論理、倫理、心理、哲学
ギリシア語のphilos(愛)+sophia(智)=「智慧の探求」の学。さまざまな経験を統合する基本観点をつくる努力。古代ギリシアの智慧の概念=真なるものの知(理論知)+道徳的実践(実践知)
哲学=物事の合理的認識+人間の徳の追求
→「現実」の整合的・体系的説明とその批判
「現実」の説明・批判:自然や人間社会の「もの」や現象に直ちに向かうよりも、それらと人間とのかかわりあいの探求に向かう。歴史の場合にも、歴史的事実の学ではなくて歴史の意味の探求に向かうのが哲学である。
哲学=第一哲学(ものに即し、人間の生き方に即してその根本の「精神」を省察する)+科学哲学、倫理学、論理学
科学哲学(scientific philosophy)
論理分析の手法を駆使して科学の論理構造の解明を目指す学問その手法が精密化すればするほど科学研究の現場から離れ、ただその成果を追いかけて正当化するだけになった。
1960年代に入り、ハンソン、トゥールミン、クーン、ファイヤアーベントらの科学史研究のなかから「科学的事実の理論負荷性」(ハンソン)、「パラダイム理論」(クーン)、「科学理論の共約不可能性」といった認識論的問題が提起され、科学への新たな視座が獲得された
それと共に、近代科学の展開に対して批判的な立場を確立したマッハ、ポワンカレ、デュエムら世紀転換期の「科学史的思考」が再評価されることになった。
論理学
狭義には正しい思考(概念、判断、推理など)の形式および法則をその内容に関係なく研究する学問(形式論理学)古典論理学(伝統的論理学):アリストテレスによって初めて組織化され、さらに中世スコラ学者によって精密化
記号論理学(近代論理学):命題や推理の記号化を徹底して形式論理学を発展させた。演繹論理が中心であるが、帰納論理の記号化も試みられている。
倫理学
道徳の起原、発達、本質、規範を方法論的に研究する学問。中心問題は道徳の規範を明らかにすること。論理学、美学と並んで三大規範学の一つ。道徳科学:道徳の現象を説明記述する学
道徳哲学:道徳の本質・規範の哲学的研究
道徳の絶対性と先天性を主張する立場(カント以後のドイツ観念論が代表的)
道徳の経験的性格を認め、社会的側面との連関においてそれを歴史的・発展的にとらえようとする立場(18世紀の英国経験論とフランス唯物論が代表的)
ギリシアの哲学者。アテナイの生まれ。青年時代に自然哲学を修得したが、後その唯物論的・機械論的立場にあきたらず、観念論を意識的に唱導して、自ら理想主義的・目的論的哲学を樹立した。その哲学の中心的問題:人間の人格性としての魂を正しい道徳的認識に導くこと
ソクラテス問答:自らはソフィストのように「知者」ではなく「知を愛求する者」philosophiaであると称し、無知の装いのもとに帰納法によって徳の正しい概念に到達(定義の発見)しようとする。またその方法は相手が自分で真理を生み出すのを助けるにすぎぬものとして、「産婆術」とも呼ばれる。
無実の告訴により死刑の宣告を受け、毒杯を仰いで死んだ。著作は残さず、言行は弟子プラトンの対話編に記録された。
ギリシア最大の哲学者の一人。アテナイの貴族出身。ソクラテスの弟子。師の死後、各地を旅行し、前387年アカデメイア(アカデミー)を創設。以後没するまで、3回のシチリア旅行以外はここにとどまり、研究と教育に専心した。3回のシチリア旅行では、「哲人国家」の理想を実現しようとしたが、3回とも失敗した。
著作は3期に分けられ、初期はソクラテスとの対話編で『ソクラテスの弁明』『クリストン』などは、ソクラテスの愛知(フィロソフィア)の言行を戯曲的構成で再現、中期の『饗宴』『パイドン』、『ポリテイア』(国家編)などではソクラテス直系のイデア論を展開し、イデアの実践倫理的理想としての目的論的意義を強調した。後期の『パルメニデス』『ティマイオス』『ノモイ』などは、シチリア旅行の時期と合致し、ソクラテスの影響を克服して、自己のイデア論を完成したもの。
イデア:事物をしてその事物たらしめる純粋に非質料的・観念的存在
現象界とイデア界との二元論:イデア界と現象界との関係=原型とその不完全な模像との関係
現象界はイデア界を目的因とし理想として生滅変化する。
哲人政治:何が真理であり善であるかをわきまえた知者(哲人)が支配者(王)となる政治の形態。プラトンが衆愚政治に陥りやすい民主主義的政治形態に代わる理想の政治形態として説いた。
