一句に重点を置くのは、ただ単に、本番ではそれを注意深く読めばいいからだ。ぶっつけ本番の発言では、自由に誇張し、ドラマティックに発言すればよいと感じるだろう。それ故に、ディベーターは最も恒久的なエヴィデンスを探すものである。なぜなら、ディベーターが最高の資料を提示するは当然のことだからだ。

\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{著者は優秀かつ適任か?}\end{gt}
\end{large}
\end{flushleft}

ここで問われるまず最初の質問は、\begin{gt}「著者は誰か?」\end{gt}である。著者は、プロの資格を持ち、しかも事実や見解を述べるのに適任者であるべきである。また、その分野の他の権威者に尊敬され、発言に責任を持つ人だと評価された人であるべきだ。偏見を持った人、既得権益を持つ著者は避けられるべきである。例えば、原水爆実験に参与した物理学者が核実験は必要だと発言することは、ある程度予測できる。このように、既存の権威者をリサーチするときは、その権威者の見解以外にその意見を支持するエヴィデンスを探すのがよい。原水爆実験は行う必要がない、という物理学者によるエヴィデンスは、たいへん価値があるといえるだろう。

最も陥り易い”落とし穴”は、ある分野での権威者が専門ではない分野について述べた意見を、エヴィデンスとして採用してしまうことだ。例えば、軍事戦略の専門家が、外交政策について述べたり、物理学者がその友人に医療についてのアドバイスをしたりすることを採用してしまうことである。しかし、素人であるからといって、その意見が間違っているとは一概には言えないし、専門家だからといって、意見がすべて正しいとも必ずしも言えないわけだ。よいディベーターは、エヴィデンスの著者の資格を正確に評価するように、細心の注意を払う。

\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{著者はその情報を”いつ”掴んだか?}\end{gt}
\end{large}
\end{flushleft}

一般的に言って、著者がその出来事に近ければ近いほど、その情報は正しい。最近の(時事的な)出来事では、最も新しいエヴィデンスを用いるのがベストである。多くの議論や論点において、エヴィデンスの日付は勝敗を左右する。例えば、雑誌記事でなされた独自の国際的な提案は、翌日の新聞の見出しになってしまえばもう古くさくなってしまう。世論調査も、新しい世論調査が発表されたとたんに、古びたものとなる。逆に、歴史となってしまった出来事では、最古の情報源が最も正確とされるだろう。古代ギリシャの生活については、ギリシャ様式を理想化する現代ギリシャ人よりも古代ギリシャ人の言説の方が正確だろう。

書籍は、雑誌や新聞と同じ早さで出版されはしない。1986年の日付で著作権を得た書籍は、早くとも、1985年か86年に書かれたものである可能性が高い。書籍の適時性を判断するよい方法は、脚注を調べることだ。脚注や目録にある日付は、その本が実際にいつ書かれたのか教えてくれる。

\begin{center}
\begin{Large}
\begin{gt}対内的な批評\end{gt}\begin{bf}---Internal~Criticism---\end{bf}
\end{Large}
\end{center}

対内的な批評とは、エヴィデンスの真偽に関係するものであって、しばしばリサーチに不慣れなディベーターに見逃されてしまう。情報源がしっかりとしていて、権威者が評判の高い人であれば、そのエヴィデンスは”真”であるに違いない、と感じてしまうのだ。「U2事件」は、実際に起こったよい反例である。ある人が、U2機はロシアで行方不明になった気象観測機であるというエヴィデンスを、大統領の発言や最も信頼できる情報源から容易に見つけることが出来た。しかし、後になって、その飛行機はスパイの任務を行うために、計画的にソビエト上空を飛行していたのだという事実を、大統領は渋々認めざるを得なくなった。この例でもわかるように、いつも、注意を怠ってはならない。

\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{エヴィデンスには、何が述べられているのか?}\end{gt}
\end{large}
\end{flushleft}

エヴィデンスの有効性を評価するとき、\begin{gt}「そのエヴィデンスには、何が述べられているのか?」\end{gt}という質問は、まず初めの、そして最も明白な質問である。何を報告しているのか、その報告は意味をなすものか?

