2008年12月アーカイブ

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2008年が終わろうとしています。少なくとも暗くなりました。けれども、現時点で僕は、τで資料と格闘しながら論文を執筆しています。昨日と何も違いはありません。

今年は大変多くの方のお世話になりました。多くの先生方、編集者の皆様、先輩や仲間、後輩、パートナー、家族等々挙げればきりがありませんので、逐一名前を挙げることはしませんが大変感謝しています。

思えば、今年起きたことは(正しくは、もちろん「今年起きたことも」ですが)、極めて「ありそうにないこと」ばかりでした。初めて商業媒体に書かせていただき、有名な媒体にも執筆させていただきました。一重に皆様のお力添えのおかげです。

来年は、安心せず、そして慢心せず、さらに新しいことに取り組もうと思っております。

みなさま、どうぞ良いお年をお迎え下さい。

charlieこと鈴木謙介さんがメインパーソナリティを務めるTBS文化系トークラジオlifeのwebサイトで、『思想地図』vol.2での、東さん、北田さん、濱野さんとの座談会「ソシオフィジクスは可能か」に言及していただいていました。

http://www.tbsradio.jp/life/2008/12/12282008part1.html

アニメや漫画、ゲームなどを消費しないので(映画はぼちぼち観ているかも)、lifeと批評家荻上チキさんのトラカレ!は、僕にとって数少ない現代サブカル事情や論壇事情へのアンテナです。生ではなかなか聴けませんが、ポッドキャストでいつも聴いています。

ところで、斉藤哲也さんの濱野さんと僕についての「社会を自然的に見る」というコメントを、僕なりにブレイクダウンすると、「倫理的な観点から<社会>について論じるのではなく、<社会>の作動とその条件を観察する」と言えるかもしれません。

もちろん、そこには価値判断を下さないという価値判断、批評しないという批評性が当然前提として含意されています。もし機会があれば、この問題についてももっと掘り下げてどこかで議論したいとは思っています。


年の瀬

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早いもので2008年も暮れようとしています。つい先日までクリスマス色だった街は、もうすっかり正月一色です。2009年はいったいどんな年になるのでしょうか。来年は今年以上に「攻め」の1年にしたいと思っています。写真は今年のクリスマスの横浜の風景。もうすっかり後景になってしまいました。

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新しい板が来ました。サイズや仕様はかなり今風の板なのですが、あえてトム・カレンのレッドビューティを意識して昔風に仕上げてもらいました。すごい楽しみ。

局地戦

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「局地戦」とは、特に冷戦時代の米ソの安全保障戦略の中でスポットライトがあてられた戦争のあり方。巨大な破壊力を持つ核兵器が存在し、理性を前提にすれば全面戦争が不可能な状態で行われる、代理戦争など限定された局面での戦争のことを言う、と学部の頃、金田先生に教わった記憶がある。

現代的状況に照らすと、興味深いメタファーだ。諸処の憂慮すべき事態がある。そうした事態の対策のひとつには、相手の感情やマスにアピールすることで目的を実現する「運動」的戦略がある。これは、いわば「全面戦争」的な状況だ。

他方で、「局地戦」的な対策もある。一般に、「相手」となる企業や行政には、理性を前提とする組織だという前提が成り立つ。そうすると、ニーズとリソースの配置と実現したい「目的」をシェアし「落としどころ」や「戦術」を模索するが、しかし、その背後や細部では、妥協点や実現手法に関して火花を散らすという局地戦的な取り組み方がある。

もう少し話を広げれば、少なくとも現時点で所与の前提となっている、グローバリゼーションや資本主義、国政の硬直に「全面戦争」を挑んでも勝ち目はないし、「大きなもの」は変えていくためには長い時間と運が必要だ。そうすると、個別具体的な問題発見・解決の水準では、「全面戦争」よりも局地戦のデザインが重要になる。「権力」を、他我の行為を自我の行為に接続する象徴的に一般化されたコミュニケーション・メディアと位置づける社会学者ニクラス・ルーマンの議論も示唆的だ。

