7月26日に『経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)』刊行記念イベント飯田泰之×荻上チキ「経済成長と寛容さの実現」に行ってきた。
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経済成長は人気がない。しかしエコノミストの飯田氏は「先進国では年2%の成長は当たり前だし、経済成長によって格差や貧困の問題を解決することができる」という。気鋭のエコノミストと批評家が、経済学にまつわる誤解と「経済学思考」の重要性について語り合う。
【出演者】
飯田泰之(エコノミスト) 荻上チキ(批評家)
■日時 7月26日(日) 16:00〜18:00(予定)/開場15:30
■会場 紀伊國屋書店新宿本店 9階特設会場
■定員 30名(入場無料、お申し込み先着順)
◎当日混雑する場合は立見になる可能性もございますので予めご了承ください。
■お申し込み先 7月11日(土)より
紀伊國屋書店新宿本店5階カウンター
またはお電話でお申し込みください。
代表|03-3354-0131(10:00〜21:00)
みなさま、ふるってご参加ください!
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イベントは、荻上チキさんが飯田泰之さんに問いかけていくような形で進行。
論点は、だいたい次のようなものだった。
1)従来の「論壇経済学」が、経済学業界における「スタンダードな経済学者」ではなく、マルクス経済学の影響を強く受けた議論が中心であったこと。その理由は、長らく日本の経済学界では、応用派が理論派の格下と見なされてきたがゆえに、応用派の人材が不足していることが一因。しかし、相手方の担当者がPh.Dを持っていることも少なくないグローバル・スタンダードに対応するために、霞ヶ関から応用派の需要が増してきたこともあり、昨今若手を中心に事情が変化しつつあるということ。
2)本来現代的な経済学は価値判断を行うものではなく、例えばケインズ派もハイエク派も分析手法はかなり共通しており、どちらかと言えば工学的な(おそらく、社会学的にはif-thenによって構成される条件プログラム的な)学問であるということ。
3)価値判断をめぐる問題は本来経済学では回答できないが、「論壇経済学」ではその線引き(ここまでが経済学的回答/ここから先は個人の価値判断)が明確に行われてこなかったこと。
4)経済学的手法で解決可能な問題が数多く存在すること。そして、経済学によって解決できない問題に対応するため、専門家の恊働とそれを支えるプラットフォームが必要なこと。
チキさんの巧みな司会もあって、非常にクリアな議論だった。
飯田さんがおっしゃる「約2%の経済成長が必要」ということの根拠について、あまり言及されなかったので質問させていただいたところ、ざっくりいえば、「歴史的にうまく回っている国の多くが2%程度の経済成長している」という発見的なものと効率化の度合いはならすと2%程度(≒これと同程度の経済成長がないと、余剰人員を回収できない)という論理的なものの2点を回答された。シンプルかつ、絶対的な「理論的根拠」などにもとづくものではないことが、逆に説得力を持っていたように感じた。
そして、飯田さんが掲げるような漸進的社会工学主義的な思考や立ち位置は、論壇的には機会主義的に見られがちなのかもしれないが、これまでの論壇内の論客と異なる、学問的に真摯な姿勢を感じた。
今回の対談を通じて、経済学に限らず社会科学のナレッジとリテラシー(ひっくるめると、ある種の「社会科学的作法」?)の中でも、比較的ドライな側面を啓蒙していくことが、実践的な処方箋についての議論を広めるためには必要だろうと思った。
「人文・社会科学」と一括りにされがちだが(いわゆる人文系の学会事情はよく知らないので、言及を避ける。)、少なくとも社会科学の世界では、経済学に限らず研究を論理的に組み立てる方法が広く議論されてきている(いずれも一般的に読みやすい本ではないが、例えば『社会科学のリサーチ・デザイン』や『政治学のリサーチ・メソッド』等参照。ちなみにSFCの政策系院生の多くが、修士のときにこの本を使ったコースを履修している)。ただ、社会学者の佐藤俊樹さんのようのような例外を除くと、そうしたタイプの社会科学社に論壇的なスポットライトがあまり当たってこなかっただけである。
これは『思想地図』vol.2の座談会でも少し述べたことだけれど、統計を使っている研究が優れた研究というわけではない。統計を使っているか否かが重要なのではなく、研究が論理的に正しく組み立てられているか否かが重要なのである。
イベント終了後、遅ればせながら即売会で『経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)』を購入、即読了した。個人的にお世話になっている云々と関係なく、僕が最近手にとった本の中で相当おもしろかった本のひとつといえる。目から鱗的な「経済学的思考のスタンダード」(多分...)が満載にも関わらず、対談企画がベースなのでとても読みやすい。間違いなく、「知の交流スペース」を標榜するSYNODOSの面目躍如といえる一冊。
ところで論壇の世代交代を考えるとき、現状、理論的、方法論的枠組はそのままに、対象をアップデートしていく路線と、枠組それ自体を書き換えるていこうとする路線の二つの路線が存在しているように思える(三つ目の路線は、枠組も対象も昔のままの路線。この路線はおそらくごく少数の人を除いて存続不可能)。ベストウェイはこれらのポリシー・ミックスなのではないかと思えなくもない。