そのエヴィデンスは実際に起こったこと---\begin{gt}事実\end{gt}---を報告しているのか、それとも、既知のことを基にした確からしいことについての\begin{gt}推測\end{gt}を報告しているのか。あるいは、もしかしたら、事実からの推測に基づく\begin{gt}価値判断\end{gt}の叙述かもしれない。最も論理的に物事を考える人は、その叙述が事実から離れれば離れるほど、誤りを含み易いと考えている。例えば:
\begin{itemize}
\item \begin{gt}事実レベル\end{gt}\begin{bf}(Fact~level)\end{bf}~:~この古い短剣は不良品である。
\item \begin{gt}推測レベル\end{gt}\begin{bf}(Inference~level)\end{bf}~:~すべての古い短剣は不良品である。
\item \begin{gt}価値レベル\end{gt}\begin{bf}(Value~level)\end{bf}~:~古い短剣は売ってはならない。
\end{itemize}
多くの不慣れなディベーターは、偏見や誤りがかなり深刻になりやすい見解証拠に頼ってしまう。本質的に事実であるエヴィデンスを示すのがベストで、そうすれば、こちら側の結論にたどり着くように、ジャッジをディベーターの論理に従わせることができる。

\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{エヴィデンスは矛盾していないだろうか?}\end{gt}
\end{large}
\end{flushleft}

エヴィデンスの真偽はまた、\begin{gt}エヴィデンス自身が矛盾していないか\end{gt}をチェックすることによって、判断される。エヴィデンスに矛盾が発見されるのは、決して珍しいことではない。それに、注意深いディベーターこそが、対戦相手が権威者の正しい見解を示すのに充分な引用を読み取っていないことを表すことによって、対戦相手の議論の誤りを立証することが出来る。あるいは、ある権威者と見られる人が、記事によって違った見解を述べていることを読み取ることによって、その権威者は確固とした見解を持っていないことを示すことが出来る。それ故、矛盾は一片の援用資料が無効であることを表すものの一つである。

\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}\underline{権威者の見解は一致しているか?}\end{gt}
\end{large}
\end{flushleft}

最後に、エヴィデンスの有効性は、\begin{gt}他の情報と一致しているかどうか\end{gt}を決定することによって、評価されることを挙げておこう。他の権威者や情報源と一致しているか?他の人々によって、同じ事実が矛盾なく述べられているか?ディベーターが注意すべきであるのは、自分達が見つけた自分達の議論を援用する情報源のみの議論である。他の大部分の情報に見向きもしない引用にも、注意を払わなければならない。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item リサーチするときに、エヴィデンスとして記録にとどめる前に考えておかなければならない質問が2つある。それらは、どんな質問か?
\item なぜ、情報源(出版社)の質が重要なのか?
\item 資格の与えられた権威者を定義しなさい。なぜ、その著者の質を知っておくことが重要なのか?
\item エヴィデンスの質を検証するとき(Internal~~criticism)、どんなことを問うてみるべきか?
\item 事実、推測、価値の違いを述べなさい。
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activities---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 1週間、ある特定の出来事に関するテレビ・ニュース、新聞記事、雑誌を見てみなさい。事実の報告にどんな違いがみられるか?どの情報源がよりよいものか?その理由は?記事をまとめてみなさい。
\item 上で挙げた出来事を用いて、その情報がディベートで使われるとしたら、そのエヴィデンスの日付がいかに重要なものかを示しなさい。
\item Activity~1.~で集めた新聞、雑誌記事を区分する。論題に対して賛成側のエヴィデンス、反対側のエヴィデンスとして使われた引用に印をつけなさい。また、次の質問に答えなさい。
\begin{enumerate}
\item その記事には、著者がいるか?いるなら、その著者の肩書きを知っているか?いないなら、著者を見つけなさい。
\item その記事には、タイトルがあるか?
\item 情報源の出版の日付があるか?
\item その情報源には、ページ数が振られているか?
\item その情報源は、公平なものか?
\item その情報源は、他の人々によって信頼され尊敬されているか?なぜその記事を選んだか、その理由が述べられるように、準備しておきなさい。
\end{enumerate}
\end{enumerate}
\section{エヴィデンスの記録---Recording~Evidence---}
これまで、どのようなエヴィデンスを、どうやって見つけ出すかということについて述べてきた。今度は、それをどう扱うか、これが問題である。

