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Mars 26, 2004

それでも、それだからこそ

散らかしっぱなしの部屋と頭の中を、整理できる日はいつか来るのだろうか。
もうずっと来ないのかな。断片だけの映像は、ずっとここにこのままあるのかな。

欲しいものは才能。


菩提樹のある丘がこの街での唯一の特徴と言ってしまってもいいような気がする。市とはいえども人口が五万人強のありふれた、どこにでもあるような住宅街が広がるこの街に引っ越してきてから三年が経とうとする。ただ変わらない街並はいつの頃か仕方ないと思いつつも物足りなさもこのごろでは隠すことはしない。きっと多くの若者が同じように感じて、高校卒業と同時にこの街を出て行くのだろう。


辺りにこの家はある。賃貸だとかなり高い額をとられるはずだが、やけに若者が目に付く。そんなにこの黄昏た雰囲気が好きなのだろうか。俺はこの街自体があまり好きではない。ただ、新宿まで自転車で行けるという立地条件は恵まれていると言えるかも知れない。歌舞伎町に自転車出勤。意外とかっこいいんじゃないかと毎日、都庁を右目に見ながら考えている。
俺が中野へ引っ越してきたのはもう十年以上前。小学校二年生のときだった。それまでは埼玉の右端の田舎に住んでいたから、小学校の数の多さと、自宅から学校までの道のりの近さに驚いた記


 嵐はまだ当分止みそうもなかった。時折、家を震わせる風に反射的に視線が窓の外側を向いてしまう。理沙は大丈夫だろうか。ふとそんな問いが頭の中を過ぎってはとっさにかき消す。彼女はもう恐らく嵐とは無縁の場所まで行くことが出来たのだろう。今日と同じような嵐の晩、理沙はこの町を出て行った。もう何日になるかはわからない。ただ三つ前の嵐だから相当な時間が経過している気もする。噂に聞くあの城壁も、大河も、理沙だったら突破できたのだろう。そんな確信が不思議と私にはあった。それは理沙のここを出て行くとき最後に見せた瞳のせいだ。かつて何人もの冒険者がしたように、ただ未来だけを向いていたわけではない。後ろばかりを気にする弱さでもない。抱えていく

 「でも、綾香の予定に合わせたんだから仕方ないんじゃん。でも、そっか、向こうに着くともう十時前だよな。確かに勿体無いな、今日のホテル代。」
一哉が独り言のようにぼそっと呟いた。まるで高校の教室での休み時間の時のように、笑顔も見せずに一人でいる時のように。一哉は高校では基本的にいつも一人でいる。僕とは同じ教室なのだが、放課までは本当に最小限のことしか喋らない。そして勿論、他の誰とも。


やがて訪れるであろう日々が予想できたとして、それがもし最悪を指していたとしたら、状況を少しでもよくしようなんていう士気さえも削ぎ落とされ、もはや最善は傍観だと思ってしまうことはごく自然である。そんな人々の諦観はかつての水騒動や米騒動に代表される醜いいざこざさえうまずに、一見すると平穏そのものの体裁が繕われている。というか、パニックが起こるにはある程度の規模が必要だが、その規模にさえ人口は達していないのかもしれない。


世界で一番に長かった夜

「どうして?」

「どこかへ連れて行かれるから」
「どこかへ行かなくちゃならないから」


 気がつくともう校庭には誰も残ってはいなくて、大きなくすの木だけが夕焼けに焦がされていた。いつもなら児童がドッジボールなどをやっている時間だけれども、今日は会議で午前中に彼らは帰されていた。ほとんどの先生がその市の公会堂で開かれている会議に出席しているので、職員室にも人はまばらだ。

投稿者 POE : Mars 26, 2004 09:12 EM

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