その意味で、個人的には環境管理万能主義にも主体論にも組しない。同様に、中央集権論者でも、分権推進論者でもない。環境はシステムとの差異によってはじめて環境となり、後者はただ一重に手段の問題だ。そして、個人的動機と選択の問題で言えば、抽象的な思考よりも、実践水準、特に「局地戦」のデザインと実践(そして、「実戦」)が関心の主領域にある。

社会学者charlieこと鈴木謙介さんの100問100答集。

しかし、前書きにも書かれている通り、「これが答えだ!」式に、べき論を断言するのではなく、「これは答えか?」という「ある種の悩み方」を提示するような構成になっている。

そのときに、外せないのが質問に対してcharlieさんが答えを提示していくのではなく、若手評論家の荻上チキさんとの対話形式になっている点だ。読者に分かりやすく議論をまとめたり、あえて文脈をずらしてみたり、時にまぜっかえしてみたり、ダイアローグによる「厚み」のようなものが出ている。

社会学者の問答集というと固い本ではないかと構えるかもしれないが、全くそんなことはない。おそらく<社会>に関心がある中学生ぐらいから読める平易な作品に仕上がっている。質問も、僕ら後輩をはじめ、幅広い年齢層の人たちから大量に収集したものの中からピックしたもので、想定問答集ではないリアルな質問だ。テーマもそれに付随して、政治、社会、経済から、学問、性愛(そして、charlieさん自身のことも!)まで、身の丈問題から広く世の中に関する議論を扱っている。<社会>について関心がある幅広い人なら、とりあえず手に取ってみる価値があるのではないか。

個人的には、少しずらしてみれば、ちょうど大学生のシュウカツの時期でもある。ざっと世の中の動向を概観し、かつ一歩深く知るためにも最適なのではないかとも思った。


先日紹介した大学院の同期の吉道さゆりさんが、キャスターとして採用されたそうです。

http://sayura.seesaa.net/article/111551971.html

某大手企業の内定を蹴ってまで、目標を目指して地道に努力を積み重ねた結果でしょう。彼女の姿をメディアで観る日も近いのではないでしょうか。

地域発!どうする日本

変わる義務教育 学ぶ力をどう伸ばす

12月19日(金) NHK総合 19:30〜20:45

▽ゆとりから学力重視へ義務教育はどう変わる学力トップ秋田の秘密家庭学習をどう進める人気の小中一貫校とは勉強好きになる図書室 茂木健一郎
出演 / 松本和也 茂木健一郎 金子郁容

▽「義務教育」をテーマに教育の現状を見詰め、改革の方向を探る。地域や親の学歴・年収によって子どもの学力に差が生じる「教育格差」が問題になっている。公立学校での義務教育が十分に役割を果たしていないことが原因に挙げられ、さまざまな改革が行われた。「全国学力テスト」「習熟度別学習」「公立の小中一貫校」「学校や教師の評価制度」などが矢継ぎ早に導入され、学校現場は対応に追われている。そうした中、地域や学校単位で独自に工夫する動きも出ている。子どもや学校を元気にするには何が必要か、子どもの教育について徹底討論する。ゲストは脳科学者・茂木健一郎、慶應義塾大学大学院教授・金子郁容、東京大学大学院准教授・本田由紀、予備校講師・牧野剛の各氏。

http://tv.www.infoseek.co.jp/VHF/tv_detail.html?pg=tv_detail.html&program=p0031081219193000&area=008
より引用


面白そう。録画して見よう。

茂木さんとかSFCの金子郁容先生も出演するみたいですね。

『思想地図』vol.2がAmazonで予約可能になっていました。

北田さんのはてなで目次が公開されていますが、見本誌を手に取ってみても、現代の人文知の「地図」と呼ぶにふさわしいコンテンツになっているように思います。

http://d.hatena.ne.jp/gyodaikt/20081207

僕は最近取り組んでいる地域活性研究と実践についてブレークダウンした論考を掲載して頂いています。また、東さん、北田さん、濱野さんとの座談会では、もう一つの研究テーマであるオンラインストアの商品ネットワーク研究などを引き合いに出しつつ、人文知、思想とそのオルタナティブについて議論しています。加えて、座談会に関連する書籍について、簡単なブックガイドのようなものも記述させていただきました。