まず第一に、記事や本の切り抜きのどの部分を使うか、正確に決めなければならない。それは当然、自分の議論を支持するエヴィデンスであるべきである。

第二に、その切り抜きや引用は、長さ・形式は使える形にして記録する必要がある。

第三に、質問の細部にわたって答えることが出来るように、記録しておくべきである。最後には、\begin{gt}エヴィデンス・カード\end{gt}として参照されるものとなる。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}エヴィデンス・カードの準備\end{gt}\begin{bf}---Preparing~Evidence~Cards---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

エヴィデンス・カード製作の第一段階は、コピーした資料から分離したり、印をつけたりすることである。資料をコピーするとき、著者の意図が正確に反映されるように資料を切り抜かなければならない。そしてその情報は、あとで使いやすいようにファイルに納めておかなでればならない。情報は、18センチから20センチのサイズにまとめておくことを薦める。これによって、チームの仲間が読み易くなるし、手書きで書くこともできる。

カードは、情報源の引用文を使って、分かるようにラベル分けしておくべきであり、目録に載ったすべてを参照したいときは、ブロック体でカードに書くべきである。ジャッジや対戦相手のためにも、あとで参照するためにも、その情報源とページ数は正確に書き留めておくのが特に重要である。上手に引用すれば、そのインパクトを失うことはないし、もし、相手が引用した資料がどこにあるのかと指摘したときにも、役立つ。また、著者の肩書きはカードに記載しておくべきであり、ファイルした索引番号をカードの隅に書いておくべきである。

索引カードには、エヴィデンスの一ヶ所だけを載せておけばよい。一枚のカードに2つの引用がされていると、あとになって多大な混乱の原因となる。せっかく見つけたエヴィデンスが見つけ難くなるし、ファイルするのも難しくなるのだ。では、ここで、2枚の典型的なエヴィデンス・カードを紹介する。

