若手建築家の藤村龍至氏と若手建築家を中心としたroundabout journalによるインタヴュー集。
大変興味深く拝読した。昔から建築家が社会的な議論を展開しているということは、認識していたのだが、あまり親しむ機会がなかった。藤村さんは『思想地図』関連で何度かお話させていただき、一度は東さんや濱野さんと一緒にBUILDING Kを案内していただいたこともある。
BUILDING M日記 「2009-01-24 東浩紀さん・思想地図ご一行様 来訪」
そのとき以来、藤村さんたちが展開する批判的工学主義という議論に関心を持つようになった。寡聞にして体系だって解題された文献を知らないのだけれど、批判的工学主義とは、僕の理解では、工学の限界を踏まえた上で、あえて工学的手法を使っていく、ということであり、その具体的な方法論としての超線形プロセスがあるということのように思う。
しかし、本書ではこうした藤村さんたちの思考の軌跡というよりは、若手建築家の同時代的で多様な問題意識を浮かび上がらせることに主な焦点があてられている。こちらはこちらで、実際のクリエイターの人たちがどういうことを考えているのかを、僕らのような門外漢も窺い知ることができる貴重な内容になっている。実際、建築家ではない人を対象に、建築家が考えていることを伝えたいという試みだったようである。ただし、そのためには前提としてもう少し詳しい前提の説明が欲しい。どうやら建築の世界では、修士課程を卒業すると「〜設計事務所」という個人事務所を持つのが通例のようなのだし、また、建築の世界の師弟関係なども少し他の学問分野と違うような印象もうけた。こうしたことの意味が説明されているともっと深く話の内容を理解出来るように思う。けれども、島宇宙について、島宇宙の外に伝えようとする試みがなされているということ自体が貴重な試みといえよう。
ところで、直接お話したときから思っていたのだが、おそらく抽象的には「コミュニティ」の限界を踏まえた上で、手法としてコミュニティを活かすという僕の問題意識と藤村さんの持つ問題意識はかなり近い。批判的工学主義は、おそらく漸進的社会工学的な思考と接続するはずだが、こうした議論はコミュニティについても適用可能だろう。
ちなみに、批判的工学主義など藤村さんたち自身の思考については、筑波批評社による藤村さんのインタビューが一番体系だって藤村さんの思考を知ることができたように思う。
本当はここら辺の体系だった藤村さんの見解が知りたかったのだけど、ここら辺についてはおそらく次の『思想地図』vol.3に掲載予定の論文で論じられることだろう。僕にとって、本書は『思想地図』vol.3藤村論文の前提となる建築家の言説の片鱗に触れるいいウォーミングアップとなった。

