最近のいただきものをご紹介。
『「情報社会」とは何か?』大黒岳彦(NTT出版)
ルーマン研究者としても知られる大黒氏の3冊目の単著。「情報社会とは何か」という問いに答えるために、理論的には社会学からメディア研究まで、事例的には、サブカルチャーからハイカルチャーまで、これでもかというほどに参照を行っていく。不勉強な僕にとっては、名前も知らない研究者、事例が多々あった。現代の情報社会を構成すると著者が考えるであろう数々の断片をもって、ブリコラージュ的にその像を描き出しているのかもしれない。だが、即物的な僕にとっては、そして、おそらく著者は一切意図していないであろうある種の読みやすさのような読者サービスの観点からいえば、端的に「情報社会とは何か」という問いに解答して欲しいようにも思える。もちろん、そのような期待がルーマンを含むメディア論を専門とする筆者に対する期待として、ミスリーディングなことは理解できる。それよりも、読後の、「この複雑さこそ、情報社会の複雑性を縮減しつつも、「反映」しているのではないか」という感想のほうが重要にも思えるからである。
『希望難民ご一行様』古市憲寿(光文社新書)
こちらは、85年生まれの筆者による、世界一周船ピースボートの参与観察と、それをもとにした若者論。バウマンの「リキッドモダニティ」概念や、ギデンズの再帰性など社会学の概念を参照しつつ、ピースボートに乗る若者たちの生態を読み解いていく。まず、驚異的な読みやすさと、捻りの聞いた文章表現に衝撃をうけた。悪筆で、書籍原稿に悪戦苦闘している身としては、分野は違えど、若き才能あふれる筆者から大いに刺激をうけたと言わざるをえない。1点気になったのは、ルポと分析は秀逸なのだが、第7章「だからあなたはあきらめて」と、それ以前の章の整合性である。ピースボートに乗っている若者が「ある、いくつかの属性」(具体的には本書をご一読いただきたい)を持つと分析するのは同意可能だが、ソリューション的なインプリケーションの間に若干の飛躍がある、もしくは、より精緻な属性の分類とインプリケーションの関係を記述する必要があるように思える。具体的には、ぜひ本書を手にとって考えてみてほしいのだが、ネタバレなしに少し言及しておけば、1.) ある若者たちにとって承認の共同体はひとつのセーフティネットとして必要ではないか。2.) また、ある若者たちは、わかったうえであえて「ムラムラ(村々)している」(筆者造語)可能性はないか。3.) あえて「ムラムラしている」のだとすれば、その「希望」をあきらめさせることは、大げさにいえば、彼らに残された数少ない生きる意味を奪ってしまうことに繋がりはしまいか。このとき、「社会」に「あきらめ」させる正当性があるのだろうか。いつか機会があれば、筆者と議論してみたい点だ。しかし、ともあれ、帯の筆者の近影もクールで、意識的な表現も多数。これからの若者論の主要論者となることが容易に想像できる。マーケターたちの「若者論」より、はるかに丁寧で誠実だ。いろいろな意味で、とても刺激をうけた一冊。
『国際貢献のウソ』伊勢崎賢治(ちくまプリマー新書)
国際貢献、国際NGOの「リアル」を、赤裸々に描き出す一冊。大学生からも、「国際的NGOで働きたい」といった話をしばしば聞く。そんな人には、ぜひこの1冊を手にとって欲しい。もちろん、僕にはそのリアルを検証する術はないのだが、メディアで耳にする国際貢献活動、あるいは国際NGOの「美談」の背後にあるシビアな側面があるのは事実だろう。それは、例えば、日本のNGOの現地での「無力さ」、大規模な国際NGOに見られるプロフェッショナルとして当然でもある競争を持ち込んだ人材管理や、強力な組織体制である。筆者は、そのような状況を良しとしているわけではなく、そこを出発点としておて、理想主義一辺倒の「ヌルさ」を徹底的に排そうとしているようだ。例えば、「NGOの経営学 商品は「貧困」」「国際協力ボランティアという隠れ蓑」という、おそらく意図的に挑戦的な目次からもそのような意図を読み取ることができる。当事者というよりも、NGOも含めた、非営利組織に関心をもつ人たちに手にとって欲しい1冊といえよう。