~~


\begin{center}
\begin{tabular}{|l|} \hline
~~ \\
~~~\begin{tt}Albert~Karr~(staff~reporter)~”Reagan~Plan~to~Urge\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}Smaller~Cutback~in~U.S.~Support~to~Agricultural\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}Service,”\end{tt} \\
~~~~~\begin{sf}Wall~Street~Journal,~January~23,~1986,~p.6\end{sf} \\
~~ \\
~~~\begin{tt}”The~Law~[Gramm-Rudmann]~could~require~an~across\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}-the-board~cut~in~the~total~federal~budget~of\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}\$50~billion~to~\$60~billion~if~Congress~fails~to\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}reduce~the~projected~fiscal~1987~deficit~to~\$144\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}billion~by~October~1,~the~start~of~the~fiscal~year.”\end{tt} \\
~~ \\
\hline
\end{tabular}
\end{center}

\begin{center}
\begin{tabular}{|l|} \hline
~~ \\
~~~\begin{tt}Par~M.~Holt~(former~chief~of~staff~of~the~Senate\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}Foreign~Relations~Committee),~”Beyond~Today's~African\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}Hunger:~Population~Pressure,”\end{tt} \\
~~~~\begin{sf}The~Christian~Science~Monitor,~February~5,~1986,~p.17.\end{sf} \\
~~ \\
~~~\begin{tt}”Rains~in~Africa~last~year~have~provided~a~breathing\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}space~in~which~we~can~think~about~the~long-term\end{tt}~~~ \\
~~~~\begin{tt}agricultural~policies~of~that~continent.”\end{tt} \\
~~ \\
\hline
\end{tabular}
\end{center}

エヴィデンスを記録するとき、単語を消去してしまうのは賢明なことではないが、不必要な言葉を省略する場合は、その省略を省略記号(・・・)を使ってはっきりと示しておくべきである。形容詞、副詞などの限定語や”でない”というような言葉は不必要な言葉とは考えられまい。強く示唆されることであるが、可能なときはいつでも省略は避けるべきだと言われる。しかしながら、不必要だと考えられることが、他人にとって不可欠であることもあり得る。今や、全国公式討論大会では、原典あるいは原典のコピーをそのチームが持っていない場合は別として、自分なりの省略は用いないように求められており、エヴィデンスが原典に即したものかは、いつも必ずチェックしなければならない。「それは」「彼が」「その法律」「その計画」といった参照はどれも、何から引用されているかを示すべきである。次に示すエヴィデンスのように、きちんとメモるように努めてもらいたい。:

~


\begin{itemize}
\item[~] \begin{gt}”彼(ラックルショールズ)は再度、次のように強調している。国会は、超過予算を時流に即して考えるとき、その効果以上に起こり得る害についての責任を負うことになるだろう。”\end{gt}
\end{itemize}

~

”(ラックルショールズ)”という言葉がないと、その引用は不完全であると考えなくてはならない。引用した”彼”という人間を思い出すとき、記憶に頼ることは出来ない。なぜなら、一つではなくかなり多くのエヴィデンスを記録しているのだから、そのことを忘れてはならない。また、省略は避けられるべきではあるが、読む必要のない言葉に”(~)”をつけておくのは大いに役立つ。括弧を付けた資料は、時に、その引用を混乱させ、不必要に長くし、最もよく消去される。しかし、このような全文引用は、その原典をチェックしたがっている人たちにとって、依然として通用するのである。

学生は、エヴィデンスを記録したり、リサーチ・カードよりはちょっとしたメモ(briefs)にエヴィデンスを書き留めたいと思うときなどは、ワープロが本当に役立つことを知っている。ちょっとしたメモは、アイデアを発展させたり、議論の概略を書き留めておくものであって、エヴィデンスや論理的な推論は、それぞれのアイデアの切れ端(subpoint)から得られるものである。これは、肯定側、否定側双方にあてはまるといえる。

だが、簡単なメモはたった一つの論点の発展に限定すべきである。ディベーターがいくつかの情報源からエヴィデンスを作ったり、必見に値するメモに書き直したりするのに、ワープロはたいへん重宝するから、書き込みすぎないようにしなければならない。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item エヴィデンス・カードに引用を書き込むとき、その引用のどんな情報を書き込む必要があるか?