個人的には、「地域」という問題圏は火急の課題にもかかわらず、どうにも地味な印象が拭えないのですが、『思想地図』vol.2を介して少しでも異なる文脈を持った人の目に触れさせたいと思うわけです。

来週冒頭には書店にも並ぶようです。お手にとって頂ければ幸いです。

先日、平塚市の商工会議所の方とお会いした。話題は、あるプロジェクトの産学連携のコーディネートの可能性に関してだ。細かい話は置いておくとして、地方自治体、大規模事業者、地域の中小企業、学校の連携によって、事業として地域のコミュニティや交流再生を有機的に実現しようとする魅力的なプロジェクトだ。また、別件で、事業としての社会福祉に関して、ある社会福祉法人の方ともお話をしている。

多くのNPOや地域活性に取り組む事業者の方とお会いするにつけても思うのは、「今まで起きたことのない未曾有な事態」に対処する新しい、そして、柔軟なアイディアは、「若い」人に宿る、ということだ。「若い」というのは、年齢が、ということではなくて、もちろん、マインドが、ということだ。反対に、組織のハイエラルキー上位の(一般に年配の)人の中には危機は感じているけど、昔と同じようにやり続けていくという人が少なくない。「昔ながらのやり方」でハイエラルキーの上位に来たのだから、そのハイエラルキーを維持したいのだろう。

地域活性というのは、地域の自律性、もう少し言えば、域内で循環する自律的なコミュニケーションを再生することだと思うが、その実現のためには、もはや自明になりつつもあるけれど、昔からやってきたことを粛々とこなす、というだけでは立ち行かないだろう。

地域コミュニティの自律性を確保するためには、昔ながらの伝統や「やり方」を保守する路線と新しいコミュニケーションを創っていくという二つの路線があるように思うが、大抵の地域の様々な「伝統」は、「保守」するには、あまりに壊れすぎている。保守路線を成立するためには、もっと早い時期に手を打つべきだったのだろう。そうすると、部分的に地域を開きつつ、しかし域内で閉じることができるような、新しいコミュニケーションを創っていく路線の方が現実的だ。

冒頭のような、ユニークなアイディアを持った人たちは、実は「地域」に数多くいるというのが個人的な印象だが、、しかしその「配置」や所在が不透明だ(多分、誰にとっても)。知識の所在の厳密な特定が困難だ、ということでいえば、ハイエクや暗黙知の議論にも繋がるけれど、そうすると、地域活性を考える際に、箱モノをつくって、あとは住民の皆様で...というやり方や、多くの地方自治体が仕掛けるトップダウンの施策というのは、明らかに適さない。

素朴にエンパワーメントなどと言う気は全くないのだけど、自律-分散-協調路線は、自然には生じないし、維持されない。それを仕掛けていくことこそが、地域活性の有効な手段だと思うが、こうした手法は指標に基づく客観的な評価が困難で、それゆえ地方自治体の政策としては難しい。そう考えると、そこにはたとえば大学が、もしくは大学で、地域活性に取り組むということのニーズや必要性があるのだろう。

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EcoSurfer堀さんから、年3回、発行部数各10000部、配布箇所約300カ所のフリーマガジン『ES』vol.13を送付していただきました。

今回は、冬らしいかわいい表紙です。内容も地産地消の野菜の話やミュージシャンの東田トモヒロさんのインタビューなど、サーフィンと環境貢献活動、地域活性に関する話題が盛りだくさんです。是非ご一読下さい。

配布箇所について詳しくは、EcoSurferのサイト → http://www.eco-surf.com/ をご参照下さい。

先週の金曜日に、茅ヶ崎市役所の産業活性化研究会に出席しました。これは、以前4回に渡って行われた発想支援ワークショップから生まれた3つのコンセプトを、実際の政策として実装する方法と手法を検討する研究会です。