ギリシアの哲学者。マケドニア王侍医ニコマコスの子としてカルキジキ半島スタゲイロスに生まれる。前367年アテナイに出てアカデメイアにはいり、師プラトンから影響を受けた。各地を巡ったのちアテナイ郊外にリュケイオンと呼ばれる学校を設立し(前336ころ)、研究に専心。その学徒をペリパトス(または逍遥)学派という。
かつて個人教授をしたこともあるアレクサンドロス大王が没し、アテナイに反マケドニア運動がもち上がると、アリストテレスはカルキスに隠退し、翌年死んだ。
彼の哲学はプラトンを受け継ぎ、まず形相(形相因、動力因、目的因)と質料を想定し、動的には可能性が現実性になる(質料が形相によって現実化する)過程を考え、これをすべてに当てはめて説明した。
しかし形相が事物に内在するとした点で、イデアを超越的としたプラトンと異なる。
科学者としては、動物の発生、分類、解剖、生態などの研究に業績を残し、また原子論に反対、エンペドクレスを継いで万物は四元素(土、水、空気、火)からなるとし、天体は地球のまわりを同心の天球に着いて円運動すると考えた。
彼の自然観はカトリック教会と結びついて約2,000年にわたって栄えた。主著は『論理学』『形而上学』『自然学』『政治学』『修辞学』『詩学』など。
ヨーロッパ史における中世:4-5世紀から14-16世紀頃まで。ギリシャ・ローマの古典古代(地中海世界)の崩壊からその古典古代文化の復興を目指したルネサンス及び宗教改革の開始までの時期。キリスト教中心の「暗黒(?)」の時代:現実の世俗的事象に対する精神的・霊的価値の優位
→世俗国家とカトリック教会:ローマ帝国崩壊後、西欧世界の秩序統一の真の担い手は教会。最終的な正統性の起源はローマ教皇の権威。
キリスト教共同体(Respublica Christiana):教権と俗権が併存する二中心的楕円的統一体→両剣論(ゲラシウス理論)
聖人。初期キリスト教最大の教父。北アフリカ、ヒッポの司教。ローマ官吏で異教徒の父、篤信の母モニカの間に、タガステで生まれる。カルタゴで修辞学を修めたが、若い情熱にかられて放縦の生活を送る。真理探究のためマニ教を信じ、新プラトン主義哲学の研究ののち、ミラノの司教アンブロシウスの感化と母の祈りによって改宗。
キリスト教神学、倫理学、社会学の基礎を確立した。主著『告白録』は個人的証言によって恩寵をたたえる神への賛美録。『神国論』は神国と悪魔の闘争を描いて歴史哲学を展開。
この世は基本的に「原罪」によって汚れた邪悪な世界。
神の国の市民と地の国の住民が混在。最後の審判はいつ来るか分からない。それなりの平和を維持・供給するのが国家である。「国家は人間の堕罪に対して神が与えた罰であり矯正手段である」国家に対する教会の絶対支配を実現させた教皇権のイデオロギーの基礎になる。
イタリアの神学者、哲学者。中世スコラ哲学の集大成者。ドミニコ会士。彼は師アルベルツス・マグヌスの事業を継承して、アリストテレス哲学から異教的要素(アラビア的汎神論的解釈)を除き、これを超越神論的キリスト教の立場から解釈し直し、その上にアウグスティヌス的神学を打ち立てることを目ざした。
彼は質料と形相との関係を段階的に考えるとともに、質料と結びつかぬ形相の存在を主張した。そしてこのような非質料的形相のうち、最高のものを神、神からその存在を受け取る限りにおける被造物を天使、身体を有する限りにおいて質料界にも属する被造物を人間とし、以下質料と形相とからなる被造の自然界は多くの段階的領域に分かれるとみた。
普遍問題についてはアベラールと同じくアリストテレス的実念論の立場をとった。彼の学説は1879年レオ13世によってカトリック教会唯一の公認哲学として確認された。その学派をトミズムという。著書『神学大全』はスコラ哲学の体系的集大成。
スコラ哲学:8-15世紀、西欧中世の神学中心の哲学の総称。西方カトリック教会に属する諸学校で、教会の教理を理性的に弁証するために構成された哲学。
「恩寵は自然を破壊せず、かえってこれを完成する」。
アリストテレスの考えを取り入れる:「国家・政治的共同体(ポリス)は自然的なものであり、人間は自然的に(生まれながらにして)ポリス的動物である」
国家は人間本性に基づいた自然的なものであり、人間は理性を持った社会的・政治的動物である
キリスト教世界における一つの完全社会としての国家の自然性と自律性を明確に承認