本プロジェクトは、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」事業の慶應義塾大学の事業「『実学(サイエンス)』によって地球社会の持続可能性を高める」における安全クラスターの成果の一部です。
本研究プロジェクトは米国の太平洋軍に焦点を当てながら、アジア太平洋地域の過去・現在・未来の安全保障体制を検討しようとするものです。
米軍には陸軍、海軍、空軍、海兵隊の四軍があることはよく知られていますが、実際の戦闘部隊は九つの「統合軍(unified command)」に編成されています。九つのうち六つは地域別、三つは機能別になっており、アジア太平洋地域を管轄するのが「太平洋軍(U.S. Pacific Command: PACOM)」です。太平洋軍は九つの統合軍の中で最大であり、30万人を要するといわれています。
これまで日本を含む東アジアの安全保障を考える上で在日米軍や在韓米軍の存在が注目されてきました。しかし、在日米軍司令部や在韓米軍司令部は、いわば太平洋軍の出先機関でしかなく、有事の際に作戦の指揮を執るのは米国ハワイのオアフ島に置かれている太平洋軍司令部です。象徴的に言えば、在日米軍司令官は中将であるのに対し、太平洋軍司令官は大将です。太平洋軍司令官が従うのは米国大統領と国防長官のみであり、アジア太平洋地域の安全保障において絶大な権限を持っていることになります。
アジア太平洋地域の安全保障を考えるにあたって太平洋軍の存在を無視できないにもかからず、太平洋軍を正面から捉えた学術研究は米国においても、諸外国においても少なくなっています。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイルの存在は、アジア太平洋地域の安全保障を依然として不安定にしています。サイバー攻撃が頻発する地域でもあります。こうした太平洋をめぐる安全保障には、そこに散らばる島々からなる太平洋島嶼国の存在も視野に入れなくてはなりません。
本研究プロジェクトは、アジア太平洋地域の安全保障を立体的・複眼的に捉え直す試みです。太平洋軍の司令官には日系米国人であるハリー・ハリス提督が指名され、新たな展開が起きており、そうした実践にも益する研究を目指したいと考えています。そもそも米軍組織における統合軍とは何なのか、その成立の歴史からさかのぼり、現在の組織構造について明らかにし、現在どのような活動が行われているのかを俯瞰した上で、アジア太平洋地域における有事の際にどのような展開が行われるのか、そして、日本や韓国、シンガポール、フィリピンと行った米国の同盟国との間でどのような連携が行われるのかを見ていきたいと思います。
プロジェクト・メンバーである梶原研究員(客員)の著作が刊行されました。
日時:2015年7月22日14時〜16時
場所:イースト・ウエスト・センター(米国ハワイ州ホノルル)
参加者:土屋大洋、デニー・ロイ、他3名
報告:土屋大洋:Security Framework in Asia-Pacific Region: Role of U.S. Pacific Command
日時:2015年11月20日(金)10時〜16時
場所:慶應義塾大学三田キャンパス東館4階セミナー室
参加者:土屋大洋、西野純也、デニー・ロイ、ジェフリー・ホーナン(SPFUSA)、他4名
報告:
日時:2016年3月9日(水)14時〜15時半
場所:イースト・ウエスト・センター(米国ハワイ州ホノルル)
参加者:土屋大洋、西野純也、デニー・ロイ、他1名
報告:
日時:2017年3月20日(月)
場所:イースト・ウエスト・センター(米国ハワイ州ホノルル)
参加者:土屋大洋、デニー・ロイ、他1名
日時:2017年6月27日(火)
場所:慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)
参加者:土屋大洋、西野純也、中村進、梶原みずほ、他2名
日時:2017年8月22日(火)
場所:イースト・ウエスト・センター
参加者:土屋大洋、デニー・ロイ、西野純也、中村進、他
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