政策・メディア研究科への入学を検討中の皆さんへ

2023年4月現在、新規の大学院生は受け付けていません。以下は参考情報です。

Unfortunately I am not accepting any new graduate students as of April 2023.


 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科において私(土屋大洋)の研究指導を検討している皆さんのために、このページでは情報を提供しています。

 政策・メディア研究科には修士課程および後期博士課程があります。入学試験に関する情報はそれぞれの公式ページを参照してください(「修士課程(http://www.sfc.keio.ac.jp/gsmg/admissions/)」「後期博士課程(http://www.sfc.keio.ac.jp/gsmg/admissions/doctor/)」)。

 入学願書を提出する前に、このページに書かれていることを検討した上で、事前に連絡をください。連絡先はホームページ(http://web.sfc.keio.ac.jp/~taiyo/index-j.html)に書いてあります(電子メールが一番早くて確実な連絡方法です)。

 まず、修士課程の場合は少なくとも2年間、後期博士課程の場合は少なくとも3年間の学費(http://www.keio.ac.jp/ja/education/tuition/graduate_school_001.html)および生活費を確保してください。欧米の大学院では、研究室への貢献と引き替えに指導教員が学生のための生活費を提供する場合が多くありますが、日本では必ずしもそうした制度は確立していません。少なくとも私の研究室ではそうした制度はなく、所属する大学院生には自活を求めています。

 無論、私が共同研究プロジェクト等に参加したり、外部資金を活用したりする場合もあり、その際には貢献に応じた報酬を用意する場合もあります。しかし、恒常的にそうした資金が用意されているわけではなく、金額もそれほど多いものではありません。したがって、まずは自分で学費と生活費を用意してもらう必要があります。普通、修士課程は2年間で修了できることがほとんですが、後期博士課程の場合は平均して5年間ぐらいかかるように思います。無論、指導教員としては、3年以内での学位取得を前提に指導していくつもりです。

 社会人の出願も歓迎します。ただし、入学後も会社等での業務を続けながら学位取得を目指すことをお薦めします。特に、扶養家族を抱えている場合には、収入源を維持しておくことが重要です。

 研究テーマは、広く国際関係論や情報社会論に関連するもので構いませんが、できるだけ入学前に具体的なテーマを検討してください。曖昧なテーマ設定だと入学試験で振り落とされます。政策・メディア研究科の入学試験ではさまざまな分野の教員が書類審査・面接を行いますので、そうした審査員たちにも説得力を持つテーマ設定と出願書類が求められます。

 私個人の近年の関心は、サイバーセキュリティ政策、インテリジェンス政策、国際政治理論、情報通信政策、その他全般的な情報社会論です。ただし、新聞・テレビなどのマスコミ研究は行っていません。また、サイバーセキュリティやインテリジェンスの研究は、大学院では非常に難しいと思います。分析対象となるデータや資料が入手しにくいためです。修士や博士の学位論文のためには分析可能な材料が必要です。その目処が付いていない状態で入学すると迷走することになります。よくよく見定めてテーマを考えてください。

 政策・メディア研究科では、教員個人の研究室に閉じこもることを奨励せず、複数の教員によって編成されたプログラム(http://www.sfc.keio.ac.jp/gsmg/education/program/)およびプロジェクトによって教育・研究活動を行っています。ということは、異分野の教員や大学院生たちとの協働作業がさまざまな局面で求められます。自分の専門にこだわる姿勢は歓迎されません。さまざまな学問の境界上にある新しい問題に取り組まなくてはなりません。私のメインとなるプログラムは「グローバル・ガバナンスとリージョナル・ストラテジー(GR:http://www.sfc.keio.ac.jp/gsmg/education/program/gr.html)」です。応募の際にはGRプログラムを指定してください。

 大学院への入学は大きな投資だと思います。投資だということは、リターンが得られない場合もあることを意味します。修士課程の場合は、ほとんどの学生が修了することができますが、できない場合もあります。後期博士課程では、おそらく半分ぐらいの学生しか学位取得に至らないでしょう。数年間の学費と生活費、さらには機会費用の損失を覚悟した上での投資になります。博士号を取得できても、昨今の研究職市場では買い手市場になっており、希望の職が得られない可能性も高くなっています。

 研究は勉強とは異なります。単にこれまでの学業成績が良かったから、本を読むのが好きだからという程度では、研究者の道は開かれないと考えたほうが良いでしょう。いわゆる「頭が良い」ということも研究者にとって必ずしも不可欠な要素ではありません(もちろん、有利な要素ではあるでしょう)。研究活動では、まだ答えの出ていない問題に取り組むわけですから、教科書に書かれていないことが対象になります。答えが出ていないということは、答えるための手法が分からない問題か、新たに生起している問題ということになります。それに答えるためには、センスや努力が必要になります。そして何よりも、自分の研究成果を口頭で報告したり、文章にまとめて発表したりする能力が不可欠です。突き詰めて言えば、「話せない人」「書けない人」は生き残れません。

 大学の学部の4年間のうち、最初の1年間が受験勉強からのリハビリ、最後の1年間が就職活動で実質的に使えない現状では、大学本来の教育・研究を行うには、文系でも大学院進学がデフォルトになるべきではないかとも思います。そうはいっても、時間とお金のかかることでもあります。やる気のある志願者を歓迎します。

 研究テーマと将来設計について熟考の上、連絡をください。

2015年8月
土屋大洋