音楽の音楽性とは何か?
最近、一番気になっている課題だ。これは最近よく相談を受けている後輩の研究課題に関係する。その後輩は、ある人文系の理論的メタファーをモデルにして音楽生成のプログラムを作ろうとしている。研究で重要なのは、ゴールのビジョンだ。今回の例で言えば、どのような「もの」が生成されれば、音楽が生成されたと言えるのか、ということを定義しなければならない。よっぽど面白いものを除いて、「やってみたらこうなった」(「やっこう論文」などと言われる)は、高評価は得られない。
改めて音楽の音楽性とは何だろうか?
一般に、音楽は三つの要素から成り立つといわれる。リズム、メロディ、ハーモニーだ。だけれども、これらは必要十分条件ではなく、リズム、メロディ、ハーモニーがあるからといって「音楽」になるとは限らない。ここにもミクロとマクロの解離という創発現象の問題が存在する。
思えば、社会の社会性とはなにか?、というのが社会学の伝統的問題意識だ。音楽の音楽性とはなにか? 既存の分野に照らして言えば、かけ離れているように感じるが、実は問題の前提を遡る思考という点、創発現象を扱うという点で通底する。
このような問題設定をして、井庭先生はよく「横串に刺してみる」という。ある分野の問題設定や方法の関係性をメタファーに、他の分野に移転してみることだ。
井庭研究室には、このように地域のフィールドをやっている学生から、カオスの方程式の表現方法をやっている学生、パターン・ランゲージというボトムアップによる創造支援を扱っている学生まで多様な学生がいる。遠そうで、意外と近い問題意識の学生が集まっているのだ。

