コンセプト・メイキング: 2009年6月アーカイブ

マーク・ブキャナンの新刊が翻訳された。

マーク・ブキャナンは、『ネイチャー』誌等の編集も務めた、博士号を持つサイエンス・ライター。複雑ネットワークやベキ則についての一般書を数多く出している。

本書は、これまでの本と比べて特に新しい事例が増えたわけではないが、「社会物理学」にフィーチャーしている。本書では、「<社会>を物理学的手法でありのまま捉える」程度に使われているけれど、歴史的には社会物理学は、統計学者ケトレーらに遡ることができる、かなり長い知的伝統のある分野である。

また、以前のエントリーでも言及したことがあるけれども、「physics of society」や「social physics」は、欧米では比較的長い伝統をもっている。そして、僕の理解では、<社会>について考えていく方法として、今取り組むべき方向性のひとつだと思う。

そして、断絶しているように見えるかもしれないけれど、社会学を「社会的事実をもののように見る」(デュルケム)と捉えた社会学の始祖たちの取り組みの現代的理解のひとつとも言えるのではないだろうか。

以前に、『思想地図vol.2』(NHK出版)の中では、「人々が異なる動機を持ち、自由な振る舞いをしているにも関わらず、結果的に一定の秩序を持つ」事象に対する関心ということを書いたし、同書の座談会「ソシオフィジクスは可能か」でも同様のこと話した。「言うは易し、行うは難し」で、実際にどうすれば、研究として形にできるのか、という方法論的模索は今も続いている。そして分かったことのひとつは、ネットワークを可視化する、いくつかの指標を出す、程度を越えた高度な手法は、明らかに僕の手には余る。

地域活性化の分野では建築系の方とはいろいろご一緒させていただくことが増えたが、こちらの分野では、情報系の方とご一緒させてもらわないと厳しいだろう。情報系の人は、モデルを適用できる新しい対象(たとえば、社会的領域)を探しているはずだし、さらに言えば、可能ならば新しいモデルを作りたいと考えているはず。他方で、僕らは社会に対する「現場」の問題意識と知的伝統に対するストック、問題解決への志向がある。多分win-win関係を築くことができると思うのだけれど。






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