分子生物学者のエッセイ。『本』での連載をあつめたものらしい。それゆえ、テーマは、ES細胞、論文捏造など多岐に渡り、寄せ集め感は拭えない。
最近、筆者や茂木健一郎氏のような、自然科学をバックグラウンドに持つ書き手が増えたように感じる。二人とも、今や物書きとして雑誌に、テレビに引っ張りだこだ。
筆者の概念も、もしくは、茂木健一郎氏で有名になった「クオリア」も、乱暴に一言でまとめれば、物事の本質は要素還元主義では分からない、ということになる。筆者の対象は分子生物学で、茂木氏は脳というわけだ。
彼らの議論がウケるのは、これまで文学的想像力が扱ってきた「生の本質」や「思考の本質」という「純粋で、崇高なもの」が、結局一般的にはブラックボックス化してしまって実態は理解できない「最先端の」自然科学によっても解明できないという「事実」に喜んで、僕らが釣られているからではないか。
例えば、本書のシメにあたる1文。
「世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである。」(p.275)
確かに、文学的表現としてはすごくかっこいい言い回しだけど、実質的には何も言ってないに等しいと思えてならない。ちなみに、肩肘はらず、まったりエッセイとして読むと、自然科学の業界事情なんかも書いてあって普通に面白い。茂木氏の本もよく読みます、自分。