これから来年にかけて複数回に渡って開かれる予定です。茅ヶ崎市産業活性化研究会は、現存する具体的な問題の解決が中心の自治体の取り組みとしては珍しい、0ベースで「魅力的なまちづくり」に取り組む研究会です。しかも、課を越えた若手・中堅の職員の方々が中心となってコンセプトを実装する方法と手法を、製品開発などに用いられる発送法やプロジェクト・マネジメントの手法で検討します。今後、ますます自律的政策形成能力が必要とされてくる地方自治体の取り組みとして、先駆的な事例と言えるでしょう。成果が楽しみです。

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所用で、実家に二泊三日、実質一泊二日で帰ってきました。

僕は京都生まれの、京都→大阪→奈良で育ちました。近鉄奈良線からは京都の町並みが見えます。そこからは普通に五重の塔が見え、初冬で色づいた山々が見えます。京都も奈良も、基本的に盆地なので、だいたいどこにいても何かしら山が見える。これは、関東にはない関西特有の光景なわけです。

余談ですが、僕は新幹線の中でビールを飲みながら、普段読まない本や雑誌を読むというのが大変好きで、今回はポール・オースターの『トゥルー・ストーリーズ』と『週刊東洋経済』のマイクロソフト特集を読みました。

実家では、ひさびさにオヤジと飲んだ。オヤジは同業者、というか理系文系の違いこそあれ大先輩で、修論とか研究生活とか、あと人生の問題とかいろいろ話をしたような気がする。気がする、というのは、ビールをしこたま飲んだあとに、さらに二人でボトルを一本空けてしまい、話の詳細は覚えていないということなのだけれども、これはこれで良かったんじゃないでしょうか。

最近、ちょっといろいろと疲れていて、何か違和のようなものを感じていたのだけれども、なんというか、ちょっと揺すったら、かちゃっと収まるべきところにおさまったという感じがします。

先ほど、神奈川に戻ってきたのですが、今日の夕方は先日声を掛けていただいた茅ヶ崎市役所の産業活性化研究会に出席します。先日までやっていた発想支援ワークショップのアウトプットを受けての研究会になります。茅ヶ崎市というのは、クールビズにアロハシャツを使用する(それによって、クールビズだけではなく、地元製造業へのてこ入れにつながる、というわけです)アロハビズをはじめ、面白くて新しい取り組みを積極的に取り入れている地方自治体です。

他にも、ある社会貢献事業の産学連携のコーディネートを頼まれており、すっかり「地域」というテーマに魅了されています。

先日指摘されて気がついたのですが、2008年11月のエントリがblogに表示されなくなっていました。個別エントリーが死んでるわけではないので、原因は良く分かりません。ORF2008のトークセッション「創造力による新しい地域活性の構想:創発型地域活性へ」で登壇したときの写真なんかをアップしていました。以下のリンクや月別カテゴリとかからは見ることができます。...にしても謎だ。

http://web.sfc.keio.ac.jp/~ryosuke/tippingpoint/2008/11/

批評家の東浩紀さんのblogで『思想地図』vol.2(NHK出版)の告知がされていました。

http://www.hirokiazuma.com/archives/000467.html

僕は論考と座談会とブックガイドを寄稿させていただきました。以前に、『α-SYNODOS』などに書かせていただいたことがありますが、学術雑誌や専門誌ではない、(少なくとも思想や評論業界の)人口に膾炙する媒体でのほぼ初めての仕事になります。いわゆる「商業媒体で書くこと特有の難しさ」を実践的に学びながらの執筆になりましたが、我慢強くお付き合いいただいた関係の皆様には大変感謝しております。

特に、東さんと北田さん、濱野さんと話した座談会では、僕が取り組んでいるネットワーク・サイエンスや地域論のエッセンスを盛り込み、一般的な「思想的な言説」とはかなり異色なものとなっていると自負しています(しかし、後から読み直すと随所に若さがにじんだ展開にもなっているのですがw)。

年内には店頭に並ぶと聞いております。刊行の折りには、ぜひ、お手にとっていただけると幸いです。

今日は知人のblogの紹介です。

「sayuriのニュースへのつぶやき」
http://sayura.seesaa.net/

大学院の同期で、アナウンサーを目指している吉道さゆりさんのblogです。日々のトップニュースにコメントを入れつつ、さらに原稿読み上げの音声ファイルをアップしています。