\item エヴィデンス・カードで省略を使うのは、なぜ賢明なことではないのか?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activities---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item 引用しようと思う記事を使って、エヴィデンス・カードを作ってみなさい。正確さと代詞の参照という観点からエヴィデンスをチェックしてみなさい。それが終わったら、先に挙げた例と自分のカードを比べてみなさい。
\end{enumerate}
\section{エヴィデンスの整理---Filing~Evidence---}
かなりの数のエヴィデンス・カードがたまってくるようになると、”エヴィデンスの整理”という点が問題となる。エヴィデンスがたまってくるにつれて、ディベートの試合でそれを使えるようにフィードバックさせることが出来るかが、とても重要になるのだ。必要なときに、必要なエヴィデンスを見つけることが出来なくては、エヴィデンスの価値を失してしまう。それ故、エヴィデンスのフィードバックは、リサーチそれ自体と同じく、重要なのである。

ふつう、学生は誰もが、最善を尽くせるように”整理術”を向上させる。学生が自分達の”手持ち”をいつも弁えていて、ディベートの試合中にエヴィデンスをフィードバック出来れば、その整理術は充分である。繰り返すが、重要なことは、”術”の何たるかではなく、”術”を使えることにある。しかしながら、よく使われる整理術のいくつかは、複雑な形態をとっていて、ディベーターがどれだけエヴィデンスを集めたかに依っている。

整理術のすべてに共通する特徴は、エヴィデンスをカテゴリーに分割する点にあり、また、資料をカテゴリーを書き留めた索引カードを控えてファイル・ボックスにためておく点にある。どんな整理術が使われようとも、カテゴリー内にあるカードが、出来るだけ少ない数で保たれていることが重要だ。一つの見出しに、10枚以上のカードがあると、そのファイル内にある資料が何か分からなくなり、一番最初に見つけたカードを使う羽目になる機会が増える。たとえどのファイルにどんなエヴィデンスがあるか知っていても、余りにもたくさんのカードが含まれたカテゴリーは、実際のディベートの試合のときに、その検索に時間かかりすぎることとなるだろう。”整理術”は、エヴィデンスをディベートの試合中に出来る限り見付け易くするようなものとすべきである。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}アルファベット順(50音順)整理術\end{gt}\begin{bf}---Alphabetical~Filing~System---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

最も初歩的な整理術は、題別にカードを仕分けし、アルファベット順にその題材を整理することである。ディベーターが農産物輸出に関する何枚かのカードを持っていたとしよう。ディベーターは、リファイルし易くするように、それぞれのカードの右上の隅に「農産物輸出」とラベルを振った索引カードがあるところへ、そのカードを納める。この方式は最近のディベーターが最もよく使い、余り枚数が多くない場合に限り、かなりよく機能する。しかしながら、たいていのエヴィデンスに要求されるのは、より手の込んだ整理術である。

ディベーターがエヴィデンスをたくさん手に入れるにつれて、より手の込んだ整理術を向上させる必要に駆られる。必要なのは2つのファイル・ボックスであり、そのひとつは肯定側にとってのそれで、もう一つは否定側にとってのファイル・ボックスである。それ故、エヴィデンス・カードは、大きく分けて、肯定側・否定側の名が付いたファイルに納められることになる。

しかし、残念ながら、そのような仕組みには問題がある。まず第一に、ディベートの試合中、適切なラベルを見付け、最適なエヴィデンス・カードを見付けるのにかなりの時間がかかることである。第二に、適量の資料が、肯定側・否定側双方にとって、容易に分類できないことにある。これらの理由によって、ノートブック・インデックス・システムがより便利だと認められてきた。

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}ノートブック・インデックス・システム\end{gt}\begin{bf}---Notebook~Index~System---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

ノートブック・インデックス・システムでは、索引のファイルのカード(仕切)は、題材によって区分けされるのではなく、番号が振られる。「農産物輸出」ならば、”Category~A”となるだろう。\begin{small}(訳者注:「農産物輸出」が英語で”Agricultural~Exports”であるから、”Category~A”となる。日本語ならば、さしずめ、”カテゴリー「の」”となると思われます。)\end{small}ソビエトの輸出を扱ったカードは、”A~14”と番号が振られるだろう。基になるノートブックは、ファイリング・システム全体に対して保存されるものだ。それぞれのファイル・ボックスに入った資料のすべてに、一枚のインデックス・シートが付けられる。それを見ることによって、特定分野に適応したコード番号を即座に参照することが出来る。それぞれのカテゴリーにあるカードの数は、カテゴリーの数を増やしたり、最も弱いエヴィデンスを消去することによって、少なく保たれる。

ファイル・ボックスはどれもコード番号によって整理されるべきである。主要な見出しにはそれぞれ文字とカテゴリーの更に下の番号を付け加えるべきであり、インデックス・シートを見れば、ファイルに収まっている資料の要約が分かるようにする。次に示すのは、インデックス・シートの一部分であるが、水質汚濁のテーマに使われるものである。
\begin{flushleft}
\begin{large}
\begin{gt}インデックス・システム\end{gt}\begin{bf}(Index~System)\end{bf}
\end{large}
\end{flushleft}
\begin{footnotesize}
A.\begin{gt}\underline{環境問題の経過における国の役割}\end{gt}
\begin{enumerate}
\item 水質浄化条例は国の行動を促進する。
\item 国家の法の実施の変化は、結果的に、汚染を増やす。
\item 国は水質維持のコストを払う余裕がない。
