SFCでは多くのケースメソッドの授業が存在する。(ケースメソッドについては、例えばKBSを参照→http://www.kbs.keio.ac.jp/kbs/casemethod.html)
主にケース・メソッドはビジネス・スクールや起業を担う人材を育成するために用いられている。ケース・メソッドの教育効果は、僕も何度か受けたことがあるが確かに高い。教師、生徒間の間で相互作用があるために、確かにマネジメントのノウハウや戦略構築をダイナミックに学ぶことができる。だが、これは本当に起業家育成につながるだろうか?
ケースメソッドの第一の問題点は、成功事例の学習にせよ失敗事例の学習にせよ常に後追いになってしまうことだ。第二の問題点は、マネジメントのノウハウを身につけるには有用だが、新規ビジネスモデルや事業創出に結びつくようには思えないということである。
言い方を変えれば、既に1つ存在するビジネスモデルを2,3,4...と膨らませるのに、ケースメソッドは適しているように思う。様々な状況における先行戦略と意思決定を学ぶのだから。だが、0を1にするのにケース・メソッドが有効だとは思えない。そこに必要なのはコンセプトと優れたクリエイティビティではないだろうか。
その意味で、有能なマネージャー育成のためには(これはこれで大事なことだと思うけれども)ケース・メソッドが有効だが、起業家を養成するために、という文脈でケースが有効だと言われると個人的には違和感を覚える。
これが地域活性の文脈に入ってくるとますますことは複雑になる。最近、地域活性の文脈で、地域活性を担う人材の育成にケースメソッドを使う、というアイディアをしばし耳にする。これらは本当に「成功」しているのだろうか? ケースメソッドで培われるマネジメントや戦略、意思決定についてのノウハウは、何も地域活性のみならず会社やその他公的セクターでも十分使用できる能力だ。首都圏でも今や有能な人材は各アクター間で取り合いとなる。地域になればこれはさらにシビアな問題となるだろう。
そうすると高度なマネジメントや戦略構築能力を身につけた人材は、そのまま地域活性の分野に携わるだろうか?
賃金水準ではどうしても、地域活性を担うセクターと大企業では勝負にならない。
ではどのように地域活性が人材の市場で勝負していくか? このとき地域活性に重要になってくるのは、魅力的で明確なコンセプトとそれを支援する制度ではないだろうか?賃金水準では劣るけれども、うちの地域ではこういう方向性を持っているので面白いことができますよ、それを応援しますよ、という環境があれば地域も人材市場で勝負できるのではないかと思う。もちろん一部の先駆的な自治体で既にそういう環境が構築されつつあるのも認識している。
ともすれば妥当な策が出され、なんとなく盛り上がりと勢いに欠ける最近の地域活性に必要なのは、まず魅力的なコンセプトとその支援だ、と言い切ってこのエントリーを締めくくりたい。