大学院に通いながら、自ら原稿読みの自主講座を立ち上げるほどの行動力を持つ、才色兼備な彼女がアナウンサーになる日も遠くないかもしれません。今から要注目です。

SFCの計画停電野影響でサーバーが使えなくなっていましたが、復旧したようです。ただ、現時点では、メールサーバーが復活しておらず今日はまだメールを読めていません。基本的にSFC関係者は、現在みんなメールの連絡がとれないはず。丸一日かかると、さすがにちょっと困る。。

『失われた場を探して』は、アメリカの社会学者の手による、日本の若年雇用、特に高卒就職という希有な主題を扱った作品だ。

日本では、中卒、高卒就職と大卒就職の間で、就職先を確保するプロセスが大きく異なっている。前者では、主に学校が斡旋し、後者では学生本人が主体的に企業にアクセスするスタイルが主流だ。これまで雇用を巡る問題で、この問題はあまり俎上にあがってきていなかったように思う。

筆者は、就職先を確保するプロセスにおいて、社会資本のweak tie(詳しくは、転職において、知り合いの知り合いといった「弱いつながり」が重要な役割を果たすという社会学者M. グラノベッターの転職論を参照。)が重要さを増しているにも関わらず、いわゆる学力的に中位以下の高校生たちがそうしたweak tieと出会う機会が損なわれていることに問題を見出す。それは、本書がいうところの「失われた場」の一つだ。

象徴的な問題として、筆者は、例えば、高校生活におけるアルバイトと学校が生徒へのコントロールを失っていることを挙げ、ソリューションとしてそれらを回復する必要があることを説く(つまり、高校生の活力を奪うアルバイトを禁止し、場としての学校の機能を回復すること)。

ただ、このソリューションには疑問が残る。就職先を確保するために、weak tieが重要な役割を果たすということまでは同意できる(ただし、日本では、転職に際して、strong tieが重要だ、ということを示唆する社会ネットワーク研究の成果もある。)。しかし、日本の公立校の問題として、生徒の流動性の低さが特徴としてあげられる。例えば、小学校、中学校、高校と地元の公立校に進んだ場合、大半の生徒が顔見知りということは、しばしありうることである。

そうすると、高校生活でのアルバイトは、そうした高校生たちにとっては、初めて、学校空間以外での人間関係形成の場となる可能性がある。それを禁止することは、それこそweak tieを摘むことにならないだろうか? 

個人的には、問題解決の鍵は、むしろ学校側にあるように思える。つまり、学校が一括して就職を斡旋するという制度側が耐久年数を迎えているのではないか、ということだ。むしろ、就職活動の斡旋を高校が一括して握る現状から引き離して、大卒就職活動のように多様な企業エージェントの介入を認め、むしろ、高校では、地元企業におけるインターンシップの斡旋といった機会の提供とエンパワーメントを行うほうが効果的かつ現実的だと思う。そもそも、基本的に学校という場以外での就業経験が乏しい教師に就職に至るプロセスを委託する制度が、職業形態が多様化した時代に適しているとは到底思えない。

こうした「ソリューション」部分に若干に違和を感じるが、本書からは筆者が異国の土地の問題について、長期間に渡って丹念に研究を進めてきたことが良く伝わってくる。文章も平易な言葉で記述されており、翻訳も分かりやすい。それゆえ、社会学を専門にしていなくても問題なく読み進めることができる。扱っている高卒就職に関する問題も、日本の雇用環境を巡る議論の中でも従来目立って言及されてきたテーマではなく、その意味でも、一読の価値がある。

先日、この本の刊行記念で青山ブックセンター本店で「―「場」が消えて、格差が生まれた― メアリー・C・ブリントン×玄田有史 トークセッション」というイベントが行われた(http://www.aoyamabc.co.jp/10/10_200811/2008123.html)。

NTT出版の半田さん、宮崎さんに誘われて見に行ってきたのだが、定員50人のところに、ざっと見て7,80人集まっていて、雇用の問題、ひいてはロスト・ジェネレーションの問題が未だに耳目を集めるテーマだということを実感した。いい意味でも、悪い意味でも、日本の問題を外部から見た研究成果のひとつだと言えよう。


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