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item 国家の政策は十分である。
\item 国家の政策は、支持されている。
\item 国は、効果的な実施を行っている。
\item 国は、十分な法的権威を持っている。
\item 国は、汚染除去に今以上の予算を払う余裕がある。
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\end{enumerate}
B.\begin{gt}\underline{環境保護機関}\end{gt}
\begin{enumerate}
\item ~
\item 個人的な不足
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\end{enumerate}
C.\begin{gt}\underline{農業汚染}\end{gt}
\begin{enumerate}
\item ~
\item 農業に対する政府の優位性には、一貫性がない。
\item 農業流出はコントロールできる。
\item ~
\item ~
\item ~
\item ~
\item 農業の方法には、基準を設けるべきではない。
\item 水質汚染防止法は、農業に適応されている。
\item ~
\item ~
\item ~
\end{enumerate}
\end{footnotesize}

空欄は、エヴィデンス・カードが増えてゆくにつれて新しく付け加わるカテゴリーの為に残してある。新しいカテゴリーの欄が不足したり、少なすぎるよりは、空欄の数をかなり多く残しておいた方がよい。それぞれのカテゴリーにあるカードの数は、一番多くて10枚に止めておくべきである。一つのカテゴリーに10枚以上のカードがあると、ファイルからカードを出して読む時間がかかるし、カテゴリーを更に分けることを深刻に考えなければならなくなる。

エヴィデンス・カードの中のインデックス・カード(仕分けカード)は、適切な文字数と数でラベルされてなければならない。そして、エヴィデンス・カードはそのカードがある箱の番号と題材が書かれていなければならない。もし、ディベートの試合中に「国家には、水質を維持するコストを払う財政的余裕はない」という発言を立証したければ、インデックス・シートには、その資料は”A~3~”にあるということがはっきりと書かれているべきである。そして、使い終わったら”A~3~”の見出しのあるところへ素早く戻す。そのカードの右上には勿論、そのことがはっきりと書かれている。

インデックス・シートシステムを使ったディベーターは、そのシステムは大量のエヴィデンスを扱うのにとても効果的な方法であると報告している。カードが用意に整理でき、素早く見付け、試合が終わると同時に素早くリファイルできる、とも言っている。多くのインデックスの見出しをコードに割り振ることが出来る点からも、カテゴリー内全体がエヴィデンス・カードとインデックス・カードがゴチャゴチャになっていないという点からも、おそらく本当のところだろう。また、ファイル・ボックス全体を探すときにも、大まかな見出しを見るよりは、そのコードを見る方がはるかに容易である。ここで、忠告。「ディベーターがインデックス・カードをなくしてしまったら、どこにエヴィデンスがあるのか知る手だてはない。いつも、2部のコピーを持ち運び、家に予備を保存しておくのが賢明である。」

\begin{center}
\begin{large}
\begin{gt}エヴィデンス・ファイルの保存\end{gt}\begin{bf}---Maintaining~the~Evidence~Files---\end{bf}
\end{large}
\end{center}

ファイルは定期的に読むのが賢明である。ありふれた事柄はカードにするべきではない。あるテーマについての知識が増えてゆくにつれてカードの中には、その価値が減ってゆくものもあろう。しかし、時には、見落としてしまったカードや、初めての時にはその価値に気づかなかったり理解できなかったりした資料を見付けることもあるだろう。そんな資料がそのファイルの中で最も良いエヴィデンスに突如としてなることも、大いに有り得る。重要なのは、エヴィデンス・カードそれ自体と”ディベート”することにより、考えの道筋を進展させることだ。重要なのは、そのファイルの大きさではなく、そのファイルの中にあるエヴィデンスの質なのである。

インデックス・カードよりはむしろメモにエヴィデンスのすべてを収めてしまう生徒は、ノートにすべての資料をファイルしておくべきである。そしてそのノートは、肯定側と否定側に分割しておく。肯定側のノートは、第一立論、論題充当性に対する反駁、予想される否定側立論への反駁、肯定側第一反駁への反論。その議論への特定の反論に分割しておくべきである。また、否定側のノートは予想される議論への反駁を分けておくのがふつうである。その議論に特定の論点は、一般的にアルファベット順にまとめられ、色別ブロック別に分けられている。

\begin{bf}---Questions~for~discussion---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item ファイリング・システムの2つのタイプを説明しなさい。その2つの違いは何か?それぞれのメリット、デメリットを述べなさい。
\item ファイルの保存には、何が重要か?
\end{enumerate}

\begin{bf}---Activities---\end{bf}
\begin{enumerate}
\item エヴィデンスをファイルに収める前に、どちらのファイリング・システムを使うか決めなさい。この章で述べられた2つのシステムを選び、どうしてそのシステムを選んだのか、説明しなさい。ここで忘れてはならないのは、良いファイリング・システムとは、ディベートの試合で使うエヴィデンスをうまく配置出来るかが鍵である、ということだ。選んだシステムによって、情報を素早く取り出せなければならない。
\item 一度、50個のエヴィデンスを集めてみて、それらをファイルし始めなさい。リファイルし易いように、ラベルを貼ること。おおよそ、150のエヴィデンスがファイルできたらエヴィデンスが適切にファイルできたかどうか読み直してみなさい。よくあることではあるが、そのテーマについて多くのことを知ってゆくにつれて、別のカテゴリーを作りたくなるものである。自分の作ったファイルの数を維持することによって、、さらにリサーチする必要のある分野はどこかわかる。
\end{enumerate}
\end